【リクトの日記】
街で生活するのにも慣れた頃、俺は偶然ミカゲと再会した。
「宿はどうしてますか?」って聞かれたから、そろそろ路銀がなくなりそうだし、野宿かなって返したら――。
「何を言ってるんですか!?!?!?」
予想通り、めちゃくちゃ怒られた。
今まで見た中で一番怖い顔だった。うん、ごめん。
久しぶりに浴びる親友の長めの説教が終わった後、ミカゲは俺の身を案じてか、「古いですが、雰囲気の良いシェアハウスがありますので一度行ってみてはどうですか」と、一枚の地図を渡してくれた。
……シェアハウスか。ミカゲや協会以外の人と一緒に暮らすなんて正直ちょっと緊張するな。
でも、ミカゲが教えてくれるくらいだ。
少しだけ、期待していいかもしれない。
そう思ったその時――地面が揺れ、街中に地響きが鳴った。
頭上から大量の瓦礫と破片が降ってくるのを見たミカゲは、咄嗟に氷の結界を張り、破片から俺たちの身を護った。
直後、雷鳴と共に飛んできた瓦礫の破片が目の前で撃ち抜かれて粉々に砕けた。
「……雷魔法?」
雷が飛んできた方へ視線を向けると、鋭い目をした深緑の髪の少年が一人。
彼は俺たちを一瞥し、低く言った。
「さっさと行け。巻き込まれるぞ」
その瞬間、再び地鳴りと轟音が響き渡った。
音が鳴る方へ視線を向けると、瓦礫の山を押しのけて現れたのは一体の大型の魔物だった。
「そこの貴方、説明願います。何故、街の中に魔物が?」
「どこかの馬鹿が、召喚術を使って制御不能にしやがった。その尻拭いを俺たちがさせられてる。それでいいか?」
「……なるほど。事情はよく分かりました。そちらはお任せします。僕は後方を……友人を護らねばなりませんので」
そう言ってミカゲは、俺を守るように一歩前に立つ。
俺も腰につけていたナイフを手に取り、警戒体勢に入った。
鋭い目をした少年は面倒臭そうに舌打ちをして魔物に視線を戻した直後、屋根の上から人影――猫耳の少年が飛び出してきた。
「あ! ノア、こんなところにいたー!」
「マシロ! お前、今まで何してたんだ!」
「いやぁ~、ちょっと道外しちゃってさあ〜」
猫耳の少年は少しも悪びれる様子もなく魔物に目をやると、軽く指をさしながら、
「ねぇねぇ、もしかして探してたやつってあれ?」
「そうだ。さっさとやるぞ」
「おっけー! 分かった!」
二人は仲間なのだろう。
軽快なやり取りの後、猫耳の少年が先陣を切って魔物に向かっていく。
瓦礫を巧みに使った跳躍。回し蹴り。拳打。
猫耳の少年の動きに合わせて放つ力強い雷撃。
二人の息の合った連携で、魔物はあっさりと地に落ちた。
猫耳の少年は、まるで遊びに来たかのように楽しそうな顔で、俺たちに向かって手を振っていた。
――なんだ、あれ。すげえ。
この街にはあんなに強い人がいるんだ。
俺の知らない世界が、まだまだあるんだ。
そう思った俺は、しばらくの間二人の姿から目を離すことが出来なかった。