2話 無明と無名
あなたの名前は?
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何故自分は、見知らぬ部屋で横たわっているのだろうか。
トビは混乱しながらも、平静さを取り戻すべく素早く状況を確認した。
どうやら、特に拘束もされていなければ怪我もしていない。
一般人が使いそうな柔らかいベッドの上で布団を掛けられていることはわかった。
怪我は確かにないが、呼吸の一動作すら気怠さが尋常でなく、億劫になる。
同時に、身体が重く、節々が鈍く痛むことに気がついた。全身を駆け巡る悪寒と異常に熱くぼんやりと靄がかかる頭が忌々しい。
いつものように仮面を付けているだけなのに、酷く息苦しい──これではまるで、重い風邪を引いたかのようだ。
有り得ないと被りを振りたかった。柱間細胞を移植したこの身が、ただの人間のような不調を覚えるなど。
だが、あまりにも生々しい体調不良故の不快感と身体を動かすことの億劫さが、彼に現状を正しく認識させていた。
そして、もう一つ気がついたこと。
少し離れた横に誰かの気配があった。
その「誰か」は隙だらけで、彼ならばいつでも殺せるだろう。
やもすると意識的に隙を作っているのかもしれないと思えるほど油断しているようだった。
だが、長年修羅場を潜って磨かれた彼の勘は、そうではないだろうと知らせていた。
どこにでもいる一般人のように、それは穏やかな気配だったのだ。
だからといって、警戒を解くわけではないのだが。
「誰か」は小さく何かをぶつぶつと呟く。
その声質からして若い女のようで、尚更トビは理解不能な状況を訝しんだ。
そして続く水音。布か何かを絞って、水気を取っているようだった。
暫くして、女が「あー……」と、何か後悔するような声を漏らした。
何故そんな声を出したのかは分からないが、考え倦ねるような唸り声を出し始めたので、何か迷っていることが伺える。
そして、布擦れの音。
女の気配がすぐ近くに来たことで、トビは警戒をさらに強めた。
体の調子はすこぶる悪いが、敵かもしれない相手の前ではそんなことを言っていられない。
いつでも動ける体勢にはなっている。
動作を悟られないように注意し、布団の中でクナイを握った。
「……ごめんなさい」
小さく囁かれたその一言に気を取られる。
だが、それも一瞬。
仮面に女の手が触れたその刹那、彼はベッドから降り立ち、女を床に組伏せていた。
トビは混乱しながらも、平静さを取り戻すべく素早く状況を確認した。
どうやら、特に拘束もされていなければ怪我もしていない。
一般人が使いそうな柔らかいベッドの上で布団を掛けられていることはわかった。
怪我は確かにないが、呼吸の一動作すら気怠さが尋常でなく、億劫になる。
同時に、身体が重く、節々が鈍く痛むことに気がついた。全身を駆け巡る悪寒と異常に熱くぼんやりと靄がかかる頭が忌々しい。
いつものように仮面を付けているだけなのに、酷く息苦しい──これではまるで、重い風邪を引いたかのようだ。
有り得ないと被りを振りたかった。柱間細胞を移植したこの身が、ただの人間のような不調を覚えるなど。
だが、あまりにも生々しい体調不良故の不快感と身体を動かすことの億劫さが、彼に現状を正しく認識させていた。
そして、もう一つ気がついたこと。
少し離れた横に誰かの気配があった。
その「誰か」は隙だらけで、彼ならばいつでも殺せるだろう。
やもすると意識的に隙を作っているのかもしれないと思えるほど油断しているようだった。
だが、長年修羅場を潜って磨かれた彼の勘は、そうではないだろうと知らせていた。
どこにでもいる一般人のように、それは穏やかな気配だったのだ。
だからといって、警戒を解くわけではないのだが。
「誰か」は小さく何かをぶつぶつと呟く。
その声質からして若い女のようで、尚更トビは理解不能な状況を訝しんだ。
そして続く水音。布か何かを絞って、水気を取っているようだった。
暫くして、女が「あー……」と、何か後悔するような声を漏らした。
何故そんな声を出したのかは分からないが、考え倦ねるような唸り声を出し始めたので、何か迷っていることが伺える。
そして、布擦れの音。
女の気配がすぐ近くに来たことで、トビは警戒をさらに強めた。
体の調子はすこぶる悪いが、敵かもしれない相手の前ではそんなことを言っていられない。
いつでも動ける体勢にはなっている。
動作を悟られないように注意し、布団の中でクナイを握った。
「……ごめんなさい」
小さく囁かれたその一言に気を取られる。
だが、それも一瞬。
仮面に女の手が触れたその刹那、彼はベッドから降り立ち、女を床に組伏せていた。