1話 日常の境界
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「なんで……1日でこんなに疲れるわけ……」
本当、世の中って理不尽だなって思う。
何故引きこもりの私の家の前で、こんな珍妙な奴が倒れているわけ。ふざけるなマジで。
あれか、日々の堕落に対する罰的な何かか。そりゃ悪うございました。
だとしても、流石に私みたいな役立たずには荷が重すぎでしょう。
普段なら神や運なんてものは眉唾程度にしか思っていないのに、今日だけはそんな胡乱なものを呪わざるを得なかった。
汗が目に入って痛い。
腹が緊張でズキズキと痛い。
心臓の鼓動が激しすぎて痛い。
まあ要するに、死に体寸前という事だった。
何か飲むものが欲しいけど、そんなことをしている暇はないので諦める。
今はこいつの容態を調べるのが先だ。
「……顔、見るか」
万が一知り合いだったら嫌だし。ここら辺田舎だから有り得なくもないし。凄く嫌だけど。
コスプレ野郎の頭を浮かせて、お面を留めているバンドを外す。
思ったよりも簡単にそれは外れ、彼の顔をさらけ出した。
それがもっと混乱させてくれるなんて、思ってもいなかったのに。
「え?
……はあ? いやいやいや、嘘……」
……顔が、トビそのものだった。
要するに、うちはオビトだった。
えーっと。うちは一族といえば、美形で有名だったよね。
主人公のライバルのサスケや、サスケの兄で悪役だったイタチもかなりのイケメンと言われている。
人気投票でもうちは一族の多くが上位に食い込むほどなのだから、その人気は推して知るべし。
まあ個人的にはうちは一族にとりわけ好意はないのだが、それは今はどうでもいい。
短い黒髪は、烏の羽みたいに真っ黒。
右半分にうずまき状の傷がついているが、それでもなお整った精悍な顔立ちとわかる。
息は荒く、苦しいのか、眉根は寄せられ目元にも皺が寄っている。
あ、まつ毛長。いやそんなのどうでもいい。
私の目の前に、うちはオビトその人が、眠っていたのだ。
「う、うわあ………………はは、何これ」
訳がわからない。とりあえず掠れた声で笑うことしかできなかった。
仕方がないだろう。混乱して頭がどうにかなってしまいそうだし、信じられないんだから。
瞬きしてみても、うちはオビトの顔は消えてはくれなかった。
……いや待て名前。落ち着け名前。
お前の普段使わない頭脳を今こそ発揮するときだ。
まだマスクという可能性があるじゃないか。
ほら、ハリウッドとかで使われる超リアルなやつ! うちはオビトなわけないようん! 剥がすところがどこかにあるはず、首元とか顔の横とかしっかり見よう!!
……結果として、こいつの顔は本当にうちはオビトの顔だった。
マスクじゃないとか何なの?
頭おかしくなりそう。どうしたらいいのこれ。
……いや本当に、マジな感じで。
どうしたら良いのか、真剣に困った。
こんな二次創作小説にありそうな展開、起こっても嫌、というか困るだけだ。
汗が滲んでくる。呼吸が上手くできない。
……こんなでも、私はまだこいつをうちはオビトだと信じたわけではなかった。
でも、本当にあり得ない話だけど、万が一、いや億が一にもこいつがうちはオビトだったりしたら──そんな風に考えて、凄く怖くなってきた。
仮にだけど、百億歩譲って、こいつがうちはオビトだとしよう。
だとしたら救急車を呼ぶのはヤバい。
こいつが現状をどこまで認識しているかは知らないが、目が覚めたら見知らぬ場所で面も装備も全部盗られてしました!なんてことになったら流石に慌てるだろうし、何をするかわかったものじゃない。
いやいやこいつがうちはオビトな訳……ないと思いたい。ないでしょ、流石に。頼むからないと信じさせてくれ。
……うん、私、混乱しているらしい。さっきから同じ事ばかり頭の中を廻ってるや。
落ち着け、落ち着かないとどうにもならない。
数回深呼吸をすれば、何とか頭が回りだした。
とりあえずこいつを病院に送るのは止めよう。
だからといってこのままというのも駄目だ。かなり調子が悪いらしいし、放置するなんてとんでもない。
こいつが何にせよ、死なれたりしたら流石に寝覚めが悪くなる。
とりあえず、うちはオビトの顔にお面を付け直す。
何と言うか、外したままなのは落ち着かなかった。
……とりあえず、体温計と冷やすものを持ってこよう。
未だに冷静じゃない私は、それだけ考えて立ち上がった。
ばたばたばた、と自分でもうるさいと思うくらい慌てながら廊下を駆けた。
まず向かったのはリビング。コンパクトにまとめられた救急セットの中から体温計を取り出し、ポケットに滑りこませた。
よし、次は冷やすものだな。
リビングからキッチンへと向かう。
うちはリビングとダイニングルームが一緒になっているので、すぐにたどり着けた。
幸運なことに、氷枕が冷凍庫にあったのでついでに持っていくことにした。
今度は洗面所に走り、洗面器に冷水を張った。手が真っ赤になるくらい冷たいが、もう少し冷たくしておこう。
またキッチンに行き、大量の氷をぶちこんだ。
これですぐには温くならない筈だ。
小さいサイズのタオルを洗面器に入れた。
これで準備はオーケー。後は溢さないよう気をつけて部屋へ行くだけ。
フラグを立てたみたいだったけど、何事もなく部屋に入ることが出来た。
そろりそろりとベッドの横まで行き、静かに洗面器と氷枕を下ろした。ふう、と一息吐いてからすぐに何をすべきか考える。
「よし、とりあえずタオル……」
浸しておいたタオルを水から出し、ぎゅぎゅっと思いきり絞りあげる。
予想以上に冷たくなっていてビックリした。手が痛くなるくらいだから、相当な冷たさだろう。
と、ここで私は自分の馬鹿な行為に今更気がついた。
さっきお面をつけ直したから、また取らなくちゃいけないじゃないか。
うわ、本当に何やってんだ私。もう痴呆にでもなっちゃったか。
自分のアホさ加減に溜め息を吐いてから、うちはオビトの方に体を向けた。
こいつには悪いが、お面を取らせてもらおう。
ごめんなさい、と小さく呟いてから手をうちはオビトの顔へと伸ばした。
次の瞬間、私は床にねじ伏せられていた。
──────────────────────
主人公の読み通りというわけではありませんが、もし病院送りにしていたら救急車内で目が覚めて結構な惨状になっていた可能性が高いです(1敗)
でも普通はどんな相手であれ原因不明の高熱&気絶していたら救急車を呼ばなくちゃダメですし主人公は間違っています。どうしようもないね。
本当、世の中って理不尽だなって思う。
何故引きこもりの私の家の前で、こんな珍妙な奴が倒れているわけ。ふざけるなマジで。
あれか、日々の堕落に対する罰的な何かか。そりゃ悪うございました。
だとしても、流石に私みたいな役立たずには荷が重すぎでしょう。
普段なら神や運なんてものは眉唾程度にしか思っていないのに、今日だけはそんな胡乱なものを呪わざるを得なかった。
汗が目に入って痛い。
腹が緊張でズキズキと痛い。
心臓の鼓動が激しすぎて痛い。
まあ要するに、死に体寸前という事だった。
何か飲むものが欲しいけど、そんなことをしている暇はないので諦める。
今はこいつの容態を調べるのが先だ。
「……顔、見るか」
万が一知り合いだったら嫌だし。ここら辺田舎だから有り得なくもないし。凄く嫌だけど。
コスプレ野郎の頭を浮かせて、お面を留めているバンドを外す。
思ったよりも簡単にそれは外れ、彼の顔をさらけ出した。
それがもっと混乱させてくれるなんて、思ってもいなかったのに。
「え?
……はあ? いやいやいや、嘘……」
……顔が、トビそのものだった。
要するに、うちはオビトだった。
えーっと。うちは一族といえば、美形で有名だったよね。
主人公のライバルのサスケや、サスケの兄で悪役だったイタチもかなりのイケメンと言われている。
人気投票でもうちは一族の多くが上位に食い込むほどなのだから、その人気は推して知るべし。
まあ個人的にはうちは一族にとりわけ好意はないのだが、それは今はどうでもいい。
短い黒髪は、烏の羽みたいに真っ黒。
右半分にうずまき状の傷がついているが、それでもなお整った精悍な顔立ちとわかる。
息は荒く、苦しいのか、眉根は寄せられ目元にも皺が寄っている。
あ、まつ毛長。いやそんなのどうでもいい。
私の目の前に、うちはオビトその人が、眠っていたのだ。
「う、うわあ………………はは、何これ」
訳がわからない。とりあえず掠れた声で笑うことしかできなかった。
仕方がないだろう。混乱して頭がどうにかなってしまいそうだし、信じられないんだから。
瞬きしてみても、うちはオビトの顔は消えてはくれなかった。
……いや待て名前。落ち着け名前。
お前の普段使わない頭脳を今こそ発揮するときだ。
まだマスクという可能性があるじゃないか。
ほら、ハリウッドとかで使われる超リアルなやつ! うちはオビトなわけないようん! 剥がすところがどこかにあるはず、首元とか顔の横とかしっかり見よう!!
……結果として、こいつの顔は本当にうちはオビトの顔だった。
マスクじゃないとか何なの?
頭おかしくなりそう。どうしたらいいのこれ。
……いや本当に、マジな感じで。
どうしたら良いのか、真剣に困った。
こんな二次創作小説にありそうな展開、起こっても嫌、というか困るだけだ。
汗が滲んでくる。呼吸が上手くできない。
……こんなでも、私はまだこいつをうちはオビトだと信じたわけではなかった。
でも、本当にあり得ない話だけど、万が一、いや億が一にもこいつがうちはオビトだったりしたら──そんな風に考えて、凄く怖くなってきた。
仮にだけど、百億歩譲って、こいつがうちはオビトだとしよう。
だとしたら救急車を呼ぶのはヤバい。
こいつが現状をどこまで認識しているかは知らないが、目が覚めたら見知らぬ場所で面も装備も全部盗られてしました!なんてことになったら流石に慌てるだろうし、何をするかわかったものじゃない。
いやいやこいつがうちはオビトな訳……ないと思いたい。ないでしょ、流石に。頼むからないと信じさせてくれ。
……うん、私、混乱しているらしい。さっきから同じ事ばかり頭の中を廻ってるや。
落ち着け、落ち着かないとどうにもならない。
数回深呼吸をすれば、何とか頭が回りだした。
とりあえずこいつを病院に送るのは止めよう。
だからといってこのままというのも駄目だ。かなり調子が悪いらしいし、放置するなんてとんでもない。
こいつが何にせよ、死なれたりしたら流石に寝覚めが悪くなる。
とりあえず、うちはオビトの顔にお面を付け直す。
何と言うか、外したままなのは落ち着かなかった。
……とりあえず、体温計と冷やすものを持ってこよう。
未だに冷静じゃない私は、それだけ考えて立ち上がった。
ばたばたばた、と自分でもうるさいと思うくらい慌てながら廊下を駆けた。
まず向かったのはリビング。コンパクトにまとめられた救急セットの中から体温計を取り出し、ポケットに滑りこませた。
よし、次は冷やすものだな。
リビングからキッチンへと向かう。
うちはリビングとダイニングルームが一緒になっているので、すぐにたどり着けた。
幸運なことに、氷枕が冷凍庫にあったのでついでに持っていくことにした。
今度は洗面所に走り、洗面器に冷水を張った。手が真っ赤になるくらい冷たいが、もう少し冷たくしておこう。
またキッチンに行き、大量の氷をぶちこんだ。
これですぐには温くならない筈だ。
小さいサイズのタオルを洗面器に入れた。
これで準備はオーケー。後は溢さないよう気をつけて部屋へ行くだけ。
フラグを立てたみたいだったけど、何事もなく部屋に入ることが出来た。
そろりそろりとベッドの横まで行き、静かに洗面器と氷枕を下ろした。ふう、と一息吐いてからすぐに何をすべきか考える。
「よし、とりあえずタオル……」
浸しておいたタオルを水から出し、ぎゅぎゅっと思いきり絞りあげる。
予想以上に冷たくなっていてビックリした。手が痛くなるくらいだから、相当な冷たさだろう。
と、ここで私は自分の馬鹿な行為に今更気がついた。
さっきお面をつけ直したから、また取らなくちゃいけないじゃないか。
うわ、本当に何やってんだ私。もう痴呆にでもなっちゃったか。
自分のアホさ加減に溜め息を吐いてから、うちはオビトの方に体を向けた。
こいつには悪いが、お面を取らせてもらおう。
ごめんなさい、と小さく呟いてから手をうちはオビトの顔へと伸ばした。
次の瞬間、私は床にねじ伏せられていた。
──────────────────────
主人公の読み通りというわけではありませんが、もし病院送りにしていたら救急車内で目が覚めて結構な惨状になっていた可能性が高いです(1敗)
でも普通はどんな相手であれ原因不明の高熱&気絶していたら救急車を呼ばなくちゃダメですし主人公は間違っています。どうしようもないね。