7話 不思議な君と意外な話
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「え──あの、私には、チャクラとかいうのは扱えないんじゃ……?」
「例外があると言っただろう。
お前の異常なまでに優れた聴力──あれは、お前のチャクラが耳の器官や神経に集中していることが原因だ」
トビはそのまま、滔々と語り続けた。
曰く、私のチャクラはトビや彼の世界の人間のチャクラとは少し異なるらしい。というか、トビも初めて見る形らしい。
曖昧な表現になるのは、彼が詳細は語ってくれなかったからだ。恐らく、私に本来のチャクラとの違い云々を説明しても不毛だからだろう。
トビが言うことには、私のチャクラは全身としてはほとんど見えないほどごく微量だが、耳周辺だけはそこそこ多く存在するそうだ。
私の身体はそのチャクラの使い道を模索し、結果無意識下で聴力の強化にあてるようになったのではないか。
それがトビの立てた、私のトンデモ聴力の原因の仮説だった。
「本来ならば、お前でも聴力に限れば自由にチャクラを扱えるはずだ。
尤も、今は無意識に使う癖がついてしまったようだがな。集中した時だけでなく気を抜いた時にまで使ってしまっているのでは、まともに扱えているとはいえない。
オレが教えるのは、お前が自らの意思で制御できるようにすることだ」
流石にわけのわからない話を連続して聞かされて混乱しそうな私でも、そんな事を言われたら嫌でも冷静になって、同時に、激しく不思議に思ってしまった。
つい考える間もなく、疑問を口にしてしまうくらいには。
「な、なんで……なんでわざわざ、そんなことを教えてくれるんですか?」
ぶっちゃけすぎた問いかけにも、トビは感情を表すことなく冷静に答えた。
「その力の使い方を知らずに悪用し、目立たれでもすればオレにとっても面倒だ」
「そう、ですけども……
でも悪用なんかしたことないし、する気もないですよ」
「悪用せずとも無意識に使うのなら結果は同じだ。
オレに疑われることすら考えずにあんな真似をしたのなら、どうせ日頃から似たようなことをしているのだろう。
だからこそ教えてやると言っているんだ」
さっさと話を理解しろとでも言いたげに冷めた声でばっさり言い放つトビ。わあ、結構心にクるものがあるね!
ショックを受けつつも小さく頷いて理解を示す。トビは鼻を鳴らして言葉を続けた。
「異能のないこの平和な世界では、お前のような者の存在はすぐに広められ、見世物にされるだろうな。それが嫌なら大人しく従うことだ」
……うん。確かにバレるのは困る。
それにその手の経験は、僅かながらにあった。
小学校1年生のときだったか。
まだ自分と他人の聴力に大きな差があることを知らなかった私は、「クラスメイトに陰口を言われているのではないか」と不安がった友達のために、その場で耳をそばだてて内容を聞き、「その髪留めかわいいよねって話してるだけみたいだよ」と教えてしまったのだ。
私たちとそのクラスメイトは、対角線になるような位置で教室の端にいて、あちらはかなり小声だったのに。
その後真偽をクラスメイトに聞いた後の反応は凄まじかった。子供だから良かったというべきか、凄い凄いなんでどうやったのと微笑ましい感じで問い詰められた。
しかし、当時の私からするとこの耳の良さは人並外れたものだと気がつくきっかけになり、同時に、どこまでの良さなら驚かれないのかわからなくなってしまった。
その場は結局まぐれということにして有耶無耶に終わらせたが、未だに苦い記憶としてよく覚えている。
あれ以来、家の外では聞こえるものに関して言及しないようにした。
……うん。今はあの頃より普通のレベルはわかるようになったとはいえ、ふとした時にやらかしそうになることは多々あるし。
こいつがわざわざ教えてやると言ってくれているのだし、乗らない手はないだろう。
改めてトビを見上げてから、少し頭を下げる。
「ありがとうございます。是非、お願いします」
今のところ、私にはチャクラがある実感なんて湧かないし、制御なんてできるようになるビジョンも全く見えないけど。
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トビから主人公への呼びかけが「貴様」から「お前」になりました。やっとここまで書けた……
そして主人公の内心や家族と話すときに使うトビの三人称での呼び方は「あいつ、こいつ、奴」でしたが、ふっきれて以降は感謝の念から少し軟化して「彼、あの人」が加わったりしてます。
ただし怖いままだし嫌なことをされたのも確かなので話している内容によっては「あいつ、こいつ、奴」呼びもしてたり。というかまだそっちのが多い。