1話 日常の境界
あなたの名前は?
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本当に何なんだろう、これは。
瞬きを繰り返して、呆然と目の前に広がる非日常なモノを眺める。
扉を開けてみればあら不思議、コスプレした人が倒れていた。
…………冗談じゃない、そんな非日常はお断りだ。
目が痛くなるくらいの強さで擦る。擦りまくる。目蓋が千切れるんじゃないかと言うくらいに擦る。
もしかしたら疲れでちょっと幻覚でも見えただけかもしれない。
というよりそうでなければ困る。
尤も、コスプレした人間が見えるなんて言う幻覚も大概なものだが。自分のメンタルが心配だ。
パッと手を離し、目を大きく見開いてみる。
ぼやける視界は徐々に定まっていき、そこにあるモノを正しく映し出す。
残念なことに、コスプレ野郎は消えてはくれなかった。
舌打ちをしたくなるが、する余裕も無いらしい私はため息にも似た吐息を小さく溢した。
やっと止まりかけていた汗が噴き出してくる。
想像だにしなかった事態に頭が追い付かない。
どう行動したら良いか考えられない。
……いや、落ち着け私。
ここで焦ってもどうにもならない。まずはコスプレ野郎が何故倒れているのか確認するべきだ。
多分この時の私が本当に落ち着いていたら、不審者に近寄りなんてしないでとりあえず110番でもすべきだとわかっていただろう。
そんな当たり前をわかっていない馬鹿な私は、大きく鳴り響く心臓を抑え込んで、ゆっくりとコスプレ野郎に近寄る。
触れられる距離になってもピクリともしない。
少し心配になってきた。もしかしたら怪我か何かをしてるのかもしれない。
それなら早く手当なりなんなりをしてやりたいものだが、こんなど田舎でコスプレを平然とする人間がマトモである保証もない。
警戒は怠らないようにしよう。
ついにコスプレ野郎の横でしゃがみこみ、恐る恐る肩を掴んで揺すってみた。
「あの……」
「……」
反応ナシ。
微かに上半身が上下しているから、呼吸はしているみたいだ。
畜生、爆睡しやがって。こっちがビクビクしてるのがアホらしいじゃないか。
……いや、もしかしたら外見では分からない病気や怪我なのかもしれない。
脳震盪とか無呼吸症候群とか。いや、後者はちょっと違うか。
兎にも角にも、万が一というものがあるんだから気を抜いてはいけない。
とりあえず、仰向けに転がすことにする。
再三になるが、私が本当に冷静なら怪我や病状の悪化を恐れて揺らす行為はしないし、すぐに救急車を呼んでいただろう。
パニクっている私は、尤もらしい理由づけはしたものの、結局好奇心でしか行動していないのだ。
こんなの、最悪でしかない。けど、やめられない。
心が2つあるみたいだ。わかっているのに、動いている私はわかっていない。
流石に気絶した大人を動かすのは骨が折れたが、何とか勢いをつけて転がせば仰向けにすることができた。
さて、一体どんな顔をしているのか……
「って面付けてる……トビのコスプレか」
なんとご丁寧に、あのフレンチクルーラーのような奇妙なお面まで付けていた。
無駄にそっくりだ。何者なの、この人。
というか今更だけど、なんでこんな田舎でコスプレなんぞしてるの。秋葉原にでも行ってやれ。
…………仕方がない。
迷った末に、私はとりあえずこいつを家に運ぶことにした。
今はもう秋の真っ最中だから、かなり気温が低い。ここに放置していたら風邪を引くだろう。
現に私も汗が冷えつつあるので、身体の芯から凍えそうだ。
救急車を呼ぶにしても、どうせ一度家に戻らないとだし。見た感じ外傷はないのだから動かしても大丈夫なハズ。適当な理由付けをして私は動き出した。
「しゃーない、背負うか……」
背負おうとコスプレ野郎の腕を肩にかけようとするが、なかなか上手く出来ない。
まあさっきもいった通り、気絶した大人を動かすのは大変なわけで。
それをおぶるなんて私には不可能だろう。
……うん。
コスプレ野郎には申し訳ないが、引き摺らせてもらおう。
羽交い締めのような状態でずるずると引っ張っていく。それでも目を覚まさないのだから驚きだ。
布越しでもわかるほどコスプレ野郎の体温はかなり高く、熱があることが伺えた。よく耳を澄ませれば呼吸も荒い。
これ、40℃くらいあるんじゃないだろうか。
やっぱり相当体調が悪いみたいだ。早く温めてやらなくては。
コスプレ野郎を私の部屋のベッドに寝かせたときには、目眩がするくらいにフラフラだった。
──────────────────────
多分主人公は倒れている人間がコスプレしていなければここまでパニックにはならず、普通に通報か救急車を呼ぶかしていました。
とはいえ好奇心で行動している辺り倫理観と賢さが足りていない気もしてきた。良いのかこれ。
瞬きを繰り返して、呆然と目の前に広がる非日常なモノを眺める。
扉を開けてみればあら不思議、コスプレした人が倒れていた。
…………冗談じゃない、そんな非日常はお断りだ。
目が痛くなるくらいの強さで擦る。擦りまくる。目蓋が千切れるんじゃないかと言うくらいに擦る。
もしかしたら疲れでちょっと幻覚でも見えただけかもしれない。
というよりそうでなければ困る。
尤も、コスプレした人間が見えるなんて言う幻覚も大概なものだが。自分のメンタルが心配だ。
パッと手を離し、目を大きく見開いてみる。
ぼやける視界は徐々に定まっていき、そこにあるモノを正しく映し出す。
残念なことに、コスプレ野郎は消えてはくれなかった。
舌打ちをしたくなるが、する余裕も無いらしい私はため息にも似た吐息を小さく溢した。
やっと止まりかけていた汗が噴き出してくる。
想像だにしなかった事態に頭が追い付かない。
どう行動したら良いか考えられない。
……いや、落ち着け私。
ここで焦ってもどうにもならない。まずはコスプレ野郎が何故倒れているのか確認するべきだ。
多分この時の私が本当に落ち着いていたら、不審者に近寄りなんてしないでとりあえず110番でもすべきだとわかっていただろう。
そんな当たり前をわかっていない馬鹿な私は、大きく鳴り響く心臓を抑え込んで、ゆっくりとコスプレ野郎に近寄る。
触れられる距離になってもピクリともしない。
少し心配になってきた。もしかしたら怪我か何かをしてるのかもしれない。
それなら早く手当なりなんなりをしてやりたいものだが、こんなど田舎でコスプレを平然とする人間がマトモである保証もない。
警戒は怠らないようにしよう。
ついにコスプレ野郎の横でしゃがみこみ、恐る恐る肩を掴んで揺すってみた。
「あの……」
「……」
反応ナシ。
微かに上半身が上下しているから、呼吸はしているみたいだ。
畜生、爆睡しやがって。こっちがビクビクしてるのがアホらしいじゃないか。
……いや、もしかしたら外見では分からない病気や怪我なのかもしれない。
脳震盪とか無呼吸症候群とか。いや、後者はちょっと違うか。
兎にも角にも、万が一というものがあるんだから気を抜いてはいけない。
とりあえず、仰向けに転がすことにする。
再三になるが、私が本当に冷静なら怪我や病状の悪化を恐れて揺らす行為はしないし、すぐに救急車を呼んでいただろう。
パニクっている私は、尤もらしい理由づけはしたものの、結局好奇心でしか行動していないのだ。
こんなの、最悪でしかない。けど、やめられない。
心が2つあるみたいだ。わかっているのに、動いている私はわかっていない。
流石に気絶した大人を動かすのは骨が折れたが、何とか勢いをつけて転がせば仰向けにすることができた。
さて、一体どんな顔をしているのか……
「って面付けてる……トビのコスプレか」
なんとご丁寧に、あのフレンチクルーラーのような奇妙なお面まで付けていた。
無駄にそっくりだ。何者なの、この人。
というか今更だけど、なんでこんな田舎でコスプレなんぞしてるの。秋葉原にでも行ってやれ。
…………仕方がない。
迷った末に、私はとりあえずこいつを家に運ぶことにした。
今はもう秋の真っ最中だから、かなり気温が低い。ここに放置していたら風邪を引くだろう。
現に私も汗が冷えつつあるので、身体の芯から凍えそうだ。
救急車を呼ぶにしても、どうせ一度家に戻らないとだし。見た感じ外傷はないのだから動かしても大丈夫なハズ。適当な理由付けをして私は動き出した。
「しゃーない、背負うか……」
背負おうとコスプレ野郎の腕を肩にかけようとするが、なかなか上手く出来ない。
まあさっきもいった通り、気絶した大人を動かすのは大変なわけで。
それをおぶるなんて私には不可能だろう。
……うん。
コスプレ野郎には申し訳ないが、引き摺らせてもらおう。
羽交い締めのような状態でずるずると引っ張っていく。それでも目を覚まさないのだから驚きだ。
布越しでもわかるほどコスプレ野郎の体温はかなり高く、熱があることが伺えた。よく耳を澄ませれば呼吸も荒い。
これ、40℃くらいあるんじゃないだろうか。
やっぱり相当体調が悪いみたいだ。早く温めてやらなくては。
コスプレ野郎を私の部屋のベッドに寝かせたときには、目眩がするくらいにフラフラだった。
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多分主人公は倒れている人間がコスプレしていなければここまでパニックにはならず、普通に通報か救急車を呼ぶかしていました。
とはいえ好奇心で行動している辺り倫理観と賢さが足りていない気もしてきた。良いのかこれ。