7話 不思議な君と意外な話
あなたの名前は?
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西日が容赦なくカーテンの隙間から差し込むため、私はリビングのソファーで寝転がった状態で目を覆っていた。
喉奥からうう、と情けない呻き声が漏れ出る。ごろごろと寝返りを繰り返し打っても落ち着けそうになかった。
「マジで何。マジで何なの怖いってマジであいつマジ!!」
「マジマジうるせーな、さっさと行ってこいよ」
「は?
一緒に来てよ、妹がこんなに怖がってるんだから肉壁になってよお兄様」
「堂々と言う内容じゃなさすぎだろ」
つーか、呼び出されたのお前だけじゃん。そう付け加えられれば、ぐっと言葉に詰まる他なかった。
実際、その通りだ。
今から10分くらい前のこと。
兄さんがリビングの絨毯に転がってソシャゲ(なんかレースするやつ)をしているから、暇だった私も横から覗き込んであーだこーだと茶々を入れていた。
そんな時、突然トビが現れたのだ。あ、勿論神威は使わず扉から。
ただ、ノックも無しの入室だったせいで、私も兄さんも見事に固まってしまった。
兄さんは当然ソシャゲに夢中、私はその兄さんに絡むのに夢中と、どちらも気を抜いていた。トビが前のように気配を消して来たのかは知らないが、いずれにせよ私は気がつかなかっただろう。
シャカシャカと賑やかな音を奏でるスマホ、びっくりして床に寝そべったまま固まる私たち、それを黙って見やるトビ。
凄く(私たちにとっては)居た堪れない空気を最初に破ったのは、やはりトビだった。
「少し用がある。後でオレの部屋に来い」
彼が言いきるとほぼ同時に、ソシャゲ内のレースも決着がついたらしい。スマホから「1着は──! ──です! 中山2000m、まずは道を繋ぎました!」と興奮気味の音声と割れんばかりの歓声が溢れた。うわあマジで居た堪れないんだけど。
「……わ、私ですか?」
気が散ってしまい間抜けな返しをしてしまう。さも当然だと言いたげにああ、とだけ返答して、トビはさっさとリビングを後にしてしまった。
当然、残された私たちはぽかんとしたまま、暫く固まっていた。
とはいえ、そんなことを言われた後にじっとしているわけにもいかず。
私は慌てて立ち上がったが、やはりどうにも足が重くてまた座り込んでしまう。
それを何回か繰り返して、結局ソファーに転がり、嫌だなあともだもだしているのが、今の私だった。
「オレがついてけばそれこそ面倒なことになるだろ。
つか、わざわざ呼んで猶予くれてんだからそこまでヤバい用じゃないんじゃねーの」
「そう、だけどさあ……
でも前脅された時さあ、メンチ切られただけじゃなくて襟首掴まれたりしたんだよ……?
シンプルに怖い……またなんか怪しまれたらどうしよ……」
考えれば考えるほど怖くなってきて、自分でも驚くくらい弱った声が出た。
流石の兄さんも何か思うところがあったのか、表情を厳しいものにする。
やっぱりこいつはなんだかんだお人好しだ。トビに首を怪我させられたときも、口には出さないものの頻繁に治りを気にしてくれていたし。こんなバカな妹でも心配してくれるのは知っていた。
こいつがそういう奴だから、私は、比較されるのは嫌でもこいつを僻むことはできなかったし、こいつのことはずっと好きなままだった。
……仕方がない。
これ以上駄々を捏ねても意味がないどころか、兄さんを不安にさせてしまうみたいだし。
「じゃあ、行ってくる」
「え。急にどうした」
「いや、待たせたらもっと怖そうだし。私の悲鳴とか聞こえたらすぐ駆けつけてよね」
「オーケー、音量マックスでゲームしとくな!」
「ばーーーか!!! 死ね!!!」
普段のノリで軽口を叩き合ってから、ついに私はリビングを出た。
扉を閉めてため息を一つ。
悩んだってどうにもならない。重い足を引き摺るようにして階段を上り、トビの部屋の前に立った。
一度だけ深呼吸をする。
大丈夫だ。あいつが私に危害を加える気なら、わざわざ呼び出したりなんて手間はかけない。
「……えっと、名前です」
ノックを2回、名前を告げて返答を待つ。
息苦しいまでの静寂に息を吐き、トビの出方を只管に待った。
暫く、という間もなく、トビの「開いている」という淡白な返事が聞こえてきた。覚悟を決めてノブを捻る。
軋む音と共に失礼します、と呟いて、1歩分だけ部屋に入った。
薄暗い、斜陽のみが光源になった部屋に面食らってしまい瞠目する。
来客用の部屋はそこまでたくさんのものが置かれているわけではない。ベッド、一人がけのソファーチェア、壁掛けの時計、木製のシンプルなデスク。あとは父さんが自室に置ききれなかった本棚だけ。
明かりすらつけられていない上に、トビの私物など何一つ置かれていないこの部屋は、彼が使っていないときより殺風景に見えた。
部屋の主たるトビは、椅子に腰掛けた状態で私を見やった。
とりあえずもう一歩進んで、扉を少しだけ隙間を残して閉めた。でないと、光源がさらに絞られてしまうから。
トビが立ち上がる。近寄ってはこないため、私も動かずに大人しくしておいた。
かちこちと時計の針の進む音が耳に心地いい。
「その……何の御用、でしょうか?」
私の不安を隠しきれない問いかけにも、トビは変わらず平坦な声で応えた。
「お前に聞きたいことと、教えておきたいことがある。
オレがお前を怪しんだ理由を覚えているか」
────────────────────────
ソシャゲは某馬耳の女の子達がレースするやつです。
この小説の時代設定NARUTO64、5巻までしか出てない設定なのにおかしくない?と言われたら仰る通りですとしか言えないですねハハハ。ハハハじゃないが。
あと、ノック2回は公の場だとトイレの時に使うノックととられることを主人公は知りません。中学生なので仕方がないね。
喉奥からうう、と情けない呻き声が漏れ出る。ごろごろと寝返りを繰り返し打っても落ち着けそうになかった。
「マジで何。マジで何なの怖いってマジであいつマジ!!」
「マジマジうるせーな、さっさと行ってこいよ」
「は?
一緒に来てよ、妹がこんなに怖がってるんだから肉壁になってよお兄様」
「堂々と言う内容じゃなさすぎだろ」
つーか、呼び出されたのお前だけじゃん。そう付け加えられれば、ぐっと言葉に詰まる他なかった。
実際、その通りだ。
今から10分くらい前のこと。
兄さんがリビングの絨毯に転がってソシャゲ(なんかレースするやつ)をしているから、暇だった私も横から覗き込んであーだこーだと茶々を入れていた。
そんな時、突然トビが現れたのだ。あ、勿論神威は使わず扉から。
ただ、ノックも無しの入室だったせいで、私も兄さんも見事に固まってしまった。
兄さんは当然ソシャゲに夢中、私はその兄さんに絡むのに夢中と、どちらも気を抜いていた。トビが前のように気配を消して来たのかは知らないが、いずれにせよ私は気がつかなかっただろう。
シャカシャカと賑やかな音を奏でるスマホ、びっくりして床に寝そべったまま固まる私たち、それを黙って見やるトビ。
凄く(私たちにとっては)居た堪れない空気を最初に破ったのは、やはりトビだった。
「少し用がある。後でオレの部屋に来い」
彼が言いきるとほぼ同時に、ソシャゲ内のレースも決着がついたらしい。スマホから「1着は──! ──です! 中山2000m、まずは道を繋ぎました!」と興奮気味の音声と割れんばかりの歓声が溢れた。うわあマジで居た堪れないんだけど。
「……わ、私ですか?」
気が散ってしまい間抜けな返しをしてしまう。さも当然だと言いたげにああ、とだけ返答して、トビはさっさとリビングを後にしてしまった。
当然、残された私たちはぽかんとしたまま、暫く固まっていた。
とはいえ、そんなことを言われた後にじっとしているわけにもいかず。
私は慌てて立ち上がったが、やはりどうにも足が重くてまた座り込んでしまう。
それを何回か繰り返して、結局ソファーに転がり、嫌だなあともだもだしているのが、今の私だった。
「オレがついてけばそれこそ面倒なことになるだろ。
つか、わざわざ呼んで猶予くれてんだからそこまでヤバい用じゃないんじゃねーの」
「そう、だけどさあ……
でも前脅された時さあ、メンチ切られただけじゃなくて襟首掴まれたりしたんだよ……?
シンプルに怖い……またなんか怪しまれたらどうしよ……」
考えれば考えるほど怖くなってきて、自分でも驚くくらい弱った声が出た。
流石の兄さんも何か思うところがあったのか、表情を厳しいものにする。
やっぱりこいつはなんだかんだお人好しだ。トビに首を怪我させられたときも、口には出さないものの頻繁に治りを気にしてくれていたし。こんなバカな妹でも心配してくれるのは知っていた。
こいつがそういう奴だから、私は、比較されるのは嫌でもこいつを僻むことはできなかったし、こいつのことはずっと好きなままだった。
……仕方がない。
これ以上駄々を捏ねても意味がないどころか、兄さんを不安にさせてしまうみたいだし。
「じゃあ、行ってくる」
「え。急にどうした」
「いや、待たせたらもっと怖そうだし。私の悲鳴とか聞こえたらすぐ駆けつけてよね」
「オーケー、音量マックスでゲームしとくな!」
「ばーーーか!!! 死ね!!!」
普段のノリで軽口を叩き合ってから、ついに私はリビングを出た。
扉を閉めてため息を一つ。
悩んだってどうにもならない。重い足を引き摺るようにして階段を上り、トビの部屋の前に立った。
一度だけ深呼吸をする。
大丈夫だ。あいつが私に危害を加える気なら、わざわざ呼び出したりなんて手間はかけない。
「……えっと、名前です」
ノックを2回、名前を告げて返答を待つ。
息苦しいまでの静寂に息を吐き、トビの出方を只管に待った。
暫く、という間もなく、トビの「開いている」という淡白な返事が聞こえてきた。覚悟を決めてノブを捻る。
軋む音と共に失礼します、と呟いて、1歩分だけ部屋に入った。
薄暗い、斜陽のみが光源になった部屋に面食らってしまい瞠目する。
来客用の部屋はそこまでたくさんのものが置かれているわけではない。ベッド、一人がけのソファーチェア、壁掛けの時計、木製のシンプルなデスク。あとは父さんが自室に置ききれなかった本棚だけ。
明かりすらつけられていない上に、トビの私物など何一つ置かれていないこの部屋は、彼が使っていないときより殺風景に見えた。
部屋の主たるトビは、椅子に腰掛けた状態で私を見やった。
とりあえずもう一歩進んで、扉を少しだけ隙間を残して閉めた。でないと、光源がさらに絞られてしまうから。
トビが立ち上がる。近寄ってはこないため、私も動かずに大人しくしておいた。
かちこちと時計の針の進む音が耳に心地いい。
「その……何の御用、でしょうか?」
私の不安を隠しきれない問いかけにも、トビは変わらず平坦な声で応えた。
「お前に聞きたいことと、教えておきたいことがある。
オレがお前を怪しんだ理由を覚えているか」
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ソシャゲは某馬耳の女の子達がレースするやつです。
この小説の時代設定NARUTO64、5巻までしか出てない設定なのにおかしくない?と言われたら仰る通りですとしか言えないですねハハハ。ハハハじゃないが。
あと、ノック2回は公の場だとトイレの時に使うノックととられることを主人公は知りません。中学生なので仕方がないね。