1話 日常の境界
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「……歩き、すぎた……」
ガクガクと震える膝に手をつき深呼吸する。
自業自得とはいえ、まさかここまでキツいとは思ってもいなかった。
これからは家の周りをぐるぐるする程度にしよう、なんてつまらない事を考える。
私はよくある不登校というやつで、中学校には気が向いた時だけ通っている(だいたい週に1、2日行けば良いほう)。
要するに半端な引きこもりだ。
最近はそれが悪化してしまい、家から一歩も出ない日なんてままある。
結果、かなり太った。それはもう無惨に。お腹辺りを中心にぶよぶよとした脂肪が溜まりに溜まってしまい、鏡を見るたび渋い顔になってしまった。
億劫すぎて動くのすら面倒だし家の中でも何もしない、という悪循環のせいで贅肉は増えていく一方。
そのくせ普通にご飯は食べる。そりゃあ太るのも納得だろう。
10kgは増えたんじゃないかと思った時、ついに私は危機感に動かざるを得なかった。
着痩せするタイプとはいえ、これ以上は隠しきれない。
それなら学校行けという話だけど、それができたらここまで無様になってない。
手始めに家の周辺をウォーキングしようと思い立ったのが3時間前。なんだかんだ楽しくなってたらたら歩いていたら、家に戻るまでの時間を考えることをすっかり忘れてしまった。
ずっと家に引きこもっていたんだから、突然運動しても体力が持つわけないなんてわかっていたのに。
今度からは何歩歩くか、決めてから行こう。馬鹿なことをした。
予想以上に大きい数字になった万歩計を睨みつつ、胸中に手小さく愚痴った。
汗でへばりつく服が気持ち悪いし、体温を奪われてつらい。早くシャワーを浴びてしまいたい。
鉛のように重たい体に鞭を打ち、ジャージのポケットから鍵を取り出す。
いつもなら愛嬌があって気に入っているライオンのキーホルダーも、今は無様な私を嘲笑っているようでウザったいだけだった。
疲労で小刻みに震える手。中々上手く鍵穴に入らないので苛ついてしまう。
元から不器用な方なのに、これ以上下手になっても困るんだけど。ああもう、イライラする。
数回差し込む行為を繰り返し、漸く扉を開けることが出来た。
大きく溜め息を吐いてから取っ手に手をかけた。
これでまた、いつものような1日になるのだろう。そう思っていた。
ご飯の時とお風呂の時だけ部屋から出て、たまに家を訪ねてくれる教師に登校拒否して謝って、パソコンでアニメを見たりゲームで遊んだりして、たまに勉強して、両親に小言を言われて。
そんなゴミみたいな生活を繰り返していくんだと、漠然と思っていた。
けれど、そうはなってくれなかった。
どさっ。
家の中に入り、もう少しで扉を閉めるというところで、何か重たいものが落下した音が聞こえた。
一瞬猫か何かかとも思ったが、猫にしては重たすぎる音だ。
第一、猫は落ちても着地できるらしいし。
では何だろう、と思考を巡らせてみるが思い当たるものがない。それに考えるより実際に見る方が早い。
好奇心に身を任せ、扉を勢い良く開けた。
え、と口から掠れた声が漏れる。
馬鹿みたいに目を見開いているのを自覚した。
そんな間抜けな状態なのに、私は呆然とし続ける他なかった。
──そこには、私の思考レベルでは到底想像できないモノが落ちていた。
「……なんだよ、これ」
何処かで見たことのある黒地に紅い雲の描かれたマントを着た人が、倒れ伏していたのだ。
ガクガクと震える膝に手をつき深呼吸する。
自業自得とはいえ、まさかここまでキツいとは思ってもいなかった。
これからは家の周りをぐるぐるする程度にしよう、なんてつまらない事を考える。
私はよくある不登校というやつで、中学校には気が向いた時だけ通っている(だいたい週に1、2日行けば良いほう)。
要するに半端な引きこもりだ。
最近はそれが悪化してしまい、家から一歩も出ない日なんてままある。
結果、かなり太った。それはもう無惨に。お腹辺りを中心にぶよぶよとした脂肪が溜まりに溜まってしまい、鏡を見るたび渋い顔になってしまった。
億劫すぎて動くのすら面倒だし家の中でも何もしない、という悪循環のせいで贅肉は増えていく一方。
そのくせ普通にご飯は食べる。そりゃあ太るのも納得だろう。
10kgは増えたんじゃないかと思った時、ついに私は危機感に動かざるを得なかった。
着痩せするタイプとはいえ、これ以上は隠しきれない。
それなら学校行けという話だけど、それができたらここまで無様になってない。
手始めに家の周辺をウォーキングしようと思い立ったのが3時間前。なんだかんだ楽しくなってたらたら歩いていたら、家に戻るまでの時間を考えることをすっかり忘れてしまった。
ずっと家に引きこもっていたんだから、突然運動しても体力が持つわけないなんてわかっていたのに。
今度からは何歩歩くか、決めてから行こう。馬鹿なことをした。
予想以上に大きい数字になった万歩計を睨みつつ、胸中に手小さく愚痴った。
汗でへばりつく服が気持ち悪いし、体温を奪われてつらい。早くシャワーを浴びてしまいたい。
鉛のように重たい体に鞭を打ち、ジャージのポケットから鍵を取り出す。
いつもなら愛嬌があって気に入っているライオンのキーホルダーも、今は無様な私を嘲笑っているようでウザったいだけだった。
疲労で小刻みに震える手。中々上手く鍵穴に入らないので苛ついてしまう。
元から不器用な方なのに、これ以上下手になっても困るんだけど。ああもう、イライラする。
数回差し込む行為を繰り返し、漸く扉を開けることが出来た。
大きく溜め息を吐いてから取っ手に手をかけた。
これでまた、いつものような1日になるのだろう。そう思っていた。
ご飯の時とお風呂の時だけ部屋から出て、たまに家を訪ねてくれる教師に登校拒否して謝って、パソコンでアニメを見たりゲームで遊んだりして、たまに勉強して、両親に小言を言われて。
そんなゴミみたいな生活を繰り返していくんだと、漠然と思っていた。
けれど、そうはなってくれなかった。
どさっ。
家の中に入り、もう少しで扉を閉めるというところで、何か重たいものが落下した音が聞こえた。
一瞬猫か何かかとも思ったが、猫にしては重たすぎる音だ。
第一、猫は落ちても着地できるらしいし。
では何だろう、と思考を巡らせてみるが思い当たるものがない。それに考えるより実際に見る方が早い。
好奇心に身を任せ、扉を勢い良く開けた。
え、と口から掠れた声が漏れる。
馬鹿みたいに目を見開いているのを自覚した。
そんな間抜けな状態なのに、私は呆然とし続ける他なかった。
──そこには、私の思考レベルでは到底想像できないモノが落ちていた。
「……なんだよ、これ」
何処かで見たことのある黒地に紅い雲の描かれたマントを着た人が、倒れ伏していたのだ。