3話 如何にして理解を得るか
あなたの名前は?
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トビはベッドを使うことなく、壁に寄りかかって休む姿勢をとった。
いつまでも私がいれば警戒を解くこともできないだろう。
邪魔するのも良くないので、早々に部屋を出ることにした。
息も聞こえないくらいとても静かだ。でもきっとちゃんと起きているんだろうな。
何も知らない人が見れば、死んでるんじゃないかと勘違いするくらいピクリともしないが。
……もし死なれたら、死体はどうすれば良いんだろう?
まあ、そんなこと気にしても仕方がないか。というかラスボス候補にこんなところで死なれても困る。
奴を起こさないよう、細心の注意を払って静かに扉を引く。ドアノブが軋んでしまうのは仕方ないから諦めた。
とん、と聞き心地の良い音を発てて、扉は問題なく閉まった。
摺り足で階段までそろそろ向かい、出来るだけ小さい音で済むように、けれど早足で下まで一気に降りていく。
リビングにようやく辿り着くと、止まっていた呼吸が息を吹き返した。
「じ、死゛ぬ……なんだってこんなことに……」
ぜはー、なんて喘息みたいな変な音が喉から聞こえる。
涙が滲んでくる。うええ苦しい。別に息まで止める必要なかったのに。馬鹿みたい、いや馬鹿だわ。
咳き込みそうになるくらいの苦しさが徐々に解消される。
危険人物の居ないことから来る安堵の余韻に浸りたかったが、刻々と進む時間はそうもさせてくれない。
主題はトビの件をどう片付けるか。お世辞にも頭がいいとは言い難い私では、なかなか答えは見つからなかった。
未だに頭は混乱状態だ。
母さんが帰ってくる前に頭の中を整理しなくちゃ。じゃないとまともに話したりできるわけがない。
さて、どうしたものか……
~脳内親子会話~
わたし「かあさんかあさん、そらからやべーコスプレやろうがおちてきてきけんがあぶない!」
かあさん「あ、すみません、精神科ですか? 娘がおかしくなって……」
わたし「わァ……ァ……!!(号泣)」
~会話終了~
……駄目だな。まともに取り合ってもらえるわけがない。なんか最後汚いち◯かわみたいになってたし。
というかいきなり正直に話したら私が精神病院に投入される未来しか視えない。
うん、ここは真面目な声調でいこう。ふざけたりおどけたりしたら信じて貰えなさそうだし。というか私なら何を言われても信じない。
……しかし、それにしても。
「マトモに喋るのいつ以来だっけ」
ポツリと零してしまった言葉に、己の情けなさから笑いすら漏れてきた。
家族と会話すること自体に緊張するなんて、数年前は考えもしなかった。
明らかに私はあらゆる面で小学生の時より退化している。
ご飯の時さえ話したくなくて、たまにご飯抜きにしたこともあった。話しかけられても短い返事しかしなかった。
たまに思いきり叱られて、兄さんに馬鹿にされて、死にたくなるくらい自分が情けなくなって。
全部嫌になった。意気地なしで、ビビリで、減らず口だけは上手くなる私が。なのに何も変えられないから、もっと虚しくなって。
……と、そうじゃない。今はトビについての説明を考えなくちゃ。
真面目に説明するとして、どう順序立てるか。
私って論理的思考とか苦手なんだよなあ。根っからの文系タイプなのに。
……うーん。やっぱり最初は人が倒れてから助けたって言うかな。嘘をついても仕方ないし、それだけならまだ話を聞いてもらえる余地がある。
そこから、その倒れていた人が漫画のキャラでしたってどう説明するか、だよね。
…………どう足掻いてもその話に繋げる段階で躓くな。
常識人なら誰だって私がおかしくなったと断じるだろう。
──────────────────────
主人公は切り替えが早いわけではなく嫌なことから目を背けて後から滅茶苦茶悩むタイプなだけです。
いつまでも私がいれば警戒を解くこともできないだろう。
邪魔するのも良くないので、早々に部屋を出ることにした。
息も聞こえないくらいとても静かだ。でもきっとちゃんと起きているんだろうな。
何も知らない人が見れば、死んでるんじゃないかと勘違いするくらいピクリともしないが。
……もし死なれたら、死体はどうすれば良いんだろう?
まあ、そんなこと気にしても仕方がないか。というかラスボス候補にこんなところで死なれても困る。
奴を起こさないよう、細心の注意を払って静かに扉を引く。ドアノブが軋んでしまうのは仕方ないから諦めた。
とん、と聞き心地の良い音を発てて、扉は問題なく閉まった。
摺り足で階段までそろそろ向かい、出来るだけ小さい音で済むように、けれど早足で下まで一気に降りていく。
リビングにようやく辿り着くと、止まっていた呼吸が息を吹き返した。
「じ、死゛ぬ……なんだってこんなことに……」
ぜはー、なんて喘息みたいな変な音が喉から聞こえる。
涙が滲んでくる。うええ苦しい。別に息まで止める必要なかったのに。馬鹿みたい、いや馬鹿だわ。
咳き込みそうになるくらいの苦しさが徐々に解消される。
危険人物の居ないことから来る安堵の余韻に浸りたかったが、刻々と進む時間はそうもさせてくれない。
主題はトビの件をどう片付けるか。お世辞にも頭がいいとは言い難い私では、なかなか答えは見つからなかった。
未だに頭は混乱状態だ。
母さんが帰ってくる前に頭の中を整理しなくちゃ。じゃないとまともに話したりできるわけがない。
さて、どうしたものか……
~脳内親子会話~
わたし「かあさんかあさん、そらからやべーコスプレやろうがおちてきてきけんがあぶない!」
かあさん「あ、すみません、精神科ですか? 娘がおかしくなって……」
わたし「わァ……ァ……!!(号泣)」
~会話終了~
……駄目だな。まともに取り合ってもらえるわけがない。なんか最後汚いち◯かわみたいになってたし。
というかいきなり正直に話したら私が精神病院に投入される未来しか視えない。
うん、ここは真面目な声調でいこう。ふざけたりおどけたりしたら信じて貰えなさそうだし。というか私なら何を言われても信じない。
……しかし、それにしても。
「マトモに喋るのいつ以来だっけ」
ポツリと零してしまった言葉に、己の情けなさから笑いすら漏れてきた。
家族と会話すること自体に緊張するなんて、数年前は考えもしなかった。
明らかに私はあらゆる面で小学生の時より退化している。
ご飯の時さえ話したくなくて、たまにご飯抜きにしたこともあった。話しかけられても短い返事しかしなかった。
たまに思いきり叱られて、兄さんに馬鹿にされて、死にたくなるくらい自分が情けなくなって。
全部嫌になった。意気地なしで、ビビリで、減らず口だけは上手くなる私が。なのに何も変えられないから、もっと虚しくなって。
……と、そうじゃない。今はトビについての説明を考えなくちゃ。
真面目に説明するとして、どう順序立てるか。
私って論理的思考とか苦手なんだよなあ。根っからの文系タイプなのに。
……うーん。やっぱり最初は人が倒れてから助けたって言うかな。嘘をついても仕方ないし、それだけならまだ話を聞いてもらえる余地がある。
そこから、その倒れていた人が漫画のキャラでしたってどう説明するか、だよね。
…………どう足掻いてもその話に繋げる段階で躓くな。
常識人なら誰だって私がおかしくなったと断じるだろう。
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主人公は切り替えが早いわけではなく嫌なことから目を背けて後から滅茶苦茶悩むタイプなだけです。