泣き虫
あなたの名前は?
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まだ眠い、って二度寝をしたくなるのを何とか我慢する。
どうしようもないくらいまぶたは重たかったけど、それでもわたしは起きるために無理矢理目をこじ開けた。
今は、起きなきゃいけないような気がしたんだ。
眠気のせいでぼんやりした世界。目を擦ろうとしても、手はあり得ないくらい重たくって、それは叶わなかった。
頭だけを左に動かしたら、黒い髪の誰かがいる。すぐには誰か分からなかったけど、寝ぼけた頭をひねったら答えは出てきた。
「オビト、先生?」
「……もう起きたのか。具合はどうだ?」
自分の左腕をよく見れば点滴が刺してあります。いつも点滴のときはリンさんがやってくれるんだけど、今日はオビト先生がやってくれたんでしょうか。
って、今はどうでもいいんだった。オビト先生の質問に答えなきゃ。
さすがのわたしにも声を出す元気はあります。だから、ニコッて笑ってみせました。
「眠たいだけで、すっごく元気です」
「そうか。だがもし苦しくなったら、すぐ言えよ。……ちょっと待ってろ」
オビト先生はそう言い切ると点滴のパックを取り替え始めました。確かに今使っていた点滴のパックは空で、血が逆流し始めてました。見ていると血の逆流は痛そうだけど、慣れればそうでもないんです。
黙って待っていたら、オビト先生は手際よく終わらせて、また椅子に座った。
静かな空気は、嫌いじゃないけどムズムズします。だからオビト先生に話しかけることにしました。
「オビト先生」
「どうした?」
「寒いから、手を握ってください」
わたしの渾身のわがままに、オビト先生は驚いた様子だった。じいって見つめてくるから照れちゃいます。
恥ずかしさで顔が熱くなっていくから、隠すために布団を鼻先まで持ち上げた。片手でやるのは意外と大変で、もしかしたら顔が赤いのを見られたかもです。
「ど、どーしたんですかっ?」
「いや、お前がそういうことを言うとは思ってなくてな……まあ良いんだが」
布団から左手だけを出して、オビト先生に握ってもらった。
わたしよりもずっと大きな手は、お母さんやお父さんの手みたいに暖かくって、優しい手だった。
冷たかった手がゆっくり温まっていく。なんだか幸せな感じがして、また眠たくなってきた。
うとうとしていたら、びょーしつのドアが開く音が聞こえた。
細く目を開けたら、マダラ先生がいつもみたいな無表情で立っていた。「おはよーございます」って言ったら「今は夜の9時だ」とツッコまれてしまった。
オビト先生が手を離して、マダラ先生の邪魔じゃないように端の方へいってしまった。少し名残惜しく感じたけど、メーワクをかけるわけにはいかないから、黙っておいた。
マダラ先生は首にかけていた聴診器を耳にかけて、わたしの診察を始めた。
冷たい聴診器に震えちゃうのはいつものこと。出そうで出ないくしゃみにやきもきしながら、早く終わらないかなあとぼーっとした。
一通り終わって服を着ていたら、ふっと前の日に浮かんだ疑問がまたわいてきました。せっかく二人が揃ってるんだし、今聞かないと損ですよね。
話しかけようとしたら、二人はいつの間にかケンカをしそうな雰囲気でまた火花を散らしてました。
どうしたらこの短い時間でケンカできるのかが気になるけど、まあそれは「2人はケンカが好きなんだろう」ということで納得して最初の疑問を聞くことにした。
「ねえオビト先生、なんでオビト先生はマダラ先生のことをジジイってゆうんですか?マダラ先生若いし、ジジイっていうか「お父さん」の方がピッタリだと思うんだけど……」
ぶっ、とマダラ先生が吹き出しました。顔を手でおおって、ぷるぷると震えています。
何がそんなに可笑しいのか分からないけど、マダラ先生はニヤニヤしながらオビト先生を見ました。対するオビト先生は不機嫌そうにマダラ先生を睨みます。
ど、どうしよう?もしオビト先生が怒っちゃってたら……嫌われたかな?
大丈夫だといいんだけど……
「俺がお前の父だとはな……クク」
「あんたが父だなんて寒気と悪寒がする。冗談でもあり得ないな」
「安心しろ、俺もだ。お前のような反抗的なガキが息子だなんて思いたくないからな」
うーん、ホントになんでこんなに仲が悪いのかな……でもまあ、ケンカするほど仲がいいっていうし、大丈夫かぁ。
勝手に納得していれば、オビト先生が解説を始めてくれた。
「俺は訳あって、子供の頃このジジイの家に住んでいた。一応親戚ではあるが、家族ではないからな。勘違いするなよ」
「琥珀、コイツに恩を作らない方がいいぞ。住まわせてやっていたのに何の感謝もなしだからな」
代わる代わるに相手を腹立たせるような言葉を投げ掛けます。
その様子はどう見ても家族のようにしか見えなくって、ケラケラと笑ってしまうのを我慢できませんでした。
オビト先生の言う通りお父さんではないのかもだけと、きっと家族みたいな関係だってことはよく分かります。
隠さずに思いきり二人のことを笑って、ひとしきり笑い終えたわたしは。
「二人は、仲良しさんなんですねぇ」
「「どこがだ!!」」
「大声だしたらダメですよお」
ていうか、ほら。声が揃ったじゃないですか。
そう言ってしまえばまた笑いが込み上がってくるから楽しくってしかたがない。あんまり笑いすぎると咳がぶり返すかもしれないから、ほどほどに笑うだけだけどね。
二人は嫌そうにお互いを睨んでいます。
今まで「怖い」が印象だったから、それが大きく変わっていくのを感じました。
なんでわたしってばこんなに面白い人たちを怖がってたんだろう。見た目と「お医者さんは怖いもの」っていう『せんにゅうかん』のせいだよなあ。
もっと早く『せんにゅうかん』が抜けていれば、マダラ先生のことで毎回怖がったりしなくて良かったのに。
「明日リンさんに二人の面白い話話さなくちゃなあ。きっと「びょーしつで大声出すな」って怒るんだろうなあ……ふふ、楽しみで寝られないです」
ぽろっとこぼれた一言に、二人はなんでかわたしを恐ろしそうに見始めた。
むう、心外だなあ。そんな目で見られるとわたしが変な人みたいじゃないですか!
「おいジジイ、話が違うぞ。臆病な人見知りの子じゃなかったのか」
「俺だって驚いてるんだ。琥珀がここまで明るくなるのは初めてだからな。というよりリンに話されると俺たちは間違いなく叱られるぞ、どうするんだ」
「0点取ったガキみたいなこと言うなよ……明るくなったって言うか、豹変したって方がぴったりなんだが……」
もう、失礼なことばかり言っちゃって。わたしだって怒るときは怒るのにな。
二人が怖い人たちじゃないって知ったから、素直なわたしを出せる。それが何よりも嬉しくって、ワクワクしてしかたがなかった。
何はともあれ、明日からの検査が楽しくなりそうな予感がしました。
どうしようもないくらいまぶたは重たかったけど、それでもわたしは起きるために無理矢理目をこじ開けた。
今は、起きなきゃいけないような気がしたんだ。
眠気のせいでぼんやりした世界。目を擦ろうとしても、手はあり得ないくらい重たくって、それは叶わなかった。
頭だけを左に動かしたら、黒い髪の誰かがいる。すぐには誰か分からなかったけど、寝ぼけた頭をひねったら答えは出てきた。
「オビト、先生?」
「……もう起きたのか。具合はどうだ?」
自分の左腕をよく見れば点滴が刺してあります。いつも点滴のときはリンさんがやってくれるんだけど、今日はオビト先生がやってくれたんでしょうか。
って、今はどうでもいいんだった。オビト先生の質問に答えなきゃ。
さすがのわたしにも声を出す元気はあります。だから、ニコッて笑ってみせました。
「眠たいだけで、すっごく元気です」
「そうか。だがもし苦しくなったら、すぐ言えよ。……ちょっと待ってろ」
オビト先生はそう言い切ると点滴のパックを取り替え始めました。確かに今使っていた点滴のパックは空で、血が逆流し始めてました。見ていると血の逆流は痛そうだけど、慣れればそうでもないんです。
黙って待っていたら、オビト先生は手際よく終わらせて、また椅子に座った。
静かな空気は、嫌いじゃないけどムズムズします。だからオビト先生に話しかけることにしました。
「オビト先生」
「どうした?」
「寒いから、手を握ってください」
わたしの渾身のわがままに、オビト先生は驚いた様子だった。じいって見つめてくるから照れちゃいます。
恥ずかしさで顔が熱くなっていくから、隠すために布団を鼻先まで持ち上げた。片手でやるのは意外と大変で、もしかしたら顔が赤いのを見られたかもです。
「ど、どーしたんですかっ?」
「いや、お前がそういうことを言うとは思ってなくてな……まあ良いんだが」
布団から左手だけを出して、オビト先生に握ってもらった。
わたしよりもずっと大きな手は、お母さんやお父さんの手みたいに暖かくって、優しい手だった。
冷たかった手がゆっくり温まっていく。なんだか幸せな感じがして、また眠たくなってきた。
うとうとしていたら、びょーしつのドアが開く音が聞こえた。
細く目を開けたら、マダラ先生がいつもみたいな無表情で立っていた。「おはよーございます」って言ったら「今は夜の9時だ」とツッコまれてしまった。
オビト先生が手を離して、マダラ先生の邪魔じゃないように端の方へいってしまった。少し名残惜しく感じたけど、メーワクをかけるわけにはいかないから、黙っておいた。
マダラ先生は首にかけていた聴診器を耳にかけて、わたしの診察を始めた。
冷たい聴診器に震えちゃうのはいつものこと。出そうで出ないくしゃみにやきもきしながら、早く終わらないかなあとぼーっとした。
一通り終わって服を着ていたら、ふっと前の日に浮かんだ疑問がまたわいてきました。せっかく二人が揃ってるんだし、今聞かないと損ですよね。
話しかけようとしたら、二人はいつの間にかケンカをしそうな雰囲気でまた火花を散らしてました。
どうしたらこの短い時間でケンカできるのかが気になるけど、まあそれは「2人はケンカが好きなんだろう」ということで納得して最初の疑問を聞くことにした。
「ねえオビト先生、なんでオビト先生はマダラ先生のことをジジイってゆうんですか?マダラ先生若いし、ジジイっていうか「お父さん」の方がピッタリだと思うんだけど……」
ぶっ、とマダラ先生が吹き出しました。顔を手でおおって、ぷるぷると震えています。
何がそんなに可笑しいのか分からないけど、マダラ先生はニヤニヤしながらオビト先生を見ました。対するオビト先生は不機嫌そうにマダラ先生を睨みます。
ど、どうしよう?もしオビト先生が怒っちゃってたら……嫌われたかな?
大丈夫だといいんだけど……
「俺がお前の父だとはな……クク」
「あんたが父だなんて寒気と悪寒がする。冗談でもあり得ないな」
「安心しろ、俺もだ。お前のような反抗的なガキが息子だなんて思いたくないからな」
うーん、ホントになんでこんなに仲が悪いのかな……でもまあ、ケンカするほど仲がいいっていうし、大丈夫かぁ。
勝手に納得していれば、オビト先生が解説を始めてくれた。
「俺は訳あって、子供の頃このジジイの家に住んでいた。一応親戚ではあるが、家族ではないからな。勘違いするなよ」
「琥珀、コイツに恩を作らない方がいいぞ。住まわせてやっていたのに何の感謝もなしだからな」
代わる代わるに相手を腹立たせるような言葉を投げ掛けます。
その様子はどう見ても家族のようにしか見えなくって、ケラケラと笑ってしまうのを我慢できませんでした。
オビト先生の言う通りお父さんではないのかもだけと、きっと家族みたいな関係だってことはよく分かります。
隠さずに思いきり二人のことを笑って、ひとしきり笑い終えたわたしは。
「二人は、仲良しさんなんですねぇ」
「「どこがだ!!」」
「大声だしたらダメですよお」
ていうか、ほら。声が揃ったじゃないですか。
そう言ってしまえばまた笑いが込み上がってくるから楽しくってしかたがない。あんまり笑いすぎると咳がぶり返すかもしれないから、ほどほどに笑うだけだけどね。
二人は嫌そうにお互いを睨んでいます。
今まで「怖い」が印象だったから、それが大きく変わっていくのを感じました。
なんでわたしってばこんなに面白い人たちを怖がってたんだろう。見た目と「お医者さんは怖いもの」っていう『せんにゅうかん』のせいだよなあ。
もっと早く『せんにゅうかん』が抜けていれば、マダラ先生のことで毎回怖がったりしなくて良かったのに。
「明日リンさんに二人の面白い話話さなくちゃなあ。きっと「びょーしつで大声出すな」って怒るんだろうなあ……ふふ、楽しみで寝られないです」
ぽろっとこぼれた一言に、二人はなんでかわたしを恐ろしそうに見始めた。
むう、心外だなあ。そんな目で見られるとわたしが変な人みたいじゃないですか!
「おいジジイ、話が違うぞ。臆病な人見知りの子じゃなかったのか」
「俺だって驚いてるんだ。琥珀がここまで明るくなるのは初めてだからな。というよりリンに話されると俺たちは間違いなく叱られるぞ、どうするんだ」
「0点取ったガキみたいなこと言うなよ……明るくなったって言うか、豹変したって方がぴったりなんだが……」
もう、失礼なことばかり言っちゃって。わたしだって怒るときは怒るのにな。
二人が怖い人たちじゃないって知ったから、素直なわたしを出せる。それが何よりも嬉しくって、ワクワクしてしかたがなかった。
何はともあれ、明日からの検査が楽しくなりそうな予感がしました。