泣き虫
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オビト先生とのしっちゃかめっちゃかな出会いから、1日が経ちました。
お昼過ぎ、わたしとリンさんは一緒にいた。
っていうか、リンさんがわたしのびょーしつに来てくれたんだけどね。
「あやまる、あやまる、オビト先生にあやまる……」
言い聞かせるつもりで何回も言ってたら、リンさんがクスクス笑い出しました。
どうしたのかなって思って見上げた。そしたら、リンさんは何でか謝ってくれたんです。
「ふふ、ごめんね。偉いなあって思っちゃって」
「え?何でわたしが偉いの?」
「だってオビトに謝ろうとしてるじゃない。琥珀くらいの子は、普通は恥ずかしがって出来ないよ?」
「悪いことしたら、謝りなさいってお母さんに言われたもん!」
えっへん!ってベッドの上で胸を張ってみせたら、リンさんは頭を撫でてくれた。
リンさんの手はお日様みたいにぽかぽかしてて、柔らかいから大好きです。
あっ!もちろんお母さんの硬くってあったかい手も大好き!お父さんの大きい優しい手もね!
でも、リンさんは特別。
家族以外でこんなに好きなのはリンさんくらいです。
嬉しかったのでそのままにされてたら、びょーしつのドアが開く音がした。
誰かのお見舞いかなって思ったけど、その人の足音は真っ直ぐこっちにやってきた。
不安になってリンさんを見上げたら、リンさんは困った顔をして微笑んだ。
カーテンが開けられて、入ってきたのはマダラ先生だった。
あ、それだけじゃない。オビトさんも一緒に来てたみたい。
マダラ先生は昨日のことなんか気にもした様子はなく、いつもの無表情。
そういうところはスゴいなー、って思います。マダラ先生みたいな人のことを『むしんけい』って言うんだったっけ。
マダラ先生とリンさんが、難しいお話をし始めた。喘息がどーのこーのいってます。
暇になっちゃったからぼんやりとしていたら、オビト先生と目が合った。
本当は笑いかけたかったけど……オビト先生、ごめんなさい。昨日のことを怒られるような気がして、怖くなって目を逸らしちゃいました。
しばらくして見上げてみたら、オビト先生は目元をぴくぴく引き攣らせて、顔を強ばらせてしまいました。
ごめんなさい!悪気はない、いやもちろんわざと逸らしたんだけど、そこまで怒るとは思ってなかったんです!ごめんなさい!
申し訳なさやら恐怖心やらで、わたしはあわあわと心の中でパニックを起こしてしまう。
どうしようと上を見上げれば、リンさんとマダラ先生が変なことに気がついた。
リンさんは若干呆れたようにマダラ先生を見てため息をついています。
マダラ先生はというと、それはもう楽しそうに喉をくつくつ鳴らしていました。性格悪そうに見えます。
オビト先生も気がついたようで、とっても怖い顔でマダラ先生を睨んだ。ただでさえ怖いのに、そんな顔をされると意識が飛んでしまいそう……。
「てめえジジイ……!」
「そう怒るな。琥珀が怖がっているぞ」
「!!……ッチ」
心底苛立っているらしいけど、オビト先生はわたしをチラッと見てから気まずそうに視線を遠くにしてしまいました。
だ、ダメだ……!キチンと謝らなくっちゃ!
きっと今言わなかったら、いつまでも言えないままだ!絶対に、今、やらないといけないんだ!
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせるために深呼吸を一回した。胸に手を当てて目を閉じる。すーはーすーはー繰り返していれば、なんだか力が湧いてきた。
うん、わたしならできる!
逃げないで、ちゃんとオビト先生と仲直りするんだ!
「あのっ、オビト先生!」
マダラ先生とにらみ合っていたオビト先生が、目を大きく見開いてこっちを見る。
それはマダラ先生もおんなじで、リンさんだけが「がんばれ」と言いたげに笑っていました。
わたしは背筋を伸ばして、まっすぐにオビト先生を見つめる。目をそらしたくなる気持ちを叱って、わたしは勢いよく頭を下げた。
「昨日はごめんなさい!わたし、何でもすぐ怖がっちゃって……そのせいで、オビト先生にメーワク、かけちゃって」
自分に怒りたくなるくらい、わたしはゆっくりと喋った。目から溢れてくる涙が、上手に話させてくれなかったんだ。
どうして泣いちゃうんだろう。どうしたら泣かずにいられるんだろう。
いつも考えてたけど、答えはいつまで経っても見つからなかった。
母さんに「琥珀は普通の人よりちょっとだけ『るいせん』がゆるいんだよ。少しずつ直していけばいいから、気にしなくていいんだよ」って慰めてもらうのは、嬉しかったけど申し訳なくもあった。
みんなにうっとうしいって思われてないかな?面倒な子供って思われてないかな?
そんな不安な気持ちは日に日に大きくなっていって、どうにかしなくちゃって、いつも思ってたんだ。
頭を下げたまま、ぎゅっと目をつむった。
「やな思いをさせちゃって、ごめんなさい……もうメーワクをかけないように、頑張るからっ……許してください……」
また、嫌がられていないかな?
許してくれないかな?
下を見ているからオビト先生の様子はわかんない。
見たいって思えない。もし「許さない」って言われたら……怖くって、オビト先生の顔を見れなかった。
真っ白な、シミ1つないお布団にポタポタ涙が落ちていく。
鼻水がたれてきそうだったから鼻を啜ったら、ぽんぽんと頭に二回手を置かれた。驚いちゃって、目を開けるのと一緒に顔も上げちゃいました。
わたしの目の前には、困ったように眉を八の字にしたオビト先生がいた。
ベッドの横でしゃがんでわたしと目を合わせている。そして、何回も優しくわたしの頭を撫でてくれた。
ぽかんとしていると、オビト先生はわたしを撫でたまま照れたように微笑みました。胸の奥がぽわぽわ暖まっていくのを感じます。
「その、なんだ……気にするな」
言いずらそうに目を逸らしてしまいましたが、それでも安心できるような優しい声でした。
照れくさそうな表情のお陰で、今までの恐怖感とか申し訳なさとかは消えていった。そのくらい、思いやりに溢れていたからです。
「でも……わたし、オビト先生にメーワクを」
「おい琥珀、俺には何も言わないのか」
「先生、空気読んでください」
ふざけたことを言ったマダラ先生をリンさんが笑顔で切り捨てる。なんとも言えない顔で沈黙してしまったマダラ先生をスルーして、オビト先生はまた笑ってくれた。
「俺は迷惑だなんて感じなかった。だから、気にしなくていい」
その一言で──その一言のお陰で、わたしは救われた。
みんなにナイショで持っていた「メーワクがられていないか」という不安が、とけて消えていくのを感じた。
やっと止まった涙がまた零れそうになる。下唇を強く噛んで、なんとか堪えた。
嬉しくって泣くなんていつ以来だろう。それはもう分からないけど、この涙は嬉しいことからくるものだって、すぐに分かった。
「ぅあ……ありがと、先生ぇ……!」
小さな声で、途切れ途切れになってしまって。それでもオビト先生はわかっているって言いたそうに、優しく微笑むんだ。
それがまた嬉しくって、どうしようもないくらい必死に泣くのを我慢する。
わたしは、少しくらい成長できたかな?
そして、それはまた突然起こった。
「ッ!?ごほ、けほっ、ごほっ」
いきなり胸が苦しくなってきて、咳が止まらなくなっちゃった。
……ううん。さっきは『突然』とか『いきなり』とか思ったけど、起こるかもって思ってた。
お薬の効きが悪いことが、最近ごくたまにあるんです。そういう体質なのかもだけど、こういう「こーふん」した状態だと発作が起こりやすくなるって、最近勘で気がついた。
いつもはできるだけ「こーふん」しないように、泣いてもお水とかを飲んで落ち着くんだけど……今日は、お喋りしながらだったからできなかった。
早速リンさんがわたしの背中を擦りながら、何回も声をかけてくれる。
「琥珀、ゆっく──いいから息を吸──。ゆっくり──らね?」
「──室に運ぶぞ。オビト、さっさと──」
マダラ先生の声も聞こえたけど、二人とも咳のせいでなんて言っているのか分からない。
言葉にできないような苦しさの中で、だんだんと意識がぼんやりとしていく。
最後に目に入ったのは、オビト先生の緊張したような顔だった。
お昼過ぎ、わたしとリンさんは一緒にいた。
っていうか、リンさんがわたしのびょーしつに来てくれたんだけどね。
「あやまる、あやまる、オビト先生にあやまる……」
言い聞かせるつもりで何回も言ってたら、リンさんがクスクス笑い出しました。
どうしたのかなって思って見上げた。そしたら、リンさんは何でか謝ってくれたんです。
「ふふ、ごめんね。偉いなあって思っちゃって」
「え?何でわたしが偉いの?」
「だってオビトに謝ろうとしてるじゃない。琥珀くらいの子は、普通は恥ずかしがって出来ないよ?」
「悪いことしたら、謝りなさいってお母さんに言われたもん!」
えっへん!ってベッドの上で胸を張ってみせたら、リンさんは頭を撫でてくれた。
リンさんの手はお日様みたいにぽかぽかしてて、柔らかいから大好きです。
あっ!もちろんお母さんの硬くってあったかい手も大好き!お父さんの大きい優しい手もね!
でも、リンさんは特別。
家族以外でこんなに好きなのはリンさんくらいです。
嬉しかったのでそのままにされてたら、びょーしつのドアが開く音がした。
誰かのお見舞いかなって思ったけど、その人の足音は真っ直ぐこっちにやってきた。
不安になってリンさんを見上げたら、リンさんは困った顔をして微笑んだ。
カーテンが開けられて、入ってきたのはマダラ先生だった。
あ、それだけじゃない。オビトさんも一緒に来てたみたい。
マダラ先生は昨日のことなんか気にもした様子はなく、いつもの無表情。
そういうところはスゴいなー、って思います。マダラ先生みたいな人のことを『むしんけい』って言うんだったっけ。
マダラ先生とリンさんが、難しいお話をし始めた。喘息がどーのこーのいってます。
暇になっちゃったからぼんやりとしていたら、オビト先生と目が合った。
本当は笑いかけたかったけど……オビト先生、ごめんなさい。昨日のことを怒られるような気がして、怖くなって目を逸らしちゃいました。
しばらくして見上げてみたら、オビト先生は目元をぴくぴく引き攣らせて、顔を強ばらせてしまいました。
ごめんなさい!悪気はない、いやもちろんわざと逸らしたんだけど、そこまで怒るとは思ってなかったんです!ごめんなさい!
申し訳なさやら恐怖心やらで、わたしはあわあわと心の中でパニックを起こしてしまう。
どうしようと上を見上げれば、リンさんとマダラ先生が変なことに気がついた。
リンさんは若干呆れたようにマダラ先生を見てため息をついています。
マダラ先生はというと、それはもう楽しそうに喉をくつくつ鳴らしていました。性格悪そうに見えます。
オビト先生も気がついたようで、とっても怖い顔でマダラ先生を睨んだ。ただでさえ怖いのに、そんな顔をされると意識が飛んでしまいそう……。
「てめえジジイ……!」
「そう怒るな。琥珀が怖がっているぞ」
「!!……ッチ」
心底苛立っているらしいけど、オビト先生はわたしをチラッと見てから気まずそうに視線を遠くにしてしまいました。
だ、ダメだ……!キチンと謝らなくっちゃ!
きっと今言わなかったら、いつまでも言えないままだ!絶対に、今、やらないといけないんだ!
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせるために深呼吸を一回した。胸に手を当てて目を閉じる。すーはーすーはー繰り返していれば、なんだか力が湧いてきた。
うん、わたしならできる!
逃げないで、ちゃんとオビト先生と仲直りするんだ!
「あのっ、オビト先生!」
マダラ先生とにらみ合っていたオビト先生が、目を大きく見開いてこっちを見る。
それはマダラ先生もおんなじで、リンさんだけが「がんばれ」と言いたげに笑っていました。
わたしは背筋を伸ばして、まっすぐにオビト先生を見つめる。目をそらしたくなる気持ちを叱って、わたしは勢いよく頭を下げた。
「昨日はごめんなさい!わたし、何でもすぐ怖がっちゃって……そのせいで、オビト先生にメーワク、かけちゃって」
自分に怒りたくなるくらい、わたしはゆっくりと喋った。目から溢れてくる涙が、上手に話させてくれなかったんだ。
どうして泣いちゃうんだろう。どうしたら泣かずにいられるんだろう。
いつも考えてたけど、答えはいつまで経っても見つからなかった。
母さんに「琥珀は普通の人よりちょっとだけ『るいせん』がゆるいんだよ。少しずつ直していけばいいから、気にしなくていいんだよ」って慰めてもらうのは、嬉しかったけど申し訳なくもあった。
みんなにうっとうしいって思われてないかな?面倒な子供って思われてないかな?
そんな不安な気持ちは日に日に大きくなっていって、どうにかしなくちゃって、いつも思ってたんだ。
頭を下げたまま、ぎゅっと目をつむった。
「やな思いをさせちゃって、ごめんなさい……もうメーワクをかけないように、頑張るからっ……許してください……」
また、嫌がられていないかな?
許してくれないかな?
下を見ているからオビト先生の様子はわかんない。
見たいって思えない。もし「許さない」って言われたら……怖くって、オビト先生の顔を見れなかった。
真っ白な、シミ1つないお布団にポタポタ涙が落ちていく。
鼻水がたれてきそうだったから鼻を啜ったら、ぽんぽんと頭に二回手を置かれた。驚いちゃって、目を開けるのと一緒に顔も上げちゃいました。
わたしの目の前には、困ったように眉を八の字にしたオビト先生がいた。
ベッドの横でしゃがんでわたしと目を合わせている。そして、何回も優しくわたしの頭を撫でてくれた。
ぽかんとしていると、オビト先生はわたしを撫でたまま照れたように微笑みました。胸の奥がぽわぽわ暖まっていくのを感じます。
「その、なんだ……気にするな」
言いずらそうに目を逸らしてしまいましたが、それでも安心できるような優しい声でした。
照れくさそうな表情のお陰で、今までの恐怖感とか申し訳なさとかは消えていった。そのくらい、思いやりに溢れていたからです。
「でも……わたし、オビト先生にメーワクを」
「おい琥珀、俺には何も言わないのか」
「先生、空気読んでください」
ふざけたことを言ったマダラ先生をリンさんが笑顔で切り捨てる。なんとも言えない顔で沈黙してしまったマダラ先生をスルーして、オビト先生はまた笑ってくれた。
「俺は迷惑だなんて感じなかった。だから、気にしなくていい」
その一言で──その一言のお陰で、わたしは救われた。
みんなにナイショで持っていた「メーワクがられていないか」という不安が、とけて消えていくのを感じた。
やっと止まった涙がまた零れそうになる。下唇を強く噛んで、なんとか堪えた。
嬉しくって泣くなんていつ以来だろう。それはもう分からないけど、この涙は嬉しいことからくるものだって、すぐに分かった。
「ぅあ……ありがと、先生ぇ……!」
小さな声で、途切れ途切れになってしまって。それでもオビト先生はわかっているって言いたそうに、優しく微笑むんだ。
それがまた嬉しくって、どうしようもないくらい必死に泣くのを我慢する。
わたしは、少しくらい成長できたかな?
そして、それはまた突然起こった。
「ッ!?ごほ、けほっ、ごほっ」
いきなり胸が苦しくなってきて、咳が止まらなくなっちゃった。
……ううん。さっきは『突然』とか『いきなり』とか思ったけど、起こるかもって思ってた。
お薬の効きが悪いことが、最近ごくたまにあるんです。そういう体質なのかもだけど、こういう「こーふん」した状態だと発作が起こりやすくなるって、最近勘で気がついた。
いつもはできるだけ「こーふん」しないように、泣いてもお水とかを飲んで落ち着くんだけど……今日は、お喋りしながらだったからできなかった。
早速リンさんがわたしの背中を擦りながら、何回も声をかけてくれる。
「琥珀、ゆっく──いいから息を吸──。ゆっくり──らね?」
「──室に運ぶぞ。オビト、さっさと──」
マダラ先生の声も聞こえたけど、二人とも咳のせいでなんて言っているのか分からない。
言葉にできないような苦しさの中で、だんだんと意識がぼんやりとしていく。
最後に目に入ったのは、オビト先生の緊張したような顔だった。