チョコレート
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「……どうしたものか」
誰もいない更衣室で、ぼそりと呟く。
憂鬱そうに嘆息するのは、普段の彼とは似つかない表情をしたオビトだった。
琥珀は見つかった後、ナースに連行(こう表現すると極悪人のようだが)されて治療をしたらしい。 今回はオビトが見る必要もない簡単な注射だけだったので、別れてからは何も知らない。
しかしどうしても、別れ際の琥珀の表情が頭に張り付いて離れなかった。
全部諦めてしまったように、ただ景色を映しているだけの悲しい目。少しだけ上げられていた口角も、どこか物悲しさしか感じなかった。
昔は、治療を嫌がっていても明るい表情の多かった琥珀。彼女が幼い頃から見てきたが、ここ最近は沈鬱な顔しか見 ていない。
どうしたら彼女は希望をもってくれるだろうか。彼女には、悲しい表情は似合わないのだ。できることならば、笑顔でいてほしい。
……入れ込みすぎだ、と同僚の医師に指摘されたこともある。
『お前があの子の事を大事に思ってんのは分かるけど、線引きしなきゃ駄目でしょーよ。仕事中にミスしてクビになるお前なんて、俺は見たくないよ』
ふざけた調子の同僚だったが、本気で言っていることは伝わった。 顔の半分をマスクで隠しているというのに、同僚の目付きだけで真剣さが伝わるのだ。
実際、琥珀のことが気になりぼーっとしてしまうことも多くなっていた。いけないとは分かっているのだが、どうしても意識が彼女へと吸い寄せられるのだ。
「何やってるんだろうな、俺は……」
患者は琥珀だけではないのに。どうして彼女のこととなると、こうも悩んでしまうのだろう。
昔から妹のように可愛がっていた琥珀だからだろうか。いや、最近はそれだけではないような気もするのだ。
暗い表情の中で時折見せる、昔の天真爛漫な笑顔。琥珀に内緒で見に行った演劇でそれを見たとき、つい見惚れてし まった。
いつの間にか成長していた彼女は、そう、新鮮だった。
新鮮だっただけだ。決してやましいことなんて考えてはいない。考えてはいけない。
あくまで琥珀は妹のような存在なのだ。十は離れているというのに、恋愛の情が湧くわけがない。湧いていたら、自分は……ただの変態ではないか。
「あいつもかなり大人っぽく……じゃない!大きくなっただった!」
あははと誰かに言い訳するように独り言を続けるオビト。誰もいない更衣室とはいえ、一人ぶつぶつ呟いている様子はかなり 怪しかった。
違う、ただ自分は琥珀が心配なだけだ。医者としてそう思っているだけなのだ。だかりこそこうして琥珀が笑ってくれるように模索しているのだ。
本当に、それだけだ。
誰もいない更衣室で、ぼそりと呟く。
憂鬱そうに嘆息するのは、普段の彼とは似つかない表情をしたオビトだった。
琥珀は見つかった後、ナースに連行(こう表現すると極悪人のようだが)されて治療をしたらしい。 今回はオビトが見る必要もない簡単な注射だけだったので、別れてからは何も知らない。
しかしどうしても、別れ際の琥珀の表情が頭に張り付いて離れなかった。
全部諦めてしまったように、ただ景色を映しているだけの悲しい目。少しだけ上げられていた口角も、どこか物悲しさしか感じなかった。
昔は、治療を嫌がっていても明るい表情の多かった琥珀。彼女が幼い頃から見てきたが、ここ最近は沈鬱な顔しか見 ていない。
どうしたら彼女は希望をもってくれるだろうか。彼女には、悲しい表情は似合わないのだ。できることならば、笑顔でいてほしい。
……入れ込みすぎだ、と同僚の医師に指摘されたこともある。
『お前があの子の事を大事に思ってんのは分かるけど、線引きしなきゃ駄目でしょーよ。仕事中にミスしてクビになるお前なんて、俺は見たくないよ』
ふざけた調子の同僚だったが、本気で言っていることは伝わった。 顔の半分をマスクで隠しているというのに、同僚の目付きだけで真剣さが伝わるのだ。
実際、琥珀のことが気になりぼーっとしてしまうことも多くなっていた。いけないとは分かっているのだが、どうしても意識が彼女へと吸い寄せられるのだ。
「何やってるんだろうな、俺は……」
患者は琥珀だけではないのに。どうして彼女のこととなると、こうも悩んでしまうのだろう。
昔から妹のように可愛がっていた琥珀だからだろうか。いや、最近はそれだけではないような気もするのだ。
暗い表情の中で時折見せる、昔の天真爛漫な笑顔。琥珀に内緒で見に行った演劇でそれを見たとき、つい見惚れてし まった。
いつの間にか成長していた彼女は、そう、新鮮だった。
新鮮だっただけだ。決してやましいことなんて考えてはいない。考えてはいけない。
あくまで琥珀は妹のような存在なのだ。十は離れているというのに、恋愛の情が湧くわけがない。湧いていたら、自分は……ただの変態ではないか。
「あいつもかなり大人っぽく……じゃない!大きくなっただった!」
あははと誰かに言い訳するように独り言を続けるオビト。誰もいない更衣室とはいえ、一人ぶつぶつ呟いている様子はかなり 怪しかった。
違う、ただ自分は琥珀が心配なだけだ。医者としてそう思っているだけなのだ。だかりこそこうして琥珀が笑ってくれるように模索しているのだ。
本当に、それだけだ。