きみは宇宙人
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからは自然と澪と話す機会が増えていった。
昼休みに教室の前で出くわしたり、下駄箱前でばったり会ったり。
大した話はしないのに、何故か妙に気が合う奴。
どれも偶然だったはずなのに回数が重なると必然のように思えてくるのは、めずらしく他人が気になっているからだろうか。
「窪谷須しってる?このバンド解散するらしいよ」
「マジでか、悲しいな。2曲しか知らねーけど」
中庭のベンチで二人並んで座りながら、プレイリストを見せてくる澪はしゅんとした表情になる。
どちらかと言えば無表情な部類ではあるが、ここ数ヶ月で澪の表情の機微が分かるようになってきた事が僅かに嬉しいと思うのがどうにもむず痒い。
二人の話題は別になんでもよかった。
好きな教科とか、どうでもいい教師の愚痴とか。
ときには音楽の話になって互いに知ってる曲を口ずさんだりする時間が何気なくて楽しいのだ。
「澪意外と良い音楽趣味だよな」
「そうだよ。僕はセンスが良いんだ」
「だな」
「窪谷須も素敵なセンスを持ってるかもね」
「そぉか?」
「僕と友達になるなんて、センスがいいよ」
「おー、自分で言うのかよ」
亜蓮は小っ恥ずかしくなりなんとなく視線を逸らす。
数ヶ月一緒にいて気が付いた事だが、澪は妙に自信高い男だった。
亜蓮自体は格段にネガティブな気質ではないが、行ききった自身は妙に清々しくて亜蓮はそこに感心していたのだ。
それなのに嫌味のない澪との会話はどこまでも自然で心地が良いのだ。
「そういえば、この間本屋でで窪谷須見たよ」
「本屋ぁ?…あーあれか、瞬といた時だわ」
「しゅん?」
「おー。ダチの参考書買いに行くの付き合ってた」
「いいな」
「え?参考書が?」
妙に会話が噛み合わなくなり携帯から澪に視線を向けると、下唇を噛んでムスッとした表情をしている。
瞬も拗ねた時にこんな表情をしていたとふと思い立つ。
今時のパンピーはこんなあざとい表情を当たり前にするのかと、燃堂や自分で想像したところで気分が悪くなりやめた。
思考を追いやり澪の膨らんだ頬を掴むと大きな目で睨んでくる。
リスみたいだなと笑っていると、澪は不機嫌そうに答えた。
「ずるい」
「何スネてんだよ」
「名前、いいな」
「あ?名前?」
頬を膨らましたまま人差し指を亜蓮の鼻にぐりぐりと押し付けてくる。
こちらも燃堂がやってきたらと考えるとゾッとして殴りたくなったが、澪だと妙に様になっているのは顔が整っているからだろうか。
「名前呼びずるい。いいな」
「名前?あ、俺の?」
「うん」
「かわいーな」
男に可愛いという言葉は相応しいのかと後から後悔したが、自然と声に出た。
可愛いと言われる事は不服なのか、澪は更に頬を膨らませてしまう。
「なんか、友達って感じで羨ましい」
「澪もダチだろ?」
「……うん」
「じゃあ亜蓮って呼んでみ」
「……あれん?」
「…おー」
気恥ずかしくなり軽く掴んでいた頬の空気を抜くようにギュッと力を入れる。
空気が抜けた頬は柔らかくて、今度は唇を突き出す形になった。
―キスしやすそうだな。
そう思ったタイミングで我に帰り慌てて手を離す。
「いたい」と言いながら頬をさする澪に不覚にも可愛いと思ってしまった自分に動揺が隠しきれなかった。
「亜蓮?」
「ん!?いや、どうした?」
「…大丈夫?」
「ダイジョブ」
何となく申し訳なくなり目を逸らす。
不審に思った澪は容赦なく亜蓮の目の前に乗り出してきた。
「具合悪い?」
「全然、ヨユー」
「そっか」
「おー」
昼下がりの午後、中庭のベンチで澪を照らす太陽の光が妙にキラキラ輝いて見えたのは、気のせいだろうか。
