きみは宇宙人
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
教室に戻り次の授業が終わっても、亜蓮はなんとなくその妙な男の顔が思い出せた。
隣のクラス。多分廊下ですれ違った事のある奴。名前までは知らない。
あまりにもその男の事が気になるので、隣のクラスにカチ込んでやるかと授業中に考えていたが、図らずして再び出会うことになった。
放課後、校舎裏の通路からにゅっと現れたその男の方から声をかけられる。
「さっき、見てたよね」
不意を突かれて亜蓮は足を止めた。
声には皮肉も攻撃性もないが、勝手に観察していた手前居心地が悪い。
いざとなれば拳で解決できるが、相手は無表情で何を考えているかわからない不気味な奴だ。
どう返答していいかわからず黙って睨みつけていると、再びこちらに向かってまっすぐに言葉が発される。
「そんなに変だった?」
「変」とは恐らくあのフォームの事だろう。
本人に変な自覚はあるのかと妙に納得してしまう。
亜蓮は立ち止まったまましばらく考えてから、ゆっくりと言葉を返していく。
「走り方の事ならまあ……変っちゃ変だったな」
「やっぱし」
男は大きく息をつく。
相変わらず無表情で何を考えているかがわからないが、笑っている訳でも落ち込んでいる訳でもなさそうだ。
ただ「そうか」という納得だけを口元に浮かべている。
「先生にも言われたんだ。“お前の走り方は誰も理解ができない”って」
「…だいぶキてんな」
「うん、自分でもそう思う」
見ていても話していてもに印象に残る人物だった。
よく見れば小綺麗な顔をしていて、感情が乗らないその表情や声のトーンも話し方も、なにか「合っていない」感じがある。
でもその違和感は不思議と不快じゃないので、これまた妙な感覚を覚えた。
「走るって愚かだと思わない?」
「あ?」
「ドMの競技」
「おー…」
「あー」とか「おー」とか、そんな言葉しか出てこない自分が馬鹿らしくなり、亜蓮は男の肩を軽くポンと叩く。
「まー変だったけど、悪くはなかったんじゃねえか?」
普通に嘘だ。
だが初対面の人間に対してアドバイスをするのも変だと思い、亜蓮なりに精一杯気を使ったつもりだった。
その言葉に男は僅かに目を見開いた後、息を抜くように少しだけ微笑む。
「ああ、コイツ笑うのか」と亜蓮は頭の隅で妙に安堵感を覚えた。
「別に気にしてないんだけどね。ありがとう」
「……おー、頑張れよ」
──なんなんだ、こいつ。
初対面のはずなのにやけに気になる変な男。
亜蓮は名を尋ねる事なくもう一度肩を軽く叩いてその場を離れる。
すれ違いざまに見えたその男の表情は、さっきよりも微笑んでいた気がした。
