きみは宇宙人
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英語の授業が始まる合図が鳴る少し前に亜蓮は席を立った。
同じクラスの友人達は窓際でバカ話をして騒いでいる。
町内一のラーメン屋はあの店だとか、可愛いバイトがいる所なんだとか本当にくだらない話。
彼らの話に呆れつつも片目で笑いながらそっと教室を出るが、真剣な友人達は気が付きもしなかった。
誰にも気付かれないのは少し悲しいが、授業をサボるにはちょうど良い。
授業をサボる事に特に理由はなかった。
教室にいるのが少し面倒になっただけ。ただそんな理由。
廊下を抜けて1階へ下ると、ちょうど授業開始のチャイムが鳴った。
古いスピーカー特有のガビガビなチャイム音が学校中に響き渡る。
「だりー」
ズボンのポケットに手を突っ込みながらのろのろと歩いていると、ふとグラウンドから聞こえる声が気になった。
ちょうど渡り廊下の真ん中に差し掛かったあたりだ。
大きな窓から見えるグラウンドでは、隣のクラスが体育の授業を受けている。
ダルそうな態度で男子たちがグラウンドを走っており、めんどくさいながらもしっかりと授業に参加している同級生達は偉いもんだと妙に関心する。
窓枠に寄りかかりながら同級生達に心の中で拍手を送っていると、何気なく見ていた視線の先に妙に目立つ動きがひとつあった。
「んだ、アイツ」
──変な走り方。
手足のバランスがぐにゃぐにゃで、フォームもばらばら。
明らかに周囲の流れに乗れていない。
でも別にふざけてる風でもない。
むしろ本気っぽいのに結果だけがずれているような。そんな走り方。
亜蓮は初めてみるその動きを何となくボーッと見つめる。
本人は真面目なのか、それとも不器用なのか判断がつかない。
ただその「ずれている感じ」が妙に印象に残る走り方だった。
妙なフォームで走る男の髪は追い風に揺れていて、足元はどこか覚束ない。
走っているというより漂っているような印象すらある。
──なんだあれ。ふざけてんのか?
亜蓮はどうしても気になりその男を目で追った。
渡り廊下に近いコーナーに沿って走ってくる。
段々とこちらに近付いてきた男はすれ違う刹那、走りながらもふとこちらに目を向けた。
一瞬、目が合った。ような気がした。
瞬間的なその一瞬が、妙に長く感じられる。
目が合ったことに相手が気付いたのかどうかはわからない。
ただその後も先生に文句を言われながら何周も走っていて、亜蓮はしばらくその男から目が離せなかった。
「変な野郎だぜ」
ずっと1人の男を観察している自分が馬鹿らしくなり、亜蓮はほんの少しだけ口角を上げる。
ふざけて走っているように見えるのになぜか苛立たない妙な男。
むしろあの無駄の多い動きがどこか妙に頭から離れなかった。
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