短編
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ふぁーっとひとつ、大きなあくび。
その音につられて隣の白髪男もあくびを漏らす。
何の変哲もない、日曜日の午後。
微睡みの中で笑いがこぼれた。
「何笑ってんの」
「んー……平和だなぁって思って」
「そーだな」
んーっと唇を尖らせた銀時の瞳の中を覗けば、そこにはどこまでも穏やかな表情の自分が映っている。
そのままちゅ、と静かに唇を重ねた。
「そういえばさ、銀時。こないだ上司からケーキバイキングのチケットもらった」
「え、マジ?」
「マジ。行きたい?」
「……まあ、澪クンがどうしてもって言うなら?銀さん、付き合ってあげてもいいけど?仕方なくだからな。今回だけな」
そっぽを向いておきながら、視線だけはこちらをちらちら。
たぶん、というか間違いなく、行きたくて仕方ないんだろう。
その素直じゃないところが可愛くて、ちょっと意地悪したくなる。
「えー? 行きたくないならいいよ。無理やりはアレだし、誰か別の友達誘おっかな。沖田くんとか」
「え?ちょ、待て待て。澪、最近俺とデートしてなくね?次の日曜、空いてる?二人で行っちゃう?」
「ぷっ……やっぱ行きたいんじゃん」
「うるせぇな。ツンデレなんだよ。この世の男はみんな好きだろ?ツンデレ」
「それ自分で言うやつじゃないから」
俺の笑い声に、銀時は軽く膝を叩いて返してくる。
流れるような手つきでそのまま机の上から飴を取り、器用に袋を破って口に放り込んだ。
ふわりと広がるのは、いつものいちごの香り。
「澪、ちゅーしよ」
「うん」
ほんの少し乾いた唇が触れた。
柔らかなキスを重ねるたびに、甘い香りが鼻を抜ける。
やがて、ほんの少し角度を変えた口づけに、苺味の舌がそっと忍び込む。
ちゅ、ちゅっ……とリップ音が静かな部屋に浮かび上がる。
こうして今日も、幸せな時間が静かに過ぎていく。
自称ツンデレな彼が、俺の日常で、俺の全て。
「……っ、はぁ……」
「かわい」
「可愛くないよ」
「かわいーんだよ、おめェは」
へらりと笑う銀時はまた飴の袋を開ける。
――あんまり食べると太るから、あとで没収してやるつもりだ。
「来週、バイキング行こうね」
「おう。楽しみにしとけ」
「楽しみなのは銀時でしょ」
「そーでーす」
ほんと、いつも素直じゃないんだから。
