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半妖の夜叉姫【理とわ】

紹介したい人【理とわ】


わたしは緊張しながら、息を吐く。
せつなは退治屋の仕事で今はいない。せつなに知られるのは親に知られるより恥ずかしいから今がチャンスなんだ。
目の前にはりんママと殺生丸パパがいる。
と言っても、目の前に正座して、わたしが何か言うのを待ってくれてるのは、りんママだけなんだけど。居心地が悪いのか、殺生丸パパは部屋の入口付近で全体が見える位置に立っている。
「それで、話したいことって何なのかな?」
「あ、えーと…その、明日!紹介したい人がいるんだ…!」
うあぁ…ものすごく恥ずかしい!
決心と勢いだけはあったのに、いざ言うとなると恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
「紹介したい人?それってもしかして…!ふふ…楽しみにしてるね。殺生丸様もちゃんとその日は家にいてね!」
「…くだらん」
「あぁ!またそんなこと言って!絶対だよ」
しまいには無言で背を向け出ていってしまった。
あれ…?興味なかったのかな。
いまだに父への接し方がよく分からない。りんママにはちゃんと愛情を見せてるみたいだけど…。
「とわ。おっとぉは明日ちゃんと居るよ」
「えぇ!?そうなの!?無視されたと…」
「愛情表現が少し分かりずらいだけよ。楽しみにしてるね」
「う、うん」
そうなんだ?わたしには分からなかったけど…二人ともに聞いてもらえる!気合いを入れなくちゃ!
「わたしちょっとその人のとこに行ってくるよ!」
「行ってらっしゃい」
心臓がドキドキしている。わたし達のことを両親はなんて言うだろうか。いや、否定はされないかな。優しい人たちだから。
家から少し離れた場所で立ち止まる。
「理玖!」
呼べば理玖は来てくれる。何故かそんな気がするんだ。近くに居なくても理玖はいつも見守ってくれてるような気がするんだ。
「とわ様」
高いところから声が降ってきて見上げる。木の太めの枝の上に理玖が立っていた。
相変わらず神出鬼没というか、思った場所には現れないというか、読めない。
「今度は木かぁ、目の前に来るって身構えてたよ」
「ハハッ…とわ様とは言え、気を緩めるわけにはいきません。空気を殺して読ませないことで修羅をくぐり抜けるってもんです。それに、好いた女の前ではカッコつけたい、それが男の性(さが)ってもんです」
うっ…あまりにもストレートに告白されたから反応に遅れたけど、やっぱり慣れてないからだんだんと羞恥心がやってくる。
「り、理玖!よくそんな恥ずかしいセリフすらすら言えるよね、わたしは受け止めるだけで精一杯だよ…わたしも理玖と同じ気持ちだけど、理玖みたいにいつも素直に気持ちを言えるわけじゃないし…」
いつも分かりやすい愛情表現をしてくれる理玖と違って照れてはぐらかしたりして、同じだけ返せていないからわたしの想いが軽く見られてたりしてないか不安になる。
「とわ様、おいらと同じじゃなくたっていいんです、ちゃんと伝わってますから。その恥ずかしそうな顔とか、とわ様は分かりやすいですからね。それに、おいらの方が聞き慣れて軽々しく聞こえてないか不安ですがね」
「あ、それはないよ!いつも感謝してるんだ、わたしはうまく言葉にできないから…」
「それはなにより。ところで、とわ様?おいらを呼び出したのはもしかして、明日の件ですか?」
あっ、そうだった!話してる内に目的を忘れるところだった。
「そうなんだよ!理玖をわたしの両親に紹介したいんだ!だから、明日はわたしの家まで来てほしいんだ」
「へぇ…おいらを…。何て紹介するんですか?」
「え…」
なんて!?そんな細かいことまで頭にはなかったというか…ただ紹介するだけじゃダメなの!?うわぁ、そもそも男の人を紹介するなんて経験ないし分からない!
「なら、そこはおいらに任せてもらませんか」
「え、いいの!?ぜひお願いするよ!」
「ではそういうことで。明日は伺わせて頂きますね。では、とわ様。申し訳ねぇですが、この後、とある村へ助っ人に行かなきゃなりませんのでこの辺で」
そういえば、すべてが片付いた後の理玖はこれまで旅してきた縁で人手が欲しい村まで手伝いに行ったり、各地を今でも行き来しているんだっけ。
「そっか!忙しいのにわざわざありがとう!明日、お願いね!」
「ええ、今宵も素敵な夜をお過ごしください。それでは、とわ様…」
ぐんっと近寄った理玖が、わたしの頬にキスをした。わたしが何かを言う前に鈴のような音と共に理玖は消えていった。
「り、りくー!!」
こ、これがやり逃げってやつ!?なんか…理玖って慣れてる…。スマートというか、わたしと同じだって思ってたけど、本当は愛を知ってたんじゃないのかな。
いやいや、余計なことは考えない!
火照った顔のまま、家まで帰り、母に心配されてしまった。

つ、ついに、この日が来てしまった…!
そういえば、昨日、理玖にいつ来てほしいとか伝えない!
テンパって色々抜けてる!
なんか、りんママはソワソワしてるし、殺生丸パパも隣に陣取ってる。
「せつなには内緒なの?」
「あっ、それは!また今度で…!」
「ふふ…殺生丸様、楽しみですね、とわが紹介してくれる子どんな子かな?」
「…知った匂いだ、あれの残骸か」
え、嘘、もしかして、理玖もう来てるの!?
わたしは急いで家の外に出る。
「おや。さすがは殺生丸様。おいらの気配にすぐお気づきになられたようですね」
こちらに歩いてくる理玖が居た。本当にいた!わたしは気づかなかったけど、さすがは本物の犬妖怪なだけあって鼻がいいんだ…。
「理玖!こっちこっち!ありがとう、来てくれて。さっそく会ってよ」
理玖は走って目の前まで来ると、わたしの手をサッと繋いできた。
「さぁ、連れて行ってください、とわ様?」
え、えぇ…?このまま?恥ずかしいなぁ…、けど、わたしだってこれから理玖と関係を深めていくなら慣れていかないとな。
「こ、こっち!」
理玖をりんママと殺生丸パパがいる所へ連れていく。理玖を見たりんママは口元へ手をやり、驚く。
「理玖様!?とわの紹介したい子って…」
「そ、そうなんだ…あのね、わたし理玖と…」
なんて言えばいいんだろう、頭に血が上って混乱してくる。
「とわ様、ここはおいらが。奥方様、殺生丸様…おいらはとわ様をお慕いしております。どうか、恋仲となることをお許しください」
理玖は正座になり、頭を下げた。慌ててわたしも正座になる。
「まぁ…!2人はお付き合いをしているのね!素敵…!とわが幸せならおっかぁはそれでいいの。ねぇ、殺生丸様」
「…好きにしろ」
「だって!とわ、良かったね」
緊張していたものが一気に緩み、涙になって溢れる。
「よ、よがっだぁぁ!!理玖ぅ、わたし達、絶対幸せになろうね!」
繋いだ手を理玖が力を込める。
「おいらもホッとしやした。もう、おいらにとって、とわ様は一緒に居られることが幸せで、生きがいでしたから」
「そ、そんな…嬉しいよ、わたしもこれからの人生、理玖がいないのなんて考えられないよ」
「とわ様…」
「理玖…」
あ、この流れ自然かも。なんて思ってしまった。
「とわ。それ以上は親の前でするな」
殺生丸パパの声に我に返る。
「それじゃ、殺生丸様にお許しを頂いたので、とわ様、2人きりになれる部屋まで案内してください」
「うん」
理玖の手を引いてわたしの部屋まで来る。
向こうの世界なら机とか、タンスとか、色んな物を置いてたけど、戦国時代の家となるとタタミの部屋が殺風景に見えてしまうけど。
「理玖、さっきの続き…」
「今日は積極的ですね、とわ様…嫌なことはしません、おいらに身を任せてください」
「…りく…何だかわたし、今なら大丈夫な気がするんだ…」
「ええ、そのようですね…とわ様の可愛さにおいらの理性も限界です、受け入れてください、とわ様…」
わたしは我慢している理玖を愛おしいと感じ、抱きしめてそれに答えたんだ。


END


少しここで書けなかった設定として、殺生丸様一家の家は、タタミが何室かあるちょっとしたお屋敷の設定です。人間のりんがいるので、妖怪に見つからないように結界でお屋敷を隠してる設定を妄想してくれたらいいです。理玖が来た日は殺生丸様がわざわざ結界を緩めてくれていたという舞台裏設定があった…というイメージで書きました。

次は口の悪い理玖書きたい(笑)
クソ虫が!ってめちゃくちゃ萌えたよな??

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