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半妖の夜叉姫【理とわ】

永遠に【理とわ】



主様に気丈に向かっていく、とわ様が眩しい。
あと、どれだけ貴女のことを目にしていられるだろうか。
分かっている。夜叉姫さん達が麒麟丸を倒せば、おいらも…。もともと麒麟丸から打ち捨てられたモノ。
でくの坊でしかなかったおいらに知らなくていい感情を教えてくれた。
「とわ様…」
貴女が貫く刃になら、殺されても本望だ。おいらの人生に未練はありません。
「…理玖、あなた、本当にいいの?」
「何がですか?」
「とわ様のこと…」
「いいも何も、おいらはもともと麒麟丸から打ち捨てられたもの。感情なんて無かったんですから。未練もありませんよ」
とわ様、ひとときでも、逢瀬が出来て本当に良かった。貴女に出会わなければおいらはまだ恋という気持ちを知ることはなかった。思えば出会ったあの時から…Forbidden fruit、禁断の果実を口にしてからか。
どれほど思い出を重ねてもこれまで交わした言葉の細部まで、さっきのことのように思い出せる。
未練…あるのかもしれねぇな。願うならば、とわ様と永遠に…。
「すいやせん、りおん様、おいらは夜叉姫さん達のもとへ行きます。安全な場所でお待ちください」
「まって!わたしも行きます!父の最後はわたしが見届けます!」
「りおん様…分かりました、行きましょう!」

辺りの空気が悪くなり、空まで黒ずんでいる場所がありすぐに見つけられた。
「凄い妖気ですね…りおん様はこちらでお待ちください。おいらは何かあれば夜叉姫さんをサポートします」
「理玖。本当にいいんですね?」
「何をいまさら。せっかく熱くなっているのに、野暮なことはしやせん。葬り去るだけです」
「理玖…」
「悲しまねぇでください、りおん様。おいらの覚悟はできています。それでは!」
耳飾りを弾き、夜叉姫さん達が見える木に降り立つ。
…さすがは、とわ様だ。麒麟丸にダメージを与えている。この勢いでいくと、もしかしたら。
麒麟丸が呻く様子を見ながら、何故か心が苦しくなるのを感じる。
「…ぐっ!…この後に及んで未練か…!消えたくないとどこかで思っちまってんのか…!厄介なもんだぜ、感情ってもんは…」
麒麟丸に弾き飛ばされ、宙を飛んでこちらにやってくる身体が見えた。
あれは!
「とわ様!」
咄嗟に身体を受け止め、圧に押されおいらの身体もわずかに吹き飛ぶ。
「り、理玖!?何でここに!」
「はは…何でですかね…とわ様を最後に目に焼き付けたかったのかもしれません」
「最後!?どういう意味!?」
「…おいらは麒麟丸から打ち捨てられたもの…麒麟丸が死ねばおいらも…そういう運命だったんです…とわ様に葬られるなら、おいらは本望です、さぁ…とわ様、おいらもサポートしますよ!」
一気に涙を溢れさせた、とわ様に腕をガシッと掴まれた。
「とわ様…」
「何でそんな大事なこと言ってくれなかったの!?そんなの嫌だよ!絶対に!是露と母さんを繋ぐ縁の糸が断ち切れたように、理玖だって麒麟丸から糸を切ればきっと…!そうでしょ!?」
たしかに…それは考えてはいたが…。
次から次へと向かってくる攻撃に、縁の糸を切るなど余裕など…。
「とわ様、おいらはもうこの世に未練はありません、とわ様から貰った知らなくても良かった恋の感情を知ることが出来ました。それだけでおいらは幸せです。ですから、とわ様…麒麟丸を倒すことだけを一番にお考えください、縁の糸は二番目で構いません。それはとわ様ではなく、妹ぎみ様の役目ですからね…」
「…くっ…分かった!麒麟丸はわたしが倒す!だけど、理玖も助ける!わたし、理玖が死ぬのは嫌なんだ!わたしも理玖が好きだから!待ってて!」
なんて事だ…捨て台詞が愛の告白だなんて…とわ様らしい。すでにおいらは幸せです。
とわ様がどのような選択をしても、受け入れられます。
耳飾りを弾き、剣を生み出す。ピンチになれば助太刀します、とわ様!
しばらく様子を伺っているが、さすがというべきか。3姫の力が合わさると脅威的と言える。
助太刀に入る隙はねぇかもしれねぇな。
神など信じないが、祈りたくなる。とわ様が無事であればそれでいい…。
「せつな!お願い、理玖と麒麟丸の縁の糸を切って!」
ま、まさか!本当に…。
「はぁぁぁぁっ!!!ここだぁぁ!!」
せつな様が振り上げた剣が何かを切った。
その瞬間、重くのしかかっていたものがフッと抜けて出たような感覚があった。
気が抜けそうになるのを抑えて、目の前の乱撃を目に焼きつける。
本来ならこの光景を最後まで見れていなかったかもしれない。とわ様が叶えてくれた未来を忘れてはいけない。

空を覆っていた邪悪な黒い雲が晴れ、太陽が久しぶりに注いだ。
「お疲れ様です、とわ様」
「り、りく…良かった…本当に…死んでほしくなかったから…せっかく…同じ思いだって分かってたから!」
おいらにしがみつき泣くとわ様をそっと抱きしめた。
「おいらもです。もう消える命だと思っていたので、生きていることが奇跡のようですよ。感謝しています」
「理玖、もう、勝手に居なくならないでね」
「もちろんです、とわ様」
とわ様の手を拝借し、手の甲に口づけをした。


END


前回から少しあいてしまい、久しぶりの投稿ですいません。ストーリー展開が難しく動かしづらかったので、少しおかしな箇所があってもおおめに見てください…汗
半妖の夜叉姫の最新話の前に投稿できてよかった。
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