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半妖の夜叉姫【理とわ】

気づいた想い【理とわ】


(殺りんを思わせる会話が少しあります)

たしかに、あの時、わたしは理玖に言った。

──愛とか恋とかよく分かんないけど、好きって気持ちなら分かる

あれは…確かにそう思ったんだ。嘘じゃなかった…だけど、だけど、最近は…。
まさか、わたしが自分の気持ちで悩む日が来るなんて思わなかった。
分からないと思っていた気持ちが今なら分かる気がするんだ。
だって、りんママを見ていると何かに刺さるような、気付かされるようなそんな感覚…。
ここ最近、悩む素振りを見せてしまってから、せつなにも心配されてしまったし…早いこと解決してしまいたいのに。
「はぁ…」
思わずため息が出てしまい、慌てて口元を手で覆う。ため息は幸せが抜けちゃう。
「とわ」
澄んだ、幼さを残した声色がわたしを呼んだ。振り返って見なくても分かる。
「りんママ」
「何か悩みごと?私に話してみて。力になれないかもしれないけど、軽くはなると思うの。私、これまでずっと母親らしいことしてあげられなかったから…今からでも少しは気にかけてあげられたらって思ってるの」
告げられた言葉にまだ胸が痛む。母が呪いから解放されて、平和に暮らすようになってしばらく経つのに、その事を思い出すと辛い。
「ありがとう…その、ある人のことを考えてて…」
「ある人…」
「その人は…出会った時からわたしのこと何故か気にかけてくれてて。だんだん仲良くなって、前に愛とか恋とかじゃなく、ただ好きだってことだけ伝えたけど、今になってだんだんその時のことが思い出されて…今ならもっと違ったことが言えたかもなって思っちゃってさ…わたし、理玖のことどう思ってるんだろう…」
好きだと言葉にするのは簡単だ。だけど、気持ちの持ち方でその意味は変わってくる。
今のわたしは…。
「とわは悩んじゃうくらいその人のことが気になってるんだね」
「え…」
「難しいことは分からなくても、少なくともその人が大事な人ってことでしょ。とわは、その人が好き?」
「…好き…」
「ふふ…もう答え出てるじゃない」
ハッとする。
これでいいの?本当に?
「わたし、理玖を探してくる!」

「理玖様のことだったのね。…ねぇ、殺生丸様、気づいてた?」


✡ ✡ ✡


「りくー!りくー、どこー!?お願い、出てきて!」
叫びながら森の中を走っていたらどこからか、鈴のような響くような音が聴こえてきた。

“チリン”

「お呼びですか、とわ様…おや、汗まで流しておいらを探してくれていたんですか」
「り、理玖!!」
目の前に急に現れた理玖に驚いてバランスを崩しそうになる。
「はっ!とわ様!」
咄嗟に理玖が動き、サッと抱き抱えられてしまう。その体勢が一気に恥ずかしくなってくる。
「り、理玖!大丈夫だから降ろしてッ…」
「いけません、とわ様。ここは足場も悪い森の中です。探させた側も悪いので、ここはおいらの親切に甘えてはもらえませんか」
そんなこと言われたって!お姫様だっこなんて滅多にされることなんて無いのに、これをずっとなんて恥ずかしすぎるよ!
「な、なら、早く森を出よう!」
「…なるほど、そういうことですか。ですが、おいらのわがままということで、そのお願いは聞けそうにありません」
理玖はわたしを抱えて歩いて森を進み始める。理玖なら、いつものように瞬間移動ができるはずなのに。
「とわ様、ここなら安全です」
森を抜け、開けた場所に出た。理玖はわたしを下ろすと、石の上に腰を降ろした。
「さぁ、とわ様も隣にどうぞ」
「あ、うん、ありがとう」
腰を落ち着け、いざ2人の空気になると、さっきまでの決意もふわふわしてきてしまい、どうしたらいいのか分からなくなってくる。
「あのね、理玖…理玖はわたしのことどう思ってるの?」
「どう、とは…」
「わたし、前に理玖に言った言葉がずっと気になってたんだ。理玖と仲良くなって、今なら分かる気がするんだ…あの時、分からなかったことが」
「それって…いえ、とわ様。お話になる前においらから良いですか?」
「え、なに…?」
あれ、理玖と話をしててこんなにも緊張したことってあったっけ。いつもより、ドキドキしてる…。理玖と居るから?
「おいらは愛してる者しか殺さない…だから夜叉姫さん達はおいらが…って、とわ様のことを何も知らない初めの頃はそう思ってました。だけど、とわ様のことを知っていくうちに、おいらは愛を知っていきました。まがい物でしかなかったおいらに愛する気持ちを教えてくれたのはとわ様…感謝してます」
顔がどんどん熱く感じる。これじゃ、まるで…プロポーズだよ…。
「理玖……わたしも、そうだよ…」
今はそんなことしか恥ずかしくて言葉に出来ない。
「赤くなって恥ずかしがるとわ様も素敵ですね。しかし、おいらは言いましょう、不慣れなとわ様の代わりに何度でも…

あの時は返せませんでしたが…おいらもとわ様のことが…」



END
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