#1 幻想御手編×学園都市編
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誰かを好きになるのは、こんなにも苦しいものなんだ。
伊吹は授業中だという事を忘れ、校庭の方を眺めながらそう思う。
初めての感情。
伊吹は今まで誰かに特別な感情を抱くことはなかった。
理由は能力。読心能力(サイコメトリー)。
常時発動していた頃…制御ができなかった時期は、人の内面の怖さを知り、そして能力を知られると、誰も関わろうとしなかったことで、伊吹は心を閉ざして、人と接する機会を避けていた。
桃李累と出会うまでは。
常盤台中学校の入学式。
伊吹は憂鬱だった。
どうせまた独りぼっちで、学校生活を送ることになる。
希望や期待なんてもう持てない。
能力を制御できるようになったからって、簡単に人が信じるわけじゃないのだ。
もしかしたら、心の内を見られてしまうのではないか、と思われて近づかない。
教室の窓際の一番後ろで、嫌なことばかり考えていた。
そんな時に桃李累が現れた。
「ねねっ。君はどうしてそんなに悲しそうなんだい?」
下を向いていた伊吹の顔を覗き込んでまで、累は話しかけた。
音もなく近づいたので、驚いて声にならない悲鳴を上げる伊吹。
その悲鳴にクラス中の視線がこちらに向けられ落ち着かない。
悲鳴を上げられてしまい累は「ごめんよう。驚かせるつもりはなかったんだ」と謝る。
累は伊吹の顔を見る。そして伊吹も見られていることに気づき、累の顔を見る。
目が合い、累のきれいな瞳に吸い寄せられている自分に気づく。
マリーンブルーの宝石みたいにキラキラしていて、目が離せなかった。
見惚れている伊吹に気づかず、累は微笑みながら思ったことを言う。
「君とも仲良くなりたいな。良かったら、お友達になってくれないかい?」
嬉しいと一瞬思う。だけど、派閥という言葉が頭に浮かんだ。
「……え?……もしかして派閥ですか…」
伊吹はどこにも所属するつもりは無かった。そして、派閥に所属していても、忌み嫌われるかもと思っているのだ。そんな言葉を聞いて累は首を横に振る。
「私も、どこかに所属する気はないんだ。……ただ、君とこうやってお話がしたいんだよ」
ダメかい。そういう累は寂しそうだと思った。
でも伊吹は自分の能力を聞いたら、避けられる気がする。
なら仲良くなる前に自分の能力を言ってしまおうと考えた。
自分の能力を話す。嫌われる覚悟で。
だけど、累の反応は好奇心旺盛なのか、質問攻めをしてきたのだ。
「どうやって使うのか、詳しく教えてくれないかい?」
「えっと……」
詳しく話すことにした。
そんな伊吹の話を聞きながら、スカートのポケットからメモを取り、伊吹の能力のことを書いている。
伊吹は嬉しかった。
こんなに熱心に自分の能力について、楽しそうに聞いてくれるなんて、今までになかったから。
そんな伊吹を見て累は「ありがとう」と一言だけ言う。
どうして?と思い聞こうとしたその時、クラスメイトの何人かぞろぞろ近づいたのだ。
伊吹は質問攻めされ、いつの間にかいなくなった累を探す。
クラスメイト達が話に盛り上がっている隙間から、累が教室の出入り口にいるのを見つけたが、茶髪のツインテールの子に「どこへ行っていたんですの?そろそろ移動ですわよ」と言われながらも、嬉しそうな顔を見て、胸がチクッとしたのを感じた。
その日から伊吹の新たな学校生活が始まったのだ。
累があの時、話しかけていなかったら、きっと私は今でも独りだったと思う。
伊吹は累を見かける度、話しかけようと思った。
思っているけど、茶髪のツインテールの子…白井黒子さんと楽しそうに話しているのを見る度、心がざわざわして、話しかけられない自分がいる。
そのざわざわの正体が何なのかと気づいたとき、伊吹は嬉しい反面、苦しかった。
この気持ちとどう向き合うか、考える日々がこれから続く。