倦怠と本能
清らかな朝日がナド・クライの大地を照らしている。命が目覚める時、夢から覚める時間、新たなる一日を刻む始まり――そして、夜の守護者達が束の間の休みを迎えられる瞬間。
イルーガの家から出てきたラドヴァンは、深呼吸をして新鮮な空気を目一杯肺に取り込んだ。いくら好き好んで夜明かしの墓に居候しているとはいえ、種族的に普通の人間としては本能的に朝日を欲するものだ。
さて、そんなラドヴァンがなぜピラミダに滞在していたのかというと、親友であり同僚のイルーガから一週間ほどキプマキの崖方面で発生しているワイルドハントの討伐を手伝ってほしいと頼まれていたのだ。ライトキーパー屈指の素行不良である自分に頼むなど、『闇夜の鶯』隊長として体裁が悪いのでは。そう思う一方、親友であり敬愛してやまない同僚からの頼みを断るわけにもいかず、できる範囲のことをしてきたわけだ。
結果は良い方向に進んだらしく、礼も兼ねてなのか今朝の食事はここ一週間の間で一番豪華なものになった。相変わらず、親友は料理が上手い。槍捌きもさることながら、料理の腕まであるのは自慢しかないだろう。私の親友マジ天才。
「ラドヴァンくん、応援ありがとうございました。おかげでだいぶ立て直せましたよ!」
「大したことねぇよ、ナシャタウンにいても暇なだけだからな。それにこっちも相当人手不足なんだろ?」
「ええ、本来なら君に残って欲しい気持ちはあるんですが……病状が悪化してもまずいか……」
イルーガは目を伏せて苦笑した。
そういえば、ここ最近は特に不調が見られないため忘れかけていたが、ラドヴァンには躁鬱の気があった。いつから――と聞かれても思い出すことができない。気がついたら気の浮き沈みが激しくて、その落差を埋めるように剣を振るう日々もあった。何より、ラドヴァンが素行不良の銘を打たれてまで単騎独行を貫いているのも人の生き死にと密接しているこの仕事において、自身の心を守るためなのだ。
まあ、そんなことはさておき、今は明るく別れたい。なので、湿っぽい空気を払拭するように生暖かい笑みを浮かべた。
「およ? なんだよ、心配してくれてんのかァ? さすがは分隊長サマってやつだな」
「もう! 僕は本気で心配してるんですからね! それに、君と僕は親友なんですから、これくらいは当たり前でしょう?」
「そうかいそうかい、まァでもそんなに気にすんなよ。今はそこまで辛くねぇからさ、アイツもいるし」
ラドヴァンの脳裏にふと、彼の顔がよぎった。
そういえば、フリンズは健やかに過ごしているのだろうか。大規模なワイルドハントが発生しない限りエネルギー切れに陥るなんてことはないはずだが、いかんせんレンポ島とパハ島方面の情報が全く入ってこないので不明瞭な箇所が多い。
「ラドヴァンくん? どうしました?」
「……いや、なんでもねぇ。じゃあ私帰るわ、またなんかあったら呼んでくれや」
「はい! 道中くれぐれもお気をつけて!」
とにかく、今から帰って様子を見に行くほかないだろう。
ラドヴァンはイルーガに軽く手を振りながら、ピラミダを後にした。
イルーガの家から出てきたラドヴァンは、深呼吸をして新鮮な空気を目一杯肺に取り込んだ。いくら好き好んで夜明かしの墓に居候しているとはいえ、種族的に普通の人間としては本能的に朝日を欲するものだ。
さて、そんなラドヴァンがなぜピラミダに滞在していたのかというと、親友であり同僚のイルーガから一週間ほどキプマキの崖方面で発生しているワイルドハントの討伐を手伝ってほしいと頼まれていたのだ。ライトキーパー屈指の素行不良である自分に頼むなど、『闇夜の鶯』隊長として体裁が悪いのでは。そう思う一方、親友であり敬愛してやまない同僚からの頼みを断るわけにもいかず、できる範囲のことをしてきたわけだ。
結果は良い方向に進んだらしく、礼も兼ねてなのか今朝の食事はここ一週間の間で一番豪華なものになった。相変わらず、親友は料理が上手い。槍捌きもさることながら、料理の腕まであるのは自慢しかないだろう。私の親友マジ天才。
「ラドヴァンくん、応援ありがとうございました。おかげでだいぶ立て直せましたよ!」
「大したことねぇよ、ナシャタウンにいても暇なだけだからな。それにこっちも相当人手不足なんだろ?」
「ええ、本来なら君に残って欲しい気持ちはあるんですが……病状が悪化してもまずいか……」
イルーガは目を伏せて苦笑した。
そういえば、ここ最近は特に不調が見られないため忘れかけていたが、ラドヴァンには躁鬱の気があった。いつから――と聞かれても思い出すことができない。気がついたら気の浮き沈みが激しくて、その落差を埋めるように剣を振るう日々もあった。何より、ラドヴァンが素行不良の銘を打たれてまで単騎独行を貫いているのも人の生き死にと密接しているこの仕事において、自身の心を守るためなのだ。
まあ、そんなことはさておき、今は明るく別れたい。なので、湿っぽい空気を払拭するように生暖かい笑みを浮かべた。
「およ? なんだよ、心配してくれてんのかァ? さすがは分隊長サマってやつだな」
「もう! 僕は本気で心配してるんですからね! それに、君と僕は親友なんですから、これくらいは当たり前でしょう?」
「そうかいそうかい、まァでもそんなに気にすんなよ。今はそこまで辛くねぇからさ、アイツもいるし」
ラドヴァンの脳裏にふと、彼の顔がよぎった。
そういえば、フリンズは健やかに過ごしているのだろうか。大規模なワイルドハントが発生しない限りエネルギー切れに陥るなんてことはないはずだが、いかんせんレンポ島とパハ島方面の情報が全く入ってこないので不明瞭な箇所が多い。
「ラドヴァンくん? どうしました?」
「……いや、なんでもねぇ。じゃあ私帰るわ、またなんかあったら呼んでくれや」
「はい! 道中くれぐれもお気をつけて!」
とにかく、今から帰って様子を見に行くほかないだろう。
ラドヴァンはイルーガに軽く手を振りながら、ピラミダを後にした。
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