サンタと星の夜

そしてミーアは続けた。
「私がヤマトにプレゼントもらったって言った時もお前、嫌そうな顔してたし、今も!さっき嫉妬だって言ってたけどなんの嫉妬だよっ、毎回等しくご飯は提供してるぞ!むしろゼブラの方が多く作ってるのに、何が気に入らねぇんだよっ!その怖い顔やめろ!ほんっとに!」
全く見当違いの事をミーアが言い出してゼブラは少々頭を抱えた。

こいつの勘の悪さは天然なのか?わざとなのか?自分のことだから気が付かないのか?

助けられてる部分もあるにはあるが、、、

「、、、ヤマトもって、どういう事だ」
それよりも、と焦る気持ちを押さえて何とか落ち着いた声を出した。
「さっき。少しだけこうさせてくれ、、って、同じことされたんだよ、皿を落としそうになってバランス崩したのを支えてくれて、そのあとほんの数秒だったんだけど。最初はなんの事かわかんなくてさぁ、、ヤマトは、、なんだったんだろうな?仕事でなんかあったのかなぁ?」
不思議そうに首をひねるミーア。

「、、、さぁな」
適当な返事をした。
自分より先にミーアに触れたヤマトをいつ、ひねり潰そうか、と、頭の隅で考えていた。
「さぁな、って、おま、、、」
お前もしてきただろ、と言いかけてゼブラが被せてきた。
「しかし、、、あいつ、まだ諦めてねぇんだな」
少し余裕ぶってみるがヤマトの熱意に折れる日が来るかもしれないと、ココの忠告を思い出していた。

「私はそんな気ないから無理だっつってんのに、、、」
ミーアは少し困った顔をした。
「、、、この先もその気持ちは変わらねぇのか?」
「多分変わらない。私にとってヤマトは弟分としか思えないからな」
零したコーヒーを注ぎ直して一口すすった。
人の気持ちってのはわからない。
ほんの少しの出来事で動くこともある。
さっき飲んだブランデーのアルコール成分が心地よく体内を巡りはじめていた。

しかしさっきから気になることがある。

ミーアの心拍数が落ち着かないのだ。
抱きしめたあとからずっと高鳴っている。
ほんとに怖くなかったのか?
平気そうにはしているが、、。
ヤマトの話をしたからか?
でも、興味なさそうだったよな、、
なんでだ?

「ぇ、、、なに?」
ゼブラの視線に気が付いてミーアが不思議そうな顔をした。
「お前、ほんとにさっき怖くなかったのか?」
ミーアをまっすぐ見て隠さずに聞いた。
「う、、うん、、」
「、、、、」
戸惑った表情をしている。
「、、な、なんだよ、なんか気になる事でもあるのか?」
「、、いや、、なんでもねぇ」
ほんとに恐怖心はねぇみたいだな。
だったら、この落ち着かない心拍はなんなんだ。
でも、これ以上は聞けなかった。
「つーか、お前はなんであんなことしたんだよ」
パチパチと火が燃える。
「、、、体が勝手に動いた、、、としか言えねぇ、、わるかっ、、」
沈黙の後、ゼブラは静かにそう答えて、謝ろうとした時。
「謝らなくていいからな」
ミーアが星空を見ながらゼブラの謝罪を制した。
「なんでだよ」
驚いた顔で聞く。
「怖くもなかったし、嫌とも思わなかったもん。私が不快と思ってないんだから謝る必要なんかないだろ。なんなら、今度は私がゼブラを抱きしめてやろうか?」
いたずらっこのような顔でミーアが笑って両手を広げた。
「やめろ」
「なんでだよっ」
口を尖らせて、ちぇっと拗ねる顔のミーア。

バカ、歯止めが効かなくなるから、それ以上言うな。酒飲んでんだぞこっちは。

こいつのこういうところがヤマトが諦めきれない1つの原因なのかもな。
ないならないと、ハッキリ言え。
そんでヤマトも早く諦めろ。

頭の中で色んな思いが巡る。
それを全てかき消すかのようにグラスの中で揺らぐブランデーを一気にあおった。


そしてまた、星空を見上げるミーアを見た。
少し寒そうにコーヒーのカップで両手を温めるようにして持っている。
「、、寒いか?店に戻るか?」
思わず聞いてしまった。ミーアが帰るといえば、2人だけの時間はそこで終わる。

「、、、、いや、、、まだいいや。星、見てたいし」
寒さで鼻と頬を真っ赤にして、ミーアが答えた。

何故かは分からないけど、まだ、帰りたくないと思ってしまう。
ミニスカートのサンタの姿で寒いはずなのに、心臓も落ち着かないし、頭もまだ整理できてなくてぐちゃぐちゃだ。
だけど、体は暖かい。
心が暖かいと言うのが正解なのか。
気を使わなくていいし、何が起こっても大丈夫だと思える存在が目の前にいる事で安心感もあった。

ゼブラにふいに抱き寄せられた時、思わず自分も腕を回しそうになった事は、秘密にしていよう、とミーアはコーヒーを静かにすすってまた、ゼブラからのプレゼントを見上げて小さく微笑みながら思っていた。

このドキドキする気持ちが、なんとなくあと少しで分かりそうなそんな気をさせながら。

いや。もう、心のどこかでは、分かっているのかもしれない。
そろそろ、本当に気持ちを整理しなくてはいけないところまで来ているのでは、とミーアは思っていた。
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