サンタと星の夜

俺が店に来ることが嬉しいと思ってるんだな、こいつは。

そう思うと、張り詰めていた何かが1つ、緩んだ気がした。
「私からも聞きたい事があるんだけど」
「なんだよ」
さっきの表情とは真反対な顔して真っ直ぐにゼブラを見て言うミーア。
「お前、こないだ嘘ついただろ」
「なんの事だ」
細い枝を2、3本火の中に投げた。
「ヤマトと喧嘩なんかしてなかっただろ!なんで聞いた時、したような事言ったんだよ!ヤマト、してねぇってはっきり言ってたぞ!」
「あいつ、、、っ」
苦虫を噛み潰したような顔をするゼブラ。
「ヤマトと喧嘩もしてないのに、なんで名前を出しただけであんな怖い顔したんだよっ、他に理由があるんだろ?」
「、、お前には関係ねぇだろ」
やっと絞り出した言葉。なんとか誤魔化したいと思った。
「関係大ありだ!」
ミーアはそう叫んで、また、下を向き、小さく呟いた。
「、、、私は!、、私の料理を美味そうに食べるゼブラの顔が、、見たいんだ!、、、あんなに怒った顔、もう二度と見たくない、、、あの日からずっと気になってた。今、ちゃんと理由を聞いて、それが私のせいだったなら、謝りたいんだよ」
「、、、、」
ミーアの言葉に心臓が高鳴った。それと共に後悔の念がまた押し寄せてくる。
そして、続ける。
「、、、だからね、怒った理由が知りたいって言ってんの。教えてくれるよな?この間のことをまた改めて言ってくるってことは、多少なりとも罪悪感あるんだろ?なぁ?ゼブラ?お互いモヤモヤしたまんまじゃ嫌だろ?」
今度はミーアの目の奥が笑ってない。
痛いところを突いて詰めてくるミーア。
ゼブラは、これ以上突っぱねることはできないと思った。
この前のことを出されたら、折れるしかねぇだろ、、、お前には敵わねぇな。
「はぁ、、」
と深いため息。諦めたような顔。
「観念して吐け!」
意気揚々とミーアが煽ってくる。

でも、、言うべきか。言ったらこの関係が崩れやしないか。
それだけが不安だった。
「、、、」
なかなか話さないゼブラを見て何かを察したミーア。少し考えて口を開いた。
「、、何を躊躇してんのか知らねぇけど、一つだけ伝えとく。あの日、お前の顔は確かにめちゃくちゃ怖いと思ったけど、お前自身に恐怖心はなかったよ。強がりでもなんでもない、、、お前はもう覚えてないだろうけど、少し前に、酔っ払いに変なことされそうになったあの時の方が、正直何倍も怖かった、、。この前のこと、まだ気にしてるようだから、これだけ伝えておく」
気がつけば火を挟んで前に座っていたミーアが、いつの間にか隣まで来て至近距離でそう言った。
「っ、、、お前っ、、、それ、、俺が怖くなかった、って、本気で言ってんのか?酔っ払いと同じようなことしたんだぞ、俺」
驚いた顔でミーアに聞いてしまった。
「、、、実は、、酔っ払いに絡まれた時は、怖くて体が震えてたんだよな、、助けがなかったらどうなってたか、って今でも思い出すと鳥肌が立ってしまう、、、」
知ってる。
ヤマトも気が付いてたよ、それは。
黙って聞くゼブラにミーアは続ける。
「でも、ゼブラは絶対あれ以上のことをしないって、思ってたから」
「わ、わかんねぇだろ、したかもしれねぇぞ」
「ないね。ゼブラは本当は優しい人って私、知ってるから」
ミーアの目は真っ直ぐゼブラを見て、そしてそう言い切って笑った。
「実際、しなかったし、すぐ冷静になっただろ?」

これが、人を信頼する、という事なのか。
ここまで言ってくれるなら、言ってもいいだろうか。

「だから、話して。今更なにを聞いても驚かない。必要であれば謝るから」
身を乗り出してゼブラに迫るミーア。
「、、、し、、、」
「し?」
、、、、
「、、、だよ」
ゼブラが珍しく小さな声だった。
「は?聞こえない!もっとハッキリ、腹から声だ、、、」
「嫉妬だっつってんだよっ!!」
耳を澄ましたミーアが一瞬固まった。
「、、は?今、嫉妬、、て言った?嫉妬って、、ヤキモチの事、だよな?え、誰が?」
「俺が!」
「誰に?」
「お前に!!」
半ばヤケクソで叫ぶ。
「、え、、ぇぇ、、、?!」
「っなんだよ、そのアホみたいな反応は、、しっかり驚いてるじゃねぇかっ!」
驚いた顔のミーアに思わず突っ込んでしまうゼブラ。
「いや、驚いたというより、前のこと思い出してたんだよ」
「前のこと?」
いつの事だ、と思い出そうとしながら聞いた。
「ほら、二人でさ、ヤキモチなんかよくわかんねぇよなって言いながら餅食べただろ!」
「、、あぁ、あったな、そんな事」
記憶を巡らせてあの日のことを思い出す。
「あの時は、ヤキモチのヤの字も知らなかったのにさ、ゼブラの口から嫉妬なんて言葉が出るなんてって、思ったんだ」
そう言ってミーアがゼブラに笑った。
安心したような呆れたような顔で。
「、、、」
今ならヤマトの気持ちがちょっとわかる気がする、と思った。
その笑顔、今だけは独占したい。
「ゼブラがヤキモチねぇ、、、」
ニヤニヤとミーアがゼブラを見る。
「んだよ、悪りぃかよ」
「別にぃ?」
でも、なんでだろう。ゼブラが私にヤキモチ妬くって、どういう心境からなんだろうか。
聞きたい、、けど、、、
いや、、、聞けないなぁ、、、
ミーアの心の内はザワザワとうるさかった。
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