サンタと星の夜

「あ、そういえば、、」
くるりと向き直りヤマトにたずねる。
「最近、ゼブラと喧嘩した?」
「はぃ?」
突然の問いに心当たりが無さすぎてはてなマークが沢山浮かぶヤマト。
「お前ら、なんか会う度に張り合ったり、なんかしたりしてるけど、今度は何が原因だよ、仲良くしろよぉ?」
ミーアがふざけてヤマトをつつく。
「い、いやっ、してないっすよ!喧嘩なんてするわけないじゃないっすか!そんなことしたら、俺、ボコボコにやられて終わりっすよ!俺が喧嘩強くないことミーアさんも知ってるでしょ!」
「あー、、まぁたしかに、、口喧嘩もしてねぇの?」
なんの躊躇もなく肯定するミーアに、ガックシと肩を落とすヤマト。
「してないっす!、、てか、ちょっとはフォローしてくださいよっ」
「ヤマトと特別喧嘩したわけじゃないとなると、、、じゃあ、なんであんなに怒ったんだ?、、、ますますわかんなくなった、、」
ヤマトの訴えを軽くスルーしてミーアは小さく呟き考え事をした。
「ゼブラさんとなんかあったんすか?」
「あ、いやいや!なんでもねぇよ、変なこと聞いて悪かったな」
ミーアはそれ以上、この前のことは話さなかった。

しばらくしてヤマトは帰っていき、あと僅かだった定食も残り1食となった。

「あと、1食!、、おそらく最後の客はゼブラだろうな、、、来る前に着替えておくか、、何言われるかわかんねぇからな。もう着替えたのがリンたちにバレても怒られねぇだろうし」
ミーアは改めてそう口にして、テーブルを拭くと奥に行こうと歩きかけた。

しかし、ゼブラは、予想よりもかなり早く来てしまった。

バァンッ!
いつも通り大きな音をさせて扉が開いた。
「あ、、、もう来たのかよ、、、」
「あ?来ちゃ悪りぃかよ、早く料理をだ、、、せ、、」
目の前にはサンタの格好をしたミーア。
スルーするべきか、いじるべきか、ゼブラの頭は高速回転した。
「これには触れるなよ!着替えてくるから!」
ゼブラの視線に気が付いてミーアが慌てて予防線を張る。
「着替えてる暇があんなら、早く料理を出せ」
それでも赤い顔して嫌がるミーア。
「今日の客にはそれで接客したんだろうが!なら俺にもそれでいいだろ」
「、、わ、わかったよ、、」

そのまま嫌そうな顔で厨房へと向かっていった。
「なんだあれは、、、どうせまたリンが無理矢理着せたんだろうけど、、、」
そう呟きながらチラリとツリーを見た。
客から貰ったであろうプレゼントがいくつか並んでいる。

あの格好で今日1日接客したであろう事も、誰とも知らぬ常連の客(多分男)からプレゼントを貰っている事も、、、
「気に食わねぇ、、、」
気持ちを誤魔化すように水を一気に飲み干すゼブラ。
一方、ミーアは厨房で独り言を言っていた。
「くそっ、来んのがはぇーんだよ!」
サンタの服装でイライラとフライパンを持つ。
ふと、調味料の棚を見た。
あるものを見つけてニヤリとした。

少ししてフロアにミーアがあらわれ、スープ皿を目の前に置いた。
「先にスープ飲んでて!」
湯気のたつ熱々のスープ。

ずずっ、、、
1口飲んだ途端、冷えきった体が内側から暖かくなってくる。口の中が心地いいヒリつき感。
いや、、結構辛いな?
食べる度に汗が吹き出てくる。
でも、スプーンが止まらない。
厨房につづく方を見るとミーアがニヤニヤとこちらを見ていた。
こいつ、、確信犯だな。
「何を入れた?」
「バレた?小松にヤバネロってやつ、少し前に貰っててさ。使い方ちゃんと教えて貰って、ゼブラのスープに入れてみた、でも、美味いだろ?」
子供がいたずらがバレた時にみたいにケラケラ笑うミーア。
「このやろぉ、、」
小さく笑いながらまたスープを1口。
「他の客に入れて、大騒ぎになっちゃ困るからな。ゼブラなら大丈夫だろって思って」
「俺をなんだと思ってやがる、調子に乗るなよ」
そういいながらも顔は穏やかだった。

辛いスープもあっという間に完食。
すぐいい匂いが立ち込め、大きな皿を持ったミーアが現れた。

「飲めた?結構辛かっただろ?」
聞くミーアに空になったスープ皿を渡した。
「お、さすがだな」

またこの関係に戻れてよかった。
ゼブラはそう思った。やっぱりミーアが笑顔でいる事が何よりも料理を美味くする。
それにこの時間がとても心地いい。

と、同時に、また崩れるかもと考えたら気持ちにブレーキをかけずにいられなかった。
もうずっとこのままでいい、とまで思った。
俺が気持ちを表に出さなければずっとこれが続くんだ、とも。
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