確かめたいこと

「おかわり」
厨房にいるとゼブラの声が聞こえた。

「はーい、ちょっとまって!」
ミーアは慌てておかわりをよそい、ゼブラに持っていく。

、、、

「はい、どうぞ」
大きな皿を目の前に置くと、また、ゼブラは黙って食事を再開させた。

なんだか、その態度を見ていると、これまでの事もあって、だんだんとムカムカしてきて、言ってしまった。
「、、、おい、なんなんだよ、この前から」
「あ?」
ミーアの低い声にゼブラも食事の手を止めて睨んだ。

「最近、あまり来なくなったことは別にいい。お前にも都合ってのがあるんだろうから、頻度の事はどうだっていい。だけどな、明らかに態度変えたのは、なんなんだよ、私が何かしたのかよ、食事が不味いなら前みたいに言えばいいだろ!ずっと気になってて色々考えてたけど、お前見てたらだんだん腹立ってきた!なんかあるなら今までみたいにはっきり言えよ!」
「、、、てめぇには関係ねぇ。黙って客に食事出すだけでいいだろ、金も払ってる。何が不満なんだ」
ミーアの声が震えている。ゼブラは少し貯めて静かに言い返した。
「今更客だ?ふざけんな!だったら、店休日に来てタダ飯食らったり、倒した獲物を無言で店の前に置いてったりしねぇだろ!あれ、どうせゼブラだろ!?」
ガタッ
テーブルの上の皿の料理が全部なくなって、ゼブラは黙って席を立った。
「だったらもう、そういうことはしねぇし、ここには来ねぇ。それでいいだろ」
ゼブラはミーアを睨むように見た。
こちらに向ける顔がどうにも切ない。

そんな顔するな。喧嘩したくねぇんだよ。
これ以上、傷付けたくねぇだけだ。


「ちょっ、、、!!」
ゼブラは、ミーアの返事も聞かずに店を出ようと歩き出した。

「、、、まだ言われてない!!」
ミーアの声に、思わず足を止めてしまった。
「あ?」
「まだ、お前から美味いって言われてない!」
ミーアの目はまっすぐゼブラを見ていた。
「、、、なんだ、くだらねぇ」
「くだらなくない!!いつもそうだ。私の言うこといつも、くだらねぇってつっぱねる、、、何度聞いても美味しいって言ってくれねぇし!まぁまぁ、ばっっかり!!、、、ヤマトだったら、、こっちが聞かなくてもすぐ美味しいって、言ってくれるに、、、!!」

ぶちっ。

その名前を聞いた途端、ゼブラの顔が今まで見たことのないほど、引きつった。

「、、、なんだと?」
「ヤ、ヤマトだったら、いつもすぐに美味しいって言ってくれるって言ったんだよっ!ゼブラは、美味しいと思わないんだろ?だから、言わないんだよな!?、、、だったら、、っっ!!」
初めてに近いほどゼブラのその恐ろしい顔を見たミーアは、少したじろいだ。

「だからって、なんで今ヤマトが出てくる!?」
「!?」
出ていこうとしたゼブラが、怖い顔をしてこちらに迫ってくる。
そして、目の前まで来て、ミーアを睨んで言った。
「答えろ!!!」
耳が痛い。
ガタッ
「痛っ、、、!」
その迫力でバランスを崩し、尻もちをついてしまうミーア。

その振動でそれまで静かに眠っていたレインが驚いて目を覚まし、何があったのかとキョロキョロ辺りを見渡した。

「、、、い、いつだってそうだ、、、私が作った料理をあいつは美味しいって、言ってくれる。お前に作るよりよっぽど作りがいがあるよ!」
違う、そんなこと思ってない。言葉にしなくてもゼブラの表情見たら、美味いって思ってくれてるって、分かる。
分かってるのに。
言葉で美味しいって聞きたいだけ。
言い出したら止まらない。
喧嘩なんかするつもりなかったのに。
ただ、あの日何があったか聞きたかっただけなのに。

ミーアは言いながら心では懸命にブレーキをかけていた。

「てめぇっ、、、っふざけんなよっ!!」
ぐぃっ
「ぃたっ、、、!!」
尻もちをついたまま立てないミーアを押し倒して腕を掴んだ。

ヤバい。このままだと言葉も行動も止まらなくなっちまう。
どこかで止めねぇと、、っ!

だけど、ミーアが、ヤマトの名を口にした時、死ぬほど嫌だと思って、何かがぷつんと切れてしまった。

これ以上の事をしてしまうと、確実にミーアを傷付けてしまう。
分かっているのに、手が離せない。むしろ抑える腕に力が入ってしまう。

「ゼブラ!痛いって!!離せよ!」
泣きそうな顔でミーアがゼブラを見た。
「、、、っっ」
ゼブラは、これ以上ミーアを傷つけたくない気持ちと、ほかの男の名を口にした腹立たしさから、持っていきようのない感情の狭間にいた。
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