Who owns it?

「ほらほら、落ち着いて食べられないだろ!」
ミーアが高く盛られた定食をよいしょ、と運びながらザワつく店内に声をかけた。

「ミーアちゃんはどんな客でも平等だもんな、えらいよ、ほんと」
常連だろうか、やけに馴れ馴れしい声掛けにゼブラがピクリと反応した。
「ここに来てくれるお客さんはどんな人でも関係ないからな。四天王だろうが、どこかのお偉いさんだろうが!私のご飯を美味しく食べてくれりゃそれでいいんだよ」
その客に向かってニコニコと話すミーアを思わず見てしまう。
「常識外れなことしたら、愛の鉄拳食らって追い出されるけどな!」
客がそういうと、わはは、と笑い声が響き和やかな時間が流れた。

そんな中で食事をするゼブラ。
あまり落ち着かなかった。
食べることになんとか集中する。

自分の前に置かれた料理があと少しという時。
「ゼブラ!おかわりいる?」
近くで聞くと何故かほっとする声。
「聞くまでもねぇだろ、さっさと持って来い」
「はいはい」
いつも通りの返しに呆れた顔で厨房へと向かった。

「さすがだなぁ~」
また、客の1人が感嘆の声を上げた。
「料理も上手いし、気も利くし、嫁にしてぇ~」
他の客がそう言って悔しそうにした。
「怒ったら怖えけど、黙ってたら可愛いんだよなぁ」

自分の特技を使わなくても、嫌でも間近で聞こえてくる客の声。奥歯を強く噛み締めた。

料理がうまいのも、無くなりかけたら気がついてくれるところも、真剣に怒ったら目ぇ釣り上がるところも、何も言わなくても分かってくれるところも、、、全部知ってる。

いや、俺の方がそれよりもまだ沢山知ってる。

寝顔だって知ってるし、泣き顔も知ってる。
風邪ひいた時のとろりとした目も、カエルが苦手でギャーギャー言って必死に逃げ回る姿も。
寒空の星を見上げて、白い息を吐きながら感動する横顔も、着慣れないドレス姿で海で踊る姿も、花火を見惚れる顔も。

何もかも俺の方が知ってんだよ。

嫁にしたい?
調子に乗るんじゃねぇ。

ミーアは誰にも渡さね、、、、
「ゼブラ!おかわり持ってきたぞ!」
「!?」

ゼブラは我に返った。

自分で自分が何を思ったのか、一瞬わからなくなった。


「ゼブラ?大丈夫か?」
「、、、なんでもねぇよ」
不思議そうな顔のミーア。わざと見ないようにそっぽ向いた。

「ミーアちゃん!ご馳走様ぁ!」
1人の客が食べ終えて、ミーアに声をかけた。
「はーい!」
その客の元へと行くミーア。

その時ゼブラは気付いてしまった。

俺は今、明確にミーアを自分のものにしたいと思っている。
他の客と話す姿にムカムカするのは、ヤキモチってやつだ。おそらく。

ヤキモチとイコールなのは──
そうか。そういう事か。

やっと。
いや、今更か。
ヤマトが言っていた事がようやく自分の中でしっくり来た。
今なら堂々とヤマトに宣言できる。

うるさい店内。
ミーアと客の話し声が耳に付く。

やっぱり、ラスト1食で来りゃ良かったぜ、、、
他のやつと話す姿、これ以上見たくねぇ。

皿に残った料理を一気に口に流し込むと、ガタリと椅子から立ち上がり、店を出ようとした。
「お、ゼブラ!行くのか?もういいの?おかわりの回数少なかったけど、、」
客と話していたミーアがゼブラが立ったことに気が付いて声をかけた。
「ここに来る前に小松んとこで食べてきたからな」
それだけ言って出ていってしまった。
「え、、、?小松んとこで食べたのならなんでここに来たんだ??」
昼間に来たことも、まだラスト1食じゃない事も、おかわりが少なかったことも不思議だらけで、怪訝な顔をしながらミーアはゼブラを見送った。
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