遠い花より近くの笑顔

「なっ、なんでだよっ」
そのゼブラの答えにうろたえて、噛み付くミーア。顔が熱い。

「、、、そいつの事を考えながら作るお前の料理なんか、食いたくねぇからな」
「そんなことしねぇよ!」
ポカリと軽く拳をぶつける。
「今もこれからも、みんな平等に美味しく食べて欲しいと思いながら作るよ」
その横顔は強くて、優しかった。

「、、、ん?、、、て事はー、、やっぱり、私の作る料理美味いって事??そうだよな!?なぁ?ゼブラ!!」
ハッと気が付いて気持ちが高ぶる。
「あほか、誰かそんな事言ったかよ、勘違いすんじゃねぇ、調子に乗るな」
ミーアの期待も一刀両断され、がくんと肩を落とすミーア。
「ちぇっ、なんだよ、、そろそろ認めてくれたっていいだろ、、、」
口をとんがらせてゼブラを睨んだ。


、、、、

「ありがとな、さっきはいい物が見れたよ」
店に着いて、ゼブラと別れる間際、ミーアが静かに礼を言った。
「、、、近いうちにヤマトに会う予定はあるのか?」
唐突にゼブラが聞く。
「?いや、ないけど、、、」
「そうか、ならいい」
ミーアの返事を待ってゼブラは踵を返して歩き出した。
「ん?え?なになに?ヤマトに用事でもあったのか?」
不思議な顔をしてゼブラを見送ると店の扉を閉めた。


、、、

なんだろうこの気持ちは。
すごく焦っている自分がいる。

今はただ、ミーアにヤマトと会って欲しくないと、なんとなく、そう思っていた。

「別に、、会ったところであいつの気持ちは簡単には変わんねぇと思うけどな」
自分に言い聞かせて、少しだけほっとする。

でも。

実際今、あいつは、誰のものでもない。
いつか、誰かのものになる日がくるかもしれない。
今ならいつかココが言っていた
「もたもたしてたらヤマト君にミーアを取られちゃうよ?」
の意味がわかるような気さえする。

そう思うと、酷く焦る自分がいるのも事実。
「この変な焦りは一体なんなんだ、くそ」

歩きながら奥歯を噛み締める。

少しずつ。
ほんの少しずつではあるが、
胸の奥がきゅんとするこの感情が何者なのか、わかってきたような気がする。

具体的に、どうしたいかは、まだ分からないけど、前より確実に、
「ミーアの飯が食いたい」
と明確に思うようになってきた。

今夜の遠くの光に頬ける横顔よりも自分が完食した後に見せるあの満足そうな笑顔が、頭にずっと張り付いて離れなかった。
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