雨と虎

CLOSEになった店。
ミーアはすぐに支度を開始した。

カバンにタオルと少しのご飯を忍ばせて、雨の中、飛び出した。

「軒下見てたけど、やっぱりいなかったし、あの小ささじゃ、そんなに遠くへは行ってないはず!あれは、たぶん、、、バロンタイガーの子供。実際に本物を見たことはないけど男たちの会話からすると、きっとそうだ。特徴が似てる。バロン諸島の生き物のはずだけど、あの牙や毛皮を求めたハンターから逃げてここに流れ来たんだろう。さっきのヤツらが本当にあの子を探してるとしたら、それより先に探し出して保護する!」

近くの草むら、木陰、洞穴、探して回るが中々見つからない。

「この辺はほかの猛獣もいる、、大人のバロンタイガーだとヒエラルキー的に上になるだろうから、まぁまぁのもの相手なら平気なんだけど、なんてったって子供だからなぁ、あいつらから逃げられたとしてもこの辺りの猛獣らにやられてしまう、、早く見つけなきゃ!」

色んなことが気になりつつも必死に探した。

地面を打ち付ける雨の音であの小さい鳴き声は聞こえない。
「こんな時、ゼブラがいればなぁ、、」
小さく呟き、草をかきわけていく。

「お願いだ、早く見つかってくれ、、誰かに見つかるより前に、、頼むから無事でいろよ、、!」
心の中で祈りながら捜索は続いた。
、、、

、、、
「はぁ、はぁ、、なかなか見つからないな、、遠くまで逃げていったか、、もしくは、もうハンターに、、いやいやいや!!」
しばらく探し回り、ミーアの体が冷えてきた頃、疲労から嫌な想像をしてしまい、首をふった。

その時。
ミャウ、、、

か細く小さい声を聞き逃さなかった。
「!!あいつの声だ!」
少し先の草むらをかき分けた奥。
小さく丸めた体を震わせてバロンタイガーの子供はそこにいた。
「いた!、、、こんなに濡れて、体力もだいぶ消耗してる。寒かっただろ、店の軒下から動かなくてよかったのに、、今度こそ、その傷見せてもらうぞ」
昨日より弱っているのか、威嚇も抵抗もなかった。
ぐったりとした小さな体を抱き上げると持ってきた毛布にくるんで抱きしめる。
「頬が裂けてる、、あいつらか、、なんて酷いことを、、!!傷の手当もしてやる、店に戻るぞ!このまま大人しくしててくれよ!」
踵を返して走り出した。

あと少しで店の前、、という時。
「おい待て!あんたは、、、、あの店のねえちゃんだよな?」
男の声に呼び止められた。

「あぁ、、さっきの、、、どうした?」
腕の中の生き物を悟られてはいけない。
毛布に更に深くくるんで見えないようにした。
「この辺に子供のバロンタイガー見なかったか?」

やはり、探していたのはこいつか。

「バロンタイガーの、子供?、、、し、知らないなぁ、、」
しらを切ってみる。

「そうかい、、、」
すんなりと諦めてくれるか、と思った。
「それじゃ、その腕の中の生き物、ちょっとみせてくれや」
気づかれていた。
男の声が卑しいほどに低くなる。

「、、、断る、と、、言ったら?」
ミーアは腕の中のバロンタイガーを更にぎゅっと抱き締めた。

「それなら、力づくでいくしかねぇな」
降りしきる雨が体を打ち付ける。

「力づく、、ねぇ、、」
ミーアの口元がニヤリと笑う。

「ほぉ、、えらく余裕じゃねぇか」
猟銃がミーアに向けられた。

「そんなんで私がおじけづいてこいつを差し出すとでも?」
「いや、、、そうじゃねぇ」
一瞬の隙だった。

ばっ
「あっ!!しまった!」

男は2人組。ミーアの前にいるのはそのうちの1人だけ。
もう1人がミーアの隙をついて腕の中のバロンタイガーを乱暴に、そして強引に奪っていく。
「俺はただ、お前の気を引く役だったってわけだ、じゃあな!」

「くそっ、、!やられた!待て!」
走り去る2人を必死に追いかけた。
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