食いしん坊のおばけ

数日後。

「はーい、お待たせ!2人前ね!」
男女の客の前にそれぞれ定食を置く。

「うわぁ、、ほんとに美味しそう、、、」
女性客はゆっくりと箸を持ち上げた。
「ようやく君を連れてくることができたよ、喜んでもらえてよかった。少しでも元気になってもらえれば、、」
こちらもまた、嬉しそうに女性客を見つめる。

「、、、まだ、付き合う前って、感じかな?お似合いのカップルだな」
厨房に戻りながらその2人を見て小さく笑うミーア。

食事もあと少し、という頃。
ミーアはピッチャーを持って2人のテーブルに来ると、空になったグラスに水を注いだ。
「ありがとう」
2人が満足そうに笑ってミーアを見た。
「美味そうに食べてくれて、こちらこそ、ありがとな、ゆっくりしていきなね」

「ほんとに美味しかったです、また、来ますね」
女性客も笑っていた。

「実は彼女の妹も今日、連れてきてあげたかったんですが、、、」
男性客の声色が少しくぐもった。
「妹?用事で来れなくなったとかか?だったら、また、違う日にでも、、、」
ミーアがそう言いかけたところで、男性客が首を横に振った。
「?」
不思議そうに2人を見つめる。

「私の妹、、病気で先日、亡くなったんです、、」
「!?そうだったのか、、、それは、残念だったな、、」

「ずっと、噂になっていたここの料理が食べたいって、いつも言ってて。亡くなったあと、姉である彼女の元気がずっと無かったので、少しでも元気になって欲しくて、今日、思い切って連れてきたんです。食べさせてあげられてよかった」
優しい眼差しで彼女を見る。

「、、、もしかしてさ、あんたの亡くなった妹さん、、髪の毛、黒くて長かった?」
「え?えぇ、、黒髪をずっと伸ばしてましたけど、、」
不思議そうにミーアを見た。
「ちょっと小柄な、、、」
「はい、小さい時から体が弱かったので、確かに同年代の子と比べると小さかったです、、」

そこまで聞くとピンときたミーアが小さく笑った。
「だったら、大丈夫。この前、うちの定食、食べに来たよ。おかわりまでして、笑ってた」

キョトンとした顔で顔を見合わせる2人。
「お代ももらってるし、満足そうにしてたから、心配しなくていいよ」

あの、食いしん坊のおばけ。
きっと、あの子だ。
亡くなった日に魂がここに来たのだろう。

2人がまだ、よくわかってない顔をする中、ミーアは、この前の騒動の事を思い出し、笑って呟いた。

「、、、また、いつでもおいで」
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