初めて見た顔

「、、悪い」
ゼブラは、そう一言だけ言うと捕獲した獲物の方へ歩いた。

「あーあ泥だらけだ、、、」
背中やおしりに付いた土埃をパタパタと払いながら身を起こす。

「しかし、、さっきの間は、、なんだったんだ?、、ゼブラのあんな顔、初めて見たけど、、、」
助けて貰ったあと、上から覆うように手を押さえつけられた、その一瞬。少しだけゼブラの顔が切なく見えた。
「、、、気のせいか、、、」

ミーアは眩しい朝日のせいにして獲物を抱えるゼブラに走りよっていった。

「おぉー!でかい!これだけありゃ10食分、余裕だな!早く帰るぞ!ゼブラ!お前の朝飯もあるんだからな!」
「ふんっ、俺に指図すんじゃねぇ」
「はいはい、わかったわかった、あ、捌くの手伝ってな」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ」
「手伝ってくれないとあんたの朝ご飯作る時間なくなるけど、いいのか?」
「、、、くそっ」

いつも通りの会話を交わして2人はミーアの店へと戻って行った。

、、、、

「ごめん、おまたせー!はい、お礼の朝飯!ゆっくり食ってていいからな!」
開店時間まであと少しだけある。
店のテーブルにゼブラに用意した朝食が大盛りで置かれた。

もぐもぐ、、
ごくんっ

働いたあとに食べるミーアの食事。
早朝にここに来るのも悪くないと、食べながら思った。

ミーアは開店時間ギリギリまで準備に追われ、夜のように、エプロンをはずして自分の前に座りゆっくり会話をする時間はなかった。
時々鼻をくすぐる仕込み中の料理の匂いと、バタバタと動き回る夜にはあまり見ないミーアの姿を少しだけ楽しみながら食事をした。
何度かおかわりを要求して、腹が満たされた頃。

「そろそろ店開けるけど、いい?」
開店準備を終えたミーアがゼブラに聞いた。
「まだ食べたいならおかわり持ってくるけど?」
「いや、いい。食い終わったところだ」
ガタ、と席を立ち扉へと向かう。

「あっ、、あのさ、、」
背中でミーアに呼び止められて足を止めた。
「、、、夜も来る?」
「、、、、どうだろうな、気が向いたら来てやるよ」
そう言うと再び歩き出した。
「そか、、気が向いたら、か、、分かった!じゃあな!手伝ってくれてありがと!」

店を出て少し歩き出したところで最初の客だろう、ミーアの迎え入れる声が聞こえた。
「あ、いらっしゃーい!いい獲物が捕れたんだよ!今日の定食はうまいぞー!」
弾むようなご機嫌な声。
耳に心地いい。
ずっと聞いていたいとまで思える。

さっき食べた朝食の味を噛み締めるように真っ青な空を見上げた。

「それにしても、、なんなんだ、あいつ。あんな顔できんのかよ、ふざけんな、、調子乗りすぎだろ、、」
気が向いたら来てやる、と答えたあとの少し寂しそうな顔。

倒れた時に感じたミーアへの肉感的な感情。
一瞬、ほんの一瞬だが、官能的になった顔が見たい、声が聞きたい、と思ってしまった。
「いや、気のせいだ。気のせいに決まってる」
よぎりそうになった気持ちにかぶりを振って誤魔化していた。

その夜、ゼブラが再びミーアの店に訪れたのは、また、別の話、、、
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