甘い秘密

「街で賑わってただろ?バレンタインデー!!私もよくわかんないけど、主に好きな人とかお世話になってる人にチョコとかプレゼントを渡す日なんだってさ」
「、、、街なんて最近行ってねぇから知らねぇよ」
じとっとした目でミーアを見るゼブラ。
「んで、甘いもんがどうしたよ」

「あー、えっと、甘いもの、大丈夫なら、準備してあるものがあってだな、、その、、えっとー、、、、、た、食べる?」
いつも食事を出す時とは違う緊張感が何故かミーアにあった。
「あるんなら早く持ってこい」
「わ、わかったっ、、」
なんとなくソワソワしながら厨房へと向かう。

いつもは美味しいと言って欲しいと思いながら作る料理。もちろん自信はある。
だけど、これは、、どうかな、、
こんなもん、食えねぇとか言われたらどうしよ、、、食後のデザートなんて普段ここでは出さないし、、

「ふぅぅ、、、よしっ、、」
大きな深呼吸ひとつ。
覚悟を決めてトレーにそれを乗せた。

「おまたせ、、、これなんだけど、、、」
そう言ってゼブラの目の前にチョコレートケーキをワンホール、そのまま置いた。
「、、、」
デコレーションなんてものはない、シンプルなチョコのケーキにフワリと粉砂糖が振られたもの。
そして、、

「ん、、この香り、、、ブランデー、、か?」
「おっ、よく分かったな!多分、こっちの方が好みなんじゃないかと思ってな!チョコのスポンジにかなりたっぷり染み込ませてある!、、まぁ、ブランチに貰ったあの酒よりかは度数は低いけど、香りだかくていいものを使ってるんだぞ!」
ふふん、と得意げに説明するミーア。

ナイフを入れるとジュワリとブランデーが溢れ出す。

「お前、、酒弱いくせにこんなもの作って、、大丈夫だったのかよ」
思わず心配してしまうゼブラ。
「まぁな、頭痛くなるしフラフラだったけど、、頑張った!香りもいいしな」
勢いよく親指を立てて笑った。

「チョコのクリームはあまり甘くしてないから、酒が好きなゼブラでも食べられると思うぞ」

ナイフで大きめに切り分けた1つを素手で掴むとその口に放り込んだ。

もぐっ、、、!!
口の中に広がるブランデーの香り。
ブランデーを含んだスポンジがしゅわしゅわと溶けていく。
甘みの抑えられたクリームがまろやかに口の中を滑っていく。
一瞬で胃の中におさまる感覚。
それに、食事の後なのに重くない。
不思議だった。
もう1つ、さらに1つと口に入れていく。
その表情はミーアが味の感想を聞くまでもなかった。

「他の客にはこの小さいハートのチョコを買って渡したんだけど、多分ゼブラはそんなんじゃ足りないって言うと思ってさ、、あ、あと、今日ヤマトも来たぞ!」

ピクッ
「ヤマトが?あいつにも何か渡したのか?」
(あいつ、わざわざバレンタインの日に、、貰えると思って来たのか、、?調子乗ってんな、、)
ケーキを持つ手が思わず止まる。

「うん、私がいない間もお店の周り掃除してくれたり、だいぶ世話になってたから、他の客と同じものじゃ私が物足りなくて、あいつにも手作りのもの渡したんだ」
「ふーん。これと同じものか?」

「んーん。酒が強い感じでもないからこのケーキみたいにブランデーは使ってないクッキーを」
ミーアのその返答に心のどこかでホッとしている自分がいた。

「だから、これは、ゼブラだけの特別なケーキというわけだ、他のやつには言うなよ、特にヤマトには!めんどくさい事になりそうだからな!」
そう言って口の前で人差し指をたてた。
「秘密ってことか、、まぁ、いいだろ、わかった」
そう言ってもう1切れ口に放り込んだ。
「そういうこと!あ、なんか飲む?」
「酒」
「酒は置いてねぇってっ、こないだだけって言っただろ!」
「知るか!なんか飲むか聞いてきたのはお前だろっ」

またいつもの口喧嘩が始まろうとしていた。



2人だけの甘い秘密。
4/4ページ
スキ