口喧嘩

「、、、で?向こう、、妖食界は、どうだったんだよ?くたばってた感じはしねぇが、、」
いつの間にか飲み干した三杯目。ミーアの黙って出ていった理由がわかって少しだけホッとした自分がいて、思わず他の話を振る。

「ねぇ!ほんと、酒強いなー、酔わないの?なんなの、ゼブラが飲むと水になるの?ねぇ?私ももっかい飲んでみていい?ねぇ?」
酔っているのか、さっきまでふにゃふにゃしていたミーアは、今度はケラケラと笑っていた。
「うるせぇなっ、こっちの質問に答えろっ、つーかもう飲むな!ったく、、、酔うとめんどくせーな、コイツ、、飲ませんじゃなかったわ、、、、シャンパン飲んだ時、こんなんじゃなかっただろ、、、なんなんだよ、度数の問題か?、、、」
今更気がついたゼブラは少々頭を抱えた。

「んな事どうでもいい、、っ、妖食界は、どうだったのかって聞いてんだよっ」
酔ってまた飲もうとするミーアのグラスを奪って言葉を続けた。
「あ、妖食界ね、毎日早朝から日付が変わるまで調理と修行の繰り返し。毎日ヘトヘトだったよ。でも!ご飯は美味しいし、人はみんな良い奴ばかりだし、厳しくて辛い時もあったけど、、楽しかったな、3年があっという間だったよ、あと、冬はクソ寒くて毎日温泉入りにいってたわ、、」
思いを馳せながらそう語るミーア。
「ふんっ、そうかよ」
自分から聞いておいて、なんとなく、ほんとになんとなく、妖食界を思い出して、懐かしむような、とてもいい顔をしたミーアを気に入らないと思った。
「でも、、、」
ミーアが続けて何かを言おうとしているのに気が付いてヤケで煽ろうとしたグラスを持つ手が止まる。
「時々、人間界に、、この店に帰りたくて、仕方ない時もあったよ、正直な、、、」
「、、、、ごくごく、、」
ゼブラは黙って酒を含む。
「みんなに会いたかったなぁ。すごく。でも、妖食界に行ったこと、後悔はしなかった、今もしてない、行ってよかったよ、ほんと。苦手な食材も扱えるようになったしな!」
「ふん、それならいいじゃねぇか」
「うん!」
この笑顔は3年前から変わらない。
久しぶりに目の前で見たミーアの笑顔に、忘れていた感覚が蘇って心臓が少し跳ねた。
、、、

「はぁー、、酒のせいかなぁ、、あっつい、、」
ミーアはひと呼吸おいてそう呟くと黙って椅子から立った。

席を離れようとしたその時。

がしっ

「!!ぅわっ、、な、なんだ!?」
ふらりとおぼつかない足のミーアの腕をゼブラがしっかりと掴んで言った。
「、、、どこに行く?」

「え、、?あ、いや、暑いから外の風当たりに行こうかな、、って、、??どうした?ゼブラも来るか?」
急な事に少し戸惑いながらもそう答えるミーア。

「、、、、ゼブラ?」
ゼブラは何かを言おうとして何度も言葉を選んでいるようにも見えた。
「もう、二度と、、、」
「ん?」
聞き返すミーアの顔がなんとなく見れない。

「もう二度と、黙っていなくなるんじゃねぇ」
考えた末に出てきたゼブラの言葉に何も言えないミーア。

「、、、だ、黙って、、ってっ、ちょ、、ちょっと外の風、当たりに行くだけだってば、、なんでそんな怖い顔してんだよ、、」
そう言い返すがなんとなく会話がしっくり来ない。
次の言葉を選んでいるとゼブラが声を出した。

「、、何が、、、何が料理修行だ、俺に黙って急に3年も店休みやがって、ふざけんな!ほんとはな、帰ってきたお前をひねり潰してぇくらいに俺は頭に来てんだよ!」

「あ、、そっち!?だっ、だから!こうやって無事に帰ってきたじゃねぇか!そもそも修行に出ようと思ったきっかけはお前の言葉なんだよ!言わばお前のせいだろ!ちゃんと帰ってきたんだからいいだろ!!つーか、何をそんなに怒ってんだよっ、3年前に出した不味い料理の事、まだ根に持ってんのかっ!?私も悪かったと思ってるよ、未熟だったって!だからこうやってまた、店開いてリベンジしてんだろ!、、急になんだよっ」

「さっきは俺のせいじゃねえっつったろ!!てめぇ
嘘つきやがったなっ」

「だーかーら!!ゼブラのせいだけど、それはいい意味でだって!修行で腕磨いて帰ってきたんだからいいだろ!!」

「だからって、黙って3年もいなくなるなって言ってんだよ!!調子乗ってんじゃねえぞ!捻り潰すぞ!」

「やれるもんならやってみろ!!一生、お前には飯作らないからな!!」

ギャーギャー、、、!

ミーアが戻ってきた店。
ミーアとゼブラ、2人だけの空間。
3年ぶりの口喧嘩が、はじまった。
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