決断と旅立ち

ヤマトの突然の告白とミーアの決意から1週間。

店の扉の鍵をかけ、何度も確認する傍らにトリコと小松の姿があった。

「ミーアさん、ほんとに、、行っちゃうんですか、、?」
小松の悲しそうな声に鍵を確認し終えたミーアが振りいて笑った。
「なんて顔してんだよ。戻ってこないわけじゃないんだから!」
「だってぇ、、ねぇ!トリコさん、、」
トリコに嘆きかける小松。
「せっかく腹空かせて朝イチで来たってのに、しばらく店閉めるなんてよぉ、、あんまりだぜ、、」
腹の音を鳴らしてシュンとするトリコ。
「あ、、そっちですか」
小松が困ったように笑った。

「でもなんでまた、料理の修行に出るなんて
、、?」
「まだまだ未熟だって気が付いたんだよ、些細なことで集中力無くすようじゃまだまだ。苦手な食材だってあるし、知らない味付けだってまだあるからな」
「それにしても突然だなぁ、どこに行くのか決めてるのか?」
トリコが尋ねた途端、近くで声がした。

「ミーア!そろそろええか?行くで」
関西訛りの声に驚く2人。
「!!、、まさか、これから行く場所って、、」
「そ、妖食界!今度は完璧に調理技術を自分のものにしてみせようと思ってな!ブランチに迎えに来てもらった」
決意のその顔はこれからある厳しい試練を楽しみであるかのようにワクワクしていた。

「この事、、ゼブラさんはご存知なんですか?」
「、、、言ってない」
「えぇ!?い、いいんですか!?」
驚いた顔でミーアに詰寄る。
「1週間、店に来てないし、きっかけくれたのがそのゼブラなんだよ、だから、いいの。つーか、多分どっかで地獄耳働かせてすでに知ってると思うぞ」
そう言って意地悪そうに笑った。

「まぁ、ミーアが決めたことをゼブラが知ってようが知るまいが、関係ねぇよな、止める義理はねぇしな」
トリコが補足する。
「そういうこと!んじゃ、ブランチ待たせてるから、もう行くな!」

「帰ってきた時は、知らせろよ!すぐに食いに行くからよ」
トリコが笑って見送る。
「お体に気をつけて!行ってらっしゃい!ミーアさん!」
さっきまで不安げだった小松も少し名残惜しそうに笑っていた。
「行ってきます!!」

、、、、
「お待たせ、ブランチ!」
「、、、ええんか?前よりもっと厳しくなるで?」
「覚悟の上だ。むしろそれをお願いするよ」
歩き出したブランチが見たミーアの横顔はいつかの幼い少女のただの好奇心に満ちたものではなく、確実に決意に満ちた顔だった。

「ゼブラ、ちーっとばかし、ミーアを預かるで」
小声でそう言うと、奥の木陰を横目で見て笑った。

、、、、

ざっ、、

しばらくして1人現れたゼブラは、誰もいなくなったミーアの店を見上げた。

「チッ、、よりによって天狗野郎のところかよ、、気に食わねぇ、、、」
そう呟いたが、引き止めたいとか、そばに置いておきたいとか、そういう気持ちはなかった。

「気に食わねぇが、、、」
ミーアが今以上の成長を望むなら、それを止める義理はない。

「音壁」

薄い声の膜が店を覆う。

仕方ねぇ。帰ってくるまでこの店は俺が守っといてやる。
だから、絶対、帰ってこいよ、ミーア。


「、、俺も負けちゃいられねぇ、、」
ゼブラの顔にも決意が現れていた。
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