その涙の意味

ヤマトを椅子に座るように促し、グラスに水を注いで渡した。

ゴクゴクっ、、
一気に飲み干すヤマトを見て、ミーアも1呼吸おいて向かいの椅子に座り、小さく口を開いた。

「、、、私を好きになってくれたのは、凄く嬉しいよ、ありがとな、、、、」
そして続ける。
「ヤマトは会った時とは見違えるくらい変わったよな。仕事も頑張ってるみたいだし、普段もよく気を使ってて、いいヤツだって思うよ、、、でも、、今、私がすべきことはヤマトの告白に答えることじゃない、、」

「、、、っっ、、、やっぱり、、そうっすよね、、分かってはいたっす、、、」
ガックシと肩を落とす。
「私がヤマトの気持ちに気が付かずに接していたことで、知らない間に傷つけてたんだよな、、ごめんな」

「そ、そんなッ、ミーアさんが謝る事じゃないっす!!やめてください!ミーアさんは全然悪くないっすから!!」

「お前の気持ちに気がついてない時、ゼブラに言われたんだ。ヤマトの優しさがどこから来てるのか、わからないんだったら、これ以上ヤマトに会うなって」
「え、、、ゼブラさんがそんなことを、、、」

その発言は自分とミーアとどっちを庇うものなのか。
ヤマトはすぐにどちらか分かった。
(少なくとも俺のためじゃない、、)
「あの、、、」
少し沈黙したあと、口を開いたのはヤマトだった。
「いつか、ミーアさんにとって、俺は料理人仲間だって、言いましたよね?」
「?うん、マルシェの時だろ?言ったよ」
「だったら、、、ゼブラさんは?」
「、、?」
「ミーアさんにとってゼブラさんって、どんな存在、なんすか?」
その一瞬。ヤマトの目に嫉妬の色が滲み出ていた。

「なんで、、そこで、ゼブラが出てくんだよ、、」
「いいから、答えてください」

ヤマトのいつもと違う雰囲気に息を飲む。

「私にとって、、ゼブラは、、、うーん、、そうだなぁ、、なんだろう、、客の1人だ、と一言では、言いきれないものもあるし、かと言って、他にどういう存在かって説明も難しいな、、気が付いたら何故か考えてる時もあるしなぁ、、やっぱり美味いって言わせたいやつなのは変わらないかな」

自分の事は即答で料理人仲間とさらっと答えたあのミーアが頭を悩ませて言葉を選びながらゼブラとの関係を答えていく姿を見てヤマトはその差を思い知った気がした。
「自分は、、やっぱりゼブラさんには叶わないっすね、、」
小さくため息を吐く。そして続けた。
「所詮、力が強いだけとか、好きな気持ちは自分の方が上だ、とか、俺が勝手に張り合ってただけで、あの人はもっと上の次元をいってたって事、今、思い知りました」
そして、椅子から立ち上がって、驚いた顔のミーアにこう言った。
「今は潔く引きます。ですが、まだ、あきらめないっすから!自分が今できること、精一杯やって、いつか、ミーアさんも認めるような男になってみせるっす!」
「!!」
ミーアはその迫力に押され、呆気にとられて返事が出来なかった。

ヤマトはその勢い任せに扉に向かうと驚いた顔のままのミーアに頭を下げた。
「こんな時間に押しかけて、ほんと、すいませんっした!!帰ります!」
と飛び出していってしまった。
「あっ、、ちょっ、、」


「、、、、」
再び1人になったフロア。
小さくなるヤマトに背中を見送って、少し考えたあと、ミーアはある決断をした。
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