苦手なもの

「なになに?ミーアちゃん、好きな人がいるの?」
女性客が囃し立てた。

「ちがっっ、、こっちはいいからっ!そっちはそっちで話してろよっ!ブランチもっでっかい声で余計な事言ってんじゃねぇっ」

「きゃーっミーアちゃんが怒ったぁっ」
焦るミーアに女性客は楽しそうに声を上げた。

「なんやねん、おもんな、、、ちょっとくらいおもろい話でもあるんかと期待して来たっちゅーのに」

小指で鼻をほじりながらつまらなそうにぼやくブランチ。

「そういえば、ミーアちゃんって、苦手なものってないの?」

「に、苦手なもの?なんだ?急に」
焦りを残したままその質問には冷静に答えるミーア。
「料理は得意だし、猛獣1人で倒せるくらい強いし、偏屈なお客さん相手でも全然怯まないしさぁ。何が来ても平気そうだから、ちょっとくらい弱味とかってないのかなって」
うんうん、と興味ありげに女性客の友達も頷く。

「弱味かぁ、、うーん、、、」
「あ!お前、1個あるやん!ほら、カ、、、」

言い悩むミーアに指1本立ててブランチが意気揚々と身を乗り出した。

その瞬間。
「むぐっ!?」
ミーアの手のひらがブランチの口を咄嗟に塞いでいた。

そして女性客の方を向いてこう言った。
「苦手なものは、不意打ちとお酒かな!」

「不意打ち?」

「そ。背後からいきなり!とか、振り向きざまに!ってのがね、どうしても体動かなくて苦手でさ。お酒は単純にすぐ酔うから飲めないだけ。だから、うちの店にも酒類は置いてないんだよね」
困ったように笑ってその場をごまかした。

やがて、雨も小ぶりになり女性客はそれぞれの傘を開いて帰って行った。

「足元気をつけてなー!」
見送ったあと店に戻りブランチを睨む。

「ブランチ!私の苦手なあの事は絶対言うなよ!!」

そ知らぬ顔をして覚めたコーヒーをごくり。

「別にええやないか。かわいいやん、あれが苦手とか。理由は別として」

「、、、だから嫌なんだよっ!」
「ま、わからんでもないけどな。普段、負けず嫌いで強気のミーアがあんなもんが苦手とかゆーたら、そのギャップにみんな笑うもんな~、、あの時もそうやったしな」
その時のことを思い出してヘラヘラと笑うブランチ。

「あの時、みんなに笑われて、、ほんっとに嫌だったんだよっ!だから!いいか!?絶対言うなよ!」
念を押すように詰め寄るミーア。
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