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ようじょ×4

その日、キーアとシズクは二人の少女と運命の出会いを果たした。

「行こ、シズク!」
「うんっ」

再独立記念式典の当日。あちこちお祭りムードの中、シズクの父であるアリオスに許可を取って、二人は東方人街に飛び出した。
観光客も多い中、小さい体を活かして大人の足元をすり抜ける。目指す場所は決まっていないが、とりあえず町中を一回りしてみようか、と相談していた。
そんな時。

「だ、大丈夫よ! おかあさん見つかるって、たぶん!」
「うぅ……ままぁ……」

サロペットの紐が肩からずり落ちたままなりふり構わず泣く幼い少女を、黒髪をハーフツインにして、大きな鞄を肩から下げた少女が宥めていた。どうやら幼い少女の母親を探しているらしい。
ふと、黒髪の少女とキーアの視線が交じった。

「……!」
「!!」

なんらかのセンサーが互いに反応し、ぴぴんと固まる。
その間にシズクは幼い少女をあっという間に泣き止ませ、二人を見上げていた。

「……ものすごい量の因果……」
「うぇっ」

そう呟いたキーアの視界には、少女に繋がる大量の因果が映っていた。
不可解なのは、繋がる因果が全て“未来のもの”であること。現在の時間軸に繋がる因果は、遠くへ繋がる微かな細いものと、今幼い少女と行動を共にしたおかげか彼女と繋がった物のみ。
これは流石に心配になる。キーアは少女の手を取って、いつものにっこり笑顔で話しかけた。

「キーアね、キーアっていうの。そっちの子はシズク。キミは?」
「……えと……わたし、アイリス。こっちはユメ」

少女────アイリスは、ユメと紹介した少女の肩を持ってぎこちなく微笑んだ。
きょとんと目を丸くしたユメは、次第に状況を飲み込んでいったのか、小さな体で必死に飛び跳ねる。

「あのね、ママが迷子になっちゃったの。ユメが探さなきゃだから、アイリスに手伝ってもらってたのっ」

……きっと迷子になったのはユメの方だろう。ずり落ちたサロペットの紐を肩にかけてやったシズクは困ったように笑った。
そういうこと、とアイリスも頷く。この記念祭の人混みの中逸れたらなかなか再会は難しいのではないか。

「ユメ、共和国から来たみたいだったから……おかあさんもこっちにいるかなって思って」
「でもここ、おうちの周りとぜんぜんちがうよ?」
「ユメちゃんは首都に住んでるのかな。たしか、ここはラングポートってところと似てたはずだよ」

シズクの知識にへぇー、と間抜けにも程がある顔を晒すアイリスとユメ。
「じゃあ、この辺にはいないのかな」と肩を落としたアイリスに、ぽんと手を打ったキーアが一つ提案をする。

「そーだ、ロイドにお願いしようよ!」
「ロイド?」
「ダメだよキーアちゃん、ロイドさんパトロールで忙しそうじゃない」

だからこそだよ、とシズクに熱弁する。
パトロールで街中を巡っているからこそ、ユメのお母さんとも巡り会い……なんなら、ユメを探しているかもしれない。
ロイドたちは困っている人を見過ごせないのだ。

「でも……そんなに動き回ってる人、今から会えるのかしら」
「ダイジョーブ!キーア、ロイドのいる場所わかるもん!」

自分を繋ぐ、最も太い因果の先。そこにロイドはいる。
先ほどからあっちこっち動き回っているが────まぁ、なんとかなるだろう。
キーアはアイリスとユメの手を取り、因果の続く方向へ引っ張る。

「行こう、きっとなんとかなるよ!」

アイリスの真っ赤な瞳がぱぁっと輝く。ユメの無邪気な笑い声が街に響く。
二人の後ろから、しょうがないなぁと言いたげなシズクが困ったように笑っていた。







「……で、支援課に連れて帰ってきたと」

そうだよ!
元気よく返事をするキーアに、ロイドは思わず苦笑いを浮かべた。
特務支援課、入り口付近の談話スペース。小さな子供たちは一つのソファにぎゅうぎゅうに詰まっていた。
はしゃぐユメを宥めるシズク。その間で居心地悪そうに苦い顔をするアイリス。

「その、どう?ユメのお母さん、みてない?」
「あぁ、見たし、ユメちゃんを探してほしいとも依頼も受けたよ。今、連絡もしてる」

なんと素早い行動。確かに向こうの固定導力器ではこっちをチラチラ伺いつつエリィが何かを話している。
さっすがロイドだ。満足してどうだとアイリスを見れば、綺麗な紅耀石の目をまんまるにして固まっていた。

「ね?言った通りでしょ?」
「うん。本当になんとかなっちゃった。ユメ、向こうでおかあさんと電話してるそうよ」
「ホント!?」
「あぁちょっと、ユメちゃんっ」

キーアの言葉に顔を綻ばせ、少女は安心したように頷く。
そしてアイリスの言葉に反応したユメが、靴も履かないまま靴下で支援課の床を蹴る。慌てて追いかけたシズクも気にせずエリィに受話器を貸せと手を伸ばす様子を微笑ましく見守り、ロイドはそういえばと気になっていたことを口に出した。

「アイリス、君のご両親は? クロスベルの子ではないだろう」

その言葉に、アイリスの小さな肩がびくりと飛び上がる。
中に入っていたらしい大きなアザラシの人形が飛び出るほど鞄をぎゅうと抱きしめ、今度はこちらが迷子のような顔をする。

「……いないわ。一人で来たもの」

子供にしてはませた喋り方をする彼女は、無理やり笑って誤魔化した。
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