プロローグ
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【おお!ハルくん!良かった良かった、ジョーイさんから連絡は貰っていたんじゃが心配しておったぞ!】
澄み渡るような青空の下、半壊されながらも何とか無事だったポケモンセンターのパソコンで私とオーキド博士は通話をしていた。
【なんじゃ、何だかボロボロじゃのう】
「はい……まああの、色々ありまして」
【熱も出たんだって?】
「あ、そっちはもう、ジョーイさんのお陰で大分良くなりました。すみません、来て早々」
何じゃそんなことと笑い飛ばしてくださるオーキド博士はさすが貫禄が違う。これがスオウ博士だったらこんこんと怒られ、インテレオンにはベッドに縛り付けられているところだ。(比喩表現では無い。前に怪我をしたときに、インテレオンに本当にベッドに縛り付けられた事がある。あの子だったら絶対にやる。)
【そういえば今トキワシティのポケモンセンターじゃろう?赤と白の帽子の男の子に会わんかったか?】
「あっ、会いました……けど、話をする暇なく行ってしまって」
【そうかそうか、まあまた擦り合う縁もあるじゃろう】
男の子、サトシくんはポケモンセンターを半壊させた後、そのまま嵐のように去っていってしまった。お互い名乗らないまま、庇ってくれたお礼も言えずじまいだ。
【ふむ、トキワシティにいるのならお使いを頼まれてくれんかの?】
「あ、はい、もちろんです」
【ありがとう!トキワシティを少し行ったところにワシの知り合いの店があって……】
丁寧に道順を教えてくれるオーキド博士に、慌ててリュックから手帳を取り出す。さくっとメモを取り、用事を済ませたらマサラタウンに戻る旨を伝えて通話を切った。
「ハルさーん、お熱計りますよ」
「あ、はい……というかここまで壊れてしまって大丈夫なんですか……」
「ここのモンスターボールは全てニビシティに転送したから問題ないわ」
「(そういう問題なのかな…)」
「うん!熱も下がったわね。もう行くのよね?良かったらポケモンセンターの備品いくつか持って行ってもいいわよ」
「えっ!」
「何だか怖い目に合わせてしまったし……片付けも手伝ってくれたでしょ?」
片付けっていうか荒れに荒れまくったカウンター周りを少し整理して、パソコンを再起動させてだけなんですが!けれど有難い申し出だ。深く深く感謝しながら、虫除けスプレーやらピッピ人形やらを補充させてもらった。
しかし何でもあるなぁポケモンセンター。防寒服とかもあったし、もしかしたらトキワシティの避難所も兼ねているのかもしれない。
「それじゃあ気をつけてね!」
「はい!行ってきます!」
☆
オーキド博士の知り合いのお店というのは、小さな育て屋さんだった。要件を告げると先に連絡をしてくれていたようでスムーズにお使いである書類を受け取ることが出来た。
リュックに大事にしまって、壁にかかった柱時計を見上げる。うんうん、この調子なら夕方にはマサラタウンに帰れるかな?
「ああ、そうだそうだ。キミ、オーキド博士にポケモンの卵を届けてくれないか?」
「たっ……まごですか」
思わず声が裏返ってしまった。ポケモンの卵。触るのも見るのも初めてだ。スオウ博士のところでもまだお目にかかったことは無かった。
おどおどする私とは対照的に育て屋さんは慣れた様子で、カウンター下からカゴを取り出し中からひとつの卵を私へと差し出した。
「そうそう、これがねぇ何だか珍しい模様でね。オーキド博士に見てもらおうと思って」
「ナルホドデスネ」
「?? どうしたの?」
「いやあの、ポケモンの卵に触るの初めてで……何か気をつけることだとかって」
受け取ろうとしない私の萎んでいく言葉尻に、育て屋さんの店主はカラカラと明るく笑い飛ばした。
「なぁに大丈夫!落としたり乱暴に扱わなければなんて事ないさ。心配なら専用のポシェットを付けてあげよう」
「ぜ、ぜひ!」
「ふふふ、これはメリープの綿毛が編んであってね。あたたかいんだ。はい、どうぞ」
卵の入ったふわふわのポシェットを受け取る。店主さんは大丈夫だと笑ったけれど、それは慣れている人の言葉であって、どが付く素人の私では細心の注意を払う必要があるだろう。両手で抱えるようにして持つ。
そんな私の様子を見て、店主さんは苦笑しながら気を張らずにと宥めながらサンドイッチまで持たせてくれた。
「それじゃあよろしくね!」
「はい!ありがとうございましたー!」
店主さんの明るい声に見送られて、ポシェットを抱っこしながら進む。ポシェット越しにでもほんのり卵があたたかい。
「(何が産まれるんだろう……)」
見たことない模様のポケモン卵……というと新種かな?スオウ博士が見たら三日三晩張り付いて孵化させるだろうなぁ。そういえば全然スオウ博士に連絡する暇なかったな……そろそろ連絡しないとインテレオンが次こそ家から出してくれなくなるかもしれないし、一旦トキワシティに戻ったら電話を借りて……
「あれ」
考え事をしながら歩いていたら、行きはおそらく通らなかったはずのゲートが現れた。別の道に来てしまったのだろうか。誰かいるかな?道を聞いてみよう。
ゲートの中へ入ろうとするとその入り口手前におろおろと困った様子の小さな女の子がいた。今にも泣き出しそうな表情でゲートの向こうの山を見つめている。
「あの、こんにちは」
「!あ……」
「どうしたの?大丈夫?」
そう声をかけながら、あ、こういう時って大丈夫?って聞いたらいけないんだっけ、と何かで読んだ知識が頭を掠めた。取り繕うように、何か力になれることはある?と聞いてみる。
「ポポちゃんが……私のポポちゃんがお山に飛んでっちゃったの……」
「ポポちゃん?」
お山とはゲートの向こうに見えるあの白い雪山のことだろうか。ポポというのはポケモンかな?
「お山に探しにいきたいのに、とおれないの」
「通れない?この中が?」
「うん……」
「そうなんだ……中に誰かいて、その人が通してくれないってことかな?それなら私が事情を話してみるよ」
「ほんとう!?」
「うん、ポポちゃんってどんな子?」
「あのね!おおきな赤のリボンがついてるの!」
「なるほど……分かった、ここで待っていられる?」
こくこくこくと何度も頷く女の子の頭を軽く撫でた。早くマサラタウンに戻らないといけないけれど、昨夜は未成年のサトシくんに守られてしまい大人だというのにこの体たらく……なんとかして女の子を助けてあげたい。
おそるおそる中を覗いてみると、女の子の言う通り、警備員さんの制服を着た男の人がカウンター内に立っている。
ぱちっと私の視線が合うやいなや、警備員さんはお決まりの台詞のようにぱっと口を開いた。
「こんにちは、バッジを拝見します」
「えっ、あ、私バッジは持っていないんですが……え、えっとトレーナーカード?でしたら」
「?おや、オーキド博士推薦の研究員さんか。1人とは珍しいねぇ、どうぞ」
「あ、え、」
「気をつけて行ってね!」
女の子の話とは違い、首から下げていたトレーナーカードを見せたらあっさりと通してくれた。いいのかなぁ、少し進むと十字路に差し掛かったので何となく左を選んでみる。また警備員さんが立っていて、気をつけて行くんだよ、と再度注意喚起をもらってしまった。
ゲートを抜けると草が覆い茂る山肌が見えた。高い草むらも見える。これはまずいとリュックから取り出した虫除けスプレーを吹きかけ、卵を再度大事に抱え直す。
「(あっしまった、ポポちゃんって何のポケモンか聞いてない!)」
く、やらかし…。
落ち着いて、あの子は飛んでいったって言っていた。ということは飛行ポケモン?ポポちゃんって名前ってことはポッポかな?マサラタウンだとよく見かけるポケモンだし。
とりあえず目印の大きな赤リボンがついたポッポを探せばいい。もしすぐ見つからなかったらさっきの警備員さんにお願いして、力を貸してもらえばいいよね。
→
澄み渡るような青空の下、半壊されながらも何とか無事だったポケモンセンターのパソコンで私とオーキド博士は通話をしていた。
【なんじゃ、何だかボロボロじゃのう】
「はい……まああの、色々ありまして」
【熱も出たんだって?】
「あ、そっちはもう、ジョーイさんのお陰で大分良くなりました。すみません、来て早々」
何じゃそんなことと笑い飛ばしてくださるオーキド博士はさすが貫禄が違う。これがスオウ博士だったらこんこんと怒られ、インテレオンにはベッドに縛り付けられているところだ。(比喩表現では無い。前に怪我をしたときに、インテレオンに本当にベッドに縛り付けられた事がある。あの子だったら絶対にやる。)
【そういえば今トキワシティのポケモンセンターじゃろう?赤と白の帽子の男の子に会わんかったか?】
「あっ、会いました……けど、話をする暇なく行ってしまって」
【そうかそうか、まあまた擦り合う縁もあるじゃろう】
男の子、サトシくんはポケモンセンターを半壊させた後、そのまま嵐のように去っていってしまった。お互い名乗らないまま、庇ってくれたお礼も言えずじまいだ。
【ふむ、トキワシティにいるのならお使いを頼まれてくれんかの?】
「あ、はい、もちろんです」
【ありがとう!トキワシティを少し行ったところにワシの知り合いの店があって……】
丁寧に道順を教えてくれるオーキド博士に、慌ててリュックから手帳を取り出す。さくっとメモを取り、用事を済ませたらマサラタウンに戻る旨を伝えて通話を切った。
「ハルさーん、お熱計りますよ」
「あ、はい……というかここまで壊れてしまって大丈夫なんですか……」
「ここのモンスターボールは全てニビシティに転送したから問題ないわ」
「(そういう問題なのかな…)」
「うん!熱も下がったわね。もう行くのよね?良かったらポケモンセンターの備品いくつか持って行ってもいいわよ」
「えっ!」
「何だか怖い目に合わせてしまったし……片付けも手伝ってくれたでしょ?」
片付けっていうか荒れに荒れまくったカウンター周りを少し整理して、パソコンを再起動させてだけなんですが!けれど有難い申し出だ。深く深く感謝しながら、虫除けスプレーやらピッピ人形やらを補充させてもらった。
しかし何でもあるなぁポケモンセンター。防寒服とかもあったし、もしかしたらトキワシティの避難所も兼ねているのかもしれない。
「それじゃあ気をつけてね!」
「はい!行ってきます!」
☆
オーキド博士の知り合いのお店というのは、小さな育て屋さんだった。要件を告げると先に連絡をしてくれていたようでスムーズにお使いである書類を受け取ることが出来た。
リュックに大事にしまって、壁にかかった柱時計を見上げる。うんうん、この調子なら夕方にはマサラタウンに帰れるかな?
「ああ、そうだそうだ。キミ、オーキド博士にポケモンの卵を届けてくれないか?」
「たっ……まごですか」
思わず声が裏返ってしまった。ポケモンの卵。触るのも見るのも初めてだ。スオウ博士のところでもまだお目にかかったことは無かった。
おどおどする私とは対照的に育て屋さんは慣れた様子で、カウンター下からカゴを取り出し中からひとつの卵を私へと差し出した。
「そうそう、これがねぇ何だか珍しい模様でね。オーキド博士に見てもらおうと思って」
「ナルホドデスネ」
「?? どうしたの?」
「いやあの、ポケモンの卵に触るの初めてで……何か気をつけることだとかって」
受け取ろうとしない私の萎んでいく言葉尻に、育て屋さんの店主はカラカラと明るく笑い飛ばした。
「なぁに大丈夫!落としたり乱暴に扱わなければなんて事ないさ。心配なら専用のポシェットを付けてあげよう」
「ぜ、ぜひ!」
「ふふふ、これはメリープの綿毛が編んであってね。あたたかいんだ。はい、どうぞ」
卵の入ったふわふわのポシェットを受け取る。店主さんは大丈夫だと笑ったけれど、それは慣れている人の言葉であって、どが付く素人の私では細心の注意を払う必要があるだろう。両手で抱えるようにして持つ。
そんな私の様子を見て、店主さんは苦笑しながら気を張らずにと宥めながらサンドイッチまで持たせてくれた。
「それじゃあよろしくね!」
「はい!ありがとうございましたー!」
店主さんの明るい声に見送られて、ポシェットを抱っこしながら進む。ポシェット越しにでもほんのり卵があたたかい。
「(何が産まれるんだろう……)」
見たことない模様のポケモン卵……というと新種かな?スオウ博士が見たら三日三晩張り付いて孵化させるだろうなぁ。そういえば全然スオウ博士に連絡する暇なかったな……そろそろ連絡しないとインテレオンが次こそ家から出してくれなくなるかもしれないし、一旦トキワシティに戻ったら電話を借りて……
「あれ」
考え事をしながら歩いていたら、行きはおそらく通らなかったはずのゲートが現れた。別の道に来てしまったのだろうか。誰かいるかな?道を聞いてみよう。
ゲートの中へ入ろうとするとその入り口手前におろおろと困った様子の小さな女の子がいた。今にも泣き出しそうな表情でゲートの向こうの山を見つめている。
「あの、こんにちは」
「!あ……」
「どうしたの?大丈夫?」
そう声をかけながら、あ、こういう時って大丈夫?って聞いたらいけないんだっけ、と何かで読んだ知識が頭を掠めた。取り繕うように、何か力になれることはある?と聞いてみる。
「ポポちゃんが……私のポポちゃんがお山に飛んでっちゃったの……」
「ポポちゃん?」
お山とはゲートの向こうに見えるあの白い雪山のことだろうか。ポポというのはポケモンかな?
「お山に探しにいきたいのに、とおれないの」
「通れない?この中が?」
「うん……」
「そうなんだ……中に誰かいて、その人が通してくれないってことかな?それなら私が事情を話してみるよ」
「ほんとう!?」
「うん、ポポちゃんってどんな子?」
「あのね!おおきな赤のリボンがついてるの!」
「なるほど……分かった、ここで待っていられる?」
こくこくこくと何度も頷く女の子の頭を軽く撫でた。早くマサラタウンに戻らないといけないけれど、昨夜は未成年のサトシくんに守られてしまい大人だというのにこの体たらく……なんとかして女の子を助けてあげたい。
おそるおそる中を覗いてみると、女の子の言う通り、警備員さんの制服を着た男の人がカウンター内に立っている。
ぱちっと私の視線が合うやいなや、警備員さんはお決まりの台詞のようにぱっと口を開いた。
「こんにちは、バッジを拝見します」
「えっ、あ、私バッジは持っていないんですが……え、えっとトレーナーカード?でしたら」
「?おや、オーキド博士推薦の研究員さんか。1人とは珍しいねぇ、どうぞ」
「あ、え、」
「気をつけて行ってね!」
女の子の話とは違い、首から下げていたトレーナーカードを見せたらあっさりと通してくれた。いいのかなぁ、少し進むと十字路に差し掛かったので何となく左を選んでみる。また警備員さんが立っていて、気をつけて行くんだよ、と再度注意喚起をもらってしまった。
ゲートを抜けると草が覆い茂る山肌が見えた。高い草むらも見える。これはまずいとリュックから取り出した虫除けスプレーを吹きかけ、卵を再度大事に抱え直す。
「(あっしまった、ポポちゃんって何のポケモンか聞いてない!)」
く、やらかし…。
落ち着いて、あの子は飛んでいったって言っていた。ということは飛行ポケモン?ポポちゃんって名前ってことはポッポかな?マサラタウンだとよく見かけるポケモンだし。
とりあえず目印の大きな赤リボンがついたポッポを探せばいい。もしすぐ見つからなかったらさっきの警備員さんにお願いして、力を貸してもらえばいいよね。
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