魔界
随分と昔、子供の頃に考えていたことを思い出した。
――裏を見ることはできるのか。
大人の背丈より高いところから吊り下げられて、窓を覆っているカーテンを床に寝ころんで見上げていた。翻る大きな布を揺らして、表を見たり裏を見たり。いつもと視点が違うだけで、見えるものは変わる。
布も紙も壁も、見られるのはひっくり返した裏側だけ。表だったところは裏になって隠れてしまう。隠れた裏を裏側にいる人は見られるけど、表側にいる人は絶対に、見えない。表と表が、表と裏にあるだけで……。
考えて考えて、ぐるぐる回る。
カーテンを身体に巻き付けて遊んでみる。小学生のくせに、子供じみた一人遊び。
カーテンを持ったまま、自分の身体ごと回ってみる。そして巻き付く布に包まれて回転を続けると、布は捻れて一本の太い紐になる。捻れきったカーテンは、今度は反対に回りながら、また元の形に広がっていく。
ガッシュの外套に包まれて、遠ざかるのは人の世界。抱えた赤い本が光を放つ。
人間界が彼方になり、魔界が此方となる。見えなかった、裏側の向こうへ。
――裏を見ることはできるのか。
大人の背丈より高いところから吊り下げられて、窓を覆っているカーテンを床に寝ころんで見上げていた。翻る大きな布を揺らして、表を見たり裏を見たり。いつもと視点が違うだけで、見えるものは変わる。
布も紙も壁も、見られるのはひっくり返した裏側だけ。表だったところは裏になって隠れてしまう。隠れた裏を裏側にいる人は見られるけど、表側にいる人は絶対に、見えない。表と表が、表と裏にあるだけで……。
考えて考えて、ぐるぐる回る。
カーテンを身体に巻き付けて遊んでみる。小学生のくせに、子供じみた一人遊び。
カーテンを持ったまま、自分の身体ごと回ってみる。そして巻き付く布に包まれて回転を続けると、布は捻れて一本の太い紐になる。捻れきったカーテンは、今度は反対に回りながら、また元の形に広がっていく。
ガッシュの外套に包まれて、遠ざかるのは人の世界。抱えた赤い本が光を放つ。
人間界が彼方になり、魔界が此方となる。見えなかった、裏側の向こうへ。
1/8ページ