死の恋
人を殺した時の月はなんて綺麗だろう。
今までで見たことのない美しさ、神々しさ。その光は血塗れの俺と死体化とした親父に惜しみなく降り注ぐ。
人を、殺した。
むせ返るような血の匂い。多分手と包丁が一番血の香りをしているだろう。嗅いでいく内に気分が悪くなる。脳にまでこびり付くような匂いに軽く咳をしてしまう。
親父を殺したことによる罪悪感は不思議と無い。元々頭の中で何度も殺した相手なんだからそりゃそうか。
でも殺すふりと殺したは全然違うらしいが特にそんなにって感じ。あっけないな。もっと感触とかあるはずなのにそれを忘れてしまっていた。残るのは血液だけだ。
もしかしたら自分は異常なのかもしれない。殺す自体普通じゃないけどさらにサイコパスが追加された人間みたいな。親父の血を引いているんだから当然だろうか?
......さっきから視線が感じると思い、もう一度窓の方を見るとなんと担任の三井先生が立っていた。気のせいかと思ったけど見れば見るほど先生だ。
ところでこれは不法侵入だよね。庭に許可なく立ってるから。門の鍵をいつも閉め忘れている親父の癖を今思い出した。
とても怯えている先生なのできっと通報するだろうと思ったが中に入れて。と手で忙しく表現をしたのだ。どうゆうことなのかよく分からないが、まぁとりあえず入れてみよう。そして通報して貰おう。
窓を開けると先生はビビりつつ、中へ恐る恐る入った。俺が窓を閉めるとその音にも一々反応してびっくりしていた。
「これ......高橋君がしたのですか?」
「そうですが」
先生は口と鼻を手で覆い、怯え切った兎みたいに震えていた。
「そんな......。先生、高橋君が、し、心配で訪問しようとして......」
ああだからパンツスーツなのか。でもなんで夜中に?と問い出そうと思ったが今はどうでも良い事だ。
「あの......俺が言うのもアレなんですが通報しないんですか?」
「え?」
「え?」
先生は俺の顔を不思議そうに見つめる。どちらかというとそうゆう顔は俺がするべきじゃない?
「このままにしていたら先生も加害者になっちゃうんじゃないの?」
「どうして高橋君はこんな事をしたの?」
話がわざとかって程噛み合わない。血の現場に動揺しているのは分かるが、先生と仲良くお喋りしたいわけじゃない。終わるならはやく終わらせて欲しい。
「憎いから嫌いだから殺したに決まってるでしょ。もう良いです。スマホ貸してください。自首しますから」
「どうして自首......? 怖くないの......?」
「色々思うことはありますがとりあえず、こいつに縛られる人生なら殺して少年院に入る人生の方が良いんです。先生には分からないだろうけど」
先生はスマホを貸すどころか貸す気も無し。腹が立って先生に向かって包丁を突きつけた。
「はやくスマホ貸してください」
先生はポケットからスマホを取り出す素振りはするが出す気は無かった。苛立たせるねぇ。
「......か、かくそう」
「は?」
「先生黙っているから。だって憎かったんでしょ? きっと先生には分からない高橋君の気持ちがあるんだよね。これは私のせいでもあるわ。もっとはやくに気づけば......」
先生は血の中に落ちているビール瓶を見ていた。それで親父は俺に殴り掛かってきたのだ。先に手を出したのは奴だった。
「だからって人殺しを庇う意味は無いですよ。どんなことがあっても人を殺してはいけませんって先生から習いましたけど」
「そ、それは......時と場合によります」
都合が悪くなると大人はそう言う典型的な良く無い教育。少しがっかりだな。
「何故庇うかのか本当にわかりません。俺アホなんでちゃんと教えてください」
「......好きだから」
「へ?」
最初が聞き取りなかった。
「高橋君が好きだからです」
頬を染めながら小さな声で言った
......なんとなく予想というか実は気になっていた点がいくつかあった。妙に俺に気に掛ける先生はもしかしたら......って思ってはいた。思ってはいたとはいえ、マジかだけど。やば、こうゆう展開ドラマ以外で観たことがない。
「......先生大丈夫? 冗談にしといてやっぱり通報した方が今後の未来の為になりますよ。俺なんかのせいで人生台無しにする気ですか」
「か、覚悟はしています」
何真っ直ぐな瞳で訴えてくるんだよ。殺人者に感化され頭が変になってしまったのか。
「......どうすんの?」
恐る恐る聞いてみる。
「う......埋めましょう山奥に。私、車の運転出来ます。その前に血を片付けてから......」
先生は急に動き始めた。何をするかと思いや血を片付ける道具を探し、後に親父を運べるものを聞いてきた。
先生ってこんなキャラだっけ?もっとおとなしくてオドオドしていて、でも正義感がある人だと思っていた。
理想像が密かに崩れていく。だけど人ってこうならないと本質が分からないだろう。実際自分もまさか殺せるとは思わなかったから。
「高橋君も手伝って。捕まりたくないでしょ?」
「いや俺は......」
「高橋君には未来があるの! こんなもので終わらせてはいけない。画家になりたいんでしょ?!」
いきなり怒鳴った。何をどうしたらそんな言動になるのか理解不可能だ。
そして今なんで進学希望の話を出すのだろう。前に画家となんとなく言った気はする。まさか覚えているなんて。いやそれよりなんで出すんだ。
「私ね......。高橋君はとても良い子なのをよく知ってるの。だからここで終わっちゃいけないの」
先生は俺の両肩を強く握り、熱い眼差しを向けた。俺が良い子?何言ってんだ。良い子がこんな事をしないだろ。
「やらないと私がやったと自首します」
「えっ?!」
「嫌なら動いて!」
なんで叱られるのか。なんで先生が自首になるのか全く分からない。
これが恋の力?愛は盲目?
混乱な気持ちを抱きながらも、先生の言う通りに仕方なく動いた。
ー俺達は車で森の奥まで行った。着いた時には深夜二時を回っていた。
先生は冬なのに汗水垂らしてスコップで穴を掘る。俺も勿論掘っていたが乗り気では無かったので若干サボっていた。
「先生凄い汗......」
「大丈夫よこれぐらい」
先生は笑顔で言う。心配ではなく、少し引いているのだが。
かなり穴を掘ったところで、ビニールシートに巻かれた親父の死体を穴に捨てた。そして次は罪を隠すように地面をしっかり元通りにした。
時間が掛かっていた為、いつの間にか日の出前になっていた。
「これで安心ね」
先生はとても満足した顔をする。
これではまるで先生が殺人鬼で、俺がそれを手伝わされているみたいだ。それぐらい異様な光景、空気。
「さ、はやく帰りましょう!」
「は、はぁ......」
何が何だか。考える前について行くのに精一杯だった。
今までで見たことのない美しさ、神々しさ。その光は血塗れの俺と死体化とした親父に惜しみなく降り注ぐ。
人を、殺した。
むせ返るような血の匂い。多分手と包丁が一番血の香りをしているだろう。嗅いでいく内に気分が悪くなる。脳にまでこびり付くような匂いに軽く咳をしてしまう。
親父を殺したことによる罪悪感は不思議と無い。元々頭の中で何度も殺した相手なんだからそりゃそうか。
でも殺すふりと殺したは全然違うらしいが特にそんなにって感じ。あっけないな。もっと感触とかあるはずなのにそれを忘れてしまっていた。残るのは血液だけだ。
もしかしたら自分は異常なのかもしれない。殺す自体普通じゃないけどさらにサイコパスが追加された人間みたいな。親父の血を引いているんだから当然だろうか?
......さっきから視線が感じると思い、もう一度窓の方を見るとなんと担任の三井先生が立っていた。気のせいかと思ったけど見れば見るほど先生だ。
ところでこれは不法侵入だよね。庭に許可なく立ってるから。門の鍵をいつも閉め忘れている親父の癖を今思い出した。
とても怯えている先生なのできっと通報するだろうと思ったが中に入れて。と手で忙しく表現をしたのだ。どうゆうことなのかよく分からないが、まぁとりあえず入れてみよう。そして通報して貰おう。
窓を開けると先生はビビりつつ、中へ恐る恐る入った。俺が窓を閉めるとその音にも一々反応してびっくりしていた。
「これ......高橋君がしたのですか?」
「そうですが」
先生は口と鼻を手で覆い、怯え切った兎みたいに震えていた。
「そんな......。先生、高橋君が、し、心配で訪問しようとして......」
ああだからパンツスーツなのか。でもなんで夜中に?と問い出そうと思ったが今はどうでも良い事だ。
「あの......俺が言うのもアレなんですが通報しないんですか?」
「え?」
「え?」
先生は俺の顔を不思議そうに見つめる。どちらかというとそうゆう顔は俺がするべきじゃない?
「このままにしていたら先生も加害者になっちゃうんじゃないの?」
「どうして高橋君はこんな事をしたの?」
話がわざとかって程噛み合わない。血の現場に動揺しているのは分かるが、先生と仲良くお喋りしたいわけじゃない。終わるならはやく終わらせて欲しい。
「憎いから嫌いだから殺したに決まってるでしょ。もう良いです。スマホ貸してください。自首しますから」
「どうして自首......? 怖くないの......?」
「色々思うことはありますがとりあえず、こいつに縛られる人生なら殺して少年院に入る人生の方が良いんです。先生には分からないだろうけど」
先生はスマホを貸すどころか貸す気も無し。腹が立って先生に向かって包丁を突きつけた。
「はやくスマホ貸してください」
先生はポケットからスマホを取り出す素振りはするが出す気は無かった。苛立たせるねぇ。
「......か、かくそう」
「は?」
「先生黙っているから。だって憎かったんでしょ? きっと先生には分からない高橋君の気持ちがあるんだよね。これは私のせいでもあるわ。もっとはやくに気づけば......」
先生は血の中に落ちているビール瓶を見ていた。それで親父は俺に殴り掛かってきたのだ。先に手を出したのは奴だった。
「だからって人殺しを庇う意味は無いですよ。どんなことがあっても人を殺してはいけませんって先生から習いましたけど」
「そ、それは......時と場合によります」
都合が悪くなると大人はそう言う典型的な良く無い教育。少しがっかりだな。
「何故庇うかのか本当にわかりません。俺アホなんでちゃんと教えてください」
「......好きだから」
「へ?」
最初が聞き取りなかった。
「高橋君が好きだからです」
頬を染めながら小さな声で言った
......なんとなく予想というか実は気になっていた点がいくつかあった。妙に俺に気に掛ける先生はもしかしたら......って思ってはいた。思ってはいたとはいえ、マジかだけど。やば、こうゆう展開ドラマ以外で観たことがない。
「......先生大丈夫? 冗談にしといてやっぱり通報した方が今後の未来の為になりますよ。俺なんかのせいで人生台無しにする気ですか」
「か、覚悟はしています」
何真っ直ぐな瞳で訴えてくるんだよ。殺人者に感化され頭が変になってしまったのか。
「......どうすんの?」
恐る恐る聞いてみる。
「う......埋めましょう山奥に。私、車の運転出来ます。その前に血を片付けてから......」
先生は急に動き始めた。何をするかと思いや血を片付ける道具を探し、後に親父を運べるものを聞いてきた。
先生ってこんなキャラだっけ?もっとおとなしくてオドオドしていて、でも正義感がある人だと思っていた。
理想像が密かに崩れていく。だけど人ってこうならないと本質が分からないだろう。実際自分もまさか殺せるとは思わなかったから。
「高橋君も手伝って。捕まりたくないでしょ?」
「いや俺は......」
「高橋君には未来があるの! こんなもので終わらせてはいけない。画家になりたいんでしょ?!」
いきなり怒鳴った。何をどうしたらそんな言動になるのか理解不可能だ。
そして今なんで進学希望の話を出すのだろう。前に画家となんとなく言った気はする。まさか覚えているなんて。いやそれよりなんで出すんだ。
「私ね......。高橋君はとても良い子なのをよく知ってるの。だからここで終わっちゃいけないの」
先生は俺の両肩を強く握り、熱い眼差しを向けた。俺が良い子?何言ってんだ。良い子がこんな事をしないだろ。
「やらないと私がやったと自首します」
「えっ?!」
「嫌なら動いて!」
なんで叱られるのか。なんで先生が自首になるのか全く分からない。
これが恋の力?愛は盲目?
混乱な気持ちを抱きながらも、先生の言う通りに仕方なく動いた。
ー俺達は車で森の奥まで行った。着いた時には深夜二時を回っていた。
先生は冬なのに汗水垂らしてスコップで穴を掘る。俺も勿論掘っていたが乗り気では無かったので若干サボっていた。
「先生凄い汗......」
「大丈夫よこれぐらい」
先生は笑顔で言う。心配ではなく、少し引いているのだが。
かなり穴を掘ったところで、ビニールシートに巻かれた親父の死体を穴に捨てた。そして次は罪を隠すように地面をしっかり元通りにした。
時間が掛かっていた為、いつの間にか日の出前になっていた。
「これで安心ね」
先生はとても満足した顔をする。
これではまるで先生が殺人鬼で、俺がそれを手伝わされているみたいだ。それぐらい異様な光景、空気。
「さ、はやく帰りましょう!」
「は、はぁ......」
何が何だか。考える前について行くのに精一杯だった。
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