らくがき帳

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  • 平浦

    20260504(月)00:14
    「うわ……なにしてんスか、平子サン」
    「んぁ〜……暇で暇で……」

    部屋で待っているはずの平子の姿が見当たらず、不意に頭上を見上げてギョッとした。平子は天井にあぐらをかいて、こちらを見上げるように見下ろした。今の平子にとっては天井が床で床が天井。髪がだらんと垂れてくるわけでもないとわかってはいても、違和感ばかりの妖怪じみた姿に多少の不気味さを覚える。

    「暇だとひっくり返るんですか」
    「視点変わると見慣れたモンも見たことないモンに見えるやろ〜?たまにやるとおもろいで」
    「……………」
    「……そんな可哀想なモン見るみたァに見んで……」

    あの何も無い廃墟での長い隠居生活は相当暇なんだろうとつい同情の目を向けたことを見抜かれ、平子はおよよと態とらしく両掌で顔を覆った。

    「てか何しとったんや、こない待たせて」
    「スイマセン、健康診断であれこれと…」
    「健康診断ンン〜??」

    平子はくるりと床に降り立ち浦原の言葉に目を丸くする。

    「ボクのじゃなくて、ウルルとジン太のっスよ。毎年この時期恒例なんス」
    「ほー……そゆこと……」
    「んじゃ行きましょうか」
    「なぁ、あの子らって………まぁええわ。待ちくたびれて腹減ったわ〜、はよ行こ」

    ×浦

  • 兄弟パロ 3

    20260503(日)00:20
    「あ!傑帰ってきた?」
    「ふぁぁ…今日は早いね」

    机に向かって丸まっていた背中をぐぐ、と伸ばして立ち上がり、さとるの後をついて2人の声がするリビングへ下りて行く。
    さとるによく似たさとるの兄と、私によく似た私の兄。ここは私達4人が暮らす小さな分譲住宅で、近所の人達からはたまに変な目で見られるけれど、そこらのご家庭よりよっぽど仲の良い理想の家族だと思う。兄さんが私をどう思っているかは微妙な所だけれども。

    「傑!おかえり!」
    「ただいまー、はぁ、へとへと……」
    「先にお風呂入ってきなね、ご飯あっためとくから」
    「うん、ありがと」

    兄さんは悟さんの頭を撫でて、スーツ姿のまま風呂場へ向かう。私とさとるはリビングのテーブルを布巾で拭いて、ご飯をよそって味噌汁を温め直して箸を並べてと食事の準備に取り掛かった。
    食事は家族で揃って食べる、それが夏油家での約束だった。親の元を離れてからもこうやって律儀に守っているのは、悟さんの家族への思いがあるからだ。二人が何も気負わなくていいように。二人を守れる家であるように。きっと兄さんも同じ思いだろう。
    器用な悟さんの作る料理が美味しくなかったことなど一度もないけれど、素直に美味しいと伝えると嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔が見れるのが私たちにとっても最高の幸せだった。

    「美味かった~!そうだ兄ちゃん、金曜に家庭実習あるんだよ。ハンバーグの作り方教えて!ミシュランシェフも唸るようなやつ!」
    「ミシュランシェフが頭抱えるようなやつなら作れると思うけど…材料買いに行かなきゃだね」
    「明日は早く帰れると思うから、一緒に行こうか」
    「ほんと?行く!」
    「俺も行く!」
    「え、私も行く」
    「お前は部活だろ?」
    「えぇ…休みにならないかなぁ…」

    面倒だなぁと項垂れる私の背中を、慰めるようにさとるが摩った。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 2

    20260502(土)00:20
    2階には部屋が2つある。1つは兄の部屋で、少し広めのもう1つの部屋は、私とさとるが共同で使っている所謂子ども部屋だ。
    2つのベッドと2つの勉強机。テレビとゲームとクローゼット。そして扉の向かいには、さとるが欲しいと強請って買ってもらった、大きな本棚が設置された。

    「結構大きいね、これ1人で組み立てるの大変だったでしょ。悟さんにちゃんとお礼言いなよ」
    「わかってるよ!すぐるの本も全部入れていいよ!おれこっち側使う」
    「あぁ、ありがとう」

    さとるは机上に平積みにされていた何冊もの本を嬉しそうに新品の棚に仕舞い始めて、私はベッドに座ってその姿を眺めていた。さとるは態度こそ悪いが私よりもずっと勉強熱心の努力家だ。テストの成績もいつも1位で、顔も良くて運動神経も良いさとるはありえないほどモテるのに、ありえないほど異性に興味を示さない。さとるに惹かれる有象無象には可哀想だが、これはもう覆りようがない。彼の中の1番は他でもない、彼のお兄さんなのだから。

    「すぐるぅ、疲れたぁ、おやつ貰ってくる」
    「もー、はしゃぎ過ぎだよ。ご飯まで待てないの?」
    「待てない~!アイス買ってあったじゃん、すぐるピノでいい?」
    「アイスの実とウィルキンソン」
    「おっさんかよ~」

    兄ちゃんアイス~!と叫びながら騒がしく階段を下りて行くさとるにクスクス笑って、壁に立て掛けてあった黒い折りたたみテーブルの脚を広げた。やがてまた階段を駆け上がってくるさとると一緒にアイスを食べて、今日の課題を片付けて。そうこうしているともう一人の家族が帰宅した。玄関のドアを開ける音に、さとるが跳ねるように顔を上げた。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 1

    20260501(金)00:16
    「たっだいまー!!」
    「ただいまー」

    勢いよく玄関のドアを開け放ち、二人の男子が顔を出した。すぐるくんの額には汗が滲み、白いシャツがへばりつくほど背中にもじっとりと汗をかいている。溜息をついて椅子から立ち上がり、タオルと飲料水を手渡した。

    「おかえり。またすぐるくんに自転車漕いでもらったんでしょ…ほんと暑いんだからいい加減にしなよ。倒れちゃったらどうするの」
    「すぐるが乗りなって言ったんですー!途中でアイス奢ってやったし別にいいだろー?」
    「上り坂は流石に降りてほしかったよ……」

    すぐるくんは水をがぶ飲みすると早々にシャワーを浴びに浴室へ向かい、さとるは汗を拭ってふんふん鼻歌を歌いながら冷蔵庫を物色しだした。もう一度椅子に座って乾いた洗濯物を畳む作業を再開すると、炭酸飲料を手に取ったさとるは僕の向かいの椅子に落ちるように腰掛けた。

    「は~~、うめ~~っ!」
    「もー…さとるも汗臭いからシャワー浴びてきてね」
    「はいはい。兄ちゃん今日は何してたの?」
    「ご飯作って、洗濯して…あぁ、さとるの部屋の本棚届いたから、組み立てといたよ」
    「うっそ!ありがと!!」

    見てくる!と言って階段を駆け登って行く弟の姿に、可愛い奴だなぁと笑ってしまって、大概自分もブラコンだと改めて思う。いつまで経っても生意気だし子供っぽくて、ある意味いい性格をしているけれど、なんだかんだ素直で憎めない奴なのだ。
    やがてラフな格好に着替えたすぐるくんが脱衣所から戻ってきて、さとると同じように冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注ぐと、そっと僕の前に差し出した。

    「はい。悟さんもちゃんと水分摂ってくださいよ」
    「ふふ、ありがとう」

    すぐるくんは濡れた長い黒髪を乱雑にタオルで拭う。目元に髪が触れる度に切長の瞳が細められて、高校生とは思えない妙な色気が漂っている。見た目だけじゃなくて、さりげない気遣い方まで、彼は彼の兄によく似ていた。

    「すぐるくん、今日は部活無かったんだ」
    「顧問が居なくて自主練になったんですけど、テストも近いし無理に出なくていいって言われたので」
    「さとるが我儘言ったんでしょ」
    「はは、それもありますけど、でも」

    「私もはやく貴方に会いたかったんですよ」と囁いて、すぐるは畳み終えた洗濯物を抱えて階段を上って行ってしまった。

    (はぁ~~~??)

    お前は本当に高校生1年生か。どういう育ち方したらそうなるんだ。
    自分でもわかるほど赤くなった顔を隠すように頭を掻いて、夕食の準備をしようと席を立った。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 0

    20260430(木)00:14
    「なあ、もうかえんないと……」

    おこられるよ。みつかったらなにされるか、わかんないよ。ねえ、はやくかえろうよ。
    僕の上着の裾を引っ張りながら、不安そうに声を震わせる弟の手を強く握った。来た道を振り返って、もう一度前を向く。纒わり付く生温い風が気持ち悪くて、逃げるように足を速めた。

    「にいちゃん…?どこいくんだよ…?」
    「……ごめんね、僕もわかんないや」
    「はあ?」
    「ごめん…何とかするから…大丈夫だからね…」
    「おやじおこるよ?ほんとにかえんねえの?」
    「うん……もう、あそこには帰らないよ…」
    「……ふぅん、」

    引っ張られるように歩いていた弟は、繋がれた手をじっと見つめて、やがて何かを決心したように顔を上げた。小走りでついてきてくれるその無垢な信頼が、愛しいと思った。
    初夏の夕暮れ時。親の財布から盗んできた一万円札と、ポケットの中で握りしめた手紙だけが頼りだった。幼い弟は僕に似ている。

    「……守るからね」

    絶対に、同じ思いはさせないから。
    僕の体がどうなろうが、お前だけは守るから。

    何の根拠も保証も無い。だけど、脳裏に刻まれたあの声が、きっと僕らを拾い上げてくれる。そんな気がしていた。

    夏五兄弟パロ

  • ワタニャルニア

    20260428(火)23:54
    「さて、悟はどこへ行ったかな…すぐどこか遊びに行っちゃうんだ」
    「ふわ?ふわわ、ふわぁ」
    「ふふ、そうだね、君と似てる」

    ふわふわと風に誘われて気付けばどこかへ飛んでいってしまう。どういうわけか、悟もふわころ族のように空に浮かぶ力を持っていた。長く封印されていたためか魔力の制御が思うようにいかないようで、夜には眠ったまま窓の外へ飛び出していたりするから危なっかしい。

    さとるという名に、族長様は悟という字をくださった。悟は村の子ちみたちに混ざって文字を習い、言葉を覚えようとしているが、まだまだ上手く発音出来ないようだ。今日もうみゃうみゃと読み取れない言葉を発し、気ままに外へ出かけてしまった。

    「悟~、ふわ五が遊びに来てくれたよ~」
    「ふわぁ~」

    見かけたという井戸がある西の方角へ呼びかけながら村を歩くが、悟の姿は見当たらない。暫く歩いて通りかかった学舎の窓から、子ちみたちが私に気が付き、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

    「げとうさま!けんじゃさまさがしてるの?」
    「けんじゃさまこっちにいるよ!」

    わらわらと駆け寄ってくる子ちみたちに手を引かれ、連れてこられたのは学舎の中庭にある大きなムムの木の下だった。

    夏五

  • アイドル夏×貧乏学生五

    20260426(日)15:23
    「ぁ……傑、ごめん、ちょっと待って、」
    「ん?」

    上着の裾をくい、と引っ張られて振り向くと、悟は大きな眼鏡をずらして額を抑えて俯いていた。左目が見えていない分、悟の右目は時折過剰な疲労を訴える。慌てて支えるように肩を抱き寄せ、眼鏡を外して手のひらで瞼を覆った。

    「大丈夫?気分悪い?」
    「め……目が、ちかちかして…」
    「瞑ってて。少し歩ける?端に寄ろうか」
    「ぅん……」

    手のひら越しにも悟が痛みに悶えるように目をぎゅっと瞑るのが伝わった。体を抱き寄せたまま建物の間に入り落ち着くのを待つが、悟は立っているのも辛そうに私の肩に額をぐっと押し付けた。

    「…はぁ………痛……」
    「痛いね……ごめんね、気付かなくて」
    「ううん……さっきまで、何ともなかったんだよ……ちょっと、待てば、平気……」
    「タクシー呼んで帰ろう。目、閉じたままでいいからね」
    「う、ん……ごめんね……」
    「大丈夫。帰ってゆっくり休もう」
    「ん……」

    夏五

  • ヘン主 7

    20260424(金)01:54
    打ち捨てられていた筏で水路を渡って行くとリュカの言っていた通り、橋の真下に城へと通じる地下道を発見し感嘆の声が出た。

    「リュカは目敏いな。この抜け道はもともと何かあった時の脱出用に作られたものなんだが…まさかオレがここから侵入することになるとはね。皮肉なもんだよ」
    「見たことのない魔物が多いね、天井にも貼りついてる」
    「すっかり魔物の巣窟になってるな…油断するなよ」

    曖昧な記憶を頼りに入り組んだ暗い通路を進む。反響する足音に反応し飛びかかってくる魔物の多さに辟易とした。暫く歩くと錆びついた牢屋が並ぶ空間に辿り着き、いつかのあの場所を思い出して口を歪めた。

    「……そういえばここは地下牢もかねてるんだっけ…。だんだん思い出してきたぞ」
    「……誰か居る」

    リュカがぴたりと立ち止まり、つられて自分も足を止めた。狭い牢の中で一人、痩せこけた老人が座り込んでいた。

    「ん…?誰か来たのか…?」
    「こんにちは、おじいさん」
    「はて……何年もここにいて目も耳もすっかり悪くなったわい…。しかしこれだけは言うとくぞっ!ヘンリー王子を亡き者にしたのは元王妃、今の太后さまじゃ!なのに自分もヘンリー王子の行方知れずを悲しむふりをし、すべてパパスどのの責任に!パパスどのが住んでいたサンタローズの村にまで攻めこんだんじゃ。あんな性悪な女は見たことがない。今に天罰をくらうぞ!」

    老人は突然興奮気味に鉄格子を両手で掴み、見えていない目をギラつかせて訴えた。リュカは僅かに驚いたように身を反らし、やがて静かに微笑んだ。

    「そんな事を言ってるから投獄されちゃったんですね」
    「太后……やっぱり全てはあの女が…?デールの母だし信じたくはなかったが……もう許せねえ!オレが自ら天罰をくらわせてやるぜっ!じいさん!あんたもすぐに出してやるからな!待ってろよ!」
    「はて……?」

    不思議そうに首を傾げる老人にビシッと指をさし、込み上げる怒りを抑える気もなくリュカの手を引っ掴みズンズンと突き進む。リュカは何故かほんの少し楽しげに頬を緩ませていた。

    DQ5

  • ヘン主 6

    20260423(木)21:14
    「やっぱりお城の奥までは入らせてもらえなかったね」
    「太后さまに呼ばれた者しか通すわけにはいかぬ〜!てな。なんで太后さまなんだよ。デールは本当に国王なのか?……もう少し事情が分かるまでただの旅人の振りをしておきたかったが……どうしたもんかな」
    「スラりんならどこでも潜り込めそうなのにね」
    「スラりんだけ行かせたところでなぁ……いや、待てよ。たしかこの城には外に通じる抜け道があったはず……あ〜……どこだったっけなぁ……」

    王への謁見は叶わず、どうしたものかと兵士に追い返された城を見上げて頭を悩ませること数十秒。リュカの両手に挟まれたスラりんのピキー!という鳴き声と共にピーン!と思い出したのは城の避難路の存在だった。果たしてどこから入ってどこへ出る道だったのか。幼い頃の朧気な記憶を必死に手繰り寄せようと唸りながら頭を搔くと、リュカがぽんぽんと肩を叩いた。

    「ねえヘンリー、あれじゃない?」
    「あれ?」

    リュカが指を指したのは、堀に架かる跳ね橋の真下に存在する空洞だった。

    DQ5

  • 夏五

    20260422(水)06:06
    腕の吹き飛ぶ夢を見るとか、無いはずの腕が疼いて痛くて仕方ないとか、自分が魔王にでもなったかのような酷い気分で目が覚めるとか。ここ最近の不調の理由を正直に白状したのに、悟がどんな表情で聞いていたのかはサングラスのせいでわからなかった。

    「予知夢なのかなって思ったら、なんだか気分が悪くてね……」
    「なにお前、腕飛んだくらいで死ぬの?」
    「……血を流しすぎたら死ぬんだよ、人間って」
    「ふーん……」

    あまりに執拗く問い詰めてくるから仕方なくこんな情けない話をしたというのに、なんだその興味無さげな態度は。ぶん殴ってやろうかと思わず乗り出しそうになる体を理性で抑えて溜息を吐く。悟は棒付きの飴を口から離し、サングラス越しに上目遣いでこちらを向いた。重たげな白い睫毛がばさりと音を立てそうに瞬いた。

    「オレ反転術式使えねえから、傑の腕吹き飛んでも治してやれねえ」
    「知ってるよ。私も同じだしね」
    「……硝子のとこまでは運んでやるから、絶対、硝子なら治せっから」
    「うん…?」
    「どこからでも硝子のとこまで一直線に飛ぶようにルート引いて、用意は完璧にしとくから」
    「……?」
    「だから、死ぬならオレの前で死ねよ」
    「……善処するよ」

    励ましているつもりなのだろうか。堪えきれずに机に伏せて笑う私の肩を悟は焦ったように乱暴に揺さぶった。

    夏五