らくがき帳

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  • 兄弟パロ 7

    20260507(木)00:23
    最初はその人が一人で居るかと思っていたけど、彼は腕の中に小さな子供を抱きしめていた。私はその痩せた体が心配で、思わず手を伸ばしてしまった。パシッと私の手を弾いたのは、その子どもを抱きしめている彼だった。

    「…っ、さわら、ないで……この子には、触れ、ないで」
    「あ、ごめんなさい、ごめんなさい、なかないで」

    泣いてなんかいないのに、どうしてそんな事を言ったのだろう。でも、泣いているように見えたのだ。綺麗な瞳が揺れていて、薄い肩がどうしようもなく震えていたから。
    兄さんは視線を合わせるように地面にしゃがみこんで、少しの間その人と何かを喋っていたけれど、私は叩かれた手をもう片方の手で握りながら、兄さんの広い背中をただ見つめているだけだった。

    やがて兄さんはその人の手を取って立ち上がり、「一緒に帰ろう」と微笑んだ。
    私と兄さんと悟とさとる。私達はあの夜から家族になった。さとるが私と同い年だと聞いた時は何故か妙に嬉しくて、運命だと思った。
    兄さんが教師として働き始めて、私達が中学生になる頃に、親が「安かったから買っといた」とふざけた理由で一括で購入していたこの家に引っ越した。親元を離れたのは兄さんの我儘と、いつまでも両親に遠慮してしまう悟さんのためだった。

    夏五兄弟パロ

  • ヘン主 8

    20260506(水)03:32
    「どういうことだ…!?なんで城の中でふんぞり返ってるはずの女が、こんな地下牢に居るんだよ…!?」

    鉄格子の隙間から枝のように細くなった腕を突き出し、ひたすらに出してくれと懇願する女の前にリュカが身を乗り出した。制する間もなくリュカは女の手首を掴む。女は痛みに体を跳ねさせ、小さく悲鳴を上げた。

    「待て…っ!リュカ、!」
    「出してたもれ……っ!お願いじゃ、わらわを、わらわをここから……っ」
    「あなたが、この国の太后さま?」
    「っそうじゃ!信じられぬと申すか…!?……たしかに10年前、ヘンリーを攫わせ亡き者にしたのはわらわじゃ…。しかしそれもデールを王にさせたかった哀れな親心から……今では本当に悪かったと改心しておる…。だからお願いじゃ!わらわをここから、ここから出してたもれ……!うっ……うぅ…っ」
    「…………どうする?」
    「……………」

    リュカは視線を女に向けたまま確かにこちらに向けて問い掛けた。その瞳も声も、刺すように鋭い。どうする、なんてオレに聞くのか。首筋から酷く体が冷えていく感覚に目を瞑った。

    「………手、放してやれ」

    絞り出すように告げた声は情けなく震えていたかもしれない。リュカは温度のない表情を浮かべたまま、ぱっと手を開いて崩れ落ちる女を見下ろした。唇を噛み、拳を握り、先へ進む。

    「……城に居る太后が何者なのか、確かめに行くぞ」
    「…………」
    「……リュカ」
    「……ぼくは、きっと赦せない」
    「………あぁ。それでいいよ」

    それをオレに向けてくれよと嘆息しつつ、目を合わせることはできなかった。

    DQ5

  • 事後平浦

    20260506(水)03:09
    もしも世界にたった2つのピースしかないパズルがあって、1つが自分だったとしたら、もう1つはきっと彼ではないように思うけれども。嵌まらないピース同士でもくっついていたいと願うのは、別に悪いことではないだろう。

    「んふふふふ」
    「…なんスか…ニヤニヤして…」
    「かわええなぁ思て」
    「どこが………」
    「おん?聞きたいん??」
    「ぁ、違、待って」

    しまった、と眉をひくつかせ逃げようとする浦原を抱いて制し、上気した頬に手を滑らせた。浦原は頭を振って平子の胸に手を押し付けるが本気の抵抗とは程遠く弱々しいのがいじらしくてまたニヤけてしまう。

    「おっきい目とろーんとさして甘えてくるんも、いやいや言うくせにしがみついてくるんも、終わったらふにゃふにゃ言いながら寝転んでるんも全部かわええ」
    「だ、からもう、いいって…っ」
    「最初はなんやオレの呼吸測ったり霊圧の揺れ見たりしてんのに途中からわけわからんなって諦めてるんもかわええな〜〜」
    「〜〜〜ッ」

    今度こそ平子を容赦なく押し退けて頭から布団を被り隠れようとする浦原を掴まえて、もう一度腕の中に連れ戻す。赤らんでいる首筋が可愛くて唇を擦り寄せた。

    ×浦

  • 兄弟パロ 6

    20260506(水)00:22
    さとる達と出会ったのは、幼い頃の夏だった。
    記憶が曖昧なのは私がまだ幼かったからだろうけど、青い瞳が宝石のように綺麗で驚いたことだけは、今でもはっきりと覚えている。

    母におつかいを頼まれた兄さんに、僕も一緒に行くと駄々を捏ねて連れて行ってもらったのがきっかけだった。もう暗くなるからダメだよと宥められても諦められなかったのは、買い物に付いていけばお菓子を買ってくれることを学んでいたからだ。
    その日は柔らかいお煎餅か何かを買ってもらって、兄さんに手を引かれて家に帰る途中。大きな滑り台とブランコだけが置かれた公園の端っこで、街灯に照らされたベンチに座る人影に何故か私は目を奪われた。
    隣を見上げると兄さんも目を大きく開けてその人を凝視していて、気付けば兄さんに引っ張られてベンチに駆け寄っていた。

    その人はあまりに美しかった。伸びた白い髪は女の人かと思ったけれど、体は男の人のそれで、大きな瞳は博物館で見た珪孔雀石によく似ていると思った。

    夏五兄弟パロ

  • ちみ夏五

    20260505(火)12:10
    雲の上ダンス

    夏五

  • 兄弟パロ 5

    20260505(火)00:22
    さとるくんの背中を見て不意に思い出すのは、日も沈んだ暗い公園のベンチに座り、身を寄せ合っていた兄弟だ。幼い弟を守ろうと細い腕の中に抱き寄せて、毛を逆立てた猫のように鋭い瞳で警戒心いっぱいに私達を睨んでいた悟の姿。
    そんな懐かない猫のように思えた悟が、私には笑顔を見せてくれた。私には身を寄せて、頬を撫でさせてくれた。あの瞬間、私は全力でこの兄弟を守ろうと誓ったのだ。

    悟の腕の中で静かに眠っていたあの小さな子どもが、もうこんなに成長して今では立派な高校生だ。感慨深いなぁと我ながら年寄り臭いことを思ってしまう。
    自分の鞄を手に取って帰り支度を済ませて通りかかった図書室で、さとるくんが何冊もの本を抱えて尚も本棚を見上げているのが目に入った。

    さとるくんは医者になるのだと言っていた。
    兄ちゃんのために力をつけたい。俺は兄ちゃんが病気とは言いたくないけど、やっぱり自由ではないから。病院で薬ばっか飲まされて余計に塞ぎ込む姿はもう見たくない。何があっても支えになって、守れる力と知識を身に付けたい。
    そう言って部活にも入らずに毎日何時間も勉強に費やして、片っ端から本を漁って。そんなさとるくんが私は誇らしかった。悟の言葉を聞かせてやったら、彼はなんと言うだろう。
    「もっと遊んでほしい。部活だって学生の時しかできないのに。やりたいこといっぱいあるんじゃないの?もっと若人らしく青春したらいいのにさぁ」なんて。
    悟も大概おじさん臭いよなあと思い出し笑いが漏れてしまって、ハッとこちらを見たさとるくんに窓越しに見つかった。結局私の車で一緒に帰る事になってしまったけれど、まぁたまにはいいだろう。
    教師と生徒にしては距離が近いことを怒られる時もあるけれど、仕方ないよな。彼だって私の大切な弟なのだ。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 4

    20260504(月)00:21
    「夏油先生~、これわかんないんだけど」
    「……数学の事は冥さんに聞いてくれるかい?」

    五条さとるという生徒は、この学校の中でも色んな意味でぶっ飛んだ学生だった。
    一目で異質だとわかるのはまずその容姿だ。白い肌に白い髪。白くて長い睫毛が、大きなブルーの瞳を縁取っている。紫外線に弱いからと普段はサングラスをしているおかげで尚更目立つ。くるくると変わる表情も、細くて長い四肢も、よく動く艶やかな唇も、どれもが人目を惹き付けて、どれもが人を虜にさせる。更に頭脳明晰で運動神経も抜群ときたらもう誰もが一度は恋をする。言動はどうにも子供っぽいし馬鹿っぽいし、中身を知った途端に冷めてしまう人も多い中、頭が小学生なところも可愛い♡と謎にファンを増やしているのも事実であった。

    ここはハリウッドかと見紛うようなオーラを纏ったさとるくんは、今日も廊下で駄弁る生徒達をモーゼの十戒如くかき分けながら、ズガズカと私の目の前に現れて立ち止まる。そして勢いよく突き出してきた教科書に、私は大きく溜息をついた。さとるくん、残念ながら私は極度の文系なのだ。

    「冥さん居ねえんだもん」
    「居なかった?部室かな…とにかく申し訳ないけど私は数学はてんでダメなんだ。帰ったら悟に聞いてみるといいよ」
    「えー、教師なのにー」
    「誰だって得手不得手があるものだよ」
    「なんだよー、しょうがねえなぁ。職務放棄だって兄ちゃんに言いつけてやる」

    どうにも確率ってやつが納得できない。100回サイコロ振って、たまたま100回6が出る事だってあるんじゃねえの?とか何とか。ぶつくさ呟きながら廊下を歩き去る彼の背中を見送って、自分も鞄を取りに職員室へと足を運んだ。
    私はこの学校の教師で、さとるとすぐるはここの生徒だ。血の繋がりは無いにしても、さとるくんも私の大切な家族の一人。特に悟とは血よりももっと深くで繋がった、自分の半身にすら思えるときがある。

    夏五兄弟パロ

  • 平浦

    20260504(月)00:14
    「うわ……なにしてんスか、平子サン」
    「んぁ〜……暇で暇で……」

    部屋で待っているはずの平子の姿が見当たらず、不意に頭上を見上げてギョッとした。平子は天井にあぐらをかいて、こちらを見上げるように見下ろした。今の平子にとっては天井が床で床が天井。髪がだらんと垂れてくるわけでもないとわかってはいても、違和感ばかりの妖怪じみた姿に多少の不気味さを覚える。

    「暇だとひっくり返るんですか」
    「視点変わると見慣れたモンも見たことないモンに見えるやろ〜?たまにやるとおもろいで」
    「……………」
    「……そんな可哀想なモン見るみたァに見んで……」

    あの何も無い廃墟での長い隠居生活は相当暇なんだろうとつい同情の目を向けたことを見抜かれ、平子はおよよと態とらしく両掌で顔を覆った。

    「てか何しとったんや、こない待たせて」
    「スイマセン、健康診断であれこれと…」
    「健康診断ンン〜??」

    平子はくるりと床に降り立ち浦原の言葉に目を丸くする。

    「ボクのじゃなくて、ウルルとジン太のっスよ。毎年この時期恒例なんス」
    「ほー……そゆこと……」
    「んじゃ行きましょうか」
    「なぁ、あの子らって………まぁええわ。待ちくたびれて腹減ったわ〜、はよ行こ」

    ×浦

  • 兄弟パロ 3

    20260503(日)00:20
    「あ!傑帰ってきた?」
    「ふぁぁ…今日は早いね」

    机に向かって丸まっていた背中をぐぐ、と伸ばして立ち上がり、さとるの後をついて2人の声がするリビングへ下りて行く。
    さとるによく似たさとるの兄と、私によく似た私の兄。ここは私達4人が暮らす小さな分譲住宅で、近所の人達からはたまに変な目で見られるけれど、そこらのご家庭よりよっぽど仲の良い理想の家族だと思う。兄さんが私をどう思っているかは微妙な所だけれども。

    「傑!おかえり!」
    「ただいまー、はぁ、へとへと……」
    「先にお風呂入ってきなね、ご飯あっためとくから」
    「うん、ありがと」

    兄さんは悟さんの頭を撫でて、スーツ姿のまま風呂場へ向かう。私とさとるはリビングのテーブルを布巾で拭いて、ご飯をよそって味噌汁を温め直して箸を並べてと食事の準備に取り掛かった。
    食事は家族で揃って食べる、それが夏油家での約束だった。親の元を離れてからもこうやって律儀に守っているのは、悟さんの家族への思いがあるからだ。二人が何も気負わなくていいように。二人を守れる家であるように。きっと兄さんも同じ思いだろう。
    器用な悟さんの作る料理が美味しくなかったことなど一度もないけれど、素直に美味しいと伝えると嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔が見れるのが私たちにとっても最高の幸せだった。

    「美味かった~!そうだ兄ちゃん、金曜に家庭実習あるんだよ。ハンバーグの作り方教えて!ミシュランシェフも唸るようなやつ!」
    「ミシュランシェフが頭抱えるようなやつなら作れると思うけど…材料買いに行かなきゃだね」
    「明日は早く帰れると思うから、一緒に行こうか」
    「ほんと?行く!」
    「俺も行く!」
    「え、私も行く」
    「お前は部活だろ?」
    「えぇ…休みにならないかなぁ…」

    面倒だなぁと項垂れる私の背中を、慰めるようにさとるが摩った。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 2

    20260502(土)00:20
    2階には部屋が2つある。1つは兄の部屋で、少し広めのもう1つの部屋は、私とさとるが共同で使っている所謂子ども部屋だ。
    2つのベッドと2つの勉強机。テレビとゲームとクローゼット。そして扉の向かいには、さとるが欲しいと強請って買ってもらった、大きな本棚が設置された。

    「結構大きいね、これ1人で組み立てるの大変だったでしょ。悟さんにちゃんとお礼言いなよ」
    「わかってるよ!すぐるの本も全部入れていいよ!おれこっち側使う」
    「あぁ、ありがとう」

    さとるは机上に平積みにされていた何冊もの本を嬉しそうに新品の棚に仕舞い始めて、私はベッドに座ってその姿を眺めていた。さとるは態度こそ悪いが私よりもずっと勉強熱心の努力家だ。テストの成績もいつも1位で、顔も良くて運動神経も良いさとるはありえないほどモテるのに、ありえないほど異性に興味を示さない。さとるに惹かれる有象無象には可哀想だが、これはもう覆りようがない。彼の中の1番は他でもない、彼のお兄さんなのだから。

    「すぐるぅ、疲れたぁ、おやつ貰ってくる」
    「もー、はしゃぎ過ぎだよ。ご飯まで待てないの?」
    「待てない~!アイス買ってあったじゃん、すぐるピノでいい?」
    「アイスの実とウィルキンソン」
    「おっさんかよ~」

    兄ちゃんアイス~!と叫びながら騒がしく階段を下りて行くさとるにクスクス笑って、壁に立て掛けてあった黒い折りたたみテーブルの脚を広げた。やがてまた階段を駆け上がってくるさとると一緒にアイスを食べて、今日の課題を片付けて。そうこうしているともう一人の家族が帰宅した。玄関のドアを開ける音に、さとるが跳ねるように顔を上げた。

    夏五兄弟パロ