らくがき帳

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  • 平浦+浦

    20260531(日)01:17
    昼食を食べている最中、突然呼びかけられて振り返ってみたら浦原が二人いた。
    右へ左へ、何度見返しても同一人物が二人居る。緑と白の縞模様の帽子を被り、黒い羽織と作務衣を着たいつもの喜助。そしてその隣に立っているのは、

    「隊長羽織と…白と黒の縞帽子……なんやその格好…?」

    背も顔も同じだが、こちらは死覇装の上に十二番隊の隊長羽織を身に纏い、白と黒の縞模様の帽子を被った見慣れない格好をしている。浦原は目をまん丸に見開いて、バケモンでも見たような顔で固まっていた。見慣れたいつもの浦原が扇子を開き、首を傾げてもう一人の浦原に視線を向けた。

    「……残念ながら義骸ではないですし、アタシ自身が分裂したわけでもないっスね。恐らく並行世界と繋がったんス」
    「並行世界?」
    「並行世界、パラレルワールド、マルチバース……表現は様々っスけどまあそんな感じっス」
    「ほーん……なんでまた……」

    舐め回すように見つめられた死覇装の浦原は一歩後退り、皮肉まじりに呟いた。

    「……こっちのアタシは随分洒落た格好してるんスねェ」
    「胡散臭くて良いでしょう、アナタの帽子もカジュアルでイケてるっスよ」
    「自分と喧嘩すなや、仲良うないんかいなオマエら」

    ズルズルとラーメンを啜って二人の間に箸を突き出すと、二人は気まずそうに口を閉ざした。スープまで飲み干して箸を置き、浦原に向き直る。

    「てか並行世界て何?ほーんとか言うたけどようわかれへん」
    「例えば平子サンは今カップ麺を食べてますけど」
    「おう」
    「お湯を入れてここまで運んでくる際に、床にぶちまけて食べ損ねてしまった平子サンもいたかもしれない」
    「ほう」
    「塩ラーメンではなく醤油ラーメンを選択した平子サン、3分待っている間に居眠りしてしまい伸びきった麺を泣く泣く啜るはめになった平子サン。一つの選択、少しの違いで無数に未来が分岐するんス」
    「はー……んで、そのどっかで別の選択をした世界線の喜助が、なんやしらんけどこっちの世界に来てもうたと」
    「何がきっかけで繋がっちゃったのかは、さっぱりわかんないっスけど」
    「ほんなら今、ここに居るコイツは…」
    「今ここに居るコイツは、魂魄消失事件の際に平子サンたちを見捨てたことで現在ものうのうと隊長業務を続けているが罪の意識に耐え切れず別の人格を憑依させてどうにか取り繕っている愚かな浦原喜助、っスかね」
    「どっちにしろこうなんのかいオマエは」

    ×浦

  • ヘン主 12

    20260529(金)00:54
    絢爛な城に似つかわしくない下品な笑い声が響き、つい広間の様子を覗き込んだ。数名の兵士がテーブルを囲み駄弁っている。一瞬こちらに目配せしたかと思えば堂々と仲間に入ろうとするリュカの後を慌てて追いかけた。

    「どうもこんにちは」
    「お?なんだ兄ちゃん!おめえも兵士になりたくてやって来たのかい?この国はいいぞお!戦ってさえいれば金がいっぱいもらえるし、うまい物も食い放題だぜっ」

    どう見ても人間ではない相手に平然と話し掛けるリュカこそ恐ろしいと内心かなり引いているが、気付かれないように顔を逸らした。もっちゃもっちゃと音を立てながら食っているその肉は奇妙な緑色をしている。何の肉か想像もしたくなかった。こんな奴らにオレの国が……。舌打ちしそうになる口を必死に引き締めた。

    「こんなに暮らしやすい国は他には無いな。大臣たちはチョー弱気でなんでも我らの言いなりだぞ〜」
    「まったくこの国の太后さまはなかなかたいした人物だな。この国が世界を征服する日もそう遠いことではあるまい。わっはっはっ」
    「世界征服…!?」
    「へえ、次はどこの国に攻め込むか楽しみですね。あっはっは」

    リュカは思わず叫んだオレの肩を押して、貼り付けた笑顔で態とらしく笑いながら部屋を出た。

    「さまようよろいにがいこつへい、魔物しか居なかったね」
    「完全に乗っ取られてるな…。世界征服って…あの偽太后はそんなこと考えてんのかよ……。クソ、はやく鏡の手掛かりを探そうぜ」

    自分達が歩き出すと同時に足音が聞こえ振り返ると、一人の兵士が向かってきていた。彼は広間の扉の前で立ち止まり深い溜息をついた。

    「……あんた大丈夫か?酷い顔してるぜ」
    「あ……あぁ…すまない、最近思うのですが、太后さまの集めた連中は気持ちの悪い人ばかりで……。ああっと!私がこんなこと言ったなんて人には言わないでくださいよ」
    「……あいつらを気持ち悪いと思えるならあんたはまともだな。ひょっとして城の兵士たちは全員おかしくなってるのかと心配してたけど安心したよ」
    「あぁ……あなた方もまともそうだ。少し安心しました」

    青ざめた表情のまま兵士は笑い、意を決したように扉を開けた。相変わらずゲラゲラと笑う声に頭が痛くなる。魔物たちの談笑をまだ興味深そうに覗こうとするリュカのマントを引っ張って倉庫へと急いだ。

    DQ5

  • ちみ五

    20260527(水)06:04
    祈りの手が届かない

  • 平×ショタ浦

    20260526(火)20:21
    膝に乗り上げている少年の小さな手が平子の隊長羽織をちょんと摘んだ。今にも彼の作務衣をひん剥こうとしていた手を己の額に当てて天を仰いだ。

    「……あかん、あかんで、流石にこれはあかん。いくらオレかてそんくらいの倫理はあんねん」
    「……………」
    「なんでまた来てもうたんや………」

    ポフン、とアホみたいな音が響いた瞬間、煙幕で何も見えなくなった。ようやく視界が開けたと思ったらさっきまでイチャついていた恋人の体が小さくなっている。額から手を退けて再度目を凝らしてもやはり状況は変わらない。幼い浦原は平子の足に跨がりきょとんとこちらを見上げていた。この姿の浦原と会うのは実に数ヶ月振りになる。もう二度と会うことはないと思っていたのに随分早い再会だった。

    「あー……久しぶりやな」
    「……………」
    「嘘やろ、オレんこと知らん?」
    「……………」
    「アレとは別個体なん?それともアレより前の喜助っちゅーこと?あ、記憶無くなるんやったっけ?」
    「………?」
    「はー……もうどないなっとんねん、説明せぇや喜助ェ……って喜助はオマエか……はぁー……また難儀やなァ…」
    「………………」
    「しゃーない、マユリんとこ行くかァ……」

    浦原は喋らない。以前は一言二言でも返事をくれる程度には懐いてくれていたのに、平子の声だけが虚しく部屋の空気を揺らした。おあずけをくらった挙句、また振り出しに戻された感覚に泣きたくなった。

    「………あんたアレやな、あん時ほどボロボロやないんやな」
    「…………」
    「今て四楓院家に居んの?……ちゃうんか?どっから来たん?」
    「…………?」
    「あかん何も噛み合わへん……助けて……」

    ×浦

  • BD平浦🎂💐4

    20260523(土)02:26
    何をそこまで飢えているかと自分事ながら笑いさえ込み上げてくる。乾いた砂漠を散々彷徨った果てにようやく見つけた泉に縋りつくような必死さに、浦原は何を思ったかぐっと唾液を飲み込んだ。白い肌にむしゃぶりついてあちこちに赤い痕を散らしながら、指先は敏感な耳をするりと撫でる。項に齧りついて歯を立てると、薄い肩を震わせて甘い緊張の孕む吐息を漏らした。

    「きすけ、きすけ、」
    「待って、ここじゃ…っ」
    「ん、わかってる、部屋行こな」
    「ッ……」

    最後に舐めた首筋は濡れた蛇が這った跡のようにぬらりと光る。唇を離すと涙目になってこちらを見つめてくる目と目が合った。恨めしそうに睨んでいても大きい目は可愛いばかりで意味が無い。笑いながら頭を撫でて、奪い取っていた帽子を再び被らせた。

    「メシ、風呂、オレ!どれにする?!」
    「お仕事終わりでお腹空いてないんスか?」
    「オレは今すぐにでも喜助が食べたいです」
    「よく洗ってからじゃないと食べらんないっス」
    「っしゃ!オレが全身みっちり洗ったる!」
    「……………」
    「なんやその目は!!なんでもする言うたん喜助やからな!?今更取り消し効かへんからな!?」
    「なんでもさせるとは言ってないっス…」
    「同じや!!」

    噛み付くように反論すると浦原は居心地が悪そうに背中を丸めて小さくなった。そういえば物的なプレゼントを貰ってないとか、ケーキの蝋燭に息を吹きかける儀式もやってないとか、そもそもこんな時間までこいつはどこで何をやっていたんだとか、問い詰めるのも美味しくいただいた後にして、丸まった背中をぐいぐい押して私室へと連行していく。明日はどうせまともに動けなくなるだろう。一日中甲斐甲斐しく世話を焼いてやりながらこの頬がぱんぱんになるまでたい焼きを詰め込んでやろうと思い立ち、背後から浦原の両頬をむにと摘んだ。

    ×浦

  • ヘン主 11

    20260515(金)01:02
    ほんの僅かに開いた扉の隙間から太后の居座る部屋を覗き見る。豪華なドレスを纏いソファで寛いでいる彼女の横顔は不自然なほど記憶にある義母の姿と酷似していた。早々に見張りの兵士に追い出され、観察していられたのは数秒だったが、階段を下りながらリュカは自分が思ったことと同じ言葉を口にした。

    「僕が昔に見た顔と変わってないね」
    「間違いないな…。人の姿に化ける魔物だ。神殿にも居ただろ、そういうの」
    「魔力が高い証拠だね。どうしよっか。あの太后がニセモノだって証明できる何かがあれば……」
    「ラーの鏡……」
    「ん?」

    王の元に戻りうーんと頭を捻っていると、二人の会話を聞いたデールがぽつりと聞き慣れない言葉を発した。希望の光が差したかのように、その目は僅かな輝きを持って真っ直ぐにリュカを見る。

    「いつだったかボク読んだことがあるんだ。真実の姿を映す、不思議な鏡の伝説を。この城の倉庫の本棚だったと思うな。兄さんも読んだことない?」
    「オレに読書なんてご立派な趣味があったと思うか?……真実の姿を映す鏡ねぇ…。おとぎ話としか思えないけど、他に縋るものも今は無いしな、探してみるか」
    「うん…。無理はしないでね、兄さん」
    「はいはい、わかったって」

    廊下へ出て倉庫に向かうが、次第に足取りが重くなり、リュカは不思議そうにこちらの顔を覗き見た。

    「ヘンリー?顔色が悪いよ」
    「あー、いや……あの倉庫ってオレが攫われた場所の近くでさ。思い出したらなんだか背筋がゾワゾワと……」
    「お城の中は変わってないね」
    「……雰囲気は随分物々しいけどな…やっぱりここはオレの家なんだよ。懐かしくて嫌になるね」

    懐古する度に見えない刃で貫かれる痛みが走る。魔物に乗っ取られ衰退した国。焼き払われたサンタローズ。パパスという英傑の死。幼いリュカから父親を奪い、彼の人生を狂わせた元凶。目にしてきた凄惨な光景の全てが、元を辿れば己の愚行に帰結する。破裂しそうなほど激しく脈打つ胸を押さえて、今にも倒れ込みそうな体を強引に引き摺った。

    「………全部オレのせいなんだもんな、冗談じゃないよ」
    「あの偽太后のせいだったでしょ。だからこれから懲らしめてやるんだ」
    「パパスさんなら止められた」
    「………意味のない話だ」
    「……………」

    前方を歩くリュカの表情はわからない。どこまでも最低な自分をいっそのこと刺し殺して欲しいこの渇望は、彼には一生届くことは無い。

    DQ5

  • 兄弟パロ 15

    20260515(金)01:02
    「……兄ちゃん……俺、なんもされてないよ。大丈夫だよ。兄ちゃんが、守ってくれたから」
    「……っ、さ、とる……さとる、」
    「うん…にいちゃんの手、あったかくしてやるからな。おれが、ぎゅーって、してやるから」

    冷えきった体も心も、足の先から頭の先まで全部全部全部、俺があっためてやるから。
    ほら、見ろよ。俺の体、もうこんなにデカいんだよ。今ならもう兄ちゃんが倒れる前に抱きしめられるし、兄ちゃんを傷つける奴はぶっ殺せるし、兄ちゃんの体をぎゅってして、あっためてやるのだって余裕なもんよ。

    「さとる……、さとる……!」
    「うん、うん…兄ちゃん、ありがとな」

    守ってくれて。俺を見捨てないでくれて。ずっと一緒にいてくれて。俺のこと、大好きって言ってくれて。

    兄ちゃん、思い出して。ここにはもう俺達を踏み躙る奴らは居ないよ。連れ出してくれたのは兄ちゃんだろ。傑達が引っぱり上げてくれただろ。兄ちゃんはもう怯えなくていいよ。

    「もう、大丈夫だからな…」

    兄ちゃんがいつも言ってくれた言葉。その声がいつだって俺を安心させてくれたように。俺だって、兄ちゃんの不安を拭い去りたい。

    「………さ、とる…?」
    「うん……兄ちゃん、目痛い?」
    「……ん……」
    「横んなってて、薬持ってくっから」
    「あ、待って…」

    抱き合ったままじっとしてたら、兄ちゃんはやっと意志を持った目で俺を見た。充血してしまっている綺麗な目が可哀想で、そっと瞼に触れた。働き者の兄が昼間から眠ってしまうのなんて、相当具合が悪い時だけだ。薄い瞼は時折痙攣しているし、きっといつもの頭痛だろう。ソファから下りて離れようとした俺のシャツを、兄ちゃんの指がちょんと掴んだ。
    振り返ると、潤んだ瞳が俺を見つめている。たまらなくなって、兄ちゃんの体をもう一度抱きしめた。

    「さとる……っ」
    「もー、兄ちゃん、心配すんなよ。ただの悪い夢だって」

    本当に、あんな日々がぜんぶ夢だったらよかったのに。兄ちゃんの背中をぽんぽん撫でながら、もう大丈夫だと何度も何度も言い聞かせた。俺を抱きしめる腕が小さく震えて、だんだんと力が抜けていく。

    「俺がこうしてたら、ゆっくり眠れる?」
    「だめ……ねちゃっ、たら……」
    「兄ちゃんちょっと休んだ方がいいよ。どうせ今日も色々やってくれてたんでしょ。頑張りすぎ」
    「だめ……だよ……」
    「じゃー俺もう寝たいから兄ちゃん寝かしつけて!ぎゅってしててくれないと寝れない!」
    「さとる……」
    「なに?」
    「汗臭い……」
    「汗ごと抱きしめて!」

    兄ちゃんは呆れたように笑って、それでも強く抱きしめてくれて。目を閉じた兄ちゃんの唇が俺の首筋に触れて、ゾクッとした。

    「兄ちゃん……」
    「ん……?」
    「こっち……」

    顔を上げたら、潤んだ青い目が俺を見ていた。兄ちゃんの唇が俺の唇にそっと重なって、指と指が絡んだ熱に、体が震えた。濡れた音が耳を掠めて、兄ちゃんの長い睫毛が、俺の頬を擽る。
    (兄ちゃん、大好き、大好き、大好き)
    俺の思いはどこまで届いてるだろう。たった一人の本当の家族。たった一人の、俺の兄ちゃん。可愛くて、格好良くて、強くて、優しくて、たまに阿呆で。切なくなるほど、綺麗な人。

    暗闇を背負って泣いているしか無かった日々。傷は傷のまま、痛みは痛みのまま残り続けて、一人で眠ることさえ出来なくなって。それでもこうして抱きしめてれば、兄ちゃんの胸に開いた傷口も、きっといつかは塞げるんじゃないかって。兄ちゃんの傷は俺のせいだ。だったら傷を癒すのも、俺の手がいい。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 14

    20260514(木)00:28
    「ただいま~」

    逸る気持ちのまま鍵を開けて部屋に飛び込むと、いつも「おかえり~」と出迎えてくれるはずの兄ちゃんが来なかった。
    (……あー…これは…)

    足音を忍ばせてゆっくりドアを開けると案の定、兄ちゃんはソファで長い足を器用に丸めて眠っていた。しゃがみこんでその寝顔を覗き込む。四角いクッションに口元を埋めて眠る兄ちゃんの穏やかな寝顔を期待したのに、その伏せられた瞼は微かに震えて、眉間はきゅっと切なく寄せられている。時折苦しげな呼吸が漏れるのを看過できず、その背中を揺さぶった。

    「兄ちゃん、兄ちゃん起きて」
    「……っ…ん……」
    「兄ちゃん」
    「……、っ……」

    ああもう、これだから一人にさせたくないんだ。
    そんな泣きそうな顔で、まともに息もできてない。なぁ、起きろよ。俺のこと見ろよ。兄ちゃんはもう、あんなところに居なくていいのに。

    「兄ちゃん!」
    「……っ!」

    ちょっと大きな声を出して両手で背中を揺さぶると、バチッ!と大きな目が開いて、俺を捉えた。

    「さ……と、る……?」
    「兄ちゃん?大丈夫?」
    「さとる、っ……ぁ、ごめ、ごめん、さとる」
    「兄ちゃん?ちょっと、」
    「何も、何もされてない…?ぁ、嘘、僕、なんで」

    なんでねむってしまった、さとる、なにもされてない?
    飛び起きた兄ちゃんは冷や汗をだらだら流しながら、俺の体のあちこちを震える手で何度も触れる。隅々まで確かめるように、呼吸まで震わせて。俺は兄ちゃんの手を取って力強く指を絡めた。冷たくなってしまった両手に、俺の熱が伝わるように。
    ここは、いつかの夜だ。頭から血を流して床に倒れている兄ちゃんと、その傍らで泣き叫んでいただけの赤ん坊。兄ちゃんの今にも閉じてしまいそうな濁った瞳が俺を手繰り寄せて、血の滲んだ唇から絞り出された掠れた声が俺に言うんだ。

    『さとる、だいじょぶだよ。にいちゃんは、だいじょぶだから、なかないで。ほら、て、にぎってあげるから』
    『こわくない、こわくない……だいじょうぶだからね……ぼくが、まもるからね…』
    『さとる……ごめんね……ぼく、ちょっと…ねむ…くて…』

    大きな体を強引に抱き起こして、思いっきり力を込めて抱きしめた。兄ちゃん、俺はもう、泣いてるだけの子どもじゃないよ。

    夏五兄弟パロ

  • BD平浦🎂💐3

    20260513(水)21:51
    終業時刻を過ぎた瞬間、破壊的な気分でノイバウテンのレコードに針を落とした。突然工事現場のような喧騒に包まれた隊舎から隊士達は逃げるように去っていく。グラインダーで鉄板から火花が飛び散る音を背景に、平子は誰も居なくなった部屋の真ん中でブリクサの振りで逆撫を抱えて蹲る。

    「……喜助ェ……」

    呪詛のように呟く声も悲鳴のような金属音に潰されてかき消える。組んだ腕の隙間から見えるのは京楽から貰った浦原の写真と、象徴的な一つ目の棒人間が描かれたレコードジャケット。『半分人間』なんてまさしくオレみたいやなと、そうでもない感傷に浸りながら逆撫の柄を何の気も無く指先でなぞっていると、突然目の前に存在しない扉が開いて長い足が飛び出してきた。

    「お、っとと、」
    「は?」

    前触れも無く出現した穿界門から、浦原がよろめきながら飛び込んでる。慌てて駆け寄り反射的に抱きとめると、浦原は片手で帽子を押さえながら姿勢を正した。

    「いや〜〜、よかった、ちゃんとここに繋がったっスね♪」
    「……え、ほんまに喜助がプレゼントのやつ?」
    「あれ、平子サンおひとりっスか?ていうか何スかこの音」
    「すまん、喧しいな、止めるわ」

    腹まで響く鈍い打撃音に顔を顰める浦原にハッとしてトーンアームを持ち上げた。電源も落としてやっと静まった部屋で、浦原は歌うように喋り出す。

    「遅くなっちゃっスねェ、スイマセン」
    「ほんまやで。大遅刻や。リボン巻いてへんし。許さへん」
    「んぶっ」

    向かい合った浦原の両頬を両手で挟むと、浦原は唇を突き出して潰れた顔のまま喋り続けた。

    「ひあほはん、おひゃんひょうび、おへへひょうほひゃいましゅ」
    「何言ってるかわからへん」
    「にゃらちゅぶしゃにゃいでくだひゃいひょ」
    「ぶ、っ…はは!アホみたァな顔して、なんやこいつ」
    「ひりゃこひゃん、はにゃひて」
    「はー……ハイハイ、もっかい言って」
    「……お誕生日おめでとうございます、平子サン」
    「遅いねん。一番に言って欲しかったわ」
    「スイマセン…。今日は何でもしますから、怒らないで」
    「何でも…!?」

    喧騒は止んだはずなのに突如爆弾が投げ込まれて思わず浦原の肩をガッと掴んだ。浦原は帽子を目深に被って表情を隠そうとするが、その唇は擽ったそうにもどかしく綻んでいた。

    ×浦

  • 兄弟パロ 13

    20260513(水)00:27
    「じゃあまたね、気をつけて帰るんだよ」
    「はーいママ」
    「誰がママだ」

    すぐるは笑って俺の頭を軽く叩いた。放課後の教室は賑やかだ。すぐるはいつものようにバスケ部の仲間と一緒に教室を出て行って、俺は一人で座ったまま後ろに大きく伸びをして、窓の外に目を向けた。

    グラウンドを走る運動部の野太い声と、廊下に響く甲高い女子達の笑い声。基本的には全員が部活に入ることを勧めているこの学校で、俺は頑なに帰宅部を貫いている。何度説得されても靡かない俺の態度に結局皆諦めて、もう誰も何も言ってこないけれど。一息ついて、鞄を肩にかけて席を立った。
    隙あらば声を掛けようと近付いてくる女子達を適当に躱しながら階段を下りて校舎を出て、小走りで帰路に着いた。

    大事な人がたった一人で待っているのだ。部活なんてやってる場合か。はやく顔が見たいし、はやく無事を確かめたいし、一秒でも長く一緒に居たい。ブラコンだって馬鹿にされても構わなかった。クソみたいな家でボロボロになりながら俺のことを守ってくれた兄ちゃんは、俺にとっては神サマみたいなもんなんだから。
    兄ちゃんと俺はよく似てるって言われるけれど、兄ちゃんの方がよっぽど綺麗だ。俺よりも背が高くて、いつだって落ち着いていて、気品の高い白猫の様だ。格好良くて可愛くて、俺の事をめちゃくちゃ大事にしてくれる。

    兄ちゃんのことを考えていたら気付けばルンルン跳ねるように走り出していて、バスを待っている時間さえ惜しかった。到着したバスに乗って15分。下りた先の2個目の角を曲がって、下り坂を駆け下りる。標識の前の角を曲がると俺の家だ。あの高校だって、家から近いって理由で選んだだけで、他に何の理由もありはしない。だって嫌いなんだ。兄ちゃんが居ない空間が。会えない時間が。

    夏五兄弟パロ