らくがき帳

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  • 兄弟パロ 14

    20260514(木)00:28
    「ただいま~」

    逸る気持ちのまま鍵を開けて部屋に飛び込むと、いつも「おかえり~」と出迎えてくれるはずの兄ちゃんが来なかった。
    (……あー…これは…)

    足音を忍ばせてゆっくりドアを開けると案の定、兄ちゃんはソファで長い足を器用に丸めて眠っていた。しゃがみこんでその寝顔を覗き込む。四角いクッションに口元を埋めて眠る兄ちゃんの穏やかな寝顔を期待したのに、その伏せられた瞼は微かに震えて、眉間はきゅっと切なく寄せられている。時折苦しげな呼吸が漏れるのを看過できず、その背中を揺さぶった。

    「兄ちゃん、兄ちゃん起きて」
    「……っ…ん……」
    「兄ちゃん」
    「……、っ……」

    ああもう、これだから一人にさせたくないんだ。
    そんな泣きそうな顔で、まともに息もできてない。なぁ、起きろよ。俺のこと見ろよ。兄ちゃんはもう、あんなところに居なくていいのに。

    「兄ちゃん!」
    「……っ!」

    ちょっと大きな声を出して両手で背中を揺さぶると、バチッ!と大きな目が開いて、俺を捉えた。

    「さ……と、る……?」
    「兄ちゃん?大丈夫?」
    「さとる、っ……ぁ、ごめ、ごめん、さとる」
    「兄ちゃん?ちょっと、」
    「何も、何もされてない…?ぁ、嘘、僕、なんで」

    なんでねむってしまった、さとる、なにもされてない?
    飛び起きた兄ちゃんは冷や汗をだらだら流しながら、俺の体のあちこちを震える手で何度も触れる。隅々まで確かめるように、呼吸まで震わせて。俺は兄ちゃんの手を取って力強く指を絡めた。冷たくなってしまった両手に、俺の熱が伝わるように。
    ここは、いつかの夜だ。頭から血を流して床に倒れている兄ちゃんと、その傍らで泣き叫んでいただけの赤ん坊。兄ちゃんの今にも閉じてしまいそうな濁った瞳が俺を手繰り寄せて、血の滲んだ唇から絞り出された掠れた声が俺に言うんだ。

    『さとる、だいじょぶだよ。にいちゃんは、だいじょぶだから、なかないで。ほら、て、にぎってあげるから』
    『こわくない、こわくない……だいじょうぶだからね……ぼくが、まもるからね…』
    『さとる……ごめんね……ぼく、ちょっと…ねむ…くて…』

    大きな体を強引に抱き起こして、思いっきり力を込めて抱きしめた。兄ちゃん、俺はもう、泣いてるだけの子どもじゃないよ。

    夏五兄弟パロ

  • BD平浦🎂💐3

    20260513(水)21:51
    終業時刻を過ぎた瞬間、破壊的な気分でノイバウテンのレコードに針を落とした。突然工事現場のような喧騒に包まれた隊舎から隊士達は逃げるように去っていく。グラインダーで鉄板から火花が飛び散る音を背景に、平子は誰も居なくなった部屋の真ん中でブリクサの振りで逆撫を抱えて蹲る。

    「……喜助ェ……」

    呪詛のように呟く声も悲鳴のような金属音に潰されてかき消える。組んだ腕の隙間から見えるのは京楽から貰った浦原の写真と、象徴的な一つ目の棒人間が描かれたレコードジャケット。『半分人間』なんてまさしくオレみたいやなと、そうでもない感傷に浸りながら逆撫の柄を何の気も無く指先でなぞっていると、突然目の前に存在しない扉が開いて長い足が飛び出してきた。

    「お、っとと、」
    「は?」

    前触れも無く出現した穿界門から、浦原がよろめきながら飛び込んでる。慌てて駆け寄り反射的に抱きとめると、浦原は片手で帽子を押さえながら姿勢を正した。

    「いや〜〜、よかった、ちゃんとここに繋がったっスね♪」
    「……え、ほんまに喜助がプレゼントのやつ?」
    「あれ、平子サンおひとりっスか?ていうか何スかこの音」
    「すまん、喧しいな、止めるわ」

    腹まで響く鈍い打撃音に顔を顰める浦原にハッとしてトーンアームを持ち上げた。電源も落としてやっと静まった部屋で、浦原は歌うように喋り出す。

    「遅くなっちゃっスねェ、スイマセン」
    「ほんまやで。大遅刻や。リボン巻いてへんし。許さへん」
    「んぶっ」

    向かい合った浦原の両頬を両手で挟むと、浦原は唇を突き出して潰れた顔のまま喋り続けた。

    「ひあほはん、おひゃんひょうび、おへへひょうほひゃいましゅ」
    「何言ってるかわからへん」
    「にゃらちゅぶしゃにゃいでくだひゃいひょ」
    「ぶ、っ…はは!アホみたァな顔して、なんやこいつ」
    「ひりゃこひゃん、はにゃひて」
    「はー……ハイハイ、もっかい言って」
    「……お誕生日おめでとうございます、平子サン」
    「遅いねん。一番に言って欲しかったわ」
    「スイマセン…。今日は何でもしますから、怒らないで」
    「何でも…!?」

    喧騒は止んだはずなのに突如爆弾が投げ込まれて思わず浦原の肩をガッと掴んだ。浦原は帽子を目深に被って表情を隠そうとするが、その唇は擽ったそうにもどかしく綻んでいた。

    ×浦

  • 兄弟パロ 13

    20260513(水)00:27
    「じゃあまたね、気をつけて帰るんだよ」
    「はーいママ」
    「誰がママだ」

    すぐるは笑って俺の頭を軽く叩いた。放課後の教室は賑やかだ。すぐるはいつものようにバスケ部の仲間と一緒に教室を出て行って、俺は一人で座ったまま後ろに大きく伸びをして、窓の外に目を向けた。

    グラウンドを走る運動部の野太い声と、廊下に響く甲高い女子達の笑い声。基本的には全員が部活に入ることを勧めているこの学校で、俺は頑なに帰宅部を貫いている。何度説得されても靡かない俺の態度に結局皆諦めて、もう誰も何も言ってこないけれど。一息ついて、鞄を肩にかけて席を立った。
    隙あらば声を掛けようと近付いてくる女子達を適当に躱しながら階段を下りて校舎を出て、小走りで帰路に着いた。

    大事な人がたった一人で待っているのだ。部活なんてやってる場合か。はやく顔が見たいし、はやく無事を確かめたいし、一秒でも長く一緒に居たい。ブラコンだって馬鹿にされても構わなかった。クソみたいな家でボロボロになりながら俺のことを守ってくれた兄ちゃんは、俺にとっては神サマみたいなもんなんだから。
    兄ちゃんと俺はよく似てるって言われるけれど、兄ちゃんの方がよっぽど綺麗だ。俺よりも背が高くて、いつだって落ち着いていて、気品の高い白猫の様だ。格好良くて可愛くて、俺の事をめちゃくちゃ大事にしてくれる。

    兄ちゃんのことを考えていたら気付けばルンルン跳ねるように走り出していて、バスを待っている時間さえ惜しかった。到着したバスに乗って15分。下りた先の2個目の角を曲がって、下り坂を駆け下りる。標識の前の角を曲がると俺の家だ。あの高校だって、家から近いって理由で選んだだけで、他に何の理由もありはしない。だって嫌いなんだ。兄ちゃんが居ない空間が。会えない時間が。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 12

    20260512(火)00:27
    そうして暫く経ったある日の夜。あんなコピー用紙の手紙を宝物のように握りしめて、電車を乗り継いでこんな所まで逃げてきた最愛の人。ずっと会いたかったと私の腕の中で泣いた悟が、今もここにいる。
    離ればなれだった数年間で悟は随分と変わってしまった。私の弟と同い年の弟が出来ているし、人懐っこかったあの無邪気な笑顔は隠れてしまって、表情は憂いを帯びて曇りがちだ。そしていつも周囲を警戒している様だった。
    自宅に連れて帰るとすぐに家族会議が開かれて、悟は静かに眠る弟を抱きしめて、俯いたままぽつぽつと経緯を話してくれた。

    今までよく頑張ったね、もう大丈夫よ、うちにおいで。その母親の一声で、悟はぼろぼろと声も上げずに泣き出して、あまりにも切ないその泣き方に、胸が痛くて仕方なかった。悟が逃げてきてくれたその日から、私達は家族になった。

    大口を開けてわんわん泣き叫んでいたあの子供が、唇を噛み締めて声を殺して泣いていることに、無性にやるせない気持ちになった。
    悟の家は母子家庭だったけど、優しい母親と笑っている姿もよく見ていたから尚更だ。離れてしまった数年間で、悟を取り巻く環境がこうも変わり果てていたなんて考えもしなかった。

    外への不安が強い悟はどうしても他人が苦手で、両親にも時折怯えた表情を見せた。はやく実家を出るべきだと思ったのは、悟のそんな姿を見てきたからだ。両親も気付いていたんだろう。いくら金があるからって近所の適当な家を買って子供に渡すなどイカれていると思ったが、中学生の弟達を連れて、迷わず私は悟とその家に引っ越した。
    悟が過ごしやすい環境を、悟が笑ってくれる日常を、悟が安心できる温かい家族を作りたい。私の中にあるのはそれだけだ。

    閉じていた目を開いて、腕の中で眠る悟に視線を向けた。甘えるように私の胸元にちょんと手を添えているのが可愛くて、もう一度よしよしと頭を撫でた。

    可愛い。愛しい。大好き。もちろんいつだって抱きたいけれど、そればかりなわけじゃない。
    こうして抱きしめているだけでこんなにも満たされて、胸の奥から癒されるのだ。今はただ、こうしているだけで十分だった。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 11

    20260511(月)00:26
    悟にその事を言い出せたのは引っ越してしまうギリギリの時期で、悟があまりにも悲しそうにわんわん泣くから、私までつられて声を上げて号泣した。
    おれのこと忘れるなよ。たのしくなかったら戻ってこいよ。ぜったいにまた会おうな。おまえのこと、忘れないから。
    そんな言葉を言い合って、目が真っ赤になるほど二人で泣いて、泣き止んでからは言葉も出なくて。お互いに掠れた声でバイバイ、と鼻をすすってお別れしたのを覚えている。

    転校先の学校は生徒数もずっと少ない小さな学校だったけど、それなりに上手くやっていた。中学に上がる頃に年の離れた弟ができて、バスケ部に入った私は嫌になるほどモテたけど、心にぽっかり空いた穴は塞がらないままだった。悟のことをいつまでも思っていたから。

    いつだったか、ごちゃごちゃしてきた部屋をいい加減に片付けなさいと怒られて、渋々小学校の教材を整理していた時だった。懐かしいノートに挟まれていた、一枚の手紙が床に落ちた。

    『すぐる へ
    いつも なかよくしてくれて ありがとう。
    おまえ まえがみ へんだけど、にあうから そのままでいいよ
    ごじょう さとる より』

    クソみたいな手紙だ。だけど何故か鼻がツンと痛んで泣きそうになった。これは、そうだ。仲良しの友達に手紙を書きましょう、とかいう先生の思いつきみたいな授業で、悟から受け取った物だった。私も悟に手紙を書いて、溢れんばかりの思いを綴ったら長文になりすぎて、読んでられねえよ長すぎんだろと悟に笑われたのを覚えている。手紙の裏に書かれた悟の住所を見つけて、口角が緩んだ。変わっていない保証は無かったけれど、何もしなかったら何も起きない。

    衝動的なそれに便箋を買う時間も勿体なくて、ただのコピー用紙につらつらと書き綴った。読んでられねえよと突っぱねられたら意味が無いから、なるべく簡潔に、だけど精一杯の思いを込めて。自分の近況と、悟への思い。そしてどうか、もう一度会いたいと。そんな言葉で締めた手紙を封筒に入れて切手を貼って、届きますようにとポストへ投げた。

    夏五兄弟パロ

  • BD平浦🎂💐2

    20260510(日)20:21
    「おや、賑わってるねェ」
    「総隊長サン、どないしてん」
    「どないしてんって、そりゃもちろんお祝いしにきたのさ。はい、お誕生日おめでとう」
    「おぉ、おおきに……ってなんやこれ、写真?」

    仮面の軍勢が集まる五番隊の隊首室に挨拶も無く気楽に入ってきた京楽は、真っ直ぐに隊首に向かい、二枚の写真をぽんと平子の掌に握らせた。平子は裏の白い面しか見えていないそれをひっくり返し、ギョッと目を見開いた。

    「………京楽サン、アンタこれ、どこで……は…?」
    「隊長時代の浦原クン、かわいいでしょ」
    「かわ……かわえ……かわええけど…!!アンタこれ今までずっと自分で持っとったんか…!?いつ撮ったんやこんなん…!!」
    「あっはっは、んじゃまたね〜」
    「待てやコラァ総隊長!!」

    京楽は陽気に笑い、ひらひらと手を振りながらさっさと部屋を出て行った。平子は僅かに震える手でもう一度渡された写真を凝視する。そこに写っていたのは、両手で持ったたい焼きを小さな口を開けて頬張る浦原の横顔と、カメラに気付いて照れくさそうにふにゃりと笑う浦原だった。

    「………リサ、京楽サンて喜助ンこと狙ってたんか…?」
    「知るか。アンタほどの物好きちゃうやろ。浮竹隊長の写真はよう眺めとったけどな」
    「おん……なんやねんほんま…」

    陽を浴びて輝く柔らかそうな淡い金髪と、小動物のように膨らんだ頬。今ではもう帽子の影に隠れてしまった、純粋さを含む緩んだ笑顔。

    「クッ……ソ……かわええ……」
    「どれ、見してみ」
    「あかん!見んな!喜助が減る!」

    平子サン平子サン、とよく懐いた犬のように駆け寄ってきたり、時に生意気な口を聞きながらも、慕ってくれていたと思う。研究に没頭し過ぎて何日も引き篭り、仙人のような風貌になった浦原を引き摺り出して風呂にぶち込んだり、二人で密かに抜け出して甘味処に行っては、ひよ里に見つかって二人揃って吹っ飛ばされたり。ぼろぼろと剥がれ落ちた破片を拾うように、遠い日々を思い出した。

    ×浦

  • BD平浦🎂💐1

    20260510(日)01:27
    「喜助からの通知が来ませんッ!!!」
    「忘れてんねやろ、アンタの誕生日なんて」
    「そんなわけあらへん!!きっとあれや、今頃必死こいて準備してくれてんねや…!!LINEしとるヒマもないほどに…!!」
    「無理なポジティブが痛々しいな」
    「自分にリボン巻いてプレゼントは、ア・タ・シ♡なんてことも…!?キャ〜〜ッッ!!大胆ッッ!!」
    「それアイツにされて嬉しいか…?」
    「ハッ…!せや…!リボンぐるぐる巻きになっとるせいで伝令神機触られへんのかもしらん…!!あかん、もう直接現世までひとっ走りしてくるわ…!!」
    「雛森ー、コイツに縛道ぶっ放してやれ」
    「おおん……厳し……」

    しおしおと力なく机に伏せて項垂れた瞬間、投げ出した手に握っていた伝令神機が小さく震えて勢い良く跳ね起きた。が、再びがっくりと肩を落とした。

    「ハッチかい…期待させよって…なんやねん……オレほんまに忘れられてる…?嘘やろ…?」
    「そういう真子も喜助くんの誕生日よく忘れてるよね」
    「付き合うて初めての誕生日やで!?流石に盛大に祝うやろ!!なんやこの仕打ち!!」
    「また引きこもって仙人みたくなってんじゃねえのか?真子の方から連絡すりゃいいだけじゃねえか、面倒くせえな」
    「オレの扱い酷ない…?うぅ……もうええもん……オレから送るもん……はぁ……」

    些細なプレゼントを持って隊首室に集まってくれた馴染みの面子に喜んだのも束の間。サボりの口実に利用されただけと気付いた今ではもう心が折れかけている。

    「えー……『きすけくん、なんや大事なこと忘れとるんとちゃいますか』。…送信、と」
    「ダルい詰め方したるなや気色悪い」
    「なァもっと優しくしてくれてもええんやで…?」

    ×浦

  • 兄弟パロ 10

    20260510(日)00:25
    「悟、寝るよ」
    「ん~…?何ぃ…?まだ終わんないよ」

    悟の部屋のベッドに我が物顔で寝転がり、隣の空白をぽんぽんと叩いてこっちへおいでと促した。悟は眠そうに目を擦りながらまだ開いたノートパソコンと向き合っている。多少強引に作業を中断させて、ベッドへと連れ込んだ。

    「眠くて集中できてないでしょ。少しは寝ないと効率悪いよ」
    「ん〜……」
    「ほら、おいで」

    むにゃむにゃと何かを呟きながら体を寄せて、私の腕の中に包み込むと、ぐずっていた割にすんなりと目を閉じた。伝わる体温は温かくて、再会した頃より随分背は伸びたけれど、線の細さは相変わらずだ。

    「……おやすみ、悟…」

    すうすうと寝息を立てて眠りについた悟を抱きしめて、髪を撫でて口付けた。

    私と悟は、小学生の頃に出会った幼なじみだ。
    入学したばかりで緊張していた初めての教室の、初めての自分の席。名前順に並んだその席で、真後ろにいた奴がやたらと背中をつつくのが鬱陶しくて注意しようと振り向いた時。にっ、と笑った彼の屈託の無い笑顔に、こっちこそ思いきり破顔してしまった。

    思えば一目惚れだったのかもしれない。それ以降悟は驚異的な可愛さで何度も私の心臓を無自覚にぶち抜いた。何をしたって可愛いのだ。歩いても可愛い。座っても可愛い。体育座りで膝に顎を乗せてこちらを見上げた上目遣いが最高に可愛い。細っこいくせに足が速いのも可愛いし、体操服からちらりと覗くおへそまで涙が出るほど可愛かった。いよいよ自分がとんでもない変態なんじゃないかと悩み始めた小学3年生の夏。私は父親の転勤で転校することを告げられた。

    夏五兄弟パロ

  • 兄弟パロ 9

    20260509(土)00:25
    「ん……ぅ……すぐる…っ」
    「……昔のことを思い出してね。家に来たばかりのさとる、ずっとシャーシャー威嚇してて面白かったよね」
    「はぁ…?マジでいつの話してんだよ…もう忘れろって」
    「何をするにも悟さんにべったりで、私が近寄るとお風呂を嫌がる猫みたいに大暴れして引っ掻いて」
    「悪かったって……てかお前面白がってたのかよ…俺の必死の抵抗を…」
    「今じゃこんなに甘えん坊なのにね」
    「甘えん坊は、お前だろうが…っ!だぁもう!触んな!寝ろ!」

    首を振るさとるの耳に手を添えて、柔らかい唇を捕まえた。はむ、と唇ごと口に含むと甘い吐息が漏れる。

    「ちょ……ん…っ、すぐる、」
    「可愛い…さとる……」
    「ぁぅ…ぅ、だめ、だって…」
    「うん…さとる、もっかいキスしよ」

    さとるが私の背中をきゅっと掴んで、私はさとるの唇にもう一度口付けた。ビクビクと震える体がたまらなく可愛くて、執拗いほどに舌を絡める。なんとか付いてこようとするその一生懸命な表情が、どうしようもなく愛しい。

    「さとる…すき、すきだよ…」
    「んぅ…、おれも、おれも、すき…っ」
    「ふふ…ありがと…」
    「…ん……は…ぁ……」

    何度目かの口付けでさとるはくったりと脱力してぐーすか眠ってしまったけれど、どうにも収まらないからベッドから出てトイレでこっそり抜いたのは秘密だ。欲望のままにむしゃぶりついてしまいたいけれど、傷つけたくはないし誰よりも大切に愛したい。
    私の家族で、親友で、大好きな人。
    悟さんの次にでいいから、私のことも好きでいて。

    もう一度ベッドへ戻って、眠るさとるの額にそっと口付けた。抱き枕のように腕の中に包み込むと、本当に驚くほどよく眠れるのだ。

    夏五兄弟パロ

  • ヘン主 10

    20260508(金)04:39
    形だけの玉座で、王は項垂れていた。
    呼ばれてもいない客が謁見の間に足を踏み入れても見向きもせず、ただ俯いている。そんな王を気遣うでもなく立っているだけの大臣を軽くあしらい、王の前に膝をついた。

    「…………。そこにいる大臣から聞いたであろう。今日は誰とも話したくないのだ。下がるがよい」

    一切目を合わさぬまま全てを諦めたようにデール王は吐き捨てる。聞き馴染んだ声よりずっと大人びた、けれど確かにあの頃の面影を残した、懐かしい声だった。

    「……ですが王さま。子分は親分の言うことを聞くものですぞ」
    「………!!」

    目前の王にだけ聞こえるような声で悪戯っぽく呟くと、王は弾かれたように頭を上げた。驚愕に見開かれた王の両目に、鮮やかな緑の髪の男が映る。デール王は唇を震わせて、力強く立ち上がった。

    「そんな………まさか………おい大臣!私はこの者と話がある。下がっておれ!」
    「は?……はい。分かりました」

    突然の王の鋭い声での命令に、大臣は怪訝な顔をしながらも渋々と部屋を出る。自分達しか居なくなった空間で、デール王は飛びつくように二人の前にしゃがみ込み、兄の節くれだった両手を取った。

    「兄さん!ヘンリー兄さん!生きていたんだね!」
    「あぁ…。随分と留守にして悪かったな」
    「そちらの方は…?」
    「オレの親友だ。デール、オレの話は後でいい。太后は上か?」
    「母上?うん、この上の部屋に居るよ」
    「……そいつは、お前の母親じゃないぞ」
    「え…?」
    「やっぱりお前も気付いてないのか……本物の太后は地下牢に閉じ込められていた。上にいる奴は何者だ?」
    「えぇ!?母上が地下牢にっ!?」
    「シーッ!声が大きいぞ、デール!」
    「わぁぁ!ごめん!え、だって、そんな……」

    つい先ほどまで暗く沈んでいたのが嘘のようにデールはコロコロと表情を変え、やがて考え込むように顎に手を添えて固まった。

    「……言われてみれば、色々思い当たることがあるな…。っすぐに母上を牢から、」
    「バカ!そんなことしたら本人諸共消されるだけだ!いいか?お前は何も知らない振りをしてここに居ろ。オレたちで何とかするから」
    「で、でも……そうだ、城の鍵を持って行ってよ。何か役に立つかもしれない。……兄さん、どうか無理をしないでね」
    「あぁ、お前こそ下手に動いて勘づかれるなよ。頼んだぞ」

    DQ5