らくがき帳

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  • ヘン主

    20260415(水)08:47
    「ひどい、ひどいわ!パパスさんのせいで王子さまが行方不明になっただなんて…!」
    「父さんのせいで王子さまが攫われたからこの村を燃やしたの?どうして?」
    「知らないっ…!知らないわよ!そんなの…!パパスさんは帰ってないって、私たちは何も知らないって、いくら訴えても聞く耳なんて持たなかったわ…!みんな恐ろしい顔をして、取り憑かれたように何もかも焼き払ったのよ…!」
    「そっか…。ごめんね、辛いことを思い出させてしまったね……あなたが生きていてくれて、また会えて本当によかったよ。ありがとう」
    「ふっ……ぅう……」

    両手で顔を覆い、泣き出してしまったシスターの背中を摩りながらリュカは視線だけをこちらに向けた。全身の血が凍りついたような、自分だけ時間が止まったような、そんな気分になった。
    教会の外に出て、暫く歩いたのだと思うがその記憶すら覚束無い。リュカとパパスが住んでいたという家の前に辿り着き、無惨に焼け落ちた残骸を目にした途端、耐え切れず咆哮した。

    「すまない…!リュカ…っ!オレは、オレの、せいで……っ!」
    「ヘンリーのせいじゃないよ」
    「オレのせいだろ…!!オレの誘拐を大義名分にラインハットはここを燃やした…!こんな惨いことをするとは信じられないがこれが事実だ…!すまない…!本当にすまない…!」
    「だからヘンリーのせいじゃないって。ねえ、それより父さんが何か隠してたっていう洞窟を探ろうよ。この川と繋がってるんだ」
    「……ッ」

    泣き崩れるシスターを抱きしめた時と同じ顔で、リュカはこちらを振り返る。大杖の先で森の奥を指し示し、あっちだよと言って変わらない足取りで歩き出した。少しの間立ち尽くした後、汗の滲む手で瞼を擦り、紫紺のマントが揺れる背中に向けて呟いた。

    「……リュカ、オレにできることがあったら何でも言ってくれ。オレ、何だってするよ」
    「えぇ?親分が子分にそんなこと言うなんて、なんだか変だね」
    「………あぁ……そうだな……変かもな……」

    下を向いたまま、強く唇を噛みしめた。身を裂くような悔恨に苛まれる男の隣で、相棒は川面をバシャバシャ跳ね回るスライムを面白そうに眺めている。償えない罪を勝手に背負い打ちのめされるオレはこいつの目に酷く滑稽に見えている事だろう。罪を裁いてなどくれない。罰など彼は与えてくれない。本当に、悪魔みたいな奴だ。

    DQ5

  • 平浦

    20260414(火)21:00
    「虚にストーカーされてる?」
    「そうとしか思えへんねんもん…行くとこ行くとこ待ち構えとるみたいに現れよって……」

    暫く振りに会ってみたらげんなりとした顔でいつも以上に背中を丸めているからどうしたのかと問いかけると、予想していなかった返答をされて首を傾げた。尸魂界でも現世でも、行く先々で必ずと言っていいほど遭遇するわ追いかけられるわ、もう疲れたと平子はテーブルに突っ伏して項垂れた。

    「仲間だと思われてんスかね」
    「……………」
    「あ、スイマセン」
    「……どう返すんが正解なんや……未だにわかれへんねんそれ……」

    口を歪めて頭を抱えた平子はコーヒーを飲みながら窓ガラス越しに外を見て、また盛大に溜息をついた。

    「ほら来よった」
    「大虚じゃないだけ良かったっスね」
    「言うてる場合か……無視や無視。オレは非番なんや。担当がちゃんと仕事せい」
    「………黒崎サン来てますね」
    「イモ山は何しとんじゃボケェ!」
    「あぁ〜コーヒー零れちゃうっスよぉ」

    ×浦

  • ヘン主

    20260414(火)05:46
    北にある町を目指して歩く道中。思えば城からもろくに出してもらえなかった幼少期と、物理的に囚われていた10年間を思い起こした。何からも解放されて身一つで外を歩いている現状に未だに慣れず、意味もなく広すぎる空に腕を伸ばしてみたり、洞窟内の湿り気とは無縁の空気を大きく吸い込んではゆっくり吐いてを繰り返したり。重い鎖を引き摺ることもない足が何故かむず痒くて、動かしていないと落ち着かなかった。
    ぴょこぴょこと不意に目の前に現れては行く手を阻んでくる魔物を蹴散らしながら歩いていると、前を行く相棒がぴたりと足を止めて笑みを含んだ声を漏らした。

    「ヘンリー見て見て、猫が地面にめり込んでるよ」
    「いや待て、アレいっかくうさぎだろ。でっかいツノの生えたうさぎだよ。……おまえ、毛むくじゃらのちっこいやつは全部猫だと思ってんじゃないだろうな…?」

    リュカが指をさした先。額にツノの生えたウサギの魔物が、敵に突進した勢いのまま地面にツノを突き刺して抜け出せず、足をジタバタさせていた。リュカはほう、と顎に手を添えてそっと近付く。接近する人間の気配に激しく藻掻くが、残念なことに深く刺さったツノと浮き上がった後ろ足ではどうすることもできないようだ。リュカは容赦なくいっかくうさぎの丸いおしりを掴んで地面から引っ張り出した。

    「いっかくうさぎ……あぁ、サンタローズの洞窟にも住んでた子だね。見たことあるよ」
    「おいおい不用意に触るなよ…いくら可愛い見た目でもモンスターだぜ?」

    相変わらず人にも魔物にも物怖じしない姿に呆れつつ、自分も無意識に彼が抱えたままの魔物の頭を撫でていたのは、こいつから少しも邪気を感じないからだろう。救出されたいっかくうさぎは仲間になりたそうにリュカを見つめて、長い耳を擦り付けた。

    「一緒に来てくれるのかい?心強いよ。とてもかっこいい立派なツノだね」
    「本当かよ…一瞬で手懐けやがった」
    「頼れる仲間は多い方がいいもんね。きっと楽しい旅にしよう」
    「うさぎとねこの区別もつかない主人だぞ?本当にそれでいいのか?」

    揶揄うように尋ねると、うさぎの魔物は嬉しそうにすら見える顔で鼻を鳴らした。

    DQ5

  • ワタニャルニア

    20260411(土)22:20
    「悟、起きて」
    「みぅ……」
    「ごめんね、まだ眠いだろうけど、今日は大切な日なんだ」
    「んみ…?」

    夜明けを迎え、杖にしがみついてぷかぷかと宙に浮かびながら眠っている悟の尻尾をぐいと引っ張った。夢の中でも何かを食べていたのだろうか、もぐもぐ動く口が可愛くてもう少し見ていたかったが時間がない。ご馳走に囲まれた夢から現実に引き戻されて、悟は大きくあくびをしながら葛布の敷かれた床にぼふんと音を立てて着地した。

    「ご飯を食べたら出発するよ。悟も一緒にって頼まれているからね」
    「みー…」

    悟はごしごしと目を擦りながらついてくる。昨日獲った空魚を囲炉裏で焼いて差し出すと、寝ぼけ顔で齧り付く。食べながらまたうとうと眠ってしまいそうで、寝癖で変な方向に曲がった悟の耳をぴんと引っ張り覚醒を促した。

    夏五

  • ヘン主+マリア

    20260411(土)21:16
    「流石に狭いね……ごめんヘンリー、痛くない?」
    「いいからもっと詰めろよ。マリアさん入れないだろ」
    「んー、マリアさん、ぎゅってしてていい?」
    「えっ?あ、は、はい…!」
    「そうだな、なるべく身を寄せていた方が安全そうだ。あの大滝から落ちるんだろ…?本当に平気なのか…?」
    「大丈夫だよ、ボクらは死なないから」
    「だからお前のその根拠のない大丈夫は何なんだよ……まあいいか。ここまで来たら死ぬときはみんな一緒だ」
    「ヘンリー、怖いの?」
    「は?なんで」
    「すごいしがみついてくるから」
    「いや、違……」
    「ふふ、ヘンリーさまもリュカさまを守ろうとしてくれてるのですわ」
    「ちょ、マリアさん……はぁ…もういいよ、なんでも」

    リュカを背後から抱きしめたままヘンリーは苦い顔で息を吐いた。密着しても互いの顔も見えない真っ暗闇の樽の中。リュカの腕にしっかりと包まれていたマリアは、祈るように手を重ねて目を閉じた。
    激しい波に揺られ、打ち付けて擦れたマリアの肩にリュカは小声でホイミを唱えた。もう何日もこうして海を漂っている。ヨシュアが持たせてくれた食糧も尽きかけ、魔力を消耗したリュカもヘンリーの腕に凭れて眠ってしまった。

    「リュカさま……」
    「大丈夫だよ、マリアさん。そのうちどこかに流れ着いてオレたちは助かるんだ。通りかかった船が拾い上げてくれるかもな。心配することないよ」
    「……ヘンリーさまは、あんな環境でもいつも笑っていらっしゃいましたね」
    「いやー、もう、笑うしかないでしょ、あんなとこじゃさ。………それに、こいつが言うんだよ。いつまでも嘆いてないで、もっと楽しいことを考えよう。笑ってよって……オレは時々こいつが悪魔に見えるね」
    「ヘンリーさま……」
    「実際魔物連れて歩いてたしなぁ…猫だって言い張ってたけどあれぜったいベビーパンサーだったぜ?あんな牙の鋭い猫がいてたまるかよ」
    「ふふ、昔から仲良しだったのですね」
    「いや、そんなんじゃないよ…オレたちはさ…」

    DQ5

  • 一浦

    20260407(火)00:11
    電話越しに聞こえる穏やかな声が優しい雨音のようで、心地良さに目を閉じた。
    (……好きだ……)
    抱えきれないほど溢れる想いは、伝えるのを躊躇うほどでかくて重たい。

    『黒崎サン?』
    「悪ィ、聞いてるよ、ちゃんと」
    『眠たい?そろそろ切りましょうか』
    「…いや………あのさ、浦原さん」

    会いに行っていいかな。正直に呟くと、電話越しに息を飲む音がした。

    「っていうか、もう、目の前なんだけど……」
    『……わかってましたけどね』

    微かに笑って端末を持ったまま迎えてくれた浦原を抱きしめた。柔らかい、けど少し傷んだ髪に顔を埋めた。隙間から覗く肌は相変わらず不健康な白さをしている。

    「どうしたんスか、」
    「……会いたかった…そんだけだよ…」
    「………泊まっていきます?」
    「…うん……」

    笑みの含んだ優しい囁きに頷くと、細い腕が背中に回った。この人しか居ないって、きっとずっと前から知っていた。この人が居てくれたら、俺は強くなれる。

    ×浦

  • 平浦

    20260405(日)23:25
    胸元に唇が触れて、見上げてくる琥珀色の目と目が合った。熱い手が頬を滑り、ぴたりと止まる。

    「………こわい?」
    「へ…?」

    思いもしないことを聞かれてぱちぱちと目を瞬かせた。自分の上に覆いかぶさっていた平子がゆっくりと体を起こす。瞼に掛かる浦原の髪をそっと撫でながらやけに甘い目を細くした。

    「気分やなかったやろ、ごめんな」
    「ぁ……」

    平子は終わりの合図のように浦原の額にキスをして、触れていた肌を離してしまう。思えば確かに集中できていなかった。まさかそんな寂しそうな顔をさせるとは。ぼんやりしていた頭が唐突にぐるんと回って、焦って平子に縋りついた。

    「ちが……っ、違う、平子さ、」
    「ええって。わかってる。大丈夫やから」
    「……っ」

    もう一度強く抱きしめられて、速くなる呼吸を落ち着かせるように背中をぽんぽんと撫でられる。自分が本当に小さな子どものように思えてくるからやめてほしいのに、それでしっかり落ち着いてしまうせいで抗えない。大丈夫、大丈夫、と微笑みながら宥めてくる低い声が優しすぎるのが悪いのだ。ぐず、と小さく鼻をすする音を微かに笑われたのが悔しくて、頭突きをかます勢いで平子の肩に頭を埋めた。

    ×浦

  • 夏五兄弟パロ

    20260331(火)04:22
    「お店そんなに広くないでしょ?邪魔になっちゃうし、僕はここで待ってるよ」
    「だめだよ、兄ちゃん、一緒に来て」
    「すぐるくんが居るんだから平気でしょ?」
    「俺の方じゃなくて!あーもう、じゃあ俺も兄ちゃんとここで待ってるから、すぐる買ってきて!チョコのやつとクリームのやつ絶対な!」
    「なんでそうなるの……」

    さとるは悟さんの腕にしがみついて私に財布を押し付けてきた。渋々受け取ると悟さんが申し訳なさそうに眉を下げて、僕が行こうか?なんて言ってくるものだからしっかり断って一人で店の扉を開けた。途端にふわっと甘い匂いが押し寄せてくる。
    トレーとトングを持って店内からガラス越しに2人を見ると、私の視線に気付いたさとるが手を振った。悟さんが一人だったら心配過ぎて気が気じゃないが、さとるが付いているから問題は起きないだろう。そうは思ってもやはり目立ち過ぎる兄弟だ、心配な事に変わりはない。
    面白い動画か何かを見つけたのか、さとるがスマホの画面を悟さんに見せて二人で笑い合っている。可愛すぎる上に無防備な二人にやきもきしながら、二人が好きそうなドーナツを手早くぽんぽんトレーに載せていく。よからぬ輩が近寄らないかと鬼の形相で何度も外の様子を伺う私の方こそ怪しまれている事には気付かなかった。

    夏五

  • 平浦

    20260322(日)23:28
    体を起こしながら大きく欠伸をしてまだ霞む目を擦り、隣に居たはずのもう一人の姿を探す。とっくに起きていたらしい平子はデスクに片肘をついてノートパソコンを開き、カチカチカチカチ、忙しなくマウスを動かしていた。
    現世のネットワークにも接続できるようにしたそれで平子が見ているのは大体ファッション通販サイトだろう。重い体を引き摺ってそばに寄り、後ろから覗き込むと案の定、画面には聞いたこともないファッションブランドのアイテムがずらりと表示されていた。購入したところで尸魂界までは届けられないので配送先は浦原商店に設定している。こちらとしてはいきなり身に覚えのない荷物がどっさり届くのでいい迷惑だ。

    「おはよーさん、顔洗ってきや」
    「…………ぉはじゃぃます………」
    「ふ、ぼけぼけやん。冬眠明けの熊かいな」

    振り返った平子は呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑ってただでさえ寝癖でくしゃくしゃの髪を荒々しく撫で回した。画面に表示されていた長袖の黒いシャツを見て顔を顰める。

    「……似たようなのいっぱい持ってるじゃないスか…」
    「全然ちゃうて。袖のボタンが黒蝶貝やねんで?めっちゃかわええやろ」
    「…現世でしか着ないからってウチに置きっぱなしだし…」
    「ええやんか、無駄に部屋数あんねんから。オレのクローゼットに一部屋くらい使わせてえな…あ、これもかわええ」
    「今着てるのと一緒じゃないスか……」

    ×浦

  • 夏五

    20260321(土)03:30
    誰にも辛さを打ち明けずに、罪で塗られた秘密を抱えて一人で消えてしまったら。残された者がいくら紐解こうとしたって、真実はわからない。
    傷ついて疲れ果てて、もう嫌だと一言でも告げてくれたなら、きっとどうにだってしてやれたのに。もう間に合わないの。傑との間にはもう、これ以上は何も無いの。

    「……傑……すぐるっ……」

    俺の事が嫌いなら、それでいいから。許してくれなくていいから。行かないでよ。

    半身を失ったような痛みに蹲る。窓に背を向けて、二人で撮った写真を握り潰した。

    夏五