らくがき帳

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  • ヘン主

    20260424(金)01:54
    打ち捨てられていた筏で水路を渡って行くとリュカの言っていた通り、橋の真下に城へと通じる地下道を発見し感嘆の声が出た。

    「リュカは目敏いな。この抜け道はもともと何かあった時の脱出用に作られたものなんだが…まさかオレがここから侵入することになるとはね。皮肉なもんだよ」
    「見たことのない魔物が多いね、天井にも貼りついてる」
    「すっかり魔物の巣窟になってるな…油断するなよ」

    曖昧な記憶を頼りに入り組んだ暗い通路を進む。反響する足音に反応し飛びかかってくる魔物の多さに辟易とした。暫く歩くと錆びついた牢屋が並ぶ空間に辿り着き、いつかのあの場所を思い出して口を歪めた。

    「……そういえばここは地下牢もかねてるんだっけ…。だんだん思い出してきたぞ」
    「……誰か居る」

    リュカがぴたりと立ち止まり、つられて自分も足を止めた。狭い牢の中で一人、痩せこけた老人が座り込んでいた。

    「ん…?誰か来たのか…?」
    「こんにちは、おじいさん」
    「はて……何年もここにいて目も耳もすっかり悪くなったわい…。しかしこれだけは言うとくぞっ!ヘンリー王子を亡き者にしたのは元王妃、今の太后さまじゃ!なのに自分もヘンリー王子の行方知れずを悲しむふりをし、すべてパパスどのの責任に!パパスどのが住んでいたサンタローズの村にまで攻めこんだんじゃ。あんな性悪な女は見たことがない。今に天罰をくらうぞ!」

    老人は突然興奮気味に鉄格子を両手で掴み、見えていない目をギラつかせて訴えた。リュカは僅かに驚いたように身を反らし、やがて静かに微笑んだ。

    「そんな事を言ってるから投獄されちゃったんですね」
    「太后……やっぱり全てはあの女が…?デールの母だし信じたくはなかったが……もう許せねえ!オレが自ら天罰をくらわせてやるぜっ!じいさん!あんたもすぐに出してやるからな!待ってろよ!」
    「はて……?」

    不思議そうに首を傾げる老人にビシッと指をさし、込み上げる怒りを抑える気もなくリュカの手を引っ掴みズンズンと突き進む。リュカは何故かほんの少し楽しげに頬を緩ませていた。

    DQ5

  • ヘン主

    20260423(木)21:14
    「やっぱりお城の奥までは入らせてもらえなかったね」
    「太后さまに呼ばれた者しか通すわけにはいかぬ〜!てな。なんで太后さまなんだよ。デールは本当に国王なのか?……もう少し事情が分かるまでただの旅人の振りをしておきたかったが……どうしたもんかな」
    「スラりんならどこでも潜り込めそうなのにね」
    「スラりんだけ行かせたところでなぁ……いや、待てよ。たしかこの城には外に通じる抜け道があったはず……あ〜……どこだったっけなぁ……」

    王への謁見は叶わず、どうしたものかと兵士に追い返された城を見上げて頭を悩ませること数十秒。リュカの両手に挟まれたスラりんのピキー!という鳴き声と共にピーン!と思い出したのは城の避難路の存在だった。果たしてどこから入ってどこへ出る道だったのか。幼い頃の朧気な記憶を必死に手繰り寄せようと唸りながら頭を搔くと、リュカがぽんぽんと肩を叩いた。

    「ねえヘンリー、あれじゃない?」
    「あれ?」

    リュカが指を指したのは、堀に架かる跳ね橋の真下に存在する空洞だった。

    DQ5

  • 夏五

    20260422(水)06:06
    腕の吹き飛ぶ夢を見るとか、無いはずの腕が疼いて痛くて仕方ないとか、自分が魔王にでもなったかのような酷い気分で目が覚めるとか。ここ最近の不調の理由を正直に白状したのに、悟がどんな表情で聞いていたのかはサングラスのせいでわからなかった。

    「予知夢なのかなって思ったら、なんだか気分が悪くてね……」
    「なにお前、腕飛んだくらいで死ぬの?」
    「……血を流しすぎたら死ぬんだよ、人間って」
    「ふーん……」

    あまりに執拗く問い詰めてくるから仕方なくこんな情けない話をしたというのに、なんだその興味無さげな態度は。ぶん殴ってやろうかと思わず乗り出しそうになる体を理性で抑えて溜息を吐く。悟は棒付きの飴を口から離し、サングラス越しに上目遣いでこちらを向いた。重たげな白い睫毛がばさりと音を立てそうに瞬いた。

    「オレ反転術式使えねえから、傑の腕吹き飛んでも治してやれねえ」
    「知ってるよ。私も同じだしね」
    「……硝子のとこまでは運んでやるから、絶対、硝子なら治せっから」
    「うん…?」
    「どこからでも硝子のとこまで一直線に飛ぶようにルート引いて、用意は完璧にしとくから」
    「……?」
    「だから、死ぬならオレの前で死ねよ」
    「……善処するよ」

    励ましているつもりなのだろうか。堪えきれずに机に伏せて笑う私の肩を悟は焦ったように乱暴に揺さぶった。

    夏五

  • 平浦

    20260422(水)00:07
    紫色に怪しく発光する液体の入った瓶を棚に移し、ふぅ、と一息ついた瞬間に背後から抱きつかれて飛び上がった。

    「ぴゃっ」
    「く…っ、ふは、なんやねん、ぴゃっ!て」
    「居たんスか、平子サン」
    「ずっと居ったわ。華麗に無視しよって」
    「ありゃ…スイマセン…」

    一体いつからそこに居たのか。全く意識していなかった存在に突然接触されて変な声が出た。
    不貞腐れた平子が無遠慮に凭れ掛かってくるせいで体が前に折り畳まれる。軽々しく謝りながら手触りの良い金髪を撫でて宥めていると、平子はじとぉ…と仏頂面でこちらを睨んだ。

    「……撒き餌使たやろ、昨日」
    「あは、バレてましたか」
    「あの数一人で相手したんか」
    「サンプルが必要だったんスよぉ」
    「…はぁー……お前なぁ…」

    確かに予想以上に寄せ集めてしまって追いかけっこも長引いてしまったが、あの程度の虚に苦戦するほど弱くはない。反論しようと振り返って見た平子が何故かあまりに寂しそうな表情をしていたせいで、何も言えなくなってしまった。

    ×浦

  • ヘン主

    20260418(土)05:08
    城が見えてくるにつれて濃く立ち上る湿った土と肉の腐ったような臭いに顔を顰める。あの美しかった故郷の随分と廃れた光景に愕然とした。人の姿は殆ど無く、何処を見ても生気が無い。戦慄し握り込んだ拳に、土に塗れた折れそうに細い手が触れた。

    「どうか……どうか、おめぐみを……。もう3日も、なにも食べていないんです……どうか……」

    布切れのような服を纏う女性が、顔も見えないほど長い髪を乱して懸命に両手を差し出してくる。その背後には年端もいかない痩せっぽちの男児が指をくわえてこちらを見ていた。

    「………すまない、オレたちも手持ちなんてろくに無くてね。パンくらいならこれで買えるか?」
    「あ、ありがとうございます…。このご恩は、一生忘れません…ありがとうございます…っ」

    励ますように握った両手に包ませた端金に、二人は泣きそうに唇を震わせて頭を下げた。沈黙が続くまま、薄暗く寂れた通りを歩く。城へと続く跳ね橋が見えてきたところで漸く生きている人間に出会ったが、堅牢な鎧を纏ったその兵士は力無く煉瓦の壁に寄り掛かり俯いていた。

    「あんなに立派なお城があるのにみんな暗い顔をして、なんだか寂しい町ですね」
    「……旅の方ですか。私の言えたことではありませんが、あの城には近寄らない方が良いですよ。……私は強い兵士たちを高いお金で集めていると聞いたので来たんですがね、そのために国民は重い税金に生活もできぬほど苦しんでいるようなのです」
    「そうまでして強い兵士を集めるなんて、戦争でも始める気かよ…?」
    「……悪いことは言いません……早急にこの町からは立ち去った方が賢明ですよ」

    DQ5

  • ヘン主

    20260418(土)00:20
    「『リュカよ、伝説の勇者を探すのだ。私の調べた限り、魔界に入り邪悪な手から妻を取り戻せるのは天空の武器、防具を身につけた勇者だけ。私は世界中を旅して天空の剣を見つけることができた。しかしいまだに伝説の勇者は見つからぬ…。リュカよ、残りの防具を探し出し、勇者を見つけ、我妻マーサを助け出すのだ……』」

    パパスの残した手紙を読み終え、リュカは洞窟の奥地に大切に隠されていた天空の剣に手を触れた。持ち上げようにも重過ぎて、自分達ではとてもじゃないが扱えない。伝説の勇者にしか装備できないというのは真実らしい。リュカも自分も、勇者ではなかった。

    「なにやら大変な話になってきたな……こりゃ外まで運び出すのも苦労しそうだ。………実は、ひょっとしてお前なら…って、思ってたんだけど……」
    「……父さんができなかったのに、ボクにできるわけないよ」
    「…………」
    「行こう、ヘンリー。伝説の勇者を探せ、だって」
    「あぁ。どこへだって付き合うよ」

    いかにも神の力が宿っていそうな、煌々と美しく輝く天空の剣。リュカは脱いだマントを巻き付けて、どうにか引き摺らないように気合いを入れて持ち上げた。力仕事には慣れている。来た道を戻ろうと振り返ると、ぴょんと大きく跳ねたスライムがリュカの肩に飛び乗った。

    「ピキー!」
    「ん?キミも一緒に行きたいの?…いいよ。長い旅になると思うけど、よろしくね」
    「お、今度はスライムも連れて行くのか?……こんなに魔物に好かれるなんて、勇者じゃなくてもお前には何か、特別な力があるんだろうな」
    「名前はー…スラりん、にしよっか」
    「ネーミングセンスは終わってるけどな…」

    DQ5

  • 夏五兄弟パロ

    20260416(木)05:14
    入浴を済ませると力尽きたように眠ってしまった悟をベッドに運び、灯りを消して寝室を出た。リビングのソファではさとるが一人、何をするでもなく虚空を見つめて、ふぅ、と小さく吐息をこぼした。

    「大丈夫?すぐるとのデート退屈だった?」
    「そうじゃないよ、楽しかった。映画もド派手で面白かったし、いちごのパフェもバカみたいにデカくて最高だったし、兄ちゃんへのお土産も、喜んでもらえたし……」
    「そう、よかった」
    「……兄ちゃんとも、行けたらいいのに」
    「……そうだねぇ」

    クッションを抱えて俯いてしまったさとるの隣に座り、柔らかな白い髪を優しく撫でた。常に自分の体調に緊張している悟にとって、少しの外出でもそのハードルは健常者のそれと全く異なる。途中で動けなくなってしまったところで誰も迷惑だなんて思わないのに、悟は罪悪感と自己嫌悪で余計にしおしおと落ち込んで弱ってしまう。

    「……この前のだって、何も気にしなくていいのに……兄ちゃん、ずっと謝ってた……オレが楽しいと、兄ちゃんも楽しいけど、きっと同じくらい苦しいんだよ。オレ別に、謝ってなんかほしくないのに、兄ちゃん、何も、悪いこと、してないのに」
    「さとるくん、落ち着いて。……深呼吸だよ、そう……ゆっくりね……」

    はくはくと呼吸の浅くなったさとるをクッションごと抱きしめて、落ち着くように背中を摩って深い呼吸を促した。私の肩口で顔を伏せるさとるに見えないように、全く、よく似た兄弟だと苦笑した。

    夏五

  • 平浦

    20260415(水)22:03
    腰に携えた刀の柄に手をかけたままズンズンと近付いてくる平子の姿を身留めて男は冷や汗をかいた。長い髪が垂れ下がりその表情は窺えないが、見えないはずの鬼相が見える。地獄の業火のようなどす黒いオーラを纏った物騒な霊圧が酷く重く伸し掛り、男は浦原の顎に触れたその手を引っ込める余裕もなく固まった。

    「……薄汚い手で触んなよ、クズが」
    「……ッ、ぁ……」
    「失せろ言うてんのや、聞こえへんのか」

    普段より数倍低く地すら震わす声と刃先のような眼光で睨まれ、腰の抜けた男は可哀想なほど怯えてへなへなとその場に崩れ落ちた。地を這いながら逃走するそれを汚物を見る目で一瞥すると、平子はすぐさま浦原に駆け寄った。浦原は今にも閉じてしまいそうな目をなんとか根気だけでこじ開けている。何かを言いたそうに唇を震わせる姿に痛ましく眉を顰め、もう大丈夫だと呟いて強く抱き寄せた。

    ×浦

  • ヘン主

    20260415(水)08:47
    「ひどい、ひどいわ!パパスさんのせいで王子さまが行方不明になっただなんて…!」
    「父さんのせいで王子さまが攫われたからこの村を燃やしたの?どうして?」
    「知らないっ…!知らないわよ!そんなの…!パパスさんは帰ってないって、私たちは何も知らないって、いくら訴えても聞く耳なんて持たなかったわ…!みんな恐ろしい顔をして、取り憑かれたように何もかも焼き払ったのよ…!」
    「そっか…。ごめんね、辛いことを思い出させてしまったね……あなたが生きていてくれて、また会えて本当によかったよ。ありがとう」
    「ふっ……ぅう……」

    両手で顔を覆い、泣き出してしまったシスターの背中を摩りながらリュカは視線だけをこちらに向けた。全身の血が凍りついたような、自分だけ時間が止まったような、そんな気分になった。
    教会の外に出て、暫く歩いたのだと思うがその記憶すら覚束無い。リュカとパパスが住んでいたという家の前に辿り着き、無惨に焼け落ちた残骸を目にした途端、耐え切れず咆哮した。

    「すまない…!リュカ…っ!オレは、オレの、せいで……っ!」
    「ヘンリーのせいじゃないよ」
    「オレのせいだろ…!!オレの誘拐を大義名分にラインハットはここを燃やした…!こんな惨いことをするとは信じられないがこれが事実だ…!すまない…!本当にすまない…!」
    「だからヘンリーのせいじゃないって。ねえ、それより父さんが何か隠してたっていう洞窟を探ろうよ。この川と繋がってるんだ」
    「……ッ」

    泣き崩れるシスターを抱きしめた時と同じ顔で、リュカはこちらを振り返る。大杖の先で森の奥を指し示し、あっちだよと言って変わらない足取りで歩き出した。少しの間立ち尽くした後、汗の滲む手で瞼を擦り、紫紺のマントが揺れる背中に向けて呟いた。

    「……リュカ、オレにできることがあったら何でも言ってくれ。オレ、何だってするよ」
    「えぇ?親分が子分にそんなこと言うなんて、なんだか変だね」
    「………あぁ……そうだな……変かもな……」

    下を向いたまま、強く唇を噛みしめた。身を裂くような悔恨に苛まれる男の隣で、相棒は川面をバシャバシャ跳ね回るスライムを面白そうに眺めている。償えない罪を勝手に背負い打ちのめされるオレはこいつの目に酷く滑稽に見えている事だろう。罪を裁いてなどくれない。罰など彼は与えてくれない。本当に、悪魔みたいな奴だ。

    DQ5

  • 平浦

    20260414(火)21:00
    「虚にストーカーされてる?」
    「そうとしか思えへんねんもん…行くとこ行くとこ待ち構えとるみたいに現れよって……」

    暫く振りに会ってみたらげんなりとした顔でいつも以上に背中を丸めているからどうしたのかと問いかけると、予想していなかった返答をされて首を傾げた。尸魂界でも現世でも、行く先々で必ずと言っていいほど遭遇するわ追いかけられるわ、もう疲れたと平子はテーブルに突っ伏して項垂れた。

    「仲間だと思われてんスかね」
    「……………」
    「あ、スイマセン」
    「……どう返すんが正解なんや……未だにわかれへんねんそれ……」

    口を歪めて頭を抱えた平子はコーヒーを飲みながら窓ガラス越しに外を見て、また盛大に溜息をついた。

    「ほら来よった」
    「大虚じゃないだけ良かったっスね」
    「言うてる場合か……無視や無視。オレは非番なんや。担当がちゃんと仕事せい」
    「………黒崎サン来てますね」
    「イモ山は何しとんじゃボケェ!」
    「あぁ〜コーヒー零れちゃうっスよぉ」

    ×浦