ベリアルと子ジード
ダーダは、つよくて、おおきくて、ちょっぴりこわい。でも、ほんとはすっごくやさしいことをボクはしってるんだ。
たまにする、さびしそうなかおも。ダーダがさびしいと、ボクもさびしい。だから、ダーダにえがおになってもらいたくて、いろいろがんばるんだ。おどろかせたり、イタズラしたり!いろいろ!そしたら、ダーダはしかたないなってわらってくれる。でも、そのかおははやっぱりさびしそう⋯。ボクじゃ、ダーダをえがおにできないのかな⋯。
「どうしたんだ?しかめっつらして。」
ジーッと考えていると、いつのまにかダーダがとなりにすわってふしぎそうにボクのかおをのぞき込んでいた。
「ダーダ!おかえりなさい!あのね!ダーダのことかんがえてたの!」
「俺のこと?」
「そう!どうやったら、ダーダがえがおになってくれるのかなって!ボクじゃ、ダーダをえがおにできないの?ボクじゃ⋯ダメなの?」
はなしているうちに、何だか悲しくなってきて、ポロポロと涙をこぼす。
ダーダはこまったかおをして、ボクのなみだをやさしく拭ってくれる。
こまらせたいわけじゃないのに⋯。
やっぱりボクじゃ、むりなんだ⋯⋯。
なみだは次から次へと溢れてきて自分では止めることが出来ない。ダーダはボクを膝に座らせると、頭をぽんぽんとやさしくたたいた。
「なんだ。そんなことで泣いていたのか。」
「そんなことじゃないもん!!」
「あっ!こら!暴れるな!ジーッとしてろ!どーにもこーにも⋯。まったく。」
ボクにとってはだいじなことなのに、ダーダはなんでもないようなことのようにいってまたこまったようにわらう。ボクはもうどうしていいか分からなくなって、泣きながらあばれまわった。
「いいか、ジード。ダーダはお前といれるだけでじゅうぶん幸せだし、笑顔になってるぞ。」
目線をあわせ、言い聞かせるようにダーダはそういった。
「うそだ!だったらなんでさびしそうなかおをするの?」
「あー。それはなぁ。いつまで、こうしていられるかと思ってな⋯。いつか、おまえは俺の元を離れる時が来るだろ?それを思うと、寂しい気持ちになるんだ⋯。」
ダーダはなにをいっているんだろう?ボクはずっとダーダといっしょなのに。
「ボクはどこにもいかない!ダーダとずっといっしょにいる!ずーっと!!」
「そうか⋯。ありがと、な」
―――泣き疲れて眠ってしまった子を撫でながら、ベリアルは1人考える。この子は何も知らない。まだ、この世界の善も悪も分からない。だが、いつか知る時が来る。もしその時が来たら、この子は俺の元を去っていくだろう⋯⋯。
そしたら、そのときは⋯⋯⋯。
「俺を、倒してくれよ、ジード。期待してるからな⋯⋯。」
願わくば、この親子の時間が永く続きますように⋯⋯。
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