今の仕事に就いて、早くも数年
仕事に慣れてきた傍で、私は長年の趣味が大詰めを迎えた事に喜びを隠せなかった

私の趣味…それは、錬金術

錬金術とは、あらゆる物質から金を作り出そうとしていた人々を指す言葉である
だが、私の目指す錬金術は少し違う

子供の頃、TVで見た錬金術…“鋼の錬金術師”に出て来た、あの錬金術に私は憧れたのだ

2次元は2次元だって割り切ってるし、出来る様になるはずがないって分かってる。でも、憧れるのは自由でしょ？

私はこの世界の錬金術がどんなものか学ぶと同時に、かのアニメの原作…つまり、漫画に出て来た錬成陣を片っ端から書き出して、陣にどんな意味があるか学んだのだ

そしてついに

最後の錬成陣
人体錬成の錬成陣の構成式を紐解く事に成功したのだ！

嗚呼、ここまで長かったけれど、これ程までに嬉しい事が他にあるだろうか…？

意気揚々と、祝杯を挙げて
見事に酔っ払った私は、試したくなってしまった

そう、私は酔っていたのだ

酔った勢いとは恐ろしいもので
勢いで買ったチョークで、人通りの少ない道に錬成陣を書いた

我ながら、なかなか上手くかけたんじゃない？と自画自賛したりなんかして。
私は、かの錬金術師達の様に両手で輪を作り、そして…

Σパンッ

陣に触れた

瞬間、私の視界は真っ白に染まり、とてもじゃないけれど目を開けていられなくて
反射的に閉じた眼を開くと…

私「………は？」

何も無い、真っ白な空間に、私1人が座り込んでいた。