『放置されてしまった彼』
ヴィクトルの家にいる土曜の夜、携帯にメッセージがぽんぽんと入った。
親友は今すぐ恋愛相談がしたいようで、連打してくる。
「ねえ、あとでデザート食べるかい?」
「うんっ。食べようー。⋯⋯ごめんちょっと待ってね、今あの子がすごい勢いで⋯⋯すぐ終わるからね」
せっかく彼と一緒にいるのに申し訳ない。しかし親友は鬼気迫っているし、無視はできない。
円形のソファの端であなたは背を丸めながら、没頭して文字を打っていた。
「⋯⋯終わった⋯! あれ⋯⋯? ヴィクトル?」
そして気がつくと、周りに誰もいなかった。
時計を見るとあれから40分も経っている。
あなたは血の気が引き、すぐに立ち上がって彼を探した。
このだだっ広い高級マンションのリビングから、テラスや寝室を見ても人影がない。
「ヴィクトル、どこー!?」
どうしよう。放置したから呆れてどっか行っちゃったのかも。
平日は会えないから、せっかく二人きりで過ごせる週末の大事な時間なのに。
あなたは絶望に打ちひしがれながら、キッチンへ亡霊のように向かった。
そこには小鍋とにらめっこしながら、天井までいい匂いを漂わせている長身の男がいた。
「あれ、もう終わったの? 大丈夫?」
彼はにこりとあなたに笑いかけてくる。
その姿を見たとたん、涙があふれ出そうになった。
「ヴィクトル⋯!! ここにいたの、怒って出かけちゃったのかと思った!」
「えぇっ? どうして? そんなことしないよ」
長袖の広い胸に抱きつき、ぎゅうっと力をこめたら同じくらい大事に抱擁される。
あなたはメールに夢中で彼を放置してしまったことを心から謝った。
すると彼はふんわり頭を撫でてきて、上から優しい瞳で見つめてくる。
「俺そんなことで怒らないから大丈夫だよ。君が根詰めた表情してたから、終わったら一緒にホットワイン飲もうと思ってさ。作ってたんだ。これ好き?」
緩やかな黒髪の男性がきらきら光を放ち、美しく笑む様子は、あなたの心をまたたく間に浄化していく。
「⋯⋯好きっ。ヴィクトルが好きっ、大好き!」
「おぉ? ありがとう。それはもっと嬉しいけど」
彼の照れくさそうな笑顔にまた心を溶かされ、自然と二人は唇を重ねた。
甘いキスをした二人は、すぐそばの鍋に視線を落とす。
赤ワインにシナモン、オレンジの皮などが入った本格的な冬の飲み物だ。
「おいしそう〜。すごくいい香りがするよ、ありがとうヴィクトル」
「ふふ、よかった。ねっ、冬の雰囲気出てるでしょ。じゃあテラスで飲もうか? それともあったかい部屋がいい?」
「外がいい!」
あなたははしゃいで彼と一緒に外のバルコニーに出た。空気は冷たいけれど、温かい服装と彼のそばにいることが、全身を気持ちよく包みこんでくれる。
それにホットワインも甘く深い味わいで、体の内側から温めてくれた。
「はあ、最高⋯⋯ヴィクトルの手作りワイン美味しすぎる」
「そうかい? 嬉しいな。簡単だけどね。俺もこれ好きなんだ。⋯⋯でもこっちのほうがもっと好きかな」
彼は片手にグラスを持ってるにもかかわらず、あなたの背を片腕で支え、そっと顔を近づける。
背を少し屈めて再びキスをし、赤く染まり上げたあなたの顔に微笑んだ。
「⋯⋯す、すごいたくさんしちゃったねっ」
「そうだね。やっぱり少し構ってもらいたくなっちゃうのかもな、俺も。子供かもしれない」
彼はあなたにぴたりとくっついたまま、弱点を明かしたかのように笑っていた。
親友は今すぐ恋愛相談がしたいようで、連打してくる。
「ねえ、あとでデザート食べるかい?」
「うんっ。食べようー。⋯⋯ごめんちょっと待ってね、今あの子がすごい勢いで⋯⋯すぐ終わるからね」
せっかく彼と一緒にいるのに申し訳ない。しかし親友は鬼気迫っているし、無視はできない。
円形のソファの端であなたは背を丸めながら、没頭して文字を打っていた。
「⋯⋯終わった⋯! あれ⋯⋯? ヴィクトル?」
そして気がつくと、周りに誰もいなかった。
時計を見るとあれから40分も経っている。
あなたは血の気が引き、すぐに立ち上がって彼を探した。
このだだっ広い高級マンションのリビングから、テラスや寝室を見ても人影がない。
「ヴィクトル、どこー!?」
どうしよう。放置したから呆れてどっか行っちゃったのかも。
平日は会えないから、せっかく二人きりで過ごせる週末の大事な時間なのに。
あなたは絶望に打ちひしがれながら、キッチンへ亡霊のように向かった。
そこには小鍋とにらめっこしながら、天井までいい匂いを漂わせている長身の男がいた。
「あれ、もう終わったの? 大丈夫?」
彼はにこりとあなたに笑いかけてくる。
その姿を見たとたん、涙があふれ出そうになった。
「ヴィクトル⋯!! ここにいたの、怒って出かけちゃったのかと思った!」
「えぇっ? どうして? そんなことしないよ」
長袖の広い胸に抱きつき、ぎゅうっと力をこめたら同じくらい大事に抱擁される。
あなたはメールに夢中で彼を放置してしまったことを心から謝った。
すると彼はふんわり頭を撫でてきて、上から優しい瞳で見つめてくる。
「俺そんなことで怒らないから大丈夫だよ。君が根詰めた表情してたから、終わったら一緒にホットワイン飲もうと思ってさ。作ってたんだ。これ好き?」
緩やかな黒髪の男性がきらきら光を放ち、美しく笑む様子は、あなたの心をまたたく間に浄化していく。
「⋯⋯好きっ。ヴィクトルが好きっ、大好き!」
「おぉ? ありがとう。それはもっと嬉しいけど」
彼の照れくさそうな笑顔にまた心を溶かされ、自然と二人は唇を重ねた。
甘いキスをした二人は、すぐそばの鍋に視線を落とす。
赤ワインにシナモン、オレンジの皮などが入った本格的な冬の飲み物だ。
「おいしそう〜。すごくいい香りがするよ、ありがとうヴィクトル」
「ふふ、よかった。ねっ、冬の雰囲気出てるでしょ。じゃあテラスで飲もうか? それともあったかい部屋がいい?」
「外がいい!」
あなたははしゃいで彼と一緒に外のバルコニーに出た。空気は冷たいけれど、温かい服装と彼のそばにいることが、全身を気持ちよく包みこんでくれる。
それにホットワインも甘く深い味わいで、体の内側から温めてくれた。
「はあ、最高⋯⋯ヴィクトルの手作りワイン美味しすぎる」
「そうかい? 嬉しいな。簡単だけどね。俺もこれ好きなんだ。⋯⋯でもこっちのほうがもっと好きかな」
彼は片手にグラスを持ってるにもかかわらず、あなたの背を片腕で支え、そっと顔を近づける。
背を少し屈めて再びキスをし、赤く染まり上げたあなたの顔に微笑んだ。
「⋯⋯す、すごいたくさんしちゃったねっ」
「そうだね。やっぱり少し構ってもらいたくなっちゃうのかもな、俺も。子供かもしれない」
彼はあなたにぴたりとくっついたまま、弱点を明かしたかのように笑っていた。
