テンション低い隣人男性と仲良くなる話
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週末になるとエナードは本当にあなたの部屋にやってきた。
夕食を済ませた夜の八時頃のことだ。
休日で金髪をさらっと崩した彼は、服装もシャツにスラックスと、綺麗めだがゆったりしていた。
「こんばんは。……これ、ノンアルコールワインです」
「わあ、ありがとうございます。一緒に飲みましょうね」
お礼を言って受け取り、少しだけお洒落をしたあなたは彼をすぐそばのリビングへと招いた。
茶色のお気に入りのソファは三人がけで、あなたと彼は真ん中を開けて座る。
ローテーブルにはグラスが並び、チーズやサラミ、スナック菓子などを少しずつ置いた。
そんなにロマンチックな雰囲気ではない。
彼もそのほうがいいだろうと、一緒に映画を見ることに集中しようと思っていた。
「そういえば、本当に僕があなたの部屋にお邪魔して、大丈夫だったんでしょうか」
「大丈夫ですよ、もちろん」
「……そうですか。恋人とか、いないんですか」
彼にそう言われてドキっとしたが、あなたは気恥ずかし気に明かす。
「いないですよ。彼氏いるのに男性を家に誘うほど、非常識じゃないです」
笑いながら言うと、彼は静かに納得していた。
「エナードさんは? ……あっ。もしいるのにお誘いしてたらすみません!」
「いませんよ。……こんな性格ですから」
彼は自嘲気味に答えたが、あなたはすぐに反論したくなり身を乗り出す。
「ええっ? こんなに素敵な人じゃないですか! お願いしたら助けてくれたし、雑草取りでも危ないとこ担当してくれましたし。廊下もピカピカだったし。とっても優しい方ですよ、エナードさんって」
これまで見た、ぶっきらぼうながらも誠実な彼の姿を力説すると、彼は一瞬身を引いていた。
薄い青の瞳は、戸惑いを浮かべている。
「……ありがとうございます。優しいのはあなただと思いますけどね」
「そうですか? お世辞じゃないですよ今の」
にこりと笑いかけると彼は、「いや……」と言いかけたが、胸にしまったようだった。
部屋の空気が温まってきたところで、映画を見ることになった。
リビングの照明を落とし、大きなテレビ画面の配信チャンネルで、映画を探す。
彼の好みもあるだろうと、あなたは前もって決めてなかった。
「あっ、ていうか映画でよかったですか? やっぱりドラマにします?」
「ドラマだと、続きも見に来ないといけませんよね」
「あはは、ほんとだ」
さすがにそれは迷惑かと思い笑うと、彼はあなたにワインを注いでくれた。
グラスを一緒に向き合わせ、乾杯をする。
なんだか、彼が静かにワインを飲む姿に、あなたはうっすら見とれていた。
映画を色々と探すも、なかなか決まらなかったので、エナードはあなたの好きなものでいいと言ってくれた。
「じゃあこれにしましょうか。大好きなんですよ~この映画」
あなたは瞳を緩ませ、お言葉に甘えてお気に入りの家族もののドラマを選んだ。
サスペンスあり人情ありの、人間関係にぐっとくる秀逸なストーリーだ。
さっそく二人は二時間近い映画を見始めた。
あなたはところどころ「あっ」とか「ひーっ」とか反応していたが、彼は終始無言だった。
時折エナードを見ると、足を少し開き、背筋はゆったりして、顔は真剣だった。
そうしてエンドロールが流れた頃。
あなたはぐすぐすと鼻をすすり、目元が赤くなっていた。
「……ものすごく泣いてますね」
「すみません、いつもこうなっちゃって…っ」
横から彼に引かれているのが分かったが、感情はあふれてしまっていた。
彼が自分のポケットから四角いティッシュの袋を出して、二枚くれる。
あなたは遠慮なくお礼を言って受け取り、向こうを向いて鼻をかんだ。
「へへっ。ありがとうございます。……でもどうでした? 面白くなかったですか?」
「いえ……面白かったですよ」
彼がそう言ってくれたのであなたは喜びに沸き立つ。
エナードは感想まで述べてくれた。
「登場人物のやり取りが段階的に深くなっていって、よかったですね。……あなたはあの最後に自首したキャラクターに共感するだろうなって思いながら、見てました」
「えっ、どうしてわかったんですか! エナードさん、すごい洞察力ですよ、さすが~っ」
すると彼は体をこちらに向けて言った。
「名無しさんは優しい人だからです。隣でも、すごく感情移入していたのが伝わりましたから。……あなたの気持ちになってみたら簡単でしたよ」
「⋯⋯ほっ……本当ですか。嬉しい……」
独特な鑑賞の仕方だと思いつつも、あなたはじわりと顔が染まっていく。
エナードが真面目にこの映画を見てくれて、よかったと言ってくれて、嬉しかった。
「一緒に見れてよかったです。楽しかったなぁ」
照れながら言うと、エナードはあなたを珍しそうに見つめた。あのじっとうかがうような眼差しではなく、知りたがるような感じだ。
そして彼は、腰を上げた。
「それじゃあ、そろそろ――」
「えっ。もう帰っちゃうんですかっ? 映画終わってすぐっ?」
そう尋ねたあなたの顔が、ものすごくショックで寂しそうだったのだろう。
そのうえ少しハートブレイク気味にも、エナードには見えた。
だから彼は上げた腰を、ゆっくり立ち上がらせてこう言った。
「いや……まだ帰りませんよ。トイレに行こうと思っただけです」
「……なんだぁ。そっか。あ、その奥のつきあたりです」
「⋯はい。知ってます」
間取りが似ているため、彼はそう頷いたあと、いったん消えた。
あなたは顔を整え、グラスに最後のワインを継ぎ足した。
表情は嬉しさを隠せていない。
そして彼が戻って来て、にこにこと向き合う。
だが、引き留めたのはいいものの、やっぱり迷惑だっただろうかと考える。
彼が同じソファにいてくれて、心は安心していたけれど。
そんなあなたを前に、エナードは少しだけ考えるように黙っていた。
「名無しさん、今度⋯⋯」
自分のほうを見て、彼が言葉を紡ごうとする。
あなたは、はっとしながら彼の言葉を待った。
「今度は、僕が⋯⋯ドラマを選んでもいいですか」
静かな誘いが、あなたの胸にしみていく。
小さく頷き、思わず彼のほうに、そっと身を寄せた。
「もちろんです、エナードさん⋯⋯そうしてください」
瞳がぶつかり、あなたは赤くなって、目をそらしてしまった。
膝と膝が近くて、指が触れそうで、意識をする。
だが、彼はわずかに顔をあなたのほうに寄せた。
二人きりで囁くような距離だ。
「あの……僕も、男なんですよ」
声は落ち着いていたが、彼の瞳は揺れている。
至近距離で見つめ合い、あなたの心臓は大きくなり始めた。
いつもみたいに明るく返せず、あなたは頬を染めたまま、瞳を閉じた。
それがあなたの気持ちだった。
すると、服がこすれる音がした。
「ん…………」
唇に彼の唇が触れている。
そのとき、心の中が温かく灯った。
唇は火花のように熱くなっているのに。
目をゆっくり開けようとすると、まだ彼がキスしていたので、慌てて閉じた。
すると静かに口が離される。
「あ……」
彼は目元をうっすら染めて、あなたを見つめている。
「……あの……今のは……」
「今のは……したかったので、しました」
エナードは瞳を一瞬伏せ、そう伝えた。
「あ……嬉しいです。ありがとうございます」
照れながら答えると、彼は何も言わなかった。
けれど二人の距離は近いまま、離れることはなかった。
夕食を済ませた夜の八時頃のことだ。
休日で金髪をさらっと崩した彼は、服装もシャツにスラックスと、綺麗めだがゆったりしていた。
「こんばんは。……これ、ノンアルコールワインです」
「わあ、ありがとうございます。一緒に飲みましょうね」
お礼を言って受け取り、少しだけお洒落をしたあなたは彼をすぐそばのリビングへと招いた。
茶色のお気に入りのソファは三人がけで、あなたと彼は真ん中を開けて座る。
ローテーブルにはグラスが並び、チーズやサラミ、スナック菓子などを少しずつ置いた。
そんなにロマンチックな雰囲気ではない。
彼もそのほうがいいだろうと、一緒に映画を見ることに集中しようと思っていた。
「そういえば、本当に僕があなたの部屋にお邪魔して、大丈夫だったんでしょうか」
「大丈夫ですよ、もちろん」
「……そうですか。恋人とか、いないんですか」
彼にそう言われてドキっとしたが、あなたは気恥ずかし気に明かす。
「いないですよ。彼氏いるのに男性を家に誘うほど、非常識じゃないです」
笑いながら言うと、彼は静かに納得していた。
「エナードさんは? ……あっ。もしいるのにお誘いしてたらすみません!」
「いませんよ。……こんな性格ですから」
彼は自嘲気味に答えたが、あなたはすぐに反論したくなり身を乗り出す。
「ええっ? こんなに素敵な人じゃないですか! お願いしたら助けてくれたし、雑草取りでも危ないとこ担当してくれましたし。廊下もピカピカだったし。とっても優しい方ですよ、エナードさんって」
これまで見た、ぶっきらぼうながらも誠実な彼の姿を力説すると、彼は一瞬身を引いていた。
薄い青の瞳は、戸惑いを浮かべている。
「……ありがとうございます。優しいのはあなただと思いますけどね」
「そうですか? お世辞じゃないですよ今の」
にこりと笑いかけると彼は、「いや……」と言いかけたが、胸にしまったようだった。
部屋の空気が温まってきたところで、映画を見ることになった。
リビングの照明を落とし、大きなテレビ画面の配信チャンネルで、映画を探す。
彼の好みもあるだろうと、あなたは前もって決めてなかった。
「あっ、ていうか映画でよかったですか? やっぱりドラマにします?」
「ドラマだと、続きも見に来ないといけませんよね」
「あはは、ほんとだ」
さすがにそれは迷惑かと思い笑うと、彼はあなたにワインを注いでくれた。
グラスを一緒に向き合わせ、乾杯をする。
なんだか、彼が静かにワインを飲む姿に、あなたはうっすら見とれていた。
映画を色々と探すも、なかなか決まらなかったので、エナードはあなたの好きなものでいいと言ってくれた。
「じゃあこれにしましょうか。大好きなんですよ~この映画」
あなたは瞳を緩ませ、お言葉に甘えてお気に入りの家族もののドラマを選んだ。
サスペンスあり人情ありの、人間関係にぐっとくる秀逸なストーリーだ。
さっそく二人は二時間近い映画を見始めた。
あなたはところどころ「あっ」とか「ひーっ」とか反応していたが、彼は終始無言だった。
時折エナードを見ると、足を少し開き、背筋はゆったりして、顔は真剣だった。
そうしてエンドロールが流れた頃。
あなたはぐすぐすと鼻をすすり、目元が赤くなっていた。
「……ものすごく泣いてますね」
「すみません、いつもこうなっちゃって…っ」
横から彼に引かれているのが分かったが、感情はあふれてしまっていた。
彼が自分のポケットから四角いティッシュの袋を出して、二枚くれる。
あなたは遠慮なくお礼を言って受け取り、向こうを向いて鼻をかんだ。
「へへっ。ありがとうございます。……でもどうでした? 面白くなかったですか?」
「いえ……面白かったですよ」
彼がそう言ってくれたのであなたは喜びに沸き立つ。
エナードは感想まで述べてくれた。
「登場人物のやり取りが段階的に深くなっていって、よかったですね。……あなたはあの最後に自首したキャラクターに共感するだろうなって思いながら、見てました」
「えっ、どうしてわかったんですか! エナードさん、すごい洞察力ですよ、さすが~っ」
すると彼は体をこちらに向けて言った。
「名無しさんは優しい人だからです。隣でも、すごく感情移入していたのが伝わりましたから。……あなたの気持ちになってみたら簡単でしたよ」
「⋯⋯ほっ……本当ですか。嬉しい……」
独特な鑑賞の仕方だと思いつつも、あなたはじわりと顔が染まっていく。
エナードが真面目にこの映画を見てくれて、よかったと言ってくれて、嬉しかった。
「一緒に見れてよかったです。楽しかったなぁ」
照れながら言うと、エナードはあなたを珍しそうに見つめた。あのじっとうかがうような眼差しではなく、知りたがるような感じだ。
そして彼は、腰を上げた。
「それじゃあ、そろそろ――」
「えっ。もう帰っちゃうんですかっ? 映画終わってすぐっ?」
そう尋ねたあなたの顔が、ものすごくショックで寂しそうだったのだろう。
そのうえ少しハートブレイク気味にも、エナードには見えた。
だから彼は上げた腰を、ゆっくり立ち上がらせてこう言った。
「いや……まだ帰りませんよ。トイレに行こうと思っただけです」
「……なんだぁ。そっか。あ、その奥のつきあたりです」
「⋯はい。知ってます」
間取りが似ているため、彼はそう頷いたあと、いったん消えた。
あなたは顔を整え、グラスに最後のワインを継ぎ足した。
表情は嬉しさを隠せていない。
そして彼が戻って来て、にこにこと向き合う。
だが、引き留めたのはいいものの、やっぱり迷惑だっただろうかと考える。
彼が同じソファにいてくれて、心は安心していたけれど。
そんなあなたを前に、エナードは少しだけ考えるように黙っていた。
「名無しさん、今度⋯⋯」
自分のほうを見て、彼が言葉を紡ごうとする。
あなたは、はっとしながら彼の言葉を待った。
「今度は、僕が⋯⋯ドラマを選んでもいいですか」
静かな誘いが、あなたの胸にしみていく。
小さく頷き、思わず彼のほうに、そっと身を寄せた。
「もちろんです、エナードさん⋯⋯そうしてください」
瞳がぶつかり、あなたは赤くなって、目をそらしてしまった。
膝と膝が近くて、指が触れそうで、意識をする。
だが、彼はわずかに顔をあなたのほうに寄せた。
二人きりで囁くような距離だ。
「あの……僕も、男なんですよ」
声は落ち着いていたが、彼の瞳は揺れている。
至近距離で見つめ合い、あなたの心臓は大きくなり始めた。
いつもみたいに明るく返せず、あなたは頬を染めたまま、瞳を閉じた。
それがあなたの気持ちだった。
すると、服がこすれる音がした。
「ん…………」
唇に彼の唇が触れている。
そのとき、心の中が温かく灯った。
唇は火花のように熱くなっているのに。
目をゆっくり開けようとすると、まだ彼がキスしていたので、慌てて閉じた。
すると静かに口が離される。
「あ……」
彼は目元をうっすら染めて、あなたを見つめている。
「……あの……今のは……」
「今のは……したかったので、しました」
エナードは瞳を一瞬伏せ、そう伝えた。
「あ……嬉しいです。ありがとうございます」
照れながら答えると、彼は何も言わなかった。
けれど二人の距離は近いまま、離れることはなかった。
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