テンション低い隣人男性と仲良くなる話
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次の週と翌々週は、あなたが自分の階の廊下と階段の掃除を行った。
窓は二週に一回にすることにした。
隣の高齢女性にはたいそうお礼を言われて、お菓子までもらった。
そして三週目の休日、あなたがちょっと買い物に出ようとすると、廊下から物音がした。
隣人男性がモップを使ってきちんと掃除しているらしい。
邪魔にならないように30分ほどしてから、あなたは出ることにした。
廊下も階段もピカピカで、歩くのがもったいないほどだった。窓にもツヤがあった。
しっかり仕事をする人なんだな。
そう思って、自分も見習おうと思った。
ひと月ほどが経った頃、草むしりの順番が回ってきたのであなたは隣人男性のもとに向かった。
夜にチャイムを鳴らし、しばらくして中から男性が出てくる。
「こんばんは」
「こんばんは。なんですか」
薄い青色の瞳でまたあの見透かすような目つきをされ、あなたは彼を見上げる。
服装はいつものジャケット姿ではなく、ラフなトップスとズボンだ。肩幅が広く、結構体格がいい。
「草むしりのことなんですが。エナードさんと私がもうすぐ順番で」
「……ああ。それか。……僕はやりません、契約にはなかったので」
「えっ」
驚いて見つめるも、彼の表情からはその台詞以上も以下もない、といったふうだった。
「それじゃ」
そう言って扉を閉められ、あなたは一瞬困ったなぁと思ったが、こういうことはよくあることだ。
この国では、契約や法律が重視され、それに基づく個人の権利が認められている。
だからそれも彼の選択だと受け取った。
その週の休日の朝。帽子をかぶり動きやすい服装に着替えたあなたは、自分達のバルコニー下の雑草を抜いていた。
そこまで広いスペースではない。ただ増え続けると、見栄えが悪い。
「はぁーっ。いい運動になるのになぁ。……きゃああぁっ」
良い汗を流していたあなただったが、木が多い場所の下は虫とミツバチが飛んでて、何歩も後ずさった。
「あそこはやめとこ。今度でいいや」
すぐに方向転換をし、別の場所を終わらせた。
部屋に戻って来ると、あなたは夏の良い天気の下、半袖と短パンになってバルコニーに出る。
ドリンクを準備しビーチチェアに寝そべる前に、二階からさっきの庭を見た。
「わーすっごい綺麗になった。私天才~」
一人でフェンスに寄りかかり、成果を褒めたたえていると。
隣のバルコニーの柵に男性がちょうどいたことに気づいた。
「うわっ」
あなたは素で驚き、目が合ってしまう。
彼は隣人のエナードだった。
寝起きなのか金髪に寝ぐせがあり、コーヒーカップを片手にこっちを見ている。
「あっ……。どうもー、おはようございます」
「……おはようございます」
彼にじろっと全身を見られた気がしたが、すぐに視線を外に戻された。
さすがにあなたも気まずくなり、でも今すぐに部屋に入ることもしづらかった。
「エナードさんって、自炊とかするんですか?」
「……はっ?」
突然プライバシー丸出しなことを聞いてしまい、あなたは焦る。
まったく親しい関係ではないのに。
汗が出ていると、彼の横目がこちらに向かった。答えるのは相変わらず遅い。
「しません。あなたは?」
「私はしますよ~」
「でしょうね」
なにその答え。
そう思っていると、こちらに向き直った彼の、朝のけだるそうなシャツ姿にドキっとした。
「帰宅する頃に、廊下からご飯の匂いがするので」
「……あっ。すみません。匂いが漏れてましたね」
あなたが焦り気味に頭をかくと、彼はこう続けた。
「いい匂いですよ」
それだけ言って、珈琲を口に含む。
たった一言だったが、あなたはとても嬉しくなった。
「へへ。自炊が好きで……」
「じゃあ」
そう言って彼は踵を返し、バルコニーのドアが開けられ、ばたりと閉まった。
一人残された感はあったが、あなたは夏の日差しとは異なるふわっと温かな気分で、ビーチチェアに寝そべり、鼻歌を歌った。
窓は二週に一回にすることにした。
隣の高齢女性にはたいそうお礼を言われて、お菓子までもらった。
そして三週目の休日、あなたがちょっと買い物に出ようとすると、廊下から物音がした。
隣人男性がモップを使ってきちんと掃除しているらしい。
邪魔にならないように30分ほどしてから、あなたは出ることにした。
廊下も階段もピカピカで、歩くのがもったいないほどだった。窓にもツヤがあった。
しっかり仕事をする人なんだな。
そう思って、自分も見習おうと思った。
ひと月ほどが経った頃、草むしりの順番が回ってきたのであなたは隣人男性のもとに向かった。
夜にチャイムを鳴らし、しばらくして中から男性が出てくる。
「こんばんは」
「こんばんは。なんですか」
薄い青色の瞳でまたあの見透かすような目つきをされ、あなたは彼を見上げる。
服装はいつものジャケット姿ではなく、ラフなトップスとズボンだ。肩幅が広く、結構体格がいい。
「草むしりのことなんですが。エナードさんと私がもうすぐ順番で」
「……ああ。それか。……僕はやりません、契約にはなかったので」
「えっ」
驚いて見つめるも、彼の表情からはその台詞以上も以下もない、といったふうだった。
「それじゃ」
そう言って扉を閉められ、あなたは一瞬困ったなぁと思ったが、こういうことはよくあることだ。
この国では、契約や法律が重視され、それに基づく個人の権利が認められている。
だからそれも彼の選択だと受け取った。
その週の休日の朝。帽子をかぶり動きやすい服装に着替えたあなたは、自分達のバルコニー下の雑草を抜いていた。
そこまで広いスペースではない。ただ増え続けると、見栄えが悪い。
「はぁーっ。いい運動になるのになぁ。……きゃああぁっ」
良い汗を流していたあなただったが、木が多い場所の下は虫とミツバチが飛んでて、何歩も後ずさった。
「あそこはやめとこ。今度でいいや」
すぐに方向転換をし、別の場所を終わらせた。
部屋に戻って来ると、あなたは夏の良い天気の下、半袖と短パンになってバルコニーに出る。
ドリンクを準備しビーチチェアに寝そべる前に、二階からさっきの庭を見た。
「わーすっごい綺麗になった。私天才~」
一人でフェンスに寄りかかり、成果を褒めたたえていると。
隣のバルコニーの柵に男性がちょうどいたことに気づいた。
「うわっ」
あなたは素で驚き、目が合ってしまう。
彼は隣人のエナードだった。
寝起きなのか金髪に寝ぐせがあり、コーヒーカップを片手にこっちを見ている。
「あっ……。どうもー、おはようございます」
「……おはようございます」
彼にじろっと全身を見られた気がしたが、すぐに視線を外に戻された。
さすがにあなたも気まずくなり、でも今すぐに部屋に入ることもしづらかった。
「エナードさんって、自炊とかするんですか?」
「……はっ?」
突然プライバシー丸出しなことを聞いてしまい、あなたは焦る。
まったく親しい関係ではないのに。
汗が出ていると、彼の横目がこちらに向かった。答えるのは相変わらず遅い。
「しません。あなたは?」
「私はしますよ~」
「でしょうね」
なにその答え。
そう思っていると、こちらに向き直った彼の、朝のけだるそうなシャツ姿にドキっとした。
「帰宅する頃に、廊下からご飯の匂いがするので」
「……あっ。すみません。匂いが漏れてましたね」
あなたが焦り気味に頭をかくと、彼はこう続けた。
「いい匂いですよ」
それだけ言って、珈琲を口に含む。
たった一言だったが、あなたはとても嬉しくなった。
「へへ。自炊が好きで……」
「じゃあ」
そう言って彼は踵を返し、バルコニーのドアが開けられ、ばたりと閉まった。
一人残された感はあったが、あなたは夏の日差しとは異なるふわっと温かな気分で、ビーチチェアに寝そべり、鼻歌を歌った。
