巨体の人外に助けられて世話される話
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今日は一人でルラ・パルセ魔術師団に来ている。
あなたは魔術師長であるミザロの執務室にいた。
ローブ姿の師はいつもと同じく紅茶のカップを手にし、落ち着いていた。
「——というわけなんです、師匠。ルドガーのおかげでゲインさんに催眠術はかけられましたが、秘密といっていいのか分からないんです。これは彼の心に大切に存在する、家族への想いなんですよ」
あなたは与えられたテストの内容を報告しながら、自分の見解を語った。
肩ほどまでの黒髪をわずかに揺らし、ミザロは頷く。
「そうですね。心温まる話ですが、暴かれた秘密というには、あまりに弱いです」
「まあ……はい」
「ではテストの結果は不合格ということで、よろしいですか。名無しさん」
「はい。大丈夫です」
そこはあなたも素直に頷いた。
結果が云々というよりも、このことをわざわざゲインに明らかにする必要はないと思ったのだ。
「それは彼に恥をかかせたくないからですか?」
「恥だなんて思ってないですよ。…でも、ゲインさん少し恥ずかしがるかもしれないですね」
ふふ、と朗らかに笑う。
結界師の彼は真剣勝負だと言ってくれたけれど、当然だが自分の実力は到底敵うものではない。
秘密としては弱いという師の言葉からも、今回の件は率直に基準に足りていないと感じていた。
「わかりました。……ふふ。私はあなたの術に対する考え方が、とても興味深いんですよね。…術というよりも、あなたは被験者のことまで考えているでしょう」
「そうですよ。普通違うんですか?」
「ええ。私は被験者がどうなろうがどうでもいいですから。結果がすべてなので」
まったく取り繕わないミザロが恐ろしく感じたが、そこは自分とは意見が異なる。
新人で偉そうなことは言えなくとも、きっとこれからもあなたのポリシーは変わらないだろう。
「ですが名無しさんなりのやり方では、思わぬ結果が得られることもあるのだと、今回感じましたよ。そこは勉強になりますね」
「ええっ。師匠に勉強されるなんて…私まだ魔術勉強して半年未満ですよぉ、ふふっ」
あなたが調子に乗ってくると、ミザロは真面目にこんなことを提案する。
「期間はあてになりませんよ。この魔術師団は実力主義ですから。……ではあなたがこれから任務で催眠を行うときは、少しターゲットを厳選したほうがいいかもしれませんね」
「え……どういう意味ですか?」
彼の提案はいつも静かだが、爆弾並みに威力がある。
警戒したあなたは喉をごくっと動かした。
「攻略難易度が高い相手ということですよ。つまり、心が複雑な標的であったり、社会的地位が高い者などです」
「いやいや師匠、そんなの無理でしょう。いきなり何言い出すんですか」
見た目が可愛らしい小娘だから油断されるだとか考えてるのだろうか。
だが自分がそんな相手を催眠にかけるなんて、想像ができなかった。
ひとまずこれからの任務については、また追って知らせると言われ、肩の力を抜く。
ミザロは今は暇な時間帯なのか、立ち上がり奥の部屋に消え、ケーキまで出してくれた。
あなたは遠慮なく師とのお茶を楽しみ、リラックスし始める。
「そういえば名無しさん。守護者からの連絡はまだないんですか」
「ええ。それどころか、ルドガーとの森での休暇以来、途絶えてしまって。……デシエさんを捕らえたことで、やっぱり怒ってるんですかね…?」
せっかくあの休暇でのやり取りや、ハンカチを贈られたことなどで、守護者と距離が縮まったと思っていたのだが。
彼女の側近を結構きつめに捕縛したことが引っかかっていた。
だが、ミザロに平然と「あのぐらい魔術師同士なら普通ですよ。むしろ優しいほうです。痛めつけてないでしょう」とか言われたので記憶を失ったのかと心配した。
「あの、師匠。この話題、しちゃいけなそうなのは分かってるんですけど……ゼイラン様とジュリスさんが話してた、公爵の一人って……師匠も誰なのか分かります?」
小声で正面に身を寄せて問うと、ミザロは珍しく黙った。
「…………可能性の話であれば、低いと思いますよ。ですが、もしそうなのであれば……」
中性的な美しい顔立ちのミザロが、物憂げに顎に指をあてる。
そうして深い青の瞳が、あなたをじっと見つめた。
「私達は、間違ったことをしてるのかもしれませんね」
「ど、どういう意味ですか」
「考えても無駄な話ですよ、名無しさん」
もったいぶった話をされると、あなたも段々落ち着かなくなってくる。
「それだけヤバい人ってことですか」
「はい。もう聞かないでください」
「わかりました……」
「あなたはただ待っていればいいのです。だって、信じているのでしょう? 守護者のことを」
彼に核心を問われて、決意をこめて、まっすぐに頷く。
「あなたがどこから来たのかも、もうすぐ分かるんでしょうかね」
そう呟いた師に、今度ははっきりと答えられなかった。
あなたにはルドガーの顔が、浮かんでいたからだ。
あなたは魔術師長であるミザロの執務室にいた。
ローブ姿の師はいつもと同じく紅茶のカップを手にし、落ち着いていた。
「——というわけなんです、師匠。ルドガーのおかげでゲインさんに催眠術はかけられましたが、秘密といっていいのか分からないんです。これは彼の心に大切に存在する、家族への想いなんですよ」
あなたは与えられたテストの内容を報告しながら、自分の見解を語った。
肩ほどまでの黒髪をわずかに揺らし、ミザロは頷く。
「そうですね。心温まる話ですが、暴かれた秘密というには、あまりに弱いです」
「まあ……はい」
「ではテストの結果は不合格ということで、よろしいですか。名無しさん」
「はい。大丈夫です」
そこはあなたも素直に頷いた。
結果が云々というよりも、このことをわざわざゲインに明らかにする必要はないと思ったのだ。
「それは彼に恥をかかせたくないからですか?」
「恥だなんて思ってないですよ。…でも、ゲインさん少し恥ずかしがるかもしれないですね」
ふふ、と朗らかに笑う。
結界師の彼は真剣勝負だと言ってくれたけれど、当然だが自分の実力は到底敵うものではない。
秘密としては弱いという師の言葉からも、今回の件は率直に基準に足りていないと感じていた。
「わかりました。……ふふ。私はあなたの術に対する考え方が、とても興味深いんですよね。…術というよりも、あなたは被験者のことまで考えているでしょう」
「そうですよ。普通違うんですか?」
「ええ。私は被験者がどうなろうがどうでもいいですから。結果がすべてなので」
まったく取り繕わないミザロが恐ろしく感じたが、そこは自分とは意見が異なる。
新人で偉そうなことは言えなくとも、きっとこれからもあなたのポリシーは変わらないだろう。
「ですが名無しさんなりのやり方では、思わぬ結果が得られることもあるのだと、今回感じましたよ。そこは勉強になりますね」
「ええっ。師匠に勉強されるなんて…私まだ魔術勉強して半年未満ですよぉ、ふふっ」
あなたが調子に乗ってくると、ミザロは真面目にこんなことを提案する。
「期間はあてになりませんよ。この魔術師団は実力主義ですから。……ではあなたがこれから任務で催眠を行うときは、少しターゲットを厳選したほうがいいかもしれませんね」
「え……どういう意味ですか?」
彼の提案はいつも静かだが、爆弾並みに威力がある。
警戒したあなたは喉をごくっと動かした。
「攻略難易度が高い相手ということですよ。つまり、心が複雑な標的であったり、社会的地位が高い者などです」
「いやいや師匠、そんなの無理でしょう。いきなり何言い出すんですか」
見た目が可愛らしい小娘だから油断されるだとか考えてるのだろうか。
だが自分がそんな相手を催眠にかけるなんて、想像ができなかった。
ひとまずこれからの任務については、また追って知らせると言われ、肩の力を抜く。
ミザロは今は暇な時間帯なのか、立ち上がり奥の部屋に消え、ケーキまで出してくれた。
あなたは遠慮なく師とのお茶を楽しみ、リラックスし始める。
「そういえば名無しさん。守護者からの連絡はまだないんですか」
「ええ。それどころか、ルドガーとの森での休暇以来、途絶えてしまって。……デシエさんを捕らえたことで、やっぱり怒ってるんですかね…?」
せっかくあの休暇でのやり取りや、ハンカチを贈られたことなどで、守護者と距離が縮まったと思っていたのだが。
彼女の側近を結構きつめに捕縛したことが引っかかっていた。
だが、ミザロに平然と「あのぐらい魔術師同士なら普通ですよ。むしろ優しいほうです。痛めつけてないでしょう」とか言われたので記憶を失ったのかと心配した。
「あの、師匠。この話題、しちゃいけなそうなのは分かってるんですけど……ゼイラン様とジュリスさんが話してた、公爵の一人って……師匠も誰なのか分かります?」
小声で正面に身を寄せて問うと、ミザロは珍しく黙った。
「…………可能性の話であれば、低いと思いますよ。ですが、もしそうなのであれば……」
中性的な美しい顔立ちのミザロが、物憂げに顎に指をあてる。
そうして深い青の瞳が、あなたをじっと見つめた。
「私達は、間違ったことをしてるのかもしれませんね」
「ど、どういう意味ですか」
「考えても無駄な話ですよ、名無しさん」
もったいぶった話をされると、あなたも段々落ち着かなくなってくる。
「それだけヤバい人ってことですか」
「はい。もう聞かないでください」
「わかりました……」
「あなたはただ待っていればいいのです。だって、信じているのでしょう? 守護者のことを」
彼に核心を問われて、決意をこめて、まっすぐに頷く。
「あなたがどこから来たのかも、もうすぐ分かるんでしょうかね」
そう呟いた師に、今度ははっきりと答えられなかった。
あなたにはルドガーの顔が、浮かんでいたからだ。
