巨体の人外に助けられて世話される話
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隊長に会うと言い出したルドガーは、本当に約束を取りつけた。場所は相手方の家で、招待をうけたらしい。
あなたは初めて小屋の外に出ることに興奮した。
とはいえ、この深い森を移動するのは危険なため、屋敷の執事が迎えにきたのだった。
転移魔法であっという間に屋敷に転送されて、驚きのあまり目が回る。
「――ルドガー様。名無し様。もうすぐ旦那様がいらっしゃいますので、ご自由におくつろぎください」
「は、はい。どうもありがとう」
天井の高い客間に通され、あなたはぼうっと見渡す。白亜の壁に包まれた荘厳な聖堂みたいな雰囲気だ。
執事も制服を着込んだ虎獣人だったが、隊長セヴァはどれほどお金持ちなのだろう。
勇ましい軍人のイメージとはまったく違った。
「ねえルドガー、これってケーキだよね。テーブルにお菓子がたくさんあるよ」
「ああ、そうだな。甘ったるい匂いが充満している」
不機嫌そうな彼はふかふかのソファにも座らず、気配に耳を研ぎ澄ませて立っている。
この間とは別の制服姿で、たくましい体に濃色の軍装がぴったりだ。
「そんなにピリピリしないで。座ろうよ」
「⋯⋯仕方ないな」
優しく手を伸ばすと、態度を柔らかくしたルドガーは隣に腰を下ろした。
黒い角はそのままだけれど、うねる短髪は凛々しくセットしている。
あなたも粗相のないように上品なワンピースにカーディガンを羽織ったが、静かな所にいると緊張した。
ルドガーのネクタイを直したりして待っていると、彼の瞳がじっと見つめてくる。
「最近、お前に触れられることが多くなった気がする。⋯⋯もう怖くないか?」
そう尋ねる声が優しくて、急に落ち着かなくなった。
「別に最初から怖くないもん」
「⋯⋯そうか。それならいいが」
ふっと笑ったルドガーは爪をしまった手であなたの頬に触れ、そこに優しくキスをする。
「⋯なっ、こんなとこでだめだってばっ」
「少しならいいだろう? 俺も安心したいんだ」
意味深な言葉で肩をすくめる彼を、赤く染まった顔で見つめ返す。
まったくそうは見えないが、もしかしてルドガーも緊張してるのかもしれないと感じた。
そんなとき、後ろからコンコンと扉を叩く音がした。
「待たせてすまない。お邪魔かな?」
低くソフトな声に振り向くと、開け放たれた大扉から大柄な虎獣人がやって来た。
彼も軍服姿で、歩いてくる様子からすでに誠実で育ちの良さそうなオーラが放たれている。
あなたは慌てて立ち上がり、お辞儀をする。
今のを見られたかもと恥ずかしくなってきた。
「あっいえ大丈夫です! こんにちは、セヴァさん。今日はお招きありがとうございます」
「やあ、名無しさん。また君に会えて嬉しいよ。元気そうだね。どうだい、ケーキを用意したんだ。たくさん食べてくれ」
「⋯⋯えっ? いいんですか?」
あなたは再会したばかりだというのに、目の色が変わる。
ルドガーと隊長が話し始めたので、自分は甘いものにそっと手を伸ばした。
実は魔界のデザートがどんなものか、ずっと気になっていたのだ。
「美味しい〜っ。ほっぺたがとろけそう」
若い女の子のあなたはケーキやマフィンを頬張り、感嘆の声をもらす。もうこれは本能的なものであった。
そんな普段とは違う様子に、ルドガーは隊長をじろりと捉える。
「食い物で釣るとはな。あんなに美味そうに食ってる姿は初めて見た」
「ははは。女性はとくに菓子類が好きだと思ってな。お前も用意してあげるといい」
お茶も出され、三人は白い縦長のテーブルにつく。
ルドガーはまっすぐ隊長を見据えたままだ。
あなたは緊張もあったが考えないようにゆっくり紅茶を含んだ。
「それで、俺に話があるそうじゃないか。この前のことなら申し訳なかった。配慮が足らなかったな。皆も表面的には反省してくれたぞ。⋯⋯まあ性格はお前も知っているだろうから、今度会ったらからかわれるだろうけどな」
隊長セヴァは苦笑しながらも、あなたを柔らかい目つきで眺める。
彼からは終始敵ではなく、好意的な眼差しを受け取っていた。
しかしそのたびにルドガーの気持ちは落ち着かなくなる。
「この間の話はもういい。お前達の思いは理解している。話は別にあるんだ」
「そうか。なんだ?」
「単刀直入に言うが⋯⋯名無しに気があるのか?」
あなたは茶を吹きそうになった。
彼の肩を掴み、やめてよ!と反抗しそうになったが、その前に虎獣人の笑い声が響いた。
「くくく、はっはっは⋯⋯! いや、悪い。ふざけてるわけではなく⋯⋯俺が友人の好きな相手に手を出すわけないだろう? 要らぬ心配だぞ、ルドガー」
彼はまだ笑いをこらえた様子であなたを見やった。
こちらも恥ずかしくて縮こまり頭を下げる。
「素敵なお嬢さんだけどね。彼女も困るだろう、俺達みたいな図体のでかい異種族二人に同時に言い寄られたら」
虎の青い瞳がにこりと細まり、彼はまるで親のような顔つきで顎をさすった。
「はは⋯⋯確かにちょっとびっくりするかもしれませんね。すみません、彼が勘違いしてて」
「それだけ君を本気で好きなんだろうね。俺は構わないよ。こんな年の男を恋敵として見られて悪い気はしないさ」
「えっ⋯? セヴァさんって何歳なんですか」
「150才だよ」
あなたは驚愕する。虎族はそんなに長生きなのだろうか。
「そんな風に見えないな〜。全然若いですよね。強そうだし。⋯⋯じゃあルドガーって何歳なの?」
「俺は二十歳だ」
「ええ!?」
もっと驚いて立ち上がりそうになった。
悪いけど三十前後かと思っていた。
彼はかなり完成された大人っぽさがあり、表情もだが堂々とした剛健さにあふれている。
「でも、私もたぶん自分が見た目で十八ぐらいかなって思ってたから、変わらないんだね。そっかぁ」
「ああ。ちょうどいいんじゃないか? 番としてはぴったりだな」
「はあっ? まだそこまでは言ってないけど!」
人前で恥ずかしいことを言われて突っ込むと、彼は身体をむけて笑みを浮かべてきてドキリとする。
そんな二人をセヴァは微笑ましく見つめていた。
「名無しさん。実は少し心配していたが、この前の様子もそうだったし、今もそうだ。君はルドガーに心を開いているね。仲がよさそうに見えるよ」
「⋯そうですか? まあ悪くはないですけど⋯」
はっきり指摘されるとまごつく。自分でも不思議で解明されていない思いだからだ。
「ルドガー、俺がお前の番を取る気がないって分かってくれただろう?」
「⋯⋯そうだな。わかった」
「よかった。彼女を大事にするんだぞ。あまり自分の気持ちを押しつけないようにな」
「⋯⋯分かっている。気をつけるつもりだ。⋯⋯セヴァ。お前は俺の知る限り、ゼイラン様に次いで完璧な男だ。だから名無しのために戦うなら、命をかけて戦う覚悟だった。勘違いして悪かった」
「ふむ、そこまで考えていたんだな。なに、気にするな。お前の気持ちはオスとして本物だ。成長が感じられて嬉しいぞ」
セヴァは胸の前で腕を組み、ルドガーに微笑みかける。
さっきまでの殺気立った空気が嘘のように、彼も落ち着いて頷いている。
あなたは医師に助言されたときのルドガーを思い出した。
彼は無鉄砲に見えて、かなり素直なところもある。
時折極端なのは若さゆえなのかもしれないが、ちゃんと伝えれば聞き入れてくれるのだ。
そしてそんな彼の真っ直ぐ濁りのない面が、あなたは密かに気に入っていた。
大惨事にならなくてよかったと心から安堵し、この日はこうして親睦を深めて終わりだと思ったのだが――。
セヴァにとっては本題はここからのようだった。
「それとな、もうひとつ大事なことをお前に伝えよう。俺には部隊を指揮する隊長として、ゼイラン様に報告の義務がある。皆に口止めはしたし、ああ見えて規律は取れているから外には漏れないだろうが。次の会議までに伝えなければならない。どうする? 自分で言うか?」
突如核心に迫られ、あなたは鼓動がうるさくなった。
隊長の話はもっともだ。
ルドガーが自分を拾ったばっかりに、やはり大変な事態になっている。
「ど、どうしよう。言ったらどうなるの?」
隊長に対してすぐに答えなかったルドガーに、あなたは問いかけた。
すると彼は険しい顔のまま、重苦しい口を開いた。
「この事が分かったら、お前を取り上げられるかもしれない」
「え⋯⋯? うそでしょ⋯⋯?」
あなたは絶望の面持ちで取り乱す。
またたく間に強烈な不安感が襲ってきた。
「嫌だよ、離れたくない!」
思わず口から出てしまった言葉に、ルドガーは目を見開いた。
あなたは心細さが爆発した表情で彼の腕に掴まり、ぎゅっと握る。
いつの間にか彼のそばが、一番落ち着ける場所になっていた。
「お、落ち着け。名無し。お前を離すものか」
「本当に⋯?」
「ああ。本当だ。何に代えてもお前だけは俺が守る」
抱きしめられて腕の中に収まる。
隊長も共感をこめた様子で二人を見守っていた。
やがてルドガーはあなたの背を抱きとめながら、視線を横に向けた。
「セヴァ。俺がゼイラン様に話をする。事情を話せばきっと分かってくれるはずだ。俺が二十年世話になった、親のような存在なのだから」
「そうだな。俺もそう願うよ。お前が本気で説得すれば、きっと上手くいくさ。謁見の際は、二人と一緒に行こう。口添えができるはずだ」
軍人の彼はルドガーの師としても、良き友人としても協力を惜しまず、成功を祈ってくれていた。
あなたは初めて小屋の外に出ることに興奮した。
とはいえ、この深い森を移動するのは危険なため、屋敷の執事が迎えにきたのだった。
転移魔法であっという間に屋敷に転送されて、驚きのあまり目が回る。
「――ルドガー様。名無し様。もうすぐ旦那様がいらっしゃいますので、ご自由におくつろぎください」
「は、はい。どうもありがとう」
天井の高い客間に通され、あなたはぼうっと見渡す。白亜の壁に包まれた荘厳な聖堂みたいな雰囲気だ。
執事も制服を着込んだ虎獣人だったが、隊長セヴァはどれほどお金持ちなのだろう。
勇ましい軍人のイメージとはまったく違った。
「ねえルドガー、これってケーキだよね。テーブルにお菓子がたくさんあるよ」
「ああ、そうだな。甘ったるい匂いが充満している」
不機嫌そうな彼はふかふかのソファにも座らず、気配に耳を研ぎ澄ませて立っている。
この間とは別の制服姿で、たくましい体に濃色の軍装がぴったりだ。
「そんなにピリピリしないで。座ろうよ」
「⋯⋯仕方ないな」
優しく手を伸ばすと、態度を柔らかくしたルドガーは隣に腰を下ろした。
黒い角はそのままだけれど、うねる短髪は凛々しくセットしている。
あなたも粗相のないように上品なワンピースにカーディガンを羽織ったが、静かな所にいると緊張した。
ルドガーのネクタイを直したりして待っていると、彼の瞳がじっと見つめてくる。
「最近、お前に触れられることが多くなった気がする。⋯⋯もう怖くないか?」
そう尋ねる声が優しくて、急に落ち着かなくなった。
「別に最初から怖くないもん」
「⋯⋯そうか。それならいいが」
ふっと笑ったルドガーは爪をしまった手であなたの頬に触れ、そこに優しくキスをする。
「⋯なっ、こんなとこでだめだってばっ」
「少しならいいだろう? 俺も安心したいんだ」
意味深な言葉で肩をすくめる彼を、赤く染まった顔で見つめ返す。
まったくそうは見えないが、もしかしてルドガーも緊張してるのかもしれないと感じた。
そんなとき、後ろからコンコンと扉を叩く音がした。
「待たせてすまない。お邪魔かな?」
低くソフトな声に振り向くと、開け放たれた大扉から大柄な虎獣人がやって来た。
彼も軍服姿で、歩いてくる様子からすでに誠実で育ちの良さそうなオーラが放たれている。
あなたは慌てて立ち上がり、お辞儀をする。
今のを見られたかもと恥ずかしくなってきた。
「あっいえ大丈夫です! こんにちは、セヴァさん。今日はお招きありがとうございます」
「やあ、名無しさん。また君に会えて嬉しいよ。元気そうだね。どうだい、ケーキを用意したんだ。たくさん食べてくれ」
「⋯⋯えっ? いいんですか?」
あなたは再会したばかりだというのに、目の色が変わる。
ルドガーと隊長が話し始めたので、自分は甘いものにそっと手を伸ばした。
実は魔界のデザートがどんなものか、ずっと気になっていたのだ。
「美味しい〜っ。ほっぺたがとろけそう」
若い女の子のあなたはケーキやマフィンを頬張り、感嘆の声をもらす。もうこれは本能的なものであった。
そんな普段とは違う様子に、ルドガーは隊長をじろりと捉える。
「食い物で釣るとはな。あんなに美味そうに食ってる姿は初めて見た」
「ははは。女性はとくに菓子類が好きだと思ってな。お前も用意してあげるといい」
お茶も出され、三人は白い縦長のテーブルにつく。
ルドガーはまっすぐ隊長を見据えたままだ。
あなたは緊張もあったが考えないようにゆっくり紅茶を含んだ。
「それで、俺に話があるそうじゃないか。この前のことなら申し訳なかった。配慮が足らなかったな。皆も表面的には反省してくれたぞ。⋯⋯まあ性格はお前も知っているだろうから、今度会ったらからかわれるだろうけどな」
隊長セヴァは苦笑しながらも、あなたを柔らかい目つきで眺める。
彼からは終始敵ではなく、好意的な眼差しを受け取っていた。
しかしそのたびにルドガーの気持ちは落ち着かなくなる。
「この間の話はもういい。お前達の思いは理解している。話は別にあるんだ」
「そうか。なんだ?」
「単刀直入に言うが⋯⋯名無しに気があるのか?」
あなたは茶を吹きそうになった。
彼の肩を掴み、やめてよ!と反抗しそうになったが、その前に虎獣人の笑い声が響いた。
「くくく、はっはっは⋯⋯! いや、悪い。ふざけてるわけではなく⋯⋯俺が友人の好きな相手に手を出すわけないだろう? 要らぬ心配だぞ、ルドガー」
彼はまだ笑いをこらえた様子であなたを見やった。
こちらも恥ずかしくて縮こまり頭を下げる。
「素敵なお嬢さんだけどね。彼女も困るだろう、俺達みたいな図体のでかい異種族二人に同時に言い寄られたら」
虎の青い瞳がにこりと細まり、彼はまるで親のような顔つきで顎をさすった。
「はは⋯⋯確かにちょっとびっくりするかもしれませんね。すみません、彼が勘違いしてて」
「それだけ君を本気で好きなんだろうね。俺は構わないよ。こんな年の男を恋敵として見られて悪い気はしないさ」
「えっ⋯? セヴァさんって何歳なんですか」
「150才だよ」
あなたは驚愕する。虎族はそんなに長生きなのだろうか。
「そんな風に見えないな〜。全然若いですよね。強そうだし。⋯⋯じゃあルドガーって何歳なの?」
「俺は二十歳だ」
「ええ!?」
もっと驚いて立ち上がりそうになった。
悪いけど三十前後かと思っていた。
彼はかなり完成された大人っぽさがあり、表情もだが堂々とした剛健さにあふれている。
「でも、私もたぶん自分が見た目で十八ぐらいかなって思ってたから、変わらないんだね。そっかぁ」
「ああ。ちょうどいいんじゃないか? 番としてはぴったりだな」
「はあっ? まだそこまでは言ってないけど!」
人前で恥ずかしいことを言われて突っ込むと、彼は身体をむけて笑みを浮かべてきてドキリとする。
そんな二人をセヴァは微笑ましく見つめていた。
「名無しさん。実は少し心配していたが、この前の様子もそうだったし、今もそうだ。君はルドガーに心を開いているね。仲がよさそうに見えるよ」
「⋯そうですか? まあ悪くはないですけど⋯」
はっきり指摘されるとまごつく。自分でも不思議で解明されていない思いだからだ。
「ルドガー、俺がお前の番を取る気がないって分かってくれただろう?」
「⋯⋯そうだな。わかった」
「よかった。彼女を大事にするんだぞ。あまり自分の気持ちを押しつけないようにな」
「⋯⋯分かっている。気をつけるつもりだ。⋯⋯セヴァ。お前は俺の知る限り、ゼイラン様に次いで完璧な男だ。だから名無しのために戦うなら、命をかけて戦う覚悟だった。勘違いして悪かった」
「ふむ、そこまで考えていたんだな。なに、気にするな。お前の気持ちはオスとして本物だ。成長が感じられて嬉しいぞ」
セヴァは胸の前で腕を組み、ルドガーに微笑みかける。
さっきまでの殺気立った空気が嘘のように、彼も落ち着いて頷いている。
あなたは医師に助言されたときのルドガーを思い出した。
彼は無鉄砲に見えて、かなり素直なところもある。
時折極端なのは若さゆえなのかもしれないが、ちゃんと伝えれば聞き入れてくれるのだ。
そしてそんな彼の真っ直ぐ濁りのない面が、あなたは密かに気に入っていた。
大惨事にならなくてよかったと心から安堵し、この日はこうして親睦を深めて終わりだと思ったのだが――。
セヴァにとっては本題はここからのようだった。
「それとな、もうひとつ大事なことをお前に伝えよう。俺には部隊を指揮する隊長として、ゼイラン様に報告の義務がある。皆に口止めはしたし、ああ見えて規律は取れているから外には漏れないだろうが。次の会議までに伝えなければならない。どうする? 自分で言うか?」
突如核心に迫られ、あなたは鼓動がうるさくなった。
隊長の話はもっともだ。
ルドガーが自分を拾ったばっかりに、やはり大変な事態になっている。
「ど、どうしよう。言ったらどうなるの?」
隊長に対してすぐに答えなかったルドガーに、あなたは問いかけた。
すると彼は険しい顔のまま、重苦しい口を開いた。
「この事が分かったら、お前を取り上げられるかもしれない」
「え⋯⋯? うそでしょ⋯⋯?」
あなたは絶望の面持ちで取り乱す。
またたく間に強烈な不安感が襲ってきた。
「嫌だよ、離れたくない!」
思わず口から出てしまった言葉に、ルドガーは目を見開いた。
あなたは心細さが爆発した表情で彼の腕に掴まり、ぎゅっと握る。
いつの間にか彼のそばが、一番落ち着ける場所になっていた。
「お、落ち着け。名無し。お前を離すものか」
「本当に⋯?」
「ああ。本当だ。何に代えてもお前だけは俺が守る」
抱きしめられて腕の中に収まる。
隊長も共感をこめた様子で二人を見守っていた。
やがてルドガーはあなたの背を抱きとめながら、視線を横に向けた。
「セヴァ。俺がゼイラン様に話をする。事情を話せばきっと分かってくれるはずだ。俺が二十年世話になった、親のような存在なのだから」
「そうだな。俺もそう願うよ。お前が本気で説得すれば、きっと上手くいくさ。謁見の際は、二人と一緒に行こう。口添えができるはずだ」
軍人の彼はルドガーの師としても、良き友人としても協力を惜しまず、成功を祈ってくれていた。
