巨体の人外に助けられて世話される話
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今日は久々にルラ・パルセの街にやってきた。
すでに春らしい陽気の中、あなたは耳当てをし、セロもニット帽で人間の耳を隠している。
二人とも動きやすい普段着だが、ナザルだけは気合いの入った赤シャツに白ズボン、赤髪もオールバックにして、アクセサリーをじゃらつかせていた。
「お前なんだそのチンピラみたいな恰好は。俺たち、どう見ても怪しい人身売買のスカウトに連れていかれる若者じゃねえか」
「はあ? 実情はお前のほうがいかがわしい魔術師だろ。……はっ、今日は俺らの特別なデートだからなあ、なあ名無し?」
「違いますよ。私はデートはルドガーとしかしないんです。今日は大事なお買い物の日なんですからね?」
きっぱり言うものの、自信満々なナザルは聞いておらず、あなたの肩に手をかけてにこりと笑いかけてくる。
「へっへっへ。俺の首見て? 首輪もう取れたんだよな! これであんたを心おきなくナンパできるぜえ」
「お前な。120歳にもなって恥ずかしくねえのか! 自分がジジイだってことを自覚しろ、みっともねえんだよ!」
「うっせーな、ほんとにモテるやつに年とか関係ねえ! それに俺は永遠の二十五歳なんだよ!」
「永遠とか言ってる時点で若者じゃねえから!」
あなたは二人のいつものやり取りに真ん中で笑っている。
この間獣化したナザルを皆で洗って仲良くしていたのに、結局こうなるのだ。
「ふふっ、にぎやかでいいですねえ。……あっ、魔道具用品店ありましたよ! 入りましょうか」
セロが案内してくれたのは、街角の路地裏にひっそりと佇む、魔族の魔術師たち御用達の店だ。
あなたはそこで色々なものを物色した。魔術師の心得が記された本や、めずらしい魔術書、ずっと欲しかったローブなどだ。
ナザルはつまらなそうにしていたが、常連のセロものめりこむように漁り、二人はそれぞれ欲しいものを購入して出てきた。
「おう名無し。ずいぶんてんこもりだな。荷物はこいつに持たせとけ」
「いいぜ、今日はお前らの荷物持ちに徹してやる」
「ありがとうございます。……見てみて、これどうですか? ピンクのローブ!」
あなたが一目ぼれした薄ピンクのローブを羽織り、くるりと回って可愛くポーズを決めた。
すると年上の青年二人は、一瞬「……」というおかしな顔になっていた。
「え、変?」
「いやその……目立ちすぎだろ。ナザルもびっくりだぞ。やっぱ若ギャルはすげえな…」
「うん、まあ……いいんじゃねえか。魔術師ってもっとひっそり陰気なイメージだけどな……あんたがそれでいいなら、まあ…」
あなたはショックな顔になり二人に詰め寄った。
「ええっ? 可愛いと思ったのに! ルドガーなら絶対『すごく可愛いぞ、名無し。最高だ』って言ってくれますよ!」
力説すると、二人は頷きながらも「あいつは獣だから何も分かってない」と酷いことを言っていた。
あなたは若干ぷんぷんしながら、このあと三人で今回のメインイベントである、ルドガーの贈り物を買いに行った。
若者から大人用まで、大きなサイズも揃う紳士服店だ。
ナザルは洋服に詳しく、ルドガーに合いそうなお店を教えてくれた。
「わあ~素敵。ここ絶対一人じゃ入れませんよ、ありがとうございますナザルさん」
「いいって。心置きなく探せよ、なんでもアドバイスしてやるから」
優しく告げてくれた彼に感謝し、あなたは格好良く飾り付けられたマネキンを見たり、背伸びして棚を探したり、さまざまな衣類をチェックしていた。
セロとナザルも協力してくれて、あなたはいくつかの大人っぽいシックなシャツを見つけ出した。
やっぱりルドガーに似合うのは、彼の黒髪にもマッチする、暗色のシャツだと思うのだ。
「これ恰好いい~どれにしよう、決められないよ~」
「おういいじゃん。全部買えば?」
「お前飽きてきたんだろ。……そうだ名無し、俺がこの場で裸になって試着してやろうか?」
「あ、大丈夫です」
あなたはナザルの大きな背に服を当ててサイズを確かめたり、ルドガーの背格好に似合うかどうか入念に確かめた。
「やっぱこれにしようかな! 二人とも、どう思います?」
「うんばっちりだな。お前男物はセンスいいわ」
「もうどういう意味ですか」
「ははっ」
三人で息が合ってきた会話に、あなたもけらけらとお腹を抱えて笑う。
すると紳士服売り場で、ふと寂しさが襲った。
静かになり、二人を見つめる。
「皆でこうしてお買い物するの、本当に楽しいなぁ。……私、バカだ。ルドガーがここにいたら、さらに楽しかったですよね」
サプライズしたいのは事実だが、彼を誘えばよかったと後悔してきてしまった。
あなたは今日もずっと頭の中ではルドガーのことを考えていたのだ。
するとセロ達もしんみりしたあと、温かい面持ちになった。
「また今度誘えばいいだろ。いつでも来れるんだからさ、四人で来ようぜ」
「そーだよ、名無し。あんたがあいつ大好きなのはわかったから、今度はルドガーも連れて来ればいいじゃねえか」
二人にそう声をかけられて、あなたの表情が明るさに包まれていく。
「そうですよね……! また来れますよね!」
「そうそう。つうかさ、実はな……。ほら、これ。俺、あいつから通話魔石渡されててさ」
あなたの様子に少し心が動かされたのか、セロがポケットから細い魔石を取り出す。
「なんかあったらすぐ通話かけてこいって。はは、やっぱ心配してんだろ。あいつらしいよな」
「だよな。抜け目ねえわ」
男達は顔を見合わせて笑っている。
あなたはひとり、潤んだ瞳で二人を感動的に見上げた。
「そうだったんだ。ルドガーも、心配してくれてたんだ…」
彼は最初は驚いていたが、あなたの気持ちを受け取り、力強く送り出してくれた。
いつもそうなのだ。
でもやっぱり、彼は常に万全を期している。
それがルドガーという男なのだと、この場の三人はもう知っていた。
「嬉しいー! じゃあ、ルドガーにお土産買って帰りましょう!」
「それいいじゃん。お前のおごりな。付き合ってやったから」
「はい!」
「セロ、お前恥ずかしくねえのか女に払わせて。名無し、俺がおごってやるからな。あんた今日たくさん金使ったんだから」
「わぁありがとうございます、じゃあ半分こして買いましょう~」
優しい彼らにたくさんの感謝をし、あなたは寂しさが吹き飛んで、うきうき気分で贈り物を買った。
帰る時間になるまで、あなた達は街の大きな公園にやってきた。
セロがここの出店が美味いというので、味見用に気に入ったのを購入し、帰りにルドガーにも買って帰ることにした。
三人でベンチに座り、ほっと一息つく。
「はぁ~美味しいですねえ。セロさん、このパフェ最高ですよ」
「だろっ? ホットドッグもうめえぞ」
飲食をしない獣のナザル、そしてセロ、あなたの順に座り、のどかに佇んでいた。
するとナザルがぴくりと尖った耳を動かす。
彼は何かに気づいたあと、セロを険しい顔で見た。
主であるセロも、怪訝に思い正面に視線をやった。
「なっ…………」
彼のいやに真剣な声音が響き、あなたも前を向いた。
遠くから静かに歩いてくる人物に、目を見開く。
それは女性だった。
あの黒いレースのケープに、長いゆるやかな紫色の髪を揺らしている。
黒いロングドレスの魔術師は、あなた達の前に、ゆっくりと歩いてきた。
けっして友好的とはいえない沈んだ美しい表情で、セロとナザルを見つめながら。
すでに春らしい陽気の中、あなたは耳当てをし、セロもニット帽で人間の耳を隠している。
二人とも動きやすい普段着だが、ナザルだけは気合いの入った赤シャツに白ズボン、赤髪もオールバックにして、アクセサリーをじゃらつかせていた。
「お前なんだそのチンピラみたいな恰好は。俺たち、どう見ても怪しい人身売買のスカウトに連れていかれる若者じゃねえか」
「はあ? 実情はお前のほうがいかがわしい魔術師だろ。……はっ、今日は俺らの特別なデートだからなあ、なあ名無し?」
「違いますよ。私はデートはルドガーとしかしないんです。今日は大事なお買い物の日なんですからね?」
きっぱり言うものの、自信満々なナザルは聞いておらず、あなたの肩に手をかけてにこりと笑いかけてくる。
「へっへっへ。俺の首見て? 首輪もう取れたんだよな! これであんたを心おきなくナンパできるぜえ」
「お前な。120歳にもなって恥ずかしくねえのか! 自分がジジイだってことを自覚しろ、みっともねえんだよ!」
「うっせーな、ほんとにモテるやつに年とか関係ねえ! それに俺は永遠の二十五歳なんだよ!」
「永遠とか言ってる時点で若者じゃねえから!」
あなたは二人のいつものやり取りに真ん中で笑っている。
この間獣化したナザルを皆で洗って仲良くしていたのに、結局こうなるのだ。
「ふふっ、にぎやかでいいですねえ。……あっ、魔道具用品店ありましたよ! 入りましょうか」
セロが案内してくれたのは、街角の路地裏にひっそりと佇む、魔族の魔術師たち御用達の店だ。
あなたはそこで色々なものを物色した。魔術師の心得が記された本や、めずらしい魔術書、ずっと欲しかったローブなどだ。
ナザルはつまらなそうにしていたが、常連のセロものめりこむように漁り、二人はそれぞれ欲しいものを購入して出てきた。
「おう名無し。ずいぶんてんこもりだな。荷物はこいつに持たせとけ」
「いいぜ、今日はお前らの荷物持ちに徹してやる」
「ありがとうございます。……見てみて、これどうですか? ピンクのローブ!」
あなたが一目ぼれした薄ピンクのローブを羽織り、くるりと回って可愛くポーズを決めた。
すると年上の青年二人は、一瞬「……」というおかしな顔になっていた。
「え、変?」
「いやその……目立ちすぎだろ。ナザルもびっくりだぞ。やっぱ若ギャルはすげえな…」
「うん、まあ……いいんじゃねえか。魔術師ってもっとひっそり陰気なイメージだけどな……あんたがそれでいいなら、まあ…」
あなたはショックな顔になり二人に詰め寄った。
「ええっ? 可愛いと思ったのに! ルドガーなら絶対『すごく可愛いぞ、名無し。最高だ』って言ってくれますよ!」
力説すると、二人は頷きながらも「あいつは獣だから何も分かってない」と酷いことを言っていた。
あなたは若干ぷんぷんしながら、このあと三人で今回のメインイベントである、ルドガーの贈り物を買いに行った。
若者から大人用まで、大きなサイズも揃う紳士服店だ。
ナザルは洋服に詳しく、ルドガーに合いそうなお店を教えてくれた。
「わあ~素敵。ここ絶対一人じゃ入れませんよ、ありがとうございますナザルさん」
「いいって。心置きなく探せよ、なんでもアドバイスしてやるから」
優しく告げてくれた彼に感謝し、あなたは格好良く飾り付けられたマネキンを見たり、背伸びして棚を探したり、さまざまな衣類をチェックしていた。
セロとナザルも協力してくれて、あなたはいくつかの大人っぽいシックなシャツを見つけ出した。
やっぱりルドガーに似合うのは、彼の黒髪にもマッチする、暗色のシャツだと思うのだ。
「これ恰好いい~どれにしよう、決められないよ~」
「おういいじゃん。全部買えば?」
「お前飽きてきたんだろ。……そうだ名無し、俺がこの場で裸になって試着してやろうか?」
「あ、大丈夫です」
あなたはナザルの大きな背に服を当ててサイズを確かめたり、ルドガーの背格好に似合うかどうか入念に確かめた。
「やっぱこれにしようかな! 二人とも、どう思います?」
「うんばっちりだな。お前男物はセンスいいわ」
「もうどういう意味ですか」
「ははっ」
三人で息が合ってきた会話に、あなたもけらけらとお腹を抱えて笑う。
すると紳士服売り場で、ふと寂しさが襲った。
静かになり、二人を見つめる。
「皆でこうしてお買い物するの、本当に楽しいなぁ。……私、バカだ。ルドガーがここにいたら、さらに楽しかったですよね」
サプライズしたいのは事実だが、彼を誘えばよかったと後悔してきてしまった。
あなたは今日もずっと頭の中ではルドガーのことを考えていたのだ。
するとセロ達もしんみりしたあと、温かい面持ちになった。
「また今度誘えばいいだろ。いつでも来れるんだからさ、四人で来ようぜ」
「そーだよ、名無し。あんたがあいつ大好きなのはわかったから、今度はルドガーも連れて来ればいいじゃねえか」
二人にそう声をかけられて、あなたの表情が明るさに包まれていく。
「そうですよね……! また来れますよね!」
「そうそう。つうかさ、実はな……。ほら、これ。俺、あいつから通話魔石渡されててさ」
あなたの様子に少し心が動かされたのか、セロがポケットから細い魔石を取り出す。
「なんかあったらすぐ通話かけてこいって。はは、やっぱ心配してんだろ。あいつらしいよな」
「だよな。抜け目ねえわ」
男達は顔を見合わせて笑っている。
あなたはひとり、潤んだ瞳で二人を感動的に見上げた。
「そうだったんだ。ルドガーも、心配してくれてたんだ…」
彼は最初は驚いていたが、あなたの気持ちを受け取り、力強く送り出してくれた。
いつもそうなのだ。
でもやっぱり、彼は常に万全を期している。
それがルドガーという男なのだと、この場の三人はもう知っていた。
「嬉しいー! じゃあ、ルドガーにお土産買って帰りましょう!」
「それいいじゃん。お前のおごりな。付き合ってやったから」
「はい!」
「セロ、お前恥ずかしくねえのか女に払わせて。名無し、俺がおごってやるからな。あんた今日たくさん金使ったんだから」
「わぁありがとうございます、じゃあ半分こして買いましょう~」
優しい彼らにたくさんの感謝をし、あなたは寂しさが吹き飛んで、うきうき気分で贈り物を買った。
帰る時間になるまで、あなた達は街の大きな公園にやってきた。
セロがここの出店が美味いというので、味見用に気に入ったのを購入し、帰りにルドガーにも買って帰ることにした。
三人でベンチに座り、ほっと一息つく。
「はぁ~美味しいですねえ。セロさん、このパフェ最高ですよ」
「だろっ? ホットドッグもうめえぞ」
飲食をしない獣のナザル、そしてセロ、あなたの順に座り、のどかに佇んでいた。
するとナザルがぴくりと尖った耳を動かす。
彼は何かに気づいたあと、セロを険しい顔で見た。
主であるセロも、怪訝に思い正面に視線をやった。
「なっ…………」
彼のいやに真剣な声音が響き、あなたも前を向いた。
遠くから静かに歩いてくる人物に、目を見開く。
それは女性だった。
あの黒いレースのケープに、長いゆるやかな紫色の髪を揺らしている。
黒いロングドレスの魔術師は、あなた達の前に、ゆっくりと歩いてきた。
けっして友好的とはいえない沈んだ美しい表情で、セロとナザルを見つめながら。
